2015年第三回都議会定例会文書質問趣意書 2015年10月5日

大山とも子(新宿区選出)

保育士、介護職の確保について

 待機児や特養ホームの待機者を解消するためには、保育園や特養ホームを増設するとともに、保育士や介護職の確保が大きな課題です。
 今定例会の代表質問での、「保育士や介護職員の深刻な人材不足についてどう認識」しているのかとのわが党の質問に、「ふえ続ける保育ニーズや介護ニーズに対応するためには、サービス基盤の整備を進めるとともに、これを支える人材の安定的な確保が必要」だとの認識を示し「今後とも福祉人材の確保に努めて」いくことを答弁したことは、重要です。
 ところが、福祉人材確保のために、「賃金を引き上げ、職員をふやすことができるよう保育単価や介護報酬、保育士、介護職員の処遇改善補助を拡充し、職員配置基準も改善するよう国に強く求めるとともに、都としても最大限の対策を強める」ことを求めたことに対し、都は、「保育士や介護職員の処遇における一番の問題は、キャリアパスの仕組みが十分でないことでございます。そのため、都は国に対し、福祉人材のキャリアパスを早急に整備するよう、繰り返し提案要求するとともに、今年度からは、キャリアパスの導入に取り組む事業者への都独自の補助制度を実施しております。また、事業者に対し、望ましいサービス水準の確保や施設の機能強化を図るための独自の補助も行っております。」と答弁しました。これは、もっとも重要な賃金と労働条件を軽視したものと言わなければなりません。

Q1 保育士が働き続けられる条件整備は、重要であり、改めて東京都自身が実施した、保育士の実態調査から学び、活かすべきときです。現在働いている保育士のうち離職を考えている人は約2割もいることが明らかになっています。保育の継続、保育の質を向上させるためにも、離職を少なくすることは重要ですが、どう認識していますか。

回答1 保育ニーズに対応するためには、サービス基盤の整備を進めるとともに、これを支える人材の安定的な確保が必要です。都は、保育人材の定着を図るため、保育士等のキャリアパスの導入に取り組む事業者を支援するほか、保育人材・保育所支援センターのコーディネーターによる就職相談・あっせんから就職後の定着までの支援や、働きやすい職場環境づくりに関する事業者向けの研修、保育従事者向けの宿舎借り上げの支援など、都独自の様々な施策を実施しています。

Q2 離職を考えている保育士の3大理由は、「給料が安い」、「仕事量が多い」、「労働時間が長い」です。同時に就業している保育士の職場への3大改善希望は、「給与・賞与等の改善」、「職員数の増員」、「事務・雑務の軽減」でした。
 つまり給与の改善と人員配置を増やすことなしに、退職者を少なくすることはできないということではないでしょうか。どう認識していますか。

回答2 過去に保育士として就業していた方の離職の理由は、妊娠出産、給料、職場の人間関係、結婚、仕事量の多さなど、様々であると認識しています。都は、保育人材の定着を図るため、独自に様々な施策を実施しています。

Q3 日本の保育士の処遇は国際的に見ても低いのです。OECDがデータを出している22か国のうち、14力国は小学校教諭と同じ給与水準ですが、日本の水準はわずか6割程度です。日本とは異なる条件のもとにあるとはいえ、OECDが乳幼児期の保育・教育の重要性を強調し、「給与、手当て、職能開発の機会」を初等教育分野と同等にするよう求めているからです。保育士の処遇改善についてどう認識していますか。

回答3 国は、平成27年度から保育士の処遇改善を図るため、処遇改善加算を創設しました。保育士の処遇における一番の問題は、キャリアパスの仕組みが十分でないことであり、そのため都は国に対し、キャリアパスの仕組みを整備するよう繰り返し求めるとともに、平成27年度から新たに、キャリアパスの導入に取り組む事業者への独自の補助制度を実施しています。

Q4 今年度から都は、保育園へのサービス推進費を制度変更してキャリアアップ補助と保育サービス推進事業としました。キャリアアップ補助部分は増えたものの、地域の子育て支援のための事業の多くを補助対象からはずしてしまったために、地域の子育て支援を継続し、地域の方々に喜ばれている保育園ほど、補助の総額は増えません。認可保育園の支出のほとんどは、人件費ですから、補助の額が増えなければ、賃金を上げることは困難です。保育士や介護職を確保するには、現在仕事をしている人が、働き続けることができるようにすることが重要です。東京都社会福祉協議会は、区市町村が実施主体となって地域子育て支援事業を行った場合の都の補助について、補助率を1/2から3/4にあげるなどの充実を求めています。地域の子育て支援策の早急な拡充が求められますが、どうですか。

回答4 地域における子供・子育て支援の実施主体は区市町村であり、子ども・子育て支援法では、区市町村が子ども・子育て支援給付や地域子ども・子育て支援事業を行うこととしています。都は、法に基づき、これらの給付や事業の費用の一部を負担するとともに、区市町村が地域の実情に応じて、子育て支援施策を展開できるよう、独自に包括補助により支援しています。

Q5 介護人材の確保も切実です。介護報酬全体で2.27%という過去最大規模のマイナス改定は当初から、「人出不足の深刻化やサービスの低下を招きかねない」と懸念する声が上がっていました。介護報酬削減が実行された今年3〜4月の都内の居宅サービス事業所の廃止等は166ヶ所で昨年の1.4倍になっています。介護報酬の削減から半年、その影響がどうなっているのか、まずは都として、実態の把握を早急に実施することを求めますが、どうですか。

回答5 都内において、平成27年4月から同年9月までに新たな指定を受けた居宅サービス事業所は506か所、同期間に廃止された事業所は312か所となっており、差し引きで194か所増加しています。介護報酬改定の影響の把握については、第7期東京都高齢者保健福祉計画の策定に向けた取組の中で、必要な調査等を行っていきます。

Q6 公益法人介護労働安定センターが実施した平成26年度介護労働実態調査によると、介護職員の働く上での悩み、不安、不満等で多いほうから3つのものは、「人手が足りない」48.0%、「仕事内容のわりに賃金が低い」41.7%、「有給休暇が取りにくい」、「社会的評価が低い」33.7%、との調査結果となっています。また、介護職員の採用が困難な理由で多い3つは、「賃金が安い」59,1%、「社会的評価が低い」45.6%、「仕事がきつい」45.1%でした。なお、「キャリアアップの機会が不十分」という回答は10.9%です。明治安田生活福祉研究所の内匠功主任研究員は、介護職員の採用が困難なのは、「身体的にも精神的にもきつい仕事であるにもかかわらず、介護職員が低賃金で社会的評価も低いことが主因である。」と述べています。これらの調査結果や指摘を東京都はどう認識しているのですか。

回答6 都内の介護関係職種の有効求人倍率は全職業平均より高く、求人に対して人材が不足しており、介護労働実態調査における「人手が足りない」「仕事がきつい」等の回答は、こうした状況を反映した結果であると考えます。また、同調査における「仕事内容のわりに賃金が低い」「社会的評価が低い」という回答は、職責に応じた処遇を実現するキャリアパスの仕組みが十分でないことなどが原因と考えます。

Q7 保育士などへの職員の宿舎借り上げ補助は、多くの職場から歓迎されています。しかし、介護職などにはありません。介護関係の職員は夜勤もあり、職住接近を望んでいます。家賃が高い東京では、介護職場の職員についても宿舎借り上げ補助が必要です。国へも要求するとともに、都独自に制度をつくることが求められています。いかがですか。

回答7 都は、国に対し、職場環境改善などを含めた、介護人材の計画的な確保対策を確立するよう提案要求しています。また、平成27年3月に策定した第6期東京都高齢者保健福祉計画では、介護人材対策の推進を重点分野の一つに位置付け、介護人材の確保・育成・定着に向けた総合的な取組を実施しています。