2016年都議会第1回定例会 文書質問趣意書 3月23日

尾崎あや子(北多摩第1選出)

一、 豊洲新市場の整備について

 豊洲新市場用地の土壌汚染調査は、有楽町層までの土壌汚染のボーリング調査をした地点は、延べで見ても敷地全体を10メーターメッシュで区切った約4000所の1/3にすぎません。調査した汚染物質ごとの調査地点の割合ではシアンは1/4、ベンゼンは1/7、砒素は1/25にすぎません。
 どの物質についても、垂直方向での汚染状況がつかめていない地点は、全体の3/4にもなります。しかし、東京都は、この調査で基準以上の土壌汚染が見つかった10メートル四方のブロックの土壌を除去することで、「操業由来の汚染土壌は全て掘削除去したから操業由来の土壌汚染は除去された」と説明してきました。

 昨年8月には、市民団体の方々が、環境省とのやりとりを繰り返しながら都が発表してきた土壌汚染状況調査報告書等を検証した結果、土壌汚染対策法(以下土対法)にもとづき本来、帯水層底面でのベンゼンの汚染状況を調査すべき地点として、環境省令で定められた333区画が調査地点から省かれていたことが明らかになりました。
 この事実について昨年10月2日の経済港湾委員会でわが党が質したところ、東京都中央卸売市場当局(以下市場当局)は事実を認めました。市場当局は、いつ、どのようにして、法にもとづく帯水層底面での調査をしていないことを認識するに至ったのですか。

回答 平成22年2月に公布された土壌汚染対策法施行規則の一部を改正する省令において、帯水層底面の土壌の確認について規定されたものと認識しています。

 市場当局は改正土対法が施行された以降の2010年12月に、土対法、条例にもとづく届け出に必要な関係資料の作成に関する業務を委託しています。この委託契約にもとづき、土壌汚染状況調査報告書などを国の指定調査機関である応用地質(株)が作成しました。
この業務の遂行にあたって、市場当局は受託者にたいして「関係諸法令・諸条例を遵守すること」を契約の条件にしています。市場当局は、契約中に受託者の法令遵守状況についてどのような点検をしたのですか。契約にもとづく成果物が納品された際に、法を遵守したものかどうか、どのような点検をしたのですか。それぞれの結果について、どう認識したのですか。

回答 本委託は、都が実施した調査の取りまとめを第三者である「指定調査機関」に委託し、同調査機関は、調査内容を確認し、「土壌汚染状況調査報告書」として適切に取りまとめを行ったものと認識しています。

 この委託契約は、本来なら土対法に基づき必要となる手続き書類の作成ですから、土対法を熟知した国の指定調査機関と協議し、指定調査機関の指摘、判断を尊重して進めるのが筋だったのではありませんか。そうされなかった理由には、どのような経過があったのですか。

回答 都が実施した調査の内容を指定調査機関が公正な立場から確認し、「土壌汚染状況調査報告書」として取りまとめたものと認識しています。

 市場当局は、本業務の委託にあたって、「不透水層直上まで土壌汚染が確認されている区画(約400区画)」と限定して発注仕様書を作成しました。しかし、土対法にもとづく帯水層底面まで土壌汚染されている可能性があると判断される区画は、市場当局も認めているように、ベンゼンについては、東京ガスなどによる過去の調査等を含めて判断すれば、それ以外にも300余箇所があります。
市場当局は形質変更時要届出区域を確定する申請手続きをするにあたって、土対法に従えば、追加の調査が必要とされる地点があるという認識はなかったのですか。

回答 区域の指定にあたっては、指定調査機関が、全ての区画を対象に都が実施した調査の内容を確認し、「土壌汚染状況調査報告書」として取りまとめています。
 都はこの報告書により区域指定の申請を行っており、その後、土壌汚染対策法に基づき、法の所管部署において、汚染区画の区域指定がなされたものです。
 なお、「不透水層直上まで汚染が確認されている区画(約400区画)」は、区域指定された後の土壌汚染対策工事で、掘削深度を確定するための土壌ボーリング調査(底面管理)の区画数を示したものです。

 国の指定調査機関に委託する業務仕様を決めるにあたって、「不透水層直上まで土壌汚染が確認されている区画(約400区画)」と限定したことについて、いつ、どこで、だれが、どのようにして決められたのですか。土対法との関係は、どう整理し、どう判断されましたか。

回答 指定調査機関は、全ての区画を対象に都が実施した調査の内容を確認し、「土壌汚染状況調査報告書」として取りまとめています。
 都はこの報告書により区域指定の申請を行っており、その後、土壌汚染対策法に基づき、法の所管部署において、汚染区画の区域指定がなされたものです。

 発注仕様書では、受託者が委託業務をすすめる上で「監督員と協議」、「監督員の指示により業務実施に必要な業務計画書を作成」することとなっています。市場当局は、土対法を熟知した国の指定調査機関にたいして、どのような理由から、「監督員と協議」「監督員の指示」のもとで業務がおこなわれるような仕様書にしたのですか。

回答 委託業務を進めて行く上で必要な事項として、仕様書に記載したものです。

 国の指定調査機関にたいして、法令遵守をチェックできるほど、市場当局は改正土対法を熟知していたことを証明できるものはあるのですか。お示しください。

回答 土壌汚染対策法に基づく手続き等については、法を解説した「土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(暫定版)」や土壌汚染対策法の施行通知等に基づき、適切に処理しています。

 仕様書の作成にあたって環境省、東京都環境局、専門家会議、技術会議の専門家などが関与しているのですか。

回答 仕様書は委託を進める上で必要となる内容を記載したものであり、作成は都が行うものです。

 この発注仕様書の中で、留意事項として、環境確保条例、土対法にもとづく手続きとして、それぞれ別紙を添付して「このフローを十分理解した上で業務をおこなうこと」としています。この留意事項、資料の添付は、環境省、東京都環境局から何らかの指摘によるものですか。市場当局として、どのような経過から、別紙を添付するに至ったのですか。 回答 別紙は、一般的な土壌汚染対策法及び環境確保条例に基づく手続きを示 したものです。

 発注仕様書によれば、受託者は市場当局と適宜打ち合わせをして、委託業務を行なうことになっています。受託した応用地質(株)は、土対法を熟知した国の指定調査機関であるはずですが、こうした打ち合わせの中で、土対法によって必要とされる帯水層底面まで調査として、ベンゼンについては追加で300余箇所が必要されることについての指摘は、なかったのですか、あったのですか。必要とされる書類、調査などについて、土対法等の法令を遵守する上で、受託企業との協議は、いつ、どこで、どのように行なわれたのですか。それが、土対法等を遵守したものだと、しっかりと裏付けられるものがあるのですか。

回答 受託した応用地質株式会社は、指定調査機関として、適切に都が実施した調査の内容を確認し、「土壌汚染状況調査報告書」として取りまとめを行ったものと認識しています。

 2011年8月、応用地質(株)が作成した土壌汚染状況調査報告書は、東京都環境局に提出されました。これに基づいて、土壌汚染された区域を指定し、その後の対策結果をもとに、区域指定の解除の手続きが行なわれてきました。
 環境局はこの土壌汚染状況調査報告書を受け付けるに際して、どのようにするのか、2011年10月19日の決算特別委員会で、土対法にもとづいて汚染の恐れの把握、資料採取をおこなう区画の選定、実施、評価などが「適切に行なわれているかどうか審査している」と答弁しています。
 環境局として、適切に行なわれているかどうか審査したことを裏付けるものを示してください。

回答 調査対象地の汚染のおそれの把握、試料採取等を行う区画の選定、試料採取等の実施及び調査結果の評価などが適切に行われているかどうかを土壌汚染対策法の規定に従い審査しています。

 一方、上述のように昨年8月に市民団体が、2011年8月に市場当局が形質変更時要届出区域を確定するための手続き、その際に提出した応用地質(株)が作成した土壌汚染調査状況調査報告書などについて、環境省とのやりとりを繰り返した上で土対法に違反していると指摘しています。東京都環境局は、このことについて、どのように受け止めているのですか。

回答 平成23年8月に中央卸売市場が行った区域の指定の申請に係る手続については、法令に基づき適切に行われています。

 都知事に伺います。
 豊洲新市場の土壌汚染調査、汚染区域の指定申請書類の作成は、地主の都知事名で行なわれました。その申請手続きの受け付け、審査をした審査機関は、その責任者が都知事です。それぞれにおける、法令違反の指摘について、知事はどのように認識していますか。

回答 いずれの手続についても法令に基づき適切に処理しています。

 豊洲新市場については、このままでは、土対法上は、汚染除去の措置をしたとは認められず、形質変更時要届けで区域となります。これでは、生鮮食料品を扱う卸売市場用地として不適切となりますが、どうですか。中央卸売市場開設の許認可権をもつ、農林水産省とは、どのような協議をし、どのような見解を得ていると認識しているのですか。

回答 土壌汚染対策法の「形質変更時要届出区域」は、土壌汚染の摂取経路がなく健康被害の生じるおそれがないため、汚染の除去等の措置が不要な区域です。
 豊洲市場用地では、我が国を代表する学識経験者により科学的知見から、生鮮食料品を取り扱う市場として、食の安全・安心を十分に確保するものとして提言を受けた万全な対策を実施し、市場用地の安全性を確保しています。
 農林水産省には、土壌汚染対策の内容等について、適宜、報告を行っています。

 次に、豊洲新市場の施設計画についてです。
 3月15日の委員会の答弁で、6階区の仲卸売場1階では、荷の搬送車両として想定しているのはターレ以外の乗入れはないのですか。3階の積込み場では、ターレ、フォークリフトの乗入れは想定していますか。4階の小口買い出し人積込み場では、ターレ、フォークリフトの乗入れは想定していますか。

回答 水産仲卸売場棟1階の仲卸売場、3階の積込場、4階の小口買出人積込場では、荷の搬送車両としてターレとフォークリフトの乗入れを想定して設計しています。

 1階、3階、4階の仲卸売場について、3月15日の委員会で、「通路には何も物を置くことのない通路部分」があると答弁しています。何も物を置くことのない通路部分は、それぞれ何uあるのですか。

回答 水産仲卸売場棟1階の仲卸売場は、床面積のおよそ4割が通路となっています。3階の積込場は、床面積のおよそ半分が通路となっています。4階の小口買出人積込場は、床面積のおよそ半分が通路となっています。

 1階仲卸売場ですが、仲卸売場店舗の広さを当初予定の通路側に1.2m延ばしました。延ばした時に、この部分に置かれる荷物は、具体的に、どのようなものが、どんな重量で、どのように置かれると想定をしましたか。もともとは、この部分は通路で設計されているのではありませんか。

回答 床の積載荷重については、卸売市場の運営実態を踏まえ、設計事務所の専門家の協力を得て設計しており、通路も含めて仲卸売場の床として設計しています。

 3月15日の委員会で、「通路には何も物を置くことのない通路部分」があると答弁していますが、この仲卸売場店舗部分を通路側に1.2m延ばした部分には、荷を置くことは想定されて、実施設計されているのですか。

回答 床の積載荷重については、卸売市場の運営実態を踏まえ、設計事務所の専門家の協力を得て設計しており、通路も含めて仲卸売場の床として設計しています。

 3月15日の委員会で、フォークリフトに乗せる荷について「パレットによる搬送として60センチ程度の箱で、1個あたり15キログラム」「全体で300キログラム/平米」と答弁しています。これ以上の荷を積んだフォークリフトが各売場を走行する場合は、どのような問題が生じると認識していますか。1階仲卸売場、1階から4階の積込み場、4階の小口買い出し人積込み場、4階の荷捌きスペース、それぞれについて答弁を求めます。

回答 水産仲卸売場棟の設計に当たっては、築地市場において1.1メートル四方のパレットを使用した荷の移動が多い実態を踏まえ、フォークリフトで運ぶ荷の重さを約1トン強と想定しており、1階の仲卸売場、3階の積込場、4階の小口買出人積込場、4階の荷捌きスペースについて、荷を積んだフォークリフトが乗り入れても、いずれも問題は生じません。

 3月15日の委員会では、仲卸売場でのフォークリフトの総重量については、積載荷重について「約1トン強を積載していると想定」と答弁しています。仮に、この場合のフォークリフトの総重量は4トンから5トンになります。こうしたフォークリフトは、どこを通ることを想定しているのですか。具体的にお答えください。

回答 水産仲卸売場は、フォークリフトが物流通路に乗り入れることも想定して設計しています。

 ターレ、フォークリフト、トラック等の車両については、3月15日の委員会で「急激な荷重の変動を生じさせるような高速移動」を想定していないとの答弁がありました。しかし、実際の築地市場を見てもわかるように、これらの車両と人がひっきりなしに移動する各売場では、急激な減速、加速は日常茶飯事ではありませんか。各車両について築地市場のような乗り方を各売場でおこなった場合には、どのような問題が生じると認識していますか。それぞれの売場ごとにお示しください。

回答 売場については、通常の市場業務に支障のない強度を備えた建物として設計しており、ターレ等の小型搬送車両の乗入れについても、各売場とも構造上の問題は生じません。

 そもそも、卸売市場の売場で利用車両が「急激な荷重の変動を生じさせるような高速移動」を想定しないということが成り立つという市場当局の根拠を示してください。また、各車両について、そうした乗り方を前提としていることを、市場当局はいつ、どのように各業者・業界に案内をしたのですか。各業者・業界が了解している根拠を示してください。それぞれ、具体的にお答えください。

回答 床の積載荷重については、卸売市場の運営実態を踏まえ、都が開設者として設計事務所の専門家の協力を得て設計しました。