2016年都議会第一回定例会 文書質問

小竹ひろ子(文京区選出)

一、 都有施設等の都市ガス経年管の耐震化について

 昨年4月に開催された、経済産業省の産業構造審議会保安分科会、ガス安全委員会(第10回)では、2013年度(平成25年度)導管改修(経年管対策)実施状況について報告され、経年管の改修促進について議論が行われました。
 1980年頃までに埋設されたガス管には、亜鉛メッキ鋼管(通称白ガス管、以下白ガス管)が使用されていました。白ガス管は土の種類や水分等の埋設環境により異なりますが、長い時間土の中に埋設されていると腐食することがあり、進行すればガス漏れの危険が生じます。
 首都直下型地震の接近が指摘される下で、安全で安心な町を作るために、危険物の除去は欠かせません。腐食した白ガス管を取り除くことは、生命を守る上でも重要な問題です。
 川崎市では、2013年9月に耐火構造4階建のマンションで、劣化した白ガス管から都市ガスが漏れ、3階に滞留・爆発し死傷者が出ています。発火源の特定は出来なかったものの、腐食した要因は、腐食促進イオンを含む水が砲金コックと白ガス管のネジ接合部分に滞留したことによって、腐食が進行したものとされ、特異な腐食であると、川崎市中原消防署は推察されるとしています。
 しかし特異なものとはいえ、土の中に埋設されたものだけでなく、コンクリート建物内でも腐食が起こりうることが、川崎の事故は示しています。
 ガス安全高度化計画では、2015年までに対策完了を目指していました。
 ガス管には、本支管・供給管、灯外内管に分けられ、前二者はガス事業者の責任で改修を進めており、灯外内管については私有財産ということで、持主の責任で改修することから改修が進まず、2003年には、約38万本の白ガス管等が残っていました。国の周知活動やガス事業者等の働きかけにより、灯外内管の改修が進み、2013年度末には、8万9千本の残存状況になったと報告されています。
 ガス安全高度化計画では公的機関の施設については、2020年度に向けて可能な限り灯外内管の改修完了に努めるとしています。
 そして、2013年度未の公的施設別の残存量、8.300本の都道府県別リストが発表されました。

Q1 東京都は49施設に白ガス管が残っているとされており、その内訳として学校16校、病院6、社会福祉施設3、庁舎・公民館2、警察・消防署5、その他17になっていますが、それぞれの所管する局に伺います。該当する施設はどこどこか、そして改修されたもの、今後の改修計画について伺います。

回答(病院経営本部) 平成28年3月末時点では、都立・公社共に病院施設に該当はありません。なお、その他施設として都立駒込病院看護職務住宅に1本のみ残存していることを確認しています。
 当該施設については、既に用途廃止を決定し、居住者の移転が完了次第、白ガス管の使用を停止します。

回答(港湾局) 港湾局が所管する東京港建設事務所の敷地内に、白ガス管が残存しています。この白ガス管については、当該事務所の庁舎補修工事に併せ、平成28年度中に処理する予定です。

回答(水道局) 水道局における該当施設は、金町公舎、亀戸給水所管理棟及び深大寺浄水所管理棟の3施設です。これらの施設については、既に白ガス管の使用を停止し、又は改修に着手しています。

回答(教育庁) 学校16校のうち、都有施設は青梅総合高等学校1校であり、他は区市町村立の学校となっています。青梅総合高等学校については、平成27年度に改修を実施済みです。

回答(警視庁) 警視庁における該当施設は、築地警察署中央市場交番、中央警察署人重洲通り交番、愛宕警察署東新橋交番、蔵前警察署浅草橋地域安全センター及び目白警察署長崎地域安全センターの5施設であり、いずれも平成28年度中に改修する予定です。

Q2 経済産業省は文部科学省と共同で、公立学校施設における「埋設ガス管等の耐震化の推進について(依頼)」を、2014年10月と2015年12月に出しています。これに対し都教育委員会は、どのように認識しどのような対応でのぞみ改修のための対策を、どのように立てているのですか。

回答 都教育委員会では、都立学校における対策を既に完了しています。区市町村立小・中学校の施設整備については、設置者である区市町村の権限と責任において実施されるものです。
 都教育委員会では、文部科学省と経済産業省の通知を受け、区市町村教育委員会に対し、埋設ガス管の耐震化を計画的に行うよう通知しています。

Q3 小中学校及び高等学校・特別支援学校の児童・生徒の生命に関わる問題であり、早急な対応を求められます。
 小中学校について災害時の避難場所になることなどからも区市町村まかせにせず、都として積極的に改修のための支援をすべきですが、どうですか。

回答 都教育委員会では、区市町村立小・中学校の埋設ガス管の改修について、平成25年度から開始した、都独自の非・構造部材耐震化支援事業の補助対象としています。

Q4 文部科学省は私立学校施設に対しても、埋設管等の耐震化の推進についての通知を出しています。この通知を受けて都はどう認識し、実態をどこまでつかみ、対策を立てているのか、伺います。

回答 地震等の災害から児童生徒の安全を守るためには、私立学校の設置者である学校法人が、学校施設の安全を確保することが基本となります。
 建物敷地内の埋設ガス管については、ガス事業者が、私立学校を含む各敷地の所有者に対して、交換が必要な場合には、個別に対応を求めています。
 都は、文部科学省及び経済産業省の連名の通知を受けて、平成27年3月25日付けで、経済産業省の「ガス導管劣化検査等支援事業」の活用等、埋設ガス管等の耐震化の推進について、都内全ての私立学校に周知を行っています。

Q5 生徒の生命にかかわる問題です。国の改修補助金は2015年度末になっており、工事費の1/4補助になっています。都の私学助成設備改修の補助対象に入れて、早期に改修はかるよう働きかけるべきと考えますが、どうですか。

回答 私立学校敷地内の埋設ガス管の耐震化については、私立学校の設置者である学校法人が、対応することが基本と考えます。

Q6 経済産業省は、厚生労働省と共に公立の病院、社会福祉施設、民間の病院・社会福祉施設に対し、文科省と同様の通知を出しています。都としてどう認識し、対象の施設の調査と対策が、どのようになっているのか、それぞれ伺います。

回答 埋設ガス管の耐震化に関して、民間病院については、平成26年2月に、経済産業省から日本医師会ほか関係団体に「民間医療施設における埋設ガス管等の耐震化の推進について」が通知されており、日本医師会から東京都医師会を通じて地区医師会宛て周知されています。
 また、児童福祉施設等については、平成27年2月及び平成28年3月に、厚生労働省、経済産業省の連名で、「児童福祉施設等における埋設ガス管等の耐震化の推進について」が通知されており、都は、区市町村や児童養護施設等に周知を図っています。
 埋設ガス管の改修等は、民間事業者や区市町村等の施設設置者が行うものであり、耐震化のために改修が必要なガス管については、ガス事業者が把握し、個別に施設設置者に連絡を行っています。

Q7 公立の病院・福祉施設だけでなく、民間の病院・福祉施設も子ども・障害者・高齢者等あり、病院は平常時のみならず、特に災害の時には治療の拠点になる施設であり、その機能を発揮するためには、白ガス管の改修及び施設の耐震化は欠かせません。民間病院や福祉施設の白ガス管改修のための財政支援を求めますが、どうですか。

回答 耐震化が必要な埋設ガス管の改修については、民間病院が、病棟部門の新築建替工事と一体的に行う場合、補助の対象となります。また、児童福祉施設においては、新築建替や大規模改修等と一体的に行う場合に、補助の対象となります。

Q8 経済産業省と国土交通省が公営住宅、民間マンションに対しても埋設ガス管の耐震化推進について、通知が出されています。そのことに対する認識とともに、それぞれ実態をどこまで把握しているのですか、また、改修を促進するための対策は、どうなっているのですか。

回答 平成27年3月に、経済産業省から公益財団法人マンション管理センター宛てに、「マンションにおける埋設ガス管等の耐震化の推進について(依頼)」が出されており、同センターは、依頼を踏まえた記事を機関誌に掲載し、耐震化の必要性や補助事業を周知しています。
 加えて、改修が必要な埋設ガス管については、ガス事業者が、個別にマンション管理組合等に連絡しています。また、経済産業省の資料によると、「一般集合住宅(うち鉄筋系建物)」の区分において、経年管の残存件数は、平成26年度末で、全国に約21,000件あるとされています。 Q9 都営住宅は1970年代以前のものもあり、建物内の安全性も含め、点検することが、必要だと思いますが、どうですか。

回答 都営住宅の埋設白ガス管については、全て耐食性、耐震性に優れたポリエチレン管などに改修済みです。また、都営住宅を含め建物内については、ガス事業法等に基づいて、ガス事業者がガス配管の漏えい検査などの点検を定期的に行い、必要に応じ て適切な措置を講ずることとなっています。

 国の「マンションにおける埋設ガス管等の耐震化の推移について」の通知には、「マンションの敷地内に埋設されている30年程度経過した古いガス管は、鋼製のものが大部分を占めており、年数の経過や土壌環境等に伴い腐食が進行していると推測しています。このような腐食したガス管が強い地震を受けた場合、継手部分『ネジ継手』が緩んだり、その他の腐食した部分が折れたりして火災や爆発が生じる恐れがあります」とあります。
 多数の人が住むマンションのガス管の改修は緊急の課題です。
Q10 国の民間マンションの埋設管に対する、経済産業省の「ガス導管劣化検査支援事業」の助成は、2015年度末までとなっています。都として民間マンションの白ガス管改修助成及び耐震化の支援を行い、改修を促進すべきと考えますが、どうですか。

回答 マンションは私有財産であり、その維持管理は、管理組合が自らの責任と努力とで取り組むことが基本です。
 なお、都は、住宅金融支援機構の融資を受けて、マンションの共用部分を計画的に改良・修繕する管理組合に対し、1パーセント低利になるように利子補給する「マンション改良工事助成制度」を設けています。

Q11 総務省や警察庁からも、同様の通知が出されています。総務省は自治体の庁舎や消防署、公立大学等へ、警察庁からは警察署や派出所へ改修を求めています。通知をどう認識し対策をどう立てているか、伺います。

回答(総務局) 公立大学法人首都大学東京が管理している施設の土中には、白ガス管は埋設されていません。また、公立大学に対し改修を求める国からの通知文書は、該当の大学にのみ送付されており、公立大学法人首都大学東京は収受していません。

回答(警視庁) 警視庁では、通知の趣旨に則り、ガス事業者と協議を行い、改修計画を策定しています。

 経済産業省では、民間施設についても引続いて、関係省庁や関係機関・ガス事業者と協働して、地域別の残存量を公表し改善を求めていくとしています。
 中央防災会議の被害想定には、高層ビルや地下街等、超過密都市東京、独特の状況と共にライフライン等についても想定は明らかになっていません。
 都市ガスはマイコンメーターが供給を遮断すると言われていますが、ガス管内に残っているガヅ漏れの原因の一つに白ガス管はなります。昨年都民に配布された「東京防災」にも全く触れられていません。
 事故を未然に防止するためにも、白ガス管の改修は欠かせません。
都として、東京ガス等事業者に都内の白ガス管の残存量を、確認し支援策をとること、都として所管する担当部署を設けることを求めておきます。