2016年第1回定例会 予算特別委員会 討論 3月23日

植木こうじ(中野区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第1号議案 平成28年度東京都一般会計予算ほか10議案に反対し、第1号議案ほか3会計予算の編成替えを求める動議に賛成の立場から討論を行います。

 まず一般会計予算案についてです。
 新年度一般会計予算案は、防災の名のもとに住民を追い出し、商店街の破壊を進める特定整備路線の整備費を335億円も増やすことをはじめ、幹線道路整備予算を3000億円規模にまでふくらませるなど、都市機能の強化に力が注がれたものとなっています。
 一方、今年度の予算編成で掲げていた「都民福祉の充実による生活の質の向上」という方針が、新年度予算編成方針では基本事項から外され、都民が求めている、くらし・福祉を守る立場は、部分的な前進はあるものの、全体としてきわめて不十分です。「世界一の福祉先進都市東京の実現」という知事の公約に照らせば、大きな後退と言わねばなりません。 

 今、都政に求められているのは、国の社会保障の切り下げや貧困と格差の拡大に苦しむ都民への経済的支援の拡充に踏み出すなど、住民の福祉の増進を本旨とする地方自治体の役割を発揮することです。
 わが党は、この立場から、本委員会では、喫緊の課題である子どもの貧困対策や、保育園の待機児童解消について質しました。

 子どもの貧困問題では年々増大し深刻になっている教育費の負担軽減について質しました。中でも学生支援機構の奨学金は大学生の4割が借り、有利子の奨学金が7割に及びます。卒業しても低賃金などにより返済に苦しんでいる実態にこたえて、都独自の給付制の奨学金制度の検討を進めるよう求めました。ところが舛添知事は、子どもの貧困対策は「国に先駆けた施策を展開する」と表明し、国立大学の学費、初年度納付金が高くなっていることは認識していると答弁したにもかかわらず、「大学生に対する奨学金は国がやること」だとして、都としてこたえる立場を示しませんでした。
 しかし一方で、都が受験のための塾代や受験料を貸与し、合格すれば返還免除となる「受験生チャレンジ支援貸付事業」について連帯保証人が必要なため、あきらめてしまう生徒が少なからずいる、保証人をなくすべきだとのわが党の求めに、来年度から保証人を不要とすると答弁したことや、生活保護世帯の小中学生に塾代の助成を行う区市への包括補助について、区市が申請すれば高校生まで可能と答弁したことは重要です。

 働いても貧困から抜け出せないひとり親世帯への支援の必要性について、わが党の質問に対して知事は経済的支援はやっていると答弁し、経済的支援の必要性を否定しませんでした。ところが、20年間も単価が据え置かれたままになっている都独自の児童育成手当を引き上げるよう求めたのに対して、これにこたえる立場を示しませんでした。
 一方、ひとり親世帯の住宅の安定確保に努めることを表明したことは重要です。都が実施している中学生までの子ども医療費助成制度を18歳まで広げることが求められています。その点で、現行制度を18歳まで拡大するための費用は約64億円と見込まれることが示されたことは、今後につながるものです。

 深刻化する保育園の待機児童の問題について、わが党が保育園の整備目標の引き上げと増設のテンポの引き上げを求めたことに対し、知事が待機児童の実態調査を踏まえ、検討すると答弁したことは重要です。
 事業者や区市町村が計画的に取り組めるよう、早期に目標の引き上げとそのための具体策を打ち出すことを求めるものです。
 とりわけ重要なのは保育士の待遇改善です。安倍首相も国会で「保育士不足の要因としては、給与も含め待遇の問題があると認識している」と答弁しているように、給与をはじめとした待遇改善が必要であることは、今や立場の違いを超えた共通認識になっています。保育士の賃金の引き上げは知事の公約でもあります。わが党の質問に対し都が、保育士は児童福祉における重要な専門職のひとつであると認識していると答弁したことは重要です。専門職にふさわしい処遇改善が進むよう、抜本的な支援の拡充を強く求めるものです。

   多摩地域の問題では、多摩ニュータウンの再生について市町村土木費補助の対象になっていない老朽化、改修対応も補助対象に拡充するよう求めたのに対し、「橋梁について平成28年度から架け替えに加え、老朽化対策を補助対象とする」と答弁したことは重要です。

 わが党は、都財政のあり方の問題として、オリンピックの財政負担、都市計画道路の第4次優先整備路線など道路整備の問題を質しました。 

 2020年東京五輪の財政問題では、東京五輪全体の最新の総事業費や大会運営費を明らかにし、削減の努力を優先することを求めました。しかし舛添知事が、総事業費などについて明らかにしないばかりか、「国と都、組織委員会の新たな役割分担」を検討すると言って、国や組織委員会の責任に属する分野にまで都財政の投入に踏み出す姿勢を示したことは見過ごせません。
 知事が参考とするロンドンでは、半年毎に収支計画を公表し、下院決算委員会がこれをチェックし、事業費の削減に努めてきたことに学ぶべきです。

   道路事業については、現在の都市計画道路だけでも1205キロもあり、整備するのに半世紀もかかり際限のない財政負担が生じることを示し、見直すよう求めました。
 ところが、補助92号線の場合、地元の15町会が反対し、荒川区議会も陳情を全会派一致で趣旨採択し、地元区も強行すべきでないと主張しているにもかかわらず、あくまで整備を進める立場を示したことはきわめて重大です。
 今回の第4次計画を強行したら、数万人もの人が立ち退きなどの深刻な影響を受け、人生設計をくるわされる人も少なくないのです。にもかかわらず、計画の前提である交通量や混雑度など最低限の情報も事前に示さず、パブリックコメントで都民からよせられた意見についても、計画決定後に発表すればよいとし、しゃにむに道路整備を推し進める立場をあらわにしたことは、断じて許されません。
 京都では105路線を廃止、大阪では280路線を廃止するなど都市計画道路について歴史的建造物や住民合意のないもの、商店街を分断するものなどについて見直しが行われています。
 幹線道路整備の最大の理由は渋滞解消とされていますが、信号機をコントロールするハイパースムーズ作戦では、わずか4年間でピーク時の速度が12%も改善しています。ところが第4次優先整備路線を、巨額を投じて完成させても、平均時速は13%しか改善しないのです。道路整備最優先の姿勢を改め、渋滞解消やまちづくり、防災対策などは、それぞれの課題や目的に沿った適切な施策を進める方向への転換を求めるものです。

 こうした財政投入のあり方の抜本的見直しをすれば、都民のくらし・福祉、営業を守る施策の財源を生み出すことができます。
 以上の立場から、知事の来年度一般会計予算に反対し、同会計ほか3会計の編成替えを求める動議に賛成し、日本共産党の討論といたします。