本会議 曽根はじめ都議(北区選出)の討論
2020年 第1回定例会 最終討論
曽根はじめ (日本共産党・北区選出)
日本共産党都議団を代表して、知事提出の第1号議案一般会計予算ほか22議案に反対、その他の知事提出議案に賛成し、議員提出の5議案に賛成の立場から討論を行います。
まず、2020年度予算案です。高齢者福祉や、貧困と格差対策など、きわめて不十分です。
知事は「長寿」を強調しながら、特別養護老人ホーム、介護老人保険施設、認知症グループホームなどの整備費等を軒並み減額しています。国民健康保険料・保険税の重い負担への新たな軽減策もありません。都営住宅の新規建設予算は、石原都政以来21年連続ゼロです。小中学校の35人学級の拡大も具体化されていません。
一方、住民が強く反対している外かく環状道路建設や特定整備路線などの大型道路建設を、引き続き進めています。新年度一般会計予算案は、都民が直面している困難に寄り添い、解決する予算になっていないため反対するものです。
わが党は、予算の1・7%を組み替えるだけで、国民健康保険料・保険税やシルバーパスの負担軽減、認可保育園や特別養護老人ホーム増設をはじめ、80項目におよぶ福祉・子育て・教育・防災などの都民要求実現ができることを示した予算組み替え提案を行いました。この方向こそ、都民の願いにこたえるものだと確信するものです。
小池知事は、2019年4月の保育園待機児童数について、「四半世紀ぶりの水準に達し、3690名まで減少した」と発言しました。しかし、国が2002年度に待機児童の定義を、待機児童の数が少なくなるように変えたため、四半世紀前といまの待機児童数は比較できません。
わが党の質疑で、昨年4月の待機児童を四半世紀前の定義で試算すると、約2万3千人にのぼり、減少どころか約6倍に増えていることが明らかになりました。にもかかわらず、都が来年度からの保育整備目標を引き下げようとしていることは重大です。しかも知事は、定義が変更されたことを承知していると答弁しました。意図的に都民をあざむく発言をしたことは許されません。いわゆる「隠れ待機児童」をふくめた待機児童をゼロにできる目標を設定し、質の高い認可保育園のいっそうの増設を求めるものです。
小池知事が進める3つの大問題についても、その重大さが浮き彫りになりました。
第一に、都立病院・公社病院の地方独立行政法人化です。東京都は、独法化により、迅速で柔軟な医療人材の確保や安定的な経営基盤の確立が可能となり、行政的医療の充実ができるとしています。
しかし、独法化して10年となる神奈川県立病院機構は、経営が「危機的な状況」に陥っているというわが党の指摘に対し、都は独法化しても経営が危機的になりうることを認めました。加えて、神奈川県立病院機構が経営改善のために行っている、職員の増員を原則認めないなどの措置についても否定しませんでした。
都の独法化方針案に対するパブリックコメントには、1511人もの都民が意見を寄せ、その多くが独法化に反対するものだという答弁もありました。ところがこれらの意見はいまだに公表されておらず、議会にも報告されていません。にもかかわらず、知事は3月中に、独法化の方針を決定すると明言しています。いま病院の現場は、新型コロナウイルス感染症とのたたかいのさ中です。こんな時に、独法化方針を決定することなど許されません。
そもそも、地方独立行政法人法は、定期的に業務の廃止や組織の廃止を含む見直しを行うことを定めており、独法化とは感染症医療、救急医療をはじめとした行政的医療を減らすものです。日本共産党都議団は、都立病院・公社病院の独法化を中止させるためにこれからも全力を尽くすものです。
第二に、羽田新飛行ルート問題です。
都心上空を旅客機が低空飛行し、都民の命、暮らしを危険にさらす羽田新飛行ルートは、地元のつよい反対にもかかわらず、小池知事が同意したことで、国が運用開始決定できたことが、わが党の質疑でうきぼりになりました。
知事は、着陸を急角度にすることで、騒音が軽減されることを同意理由のひとつにあげています。しかし、世界の航空会社の協会や、世界のパイロットの連合会は、騒音軽減にはならない上、事故の危険性が増大すると指摘しています。世界で最も危険な飛行ルートになると言われています。
しかも、国が実施した実機飛行で大きな騒音、大きな機影を体験した住民の不安と反対の声は、ますます大きくなっています。国はようやく実機飛行の結果を公表しましたが、国の最大騒音レベルの説明を上回った地点が2割にのぼります。ところが、上回った理由や原因は何も示していないうえ、夏にはさらに騒音が高くなる可能性もあるとしています。それにも関わらず、住民説明会はしないと明言しています。こんなやり方は許されません。
同時に、新型コロナウイルス感染症の影響により、国際線も国内線も大幅な減便と運休が相次いでいることが明らかになっています。3月29日から本格実施する必要性はありません。羽田新飛行ルートの中止を国に求めるべきです。
第三に、カジノ誘致の問題です。
わが党の質疑で、都職員がカジノ業者と接触した事実が明らかになりました。同時に知事は、ギャンブル依存症が、本人に「病気である認識が薄く、破産や家庭崩壊など深刻な状態になる」危険性を認めました。そもそもカジノは、ギャンブル依存症を生み出すことで儲けるビジネスです。誘致の調査・検討をきっぱりやめるべきです。
「都民が決める。都民と進める」は、知事の公約です。ところが、以上の3つの問題はいずれも都民不在で進められています。知事の重大な公約違反であることを、きびしく指摘しておきます。
わが党は、今定例会に4つの条例案を提出し、さらに五輪の文書保管条例は共同提案者になりました。この中で、子育て支援の二つのゼロ円条例について申し上げます。
まず、国民健康保険料・保険税の子どもの均等割をゼロ円にする条例案です。国保の均等割は、0歳の赤ちゃんもふくめ、すべての家族にかかり、子育て支援や子どもの貧困対策に逆行するものであり、全国知事会も国に改善を求めています。国に先駆けて、均等割の負担軽減を行うものです。
私立高校入学金助成条例案は、年収350万円未満世帯の生徒に入学金を無償とするものです。来年度予算案で私立高校の授業料無償化が年収910万円まで拡大されたことは、都民の運動とともにわが党が求めてきたことであり、大きな前進です。
同時に多くの県で実施している入学金への給付型助成がなく、低所得世帯にとって重い負担となっています。格差解消と教育を受ける権利の保障のために入学金への助成が必要です。
わが党提出の条例案へのご賛同を、心から呼びかけるものです。
最後に、新型コロナウイルス感染症は、都内の感染者が増え始め、いま重大な局面をむかえています。知事は一昨日、イベントや週末の外出等の自粛を要請しました。しかし、自粛にともなう事業者や労働者の損失補償について、具体策を何も示さなかったことは無責任です。
感染防止を実効あるものにするためには、苦境に陥っている事業者・個人に対し、命を守るための「感染防止対策」として、自粛・中止に対する緊急の直接支援を行い、国と連携して思い切った予算をつけることが必要です。
また、ウイルス検査をもっと多く、もっと早くできるようにする体制整備も不十分です。人工呼吸器の確保を含め医療体制の充実強化、マスクや消毒液の確保なども急務です。
大型の第二次補正予算の編成をはじめ、知事が責任をもって抜本的な対策強化を図ることを求めるものです。
延期が発表された東京オリパラ大会については、アスリートをはじめ、直接、間接の関係者に与える影響、被害を最小限にすることが必要です。また、東京だけが開催見直しに伴う追加費用を負担させられるのではという報道もあり、都民は懸念しています。懸案事項を公開しての議論を行い、都民が納得できる結論を得ることが必要です。
日本共産党都議団は、引き続き都民の命とくらしを守る立場から、全力で奮闘する決意を申し上げ、討論を終わります。