本会議 米倉春奈都議(豊島区選出)の討論
2020年10月8日の本会議で、米倉春奈都議(豊島区選出)が討論を行いました。
動画(都議会ホームページです。令和2年第3回定例会 >10月8日(木曜日)本会議(議案の議決など)をご覧ください)
★2020年都議会第3回定例会 討論全文(原稿)です。
日本共産党都議団を代表して、知事提出の第185号議案「新型コロナウイルス感染症対策条例の一部改正」ほか7議案に反対し、その他の議案に賛成する立場から討論します。
今定例会は、知事が2期目に就任して初めての定例会でしたが、「都民と決める」という2期目の中心公約をさっそく投げすてて、正反対に「知事が勝手に決める」小池都政の重大な問題点が浮き彫りになりました。
最大の焦点になったのが、新型コロナ対策条例改正の専決処分です。
改正内容は、事業者が感染防止宣言ステッカーを掲示すること、都民がステッカー掲示店を利用することなどを、努力義務にするものです。
都民の権利制限を含む重大な条例改正であるにもかかわらず、知事は、7月の臨時議会が閉会してわずか3日後に、議会に諮ることなく、専決処分で勝手に決めました。
このような専決処分の乱用は、議決機関である議会が決定し、知事を長とする行政機関が執行するという、地方自治体の二元代表制の否定につながるものです。政府の見解でも、議会を開かず専決処分する明確な根拠がない場合は、違法であるとしています。
都は、専決処分をした根拠について、臨時会の閉会直後に緊急に対応の強化を図る必要があったと説明しましたが、臨時議会の開催中も、新規陽性者数は急激に増加し、感染状況が危機的な状況だったことを認めました。
臨時会中も入院患者は300人以上増え、緊迫した状況は、都が言うような、臨時会終了後、突然発生したものではありません。
また、早く効果を発生させる必要があったと言いながら、ステッカーを貼っている店で感染が発生した事例があるのか、ないのかさえ把握していなかったことも都は認めました。つまり、感染症防止宣言ステッカーに感染防止の効果があるのかどうか把握もせず、科学的根拠のない条例改正をしたということです。
本会議および委員会の質疑を通して、専決処分する明確な根拠は、ついに示されませんでした。違法性が問われることを、厳しく指摘するものです。
さらに知事は、自らの責任において行った専決処分にもかかわらず、専決処分に関するわが党の代表質問に一切答えず、再質問にも立ちませんでした。あまりにも無責任な態度であり、猛省を求めるものです。
条例改正の専決処分をした7月30日の東京都コロナ対策審議会で、知事は、「私は7月中にすべて終えて、8月からオリンピックモードにしようというのを念頭にしていたが、なかなか、ウイルスもしつこいところがございます」「いずれにしても、この夏になんとか片付けないと、そのあとにつながらない」と発言しています。
要するに知事は、都民の命を守るためではなく、早くオリンピックモードにしたいという、政治的思惑から専決処分をしたということです。
以上のことから、今回の専決処分は、到底承認できません。
今定例会には、議会による専決処分の承認を得ていない新型コロナ対策条例を、さらに改正する議案が提案されました。このようなやり方は許されません。
新たな改正案は、都民が検査を受けることや、患者等がみだりに外出しないことを努力義務とするものとなっていますが、パブリックコメント期間はわずか6日間です。都自身が原則30日以上としているにもかかわらず、あまりに短期間です。
しかも、区市町村からは、「『みだりに』という言葉が適当とは思えない。単に控えるでもいいのではないか」と、厳しい指摘が出されています。
185号議案は、やり方も中身も問題があり、反対です。
感染症対策を進めるうえで、権利の制限は最小限とする必要があります。新たに努力義務を課す改正にあたっては、差別や偏見を助長しないよう慎重な検討が求められます。
感染拡大防止と社会経済活動を両立させる最大のカギは、PCR検査の抜本的拡充です。わが党はその立場で、都民と力をあわせ、繰り返し対応を求め、都の取り組みを前に進めてきました。
代表質問でわが党は、無症状者が感染を広げる特徴をもつ新型コロナ対策における検査の重要性を示し、検査数を一日数万件に増やすよう求めました。これに知事が、感染拡大を防ぐためには、無症状の方を含め、地域で迅速に検査を受けられる体制の整備が重要、国の指針をふまえて検査体制の強化を図ると答えました。
第2回定例会までの「必要な検査が実施されている」という知事の答弁から、大きな変化です。国の指針に沿って必要な検査能力を計算すれば、一日数万件規模になります。具体化を求めるものです。
今回の補正予算案で、重症化リスクの高い、高齢者や障害者の入所施設でのPCR検査への支援が予算化されたこと、7月の補正予算で決定した、区市町村との共同事業で行うPCR検査等の対象施設に、通所施設等を含めることが明らかにされたことも重要です。さらに、医療機関や保育園なども対象とすることを求めます。
コロナ禍のもと、保健所は多忙をきわめ疲弊しています。保健所の役割は、感染症対策だけでなく、精神保健福祉、食品衛生など地域住民の健康を守る拠点としての役割を果たしています。
わが党は知事に対し、保健所の役割を再評価し、職員を増やし、保健所の数も増やす方向に転換すべきと求めました。知事は、今回の感染拡大から収束に至るまでの保健所の取り組みについて検証したうえで、保健所の在り方を検討していくと答弁しました。保健所統廃合の是非も含めて検証し、増設も含めて抜本的拡充につなげることが必要です。
補正予算の第163号議案は、国の「GOTOトラベル事業」と連携して、都民が都内旅行した時に支援するものですが、都内のコロナ新規感染者数は、依然、高い水準です。都内であっても、人の移動を促進することは感染拡大につながり、すべきではありません。
都として、感染防止対策に全力で取り組むとともに、コロナ禍で困難を抱えている小規模旅行会社や小規模な宿泊業者などの観光業者には、今回のようなやり方でなく、直接支援を行うべきです。
新型コロナで都民生活や社会に影響が出たことを受けて、都は、長期戦略の策定の方向性を示しました。ところが、その中心はデジタル化の推進です。都民や事業者が直面している深刻な困難に向き合うものとなっていません。
今定例会には、都の行政手続きを原則デジタル化する条例改正も、提案されています。都民に直接かかわり、個人情報の取り扱いや漏洩の問題は国民的に心配される課題であるにもかかわらず、パブリックコメントも行われていません。また、障害者や高齢者で取り残される人がいないか、デジタル化できない手続きはどうするのかなども今後の検討とされています。大事な問題なのに、あまりにも拙速です。
この問題でも、「都民と決める」の公約に立ち戻ることを求めておきます。
コロナ禍で、失業者が増え、ひとり親の7割が、収入がなくなったり、減っています。都内では、各地に無料で食糧を配布するフードバンクなどの支援が広がり、そこに学生やベビーカーを押した親子が食料を受け取りに来る事態です。
都が、ポストコロナの社会に向けた方向性を示すというならば、この実態にこたえるような社会を目指すべきです。都民の命、健康、福祉、くらし、営業をどう守るのか示すことが求められています。
また、都立病院・公社病院の独立行政法人化をはじめとした自治体における新自由主義から脱却し、自己責任・経営効率優先の姿勢を改めるべきです。
新型コロナは収束していません。わが党は、閉会中審査を行えるよう特別委員会の設置を提案します。議会として責任を果たすために、すべての会派、議員のみなさんの賛同を呼びかけ、討論を終わります。