植木こうじ(中野区選出)
一、教職員定数と少人数学級、教育予算について
Q1、 日本の将来を支える子どもたちのために、子どもたちをめぐる社会状況や学校現場の実態など直面する教育課題を解決することが急がれています。
ところが、財務省は財政制度等審議会で、公立小中学校の教員定数について、9年間で3万7千人削減すべきだという見解を示し、「学級規模縮小だけに議論と予算を費やすことは無意味」だ、「問題は『費用対効果』」だと主張しています。教育に予算をかけることに背を向ける見解には教育現場の実態を無視したものであり、認めることはできません。教育関係者から、ごうごうたる批判の声があがっています。
中央教育審議会は、「教職員定数に係る緊急提言」を発表し、「限りある財源を有効に使うことは必要であるが、教職員定数の機械的な削減という主張は、今後の日本社会の発展のために、子供の実態や学校現場・地方の実情に応じて教育が果たさなければならない役割についての認識が全く窺えないばかりか、各学校の厳しい実態を無視した、あまりにも非現実的なもの」とまで、さらには財政制度審議会の「考え方は暴論であるといわざるを得ない」とまで批判しています。
日本PTA全国協議会も、「教職員定数を削減すれば、少人数教育や特別な支援が必要な子ども達への対応ができなくなり、教育環境が悪化することは明らか」だとして、教職員定数削減反対の決議をあげています。
東京都は、教職員の削減を求める財務省の主張を、どう考えますか、見解を伺います。
回答 政府予算案においては、児童・生徒数の減少による定数減を見込む一方で、加配定数は525人の改善が実施されることとなっています。
都においては、習熟度別指導実施のための教員加配や、中1ギャップの予防解決のための教員の加配を行うなど、教職員定数の充実を図っています。
なお、都教育委員会は、国に対して、指導方法工夫改善加配などの教職員定数を一層充実することを要望しています。
Q2、 OECD経済協力開発機構は10月、加盟各国のGDPに対する政府や地方自治体による教育機関への公的支出の占める割合についての資料を発表していますが、比較可能な32カ国中、日本は6年連続で最下位です。ノルウェーの6.5%に対し、日本は約半分の3.5%にすぎません。都はこの状況をどう考えていますか。日本は教育への公的支援を、もっと増額・拡充することが求められているのではありませんか。
回答 教育への公的支出については、国によって教育制度や社会状況が異なっていることから、都は、OECD加盟国の対GDP比率の水準のみによって優劣を論ずるという考え方を採ってきていません。
都は、これまでも、教育に係る必要な予算を措置し、事業を実施してきており、国に対しても、様々な教育課題を解決するための予算について、一層充実すべきとの提案要求を行っています。
Q3、 日本で問題なのは、国の財政負担が重いことではなく、教育費への公的支出の占める割合が異常に低いことです。東京都の教育費についても拡充が求められています。
文科省の「地方教育費調査報告書」(2013会計年度)によると、東京都の児童1人あたりの学校教育費は、小学生では全国47都道府県のうち28位、中学生は10位にとどまっています。都内公立小中学校の生徒数は、2010年度から5年間に1万人増えていますが、この間の都の教育予算は12億円減らされました。他の道府県に比べて28位や10位にとどまっている都の教育予算を大幅に増額・拡充することを求めるものです。お答えください。
回答 平成22年度から平成27年度までの間の予算額の減は、制度改正に伴う退職手当等に係る経費の減額や、施設の計画的整備に伴う整備費の減額等によるものです。
この間、都内公立小中学校の児童・生徒数は、7,575人増加していますが、小中学校の教育に係る予算である「小中学校費」については、約61億円の増額・拡充を行っています。
Q4、 さまざまな教育課題に応えるために、少人数教育を進めることが求められ、世界の先進国では少人数教育が当たり前になっています。
OECDの調査では、1学級当たりの子どもの数は加盟国34カ国の平均を上回っていて、小学校の場合の場合6.4人も多く、中学校では9.3人も多くなっています。
現代は「知識社会」といわれるように、インターネットをはじめ高度に発達した科学・技術の中で働き、生きるうえで、一方通行で教える教育ではなく、子ども達同士で学び、対話しながら、考える力をやしなうことが重要になっていることなどが、その背景の1つになっています。
日本では、とりわけ、学校生活全体で学級のもつ役割が大きいため、さまざまな課題や困難、悩みをかかえる子ども達へのきめ細かい支援を行ううえで、少人数学級が重要な条件となります。
世界の先進国で少人数学級がすすんでいることを、都はどうとらえていますか。これらの先進諸国とくらべて日本の教員の配置基準が低すぎることをどう考えていますか。
回答 都教育委員会では、義務教育における学級編制の在り方は、教育の機会均等や全国的な教育水準維持の観点から、国の責任が大きいと考えています。
また、小・中学校の教員配置については、いわゆる義務標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)に基づき、学級数に応じた教員数を配置するとともに、教育課題に適切に対応した教員加配を実施してきました。
特に基礎学力の向上に配慮して、きめ細かな指導を行うため、習熟度別指導等の教員加配を図っています。
Q5、 日本でも多くの道府県が、少人数学級の拡大を進めています。文科省の資料によれば、2014年は11県が少人数学級を拡大し、なかでも秋田県、山梨県、福井県、滋賀県では小中学校9年間すべての学年が少人数学級となりました。今年度は、新潟県が小中学校すべての学年で少人数学級に踏み出しました。東京都は、小学校1、2年生と中学校1年生にとどまっています。
知事は、東京都総合教育会議で、「子ども達への教育こそが未来のいしずえを築きます」と発言しました。であれば、都の教育予算を増やし、教職員配置を増やして少人数学級の拡大を進める必要があると思いますが、いかがですか。
回答 都教育委員会では、いわゆる義務標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律)に基づき、学級数に応じた教員数を配置しています。
また、小1問題及び中1ギャップの解決のため、小学校第1学年、第2学年及び中学校第1学年において35人編制を可能としています。
義務教育における今後の学級編制の在り方は、教育の機会均等や全国的な教育水準の維持の観点から、国の責任が大きいと考えています。
二、特別支援学校の教職員の増員と教室不足解消について
Q1、 都立特別支援学校では10年前の児童・生徒数は8,485人だったのが、2015年度には知的障害児の増加などで11,893人になっています。
教員定数を児童・生徒数の増加に見合う人数にしなければならないのに、東京都は教員を非常勤の介護ヘルパーなどに置き換えるなど、教員を削減してきました。その結果、教員1人当たりの生徒数が1999年度には1.6人だったのが2015年度には2.3人と1.5倍に増加しました。特別支援学校の教員定数を削減してきたため、生徒一人当たりの教育費は、47都道府県中33位と全国平均より低くなっています。この状況をどのようにかんがえていますか。
回答 特別支援学校の教員数は、いわゆる標準法(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律及び公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律)に基づく都の配置基準により配置しており、児童・生徒数に応じた学級数で算定しています。
障害の特性に応じた指導体制の整備を図るため、介護業務を担う学校介護職員の導入など、適正に教員配置を行っています。
また、人件費を含めて、教育に係る必要な予算は措置しています。
長い間特別支援教育にたずさわってきた教員からお話を伺いました。かつては重度重複障害児の学級では1クラスに2人の教員が配置できていたのに、現在は教員1人と、教育事務にたずさわれない年192日勤務の学校介護職員(非常勤介護ヘルパー等)が1人という配置になっています。教材の準備から、学級日誌、連絡帳などを教員1人ですべてをこなさなければなりません。さらに産休代替教員が確保できない場合や、教員が研修に出かけるときは2クラスを統合して合併授業にせざるを得なくなり、重度の児童に目が行き届かないと訴えています。
舛添知事は特別支援学校の都立永福学園を視察して、「障害のあるすべての子どもたちの学ぶ権利を保障するのは行政の責務」だと感想を述べ、さらに、特別支援学校の教員が力を発揮していることを評価しました。
Q2、 障害児が年々増加しているなかで学ぶ権利を保障するためにも、教員定数は削減ではなく、必要な教員確保を進めるべきです。学校介護職員についても、教員の置き換えではない形で配置すべきです。お答えください。
回答 教員がこれまで担ってきた児童・生徒に対する介護業務を学校介護職員が担うことにより、教員は本来の役割である教育活動に専念できるようになり、それぞれの職の専門性が発揮され、職務遂行上の効率化も図られています。
そのため、現在、学校介護職員を導入している学校での教員と学校介護職員の協働による指導体制は適正なものであると考えています。
Q3、 東京都教育施策大綱では「知的障害者が増加」しているとして、必要な施設整備を進めると述べたことは重要ですが、現在、教室不足数は、特別支援教室などの転用教室だけでも429室、カーテンなどで仕切った教室も入れれば700室程度といわれています。音楽室、木工室、視聴覚室、生活訓練室、プレイルーム、実習室などの特別教室を普通教室に転用する例や、1部屋をカーテンで二つに仕切って2クラスで使うなど、ぎゅうぎゅう詰めです。倉庫までも普通教室に転用している例もあります。現在の計画だけでは、教室不足は解消できないことは明らかです。
教室不足解消のため、現在の計画を見直して新たな計画を策定し、早急に対策を進めるべきではありませんか。お答えください。
回答 特別支援学校における教室数の確保については、現在、東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画に基づき、施設の新築、増改築、学部の改編、通学区域の調整などの対応策を講じながら、特別支援学校の規模と配置の適正化を図り、教育環境の改善を行っています。
また、新築、増改築に際しては、可能な限り多くの教室を確保するよう努めています。
今後も引き続き、東京都特別支援教育推進計画に基づく施設整備を着実に進めていきます。
以 上