神宮外苑再開発をめぐる新たな事実について ―情報開示文書から明らかになったこと―
記者会見に臨む大山とも子(新宿区)、尾崎あや子(北多摩第一)、原田あきら(杉並区)、里吉ゆみ(世田谷区)、和泉なおみ(葛飾区)各都議(2022.4.26)
記者会見の動画はこちらから
本日は神宮外苑再開発をめぐる新たな事実についての記者会見におこしいただきありがとうございます。
本日は日本共産党都議団が行ってきた神宮外苑再開発にかかわる情報公開請求で重要な文書が複数開示されたことを受けて会見をさせていただきます。
お手元に、3点の資料をお配りしています。
報告1
〇樹木の伐採・移植に関わる詳細な図が明らかになった
最初にご報告したいのは、最初のページに「③東京都風致地区条例に基づく緑化基準」というタイトルがついた資料です。
実に昨日4月25日に開示された資料です。全部で12枚です。私たちもまだ十分分析できておりませんが、たいへん貴重な資料なので、本日、みなさんにお配りしました。この間、神宮外苑再開発計画で最大の批判を浴びてきた、1000本に及ぶ樹木の伐採・移植にかかわる詳細な資料です。
これまで樹木の伐採、移植に関する情報は、主には石川幹子教授の綿密な現地調査にもとづく告発に負うところが大きかったわけです。
今回は、一つ目に、事業者が作成した伐採移植にかかわる全体図の資料が出てきました。この資料には、どの樹木が残るのか、そして新しく植える樹木や芝生などの位置や面積などが、新ラグビー場や野球場、軟式野球城跡に建てられるテニスコートなど施設ごとに詳細に記されています。翻って、どれだけの樹木が伐採されるのか、わかるわけで、ここまで詳細な計画図が出てきたのは初めてのことです。
重大なのはまずこの資料の作成日です。2021年、去年7月となっております。同じ月に、環境影響評価書案が事業者から都に提出されていますが、そこにはこの資料は含まれていません。当然、環境影響評価審議会でも審議されていません。12月の住民説明会、さらには2月の都市計画審議会にも提出されていません。隠されていたわけです。この資料の公文書名は「神宮外苑地区再開発等促進区を定める地区計画企画提案書」となっています。まさにその地区計画を審議した都市計画審議会にこうした資料を提出していなかったことは重大問題であり、都市計画決定の前提が崩れていると指摘するものです。
もう一つ、東京都から開示された12枚の資料の最後のページの資料をご覧ください。これは、今年1月の新宿区の都市計画審議会に、石川先生の求めに応じて区が提出したのと同じ資料です。事業者が作成したもので、都が新宿区から入手したものです。どの樹木が伐採されるか、一目でわかります。
審議会委員である我が党の沢田あゆみ区議会議員が資料の公開を求めましたが、当初区は、事業者の了解無しに公開できないと言っていました。しかし、審議会に公式に出された資料なので、我が党区議団が予算特別委員会で資料要求をして、公式に出させています。しかしこちらも、都の都計審などにはこれまで一切提出されていません。
石川幹子教授が一月から自分の足で外苑をまわり、計画と樹木を見比べて一本一本調べあげたことで1000本の樹木の伐採移植は明るみとなりました。しかし、事業者はその数か月前にもこうした詳細な計画を作っていたわけです。今後、こうした資料の存在について都民の怒りの声が沸き起こるのは必至ではないでしょうか。そして東京都も、こうした資料を持っていながら、この間の党都議団の質疑にまともに答えてこなかったことは、決して許されるものではありません。
そのことを厳しく指摘し、まずはこの資料の報告をこれで終えます。
報告2
都が進めようとしている神宮外苑再開発計画は、1000本を超える樹木の伐採・移植への批判が広がり、大きな社会問題となっています。
この計画は、190m級超高層ビル2棟とホテル、商業施設建設が行われる都内屈指の巨大開発となり、歴史的景観の破壊や、風害、騒音被害などの地域住民への影響にも重大な懸念が寄せられています。
しかも、スポーツ拠点整備のための再開発だと言いながら、新国立競技場を陸上競技場として使用するために必要なサブトラックをなぜか設置しない不可解な計画となっており、軟式野球場など都民に親しまれているスポーツ施設が失われます。
日本共産党都議団は、これまでくり返し都議会でとりあげてきましたが、情報公開請求で3月28日に開示された3つの文書から、新たな事実が明らかになりました。
【資料1①】 2012年5月15日の文書「神宮外苑の再整備(案)」(黒塗りが外れた)
〇 当初の計画に超高層ビルや商業施設はなく、球場は銀杏並木から離れていた
資料1①の右側「オリンピック開催以降」の図は、2012年5月15日時点の再開発計画案です。今回はじめて開示されたものです。
この時すでに、ラグビー場と野球場の位置は入れ替わっており、現在計画されている超高層ビルや商業施設はなく、野球場は今の計画にくらべ、神宮外苑を象徴する景観を形成している銀杏並木から離れていたことが明らかになりました。
ちなみに、野球場の図の形状から、この時は屋根付きのドーム球場が想定されていたことがうかがえます。
〇 サブトラック計画がなくなった謎の一端が解けた
新国立競技場に必要な陸上用恒久サブトラックを整備する計画が、いつ、なぜなくなったのか今まで謎でしたが、予算特別委員会の質疑と資料1①の開示で、謎の一端が解けました。
今年3月9日の都議会予算特別委員会、日本共産党都議団・原田あきら都議の質問への答弁で、2012年5月頃には、「神宮第二球場の辺りでの整備を想定していた」こと、2014年7月には「まちづくりを進める上では、設置する空間余地がないことなどから、設置困難と整理した」ことが、はじめて明らかになりました。
資料1①は、この答弁を裏づけるものです。陸上用恒久サブトラックを描いた都作成の計画案が公表されたのは、これがはじめてです。今までは、すべて黒塗りでした。
【資料1②】2012年5月15日の文書「神宮外苑の再整備(案)」(黒塗りがあった)
〇 10年前に森元首相が「すばらしい」と絶賛した計画案の黒塗りがはずれた
実は資料1①は、今から10年前の2012年5月15日に、佐藤広副知事(当時)ら都の幹部職員が、森喜朗元首相に新宮外苑再開発の計画案を説明した時、森氏に示したものです。これを見た森氏は、「佐藤さん、すばらしい案じゃないか」「あと15年は長生きしないと」と大喜びした記録が、わが党の情報公開請求ですでに明らかになっています。
ところが、この時、森氏に示した計画案の情報公開請求に対し、都が2018年に開示したのは計画区域が全面黒塗りの資料1②でした。
日本共産党都議団は、10年前に森喜朗氏に見せた資料を、なぜ都民に見せられないのかと厳しく追及し、黒塗りをはずして公開するよう、くり返し求めてきました。そして今回はじめて、黒塗りをはずして開示されたのです。
【資料2】 2014年7月10日の文書「神宮外苑地区に恒久サブトラック設置が困難な理由」
〇 銀杏並木の景観より、超高層ビルや商業施設が優先された
2012年5月に森氏に説明した計画案は、2014年7月に変更されます。それが資料2です。
ここではじめて、「事務所ビル等」という現在の超高層ビルや商業施設のもとになる計画が登場します。そしてこの超高層ビルや商業施設が計画に入ったことによって、野球場が銀杏並木ぎりぎりの位置に変更され、銀杏並木の景観より、超高層ビルや商業施設が優先されたことが明らかになりました。
超高層ビルや商業施設によって、銀杏並木の景観が脅かされる結果になったのです。この時なぜ、「事務所ビル等」が突然、計画に入ってきたのか、今後、解明が求められます。
〇 サブトラック整備計画も、超高層ビルや商業施設のためになくなった
資料2では、恒久サブトラックがなくなっています。先ほど紹介した予算特別委員会での原田都議への答弁のとおり、超高層ビルや商業施設をつくる「まちづくり」のために、新国立競技場に必要な恒久サブトラックを設置する「空間余地」がなくなってしまったのです。
ここでもやはり、恒久サブトラックより、超高層ビルや商業施設が優先されました。
〇 「森会長(元首相)」の意向重視が改めて浮き彫りに
資料2の左側の図のタイトルが、「平成24年5月に森会長へ説明した再整備のイメージ」となっており、それに対比するかたちで右側の図が示されています。神宮外苑再開発計画が、いかに森氏の意向重視で進められてきたのかが、改めて浮き彫りになりました。
当時、都の神宮外苑再開発計画は、都民にも都議会にも、何ひとつ説明されていませんでした。その中で東京都が、森氏に2012年5月に説明した案を、2014年7月の新案の重要な基準とし、そのことを都の公文書に公然と書いているのは、驚くべきことです。
3月9日のわが党の予算特別委員会の質疑で、森氏といつからどれくらい会っていたのかという質問に対し、都は2012年5月15日と7月3日について記録があると答弁していますが、2014年7月の計画変更についても、森氏に面会・説明した可能性があります。
また、ラグビー場が屋根付きに変更された経緯にも、森氏が深く関与していた疑いがあります。
【資料3】 2015年3月13日の文書「神宮外苑地区の再整備イメージと実現手法」
〇 軟式野球場(絵画館前)がはじめて「非開示」に
資料3は、2015年3月13日、当時の舛添知事に対する説明資料の一部です。
わが党が情報公開請求により入手した資料の中では、この文書ではじめて軟式野球場のところ(絵画館前)が非開示となっています。
現在の計画では、都民に親しまれている軟式野球場が廃止されて、会員制テニスコートが設置されます。また、その結果、樹齢100年を超える多くの樹木が伐採されることになりました。
一方、資料2でラグビー場と野球場の間に登場した「スポーツ関連施設」は引き継がれ、(テニスコート 室内練習場等)と記入されています。2015年3月時点ではまだ、この場所にテニスコートなどを整備する計画であったことが推察されます。
「スポーツ関連施設」の場所は、現計画では2つの「広場」に変更されています。三井不動産と伊藤忠の2棟の超高層ビルを建てるための容積率を確保するために、「広場」に変更しなければならなかったのではないかと思われます。今後、解明が求められる課題のひとつです。
以上見てきたように、今回の情報開示を通じて、神宮外苑再開発計画がスポーツ拠点整備とは名ばかりで、東京都が主導し、森元首相が一貫して深く関与して、開発事業者の三井不動産や土地所有者の明治神宮に利益をもたらす方向に変更されてきたこと、その結果として、樹木の伐採、歴史的景観の破壊をはじめ大きな矛盾に直面していることが、明らかになりました。
最後に―東京都の情報公開のあり方にも重大な問題点がある
今回の情報公開請求を行ったのは1月24日です。3月前半の予算特別委員会や、3月中盤の都市整備委員会などに向けた準備として行いました。ところが2カ月も延長され、開示されたのは3月28日、予算議会(第1回定例会)の閉会後でした。
東京都の情報公開条例では、開示・非開示の決定は請求があってから2週間以内というのが原則です。最大2カ月延長できますが、恣意的にこれを運用してはならないのは言うまでもありません。
議会での答弁を、開示する内容と矛盾しないように調整している疑いもあります。たとえば、前述した、恒久サブトラック整備計画がなくなった時期を答弁したのは、閉会後に開示する文書を矛盾が生じないようにするためではなかったかと思われます。
あるいは、予算特別委員会で恒久サブトラック整備計画がなくなった時期の質問をしなければ、今までどおりサブトラックを描いた図面は黒塗りのまま(または白塗り)だったかもしれません。
また、今回開示された文書にも多くの黒塗り・白塗りが残されています。「情報公開は都政改革の一丁目一番地」という小池知事の公約は、守られていません。
日本共産党都議団は引き続き、神宮外苑再開発をめぐるブラックボックスの解明に全力をつくすとともに、樹木伐採中止、計画の中止・抜本的な見直しを東京都につよく求めていきます。
以上