文書質問 生活保護の運用について・他 斉藤まりこ都議(足立区選出)
2022年第1回定例会で、以下の文書質問を提出しました。
令和4年第一回都議会定例会
文書質問趣意書
提出者 斉藤まりこ
質問事項
一 生活保護の運用について
二 女性職員の登用について
三 痴漢・盗撮対策について
一 生活保護の運用について
長引くコロナ禍で、都民の暮らしは厳しさを増しています。都内の食料支援などの現場では昨年よりも多くの利用者が並び、生活や医療に関する相談も増えています。私自身も多くの生活相談を受けてきましたが、そのなかで、生活保護の申請を嫌がる方は少なくありません。一度、受けたことがある方々からは、プライバシーが守られない施設での生活に戻りたくない、また、生活の細かいことまでチェックされることが苦痛だという声もありました。受けたことがない方でも、窓口の対応で傷ついたという方や、扶養照会を絶対にしてほしくない、という方もいました。
1 都は生活保護を受けることは国民の権利であることを認め、都のホームページにも掲載しています。この認識を踏まえれば、生活保護を必要とする方々が行政の対応で傷つけられることがあってはならないと思いますが、いかがですか。
2 杉並区で昨年7月に、生活保護の申請をした50代の男性が扶養照会をしないように求める書面を出そうとしたにもかかわらず、区が書面の受け取りを拒否し、扶養照会を強行したということが明らかになっています。書面を受け取ってもらえず、申請の対応をしてもらえなかった男性は、やむなく書面の提出を取り下げましたが、その後も口頭で扶養照会をしてほしくないことを伝えていました。この男性の両親は80代で持病を抱えており、きょうだいからも援助の見込みはなく、心配をかけたくないという思いから、扶養照会をしてほしくないと訴えていました。しかし、扶養照会は強行され、両親のもとに照会の郵便が届けられ、両親は白紙のまま通知を福祉事務所に返したということです。
都は2月4日に通知「生活保護に係る扶養能力調査における留意事項について」を各福祉事務所宛てに発出し、「要保護者が扶養照会を拒否する場合は、理由を確認し、照会を一旦保留」することを通知しています。扶養照会を拒否する本人の意思を受け止めず、書面の提出をあきらめなければ申請に応じないとした杉並区のような対応は、都の通知の内容に反するものだと思いますが、いかがですか。
コロナの感染拡大の第5波と第6波のなかで、住まいを失い、所持金もない方々が発熱や症状を発したときに、医療機関で診察をしてもらえなかったり、陽性とわかっても、入院や宿泊施設に入ることができずに適切な場所で療養できないというケースが相次いでいます。予算特別委員会において、わが党のとや英津子都議の質問に、都は「住まいを失った方についても、医療機関や保健所等と連携を図り、医療や療養につなげることが必要である」という認識を示したことは重要です。
3 2月には、住まいを失った71歳の方が陽性とわかっても、近くの病院には空きがなく、都の宿泊療養施設にも断られ、行き場を失いました。都の宿泊療養施設や感染拡大時宿泊療養施設は65歳までとされ、高齢でリスクの高い人ほど、ひっ迫する状況の中では放置されてしまう状態です。誰もが適切な治療や療養ができるように、高齢で住宅を喪失した方が陽性となった場合に保護できる施設を確保する必要がありますが、いかがですか。
4 所持金や保険証のない方々が発熱したり、症状を有する場合の医療機関での受診について、都は予算特別委員会において、「新型コロナウイルス感染症を含め、急病等により緊急的に診療を受けた場合には、その時点で生活保護を受給していなくても、福祉事務所の判断により、医療扶助を遡及して適用することが可能」と答弁しました。新型コロナウイルス感染症で実際に適用された事例は都内でいくつありますか。
5 その運用が発熱外来でも実際に適用されるよう、医療機関と福祉事務所に通知、徹底することが必要ですが、いかがですか。
二 女性職員の登用について
1 女性の職員を増やし、登用していくことは、東京都のジェンダー平等に資する政策立案、政策実行においても重要な力になります。予算特別委員会の資料によると、2021年度における都の行政系職員の新規採用者の男女比率は、男性54.0%、女性46.0%となっています。都の行政系職員全体の男女の比率は現在どうなっていますか。
2 都職員の平均勤続年数を男女別に示してください。
3 会計年度任用職員の男女別の人数を示してください。
4 都の行政系職員のうち、課長代理級の女性比率は33.3%、課長級以上の管理職になると20.2%になります。課長級以上となると女性比率が減る要因について、都の認識を伺います。
5 都の管理職、幹部職員での女性の比率を上げるため、どのような取り組み、施策を行っているのか伺います。
三 痴漢・盗撮対策について
わが党は痴漢・盗撮の被害の実態を明らかにし、とくに被害が多い駅や鉄道での対策の強化が待ったなしだと求めてきました。対策の充実のためにも女性の視点が欠かせません。
1 ところが、交通局の女性職員の割合は駅係員や運転手などの運輸系職員を含めて今年度3.6%で、過去5年間ずっと3%台と、極めて低い状況です。交通局の行政系の女性職員の割合はいくつか事務系と技術系の内訳とともに伺います。
2 交通局において、行政系の女性職員を増やしていくことの重要性について、どのように認識していますか。また、抜本的に増やしていくべきですが、いかがですか。
3 都は都営地下鉄での女性専用車両の導入拡大について検討するとしています。今年の5月から6両から8両編成になる三田線については、相互乗り入れする鉄道事業者と早期に調整を行い、導入を進めるべきですが、いかがですか。
4 相互乗り入れのない大江戸線については早急に導入するべきですが、いかがですか。
5 女性専用車両の導入にあたっては子どもや学生、女性の声をよく聞いて、取り組みを進めることが重要です。わが党の調査では、朝のラッシュ時間帯だけでなく、日中や夜間にも痴漢行為があるという声が寄せられ、夜間をはじめ終日の導入を求める声が女性専用車両に関する要望の中で一番多くありました。都として、女性専用車両の導入にあたって、都営地下鉄における痴漢・盗撮の被害の実態や加害や被害をなくすための要望を調査する必要があると考えますが、いかがですか。
令和4年第一回都議会定例会
斉藤まりこ議員の文書質問に対する答弁書
質問事項
一 生活保護の運用について
1 都は生活保護を受けることは国民の権利であることを認め、都のホームページにも掲載している。この認識を踏まえれば、生活保護を必要とする方々が行政の対応で傷つけられることがあってはならないが、見解を伺う。
回答
都は、福祉事務所に対し、「生活保護は申請に基づき開始することを原則としており、保護の相談に当たっては、相談者の申請権を侵害しないことはもとより、申請権を侵害していると疑われるような行為も厳に慎むこと。」との国の通知を周知しています。
質問事項
一の2 杉並区で昨年7月に、生活保護の申請をした50代の男性が扶養照会をしないように求める書面を出そうとしたが、区が書面の受取を拒否し、扶養照会を強行したということが明らかになった。都は2月4日に通知「生活保護に係る扶養能力調査における留意事項について」を各福祉事務所宛てに発出し、「要保護者が扶養照会を拒否する場合は、理由を確認し、照会を一旦保留」することを通知している。扶養照会を拒否する本人の意思を受け止めず、書面の提出をあきらめなければ申請に応じないとした杉並区の対応は、都の通知内容に反するものだが、見解を伺う。
回答
要保護者が書面や口頭等の形式にかかわらず扶養照会を拒否する意向を示した場合は、理由を確認した上で照会を一旦保留し、照会が必要となる際は理解を得るよう努める旨を、都は福祉事務所に通知しており、この通知等に基づき福祉事務所において適切に対応されるべきものと認識しています。
質問事項
一の3 都の宿泊療養施設や感染拡大時宿泊療養施設は65歳までとされ、高齢でリスクの高い人ほど、ひっ迫する状況の中では放置されてしまう状態である。誰もが適切な治療や療養ができるように、高齢で住宅を喪失した方が陽性となった場合に保護できる施設を確保するべきだが、見解を伺う。
回答
住まいを失った方が陽性になった場合、医療や療養につなぐ必要があることから、都は、福祉事務所において、個々の状況に応じて医療機関や保健所等と連携を図り、適切に対応するよう周知しています。
質問事項
一の4 所持金や保険証のない方々が発熱したり、症状を有する場合の医療機関での受診について、都は予算特別委員会において、「新型コロナウイルス感染症を含め、急病等により緊急的に診療を受けた場合には、その時点で生活保護を受給していなくても、福祉事務所の判断により、医療扶助を遡及して適用することが可能」と答弁したが、新型コロナウイルス感染症で実際に適用された事例は都内でいくつあるか伺う。
回答
医療扶助は、都内で令和2年度に月平均約20万世帯に適用されていますが、遡及適用した件数について、福祉事務所から都に報告の義務はありません。
質問事項
一の5 上記の運用が、発熱外来でも実際に適用されるよう、医療機関と福祉事務所に通知・徹底するべきだが、見解を伺う。
回答
生活保護においては、新型コロナウイルス感染症を含め、急病等により緊急的に診療を受けた場合、その時点で生活保護を受給していなくても、福祉事務所の判断により医療扶助を遡及して適用することが可能であり、福祉事務所が、個々の状況に応じて医療機関や保健所等と連携を図り、適切に対応すべきものと認識しています。
質問事項
二 女性職員の登用について
1 女性の職員を増やし、登用していくことは、都のジェンダー平等に資する政策立案、政策実行においても重要な力になる。予算特別委員会の資料によると、2021年度における都の行政系職員の新規採用者の男女比率は、男性54.0%、女性46.0%となっているが、現在の都の行政系職員全体の男女の比率について伺う。
回答
令和3年4月1日現在、行政系職員に占める男性職員の割合は59.9パーセント、女性職員の割合は40.1パーセントです。
質問事項
二の2 都職員の平均勤続年数を男女別に伺う。
回答
令和3年4月1日現在、警視庁及び東京消防庁を除き在職中の行政系職員の平均勤続年数は、男性職員が17.5年、女性職員が15.8年です。
質問事項
二の3 会計年度任用職員の男女別の人数を伺う。
回答
令和3年8月1日現在、知事部局における会計年度任用職員は9,894名であり、このうち、5,470名が女性です。
質問事項
二の4 都の行政系職員のうち、課長代理級の女性比率は33.3%、課長級以上の管理職になると20.2%になる。課長級以上となると女性比率が減る要因について、認識を伺う。
回答
女性職員が管理職選考への申込みをためらう理由として、家庭との両立等の不安や、現在の仕事の継続を希望する声が挙げられており、こうした個々の事情等によるものと認識しています。
質問事項
二の5 都の管理職、幹部職員での女性の比率を上げるため、どのような取組、施策を行っているのか伺う。
回答
行政系管理職に占める女性割合の引上げに向けては、職員個々の事情へのきめ細かな対応が必要であるため、都では、SNS等で先輩管理職等に相談できるキャリア・メンター制度を、令和2年度、全庁へ展開しました。こうした取組により、今後も女性職員の活躍推進に努めていくこととしています。
質問事項
三 痴漢、盗撮対策について
1 痴漢・盗撮対策の充実のためにも女性の視点が欠かせないが、交通局の女性職員の割合は運輸系職員を含めて今年度3.6%で、過去5年間ずっと3%台と、極めて低い状況である。交通局の行政系の女性職員の割合はいくつか事務系と技術系の内訳とともに伺う。
回答
令和3年4月1日時点における交通局の行政系女性職員の割合は14.0パーセントであり、事務系は29.1パーセント、一般技術系は4.7パーセントです。
質問事項
三の2 交通局において、行政系の女性職員を増やしていくことの重要性について、どのように認識しているか。また、抜本的に増やしていくべきだが、見解を伺う。
回答
交通局では、行政系、運輸系に関わらず、女性職員の活躍推進は重要と考えており、女性専用のシャワー室や仮泊室等の設置など、女性職員が働きやすい職場環境の整備を進めています。
行政系職員の採用については都全体で行われていますが、交通局においても配属希望者が増えるよう職場の魅力をアピールするなど、総務局とも連携し、女性活躍の更なる推進に努めていきます。
質問事項
三の3 都は都営地下鉄での女性専用車両の導入拡大について検討するとしている。今年の5月から6両から8両編成になる三田線については、相互乗り入れする鉄道事業者と早期に調整を行ない、導入を進めるべきだが、見解を伺う。
回答
交通局では、お客様により安心して御利用いただけるよう、平成17年から新宿線で朝のラッシュ時間帯に女性専用車両を導入しています。
他の路線については、相互直通運転を行っている事業者で対応が異なっていることや、導入により他の車両が混雑する等の課題があります。
一方、経営計画2022では、都営地下鉄の乗客数はコロナ禍前と比べて15パーセント程度の減少が続き、旅客動向の変化が生じるものと見込んでおり、女性専用車両の導入拡大に伴う他の車両への影響は、比較的小さくなると想定されます。
女性専用車両の導入拡大に向けて、まずは利用者の規模が最も大きく、痴漢通報件数も相対的に多い大江戸線を対象に、朝ラッシュ時間帯の詳細な利用実態や新宿線への導入で得られた知見・ノウハウ等を踏まえながら検討を進めていきます。
質問事項
三の4 相互乗り入れのない大江戸線については、女性専用車両を早急に導入するべきだが、見解を伺う。
回答
女性専用車両の導入拡大に向けて、まずは利用者の規模が最も大きく、痴漢通報件数も相対的に多い大江戸線を対象に、朝ラッシュ時間帯の詳細な利用実態や新宿線への導入で得られた知見・ノウハウ等を踏まえながら検討を進めていきます。
質問事項
三の5 女性専用車両の導入にあたっては子どもや学生、女性の声をよく聞いて、取組を進めることが重要である。女性専用車両の導入にあたって、都営地下鉄における痴漢・盗撮の被害の実態や加害や被害をなくすための要望を調査するべきだが、見解を伺う。
回答
都営地下鉄では、痴漢撲滅キャンペーンなどを通じて、痴漢被害に遭われたお客様や周囲のお客様に対し、痴漢被害に遭ったことを駅係員などにお知らせいただきたい旨の呼びかけを行っており、お客様からの申出を受け警察へ通報した場合は、速やかに本局に情報を集約しています。
また、痴漢被害等に係る情報がお客様センターに寄せられた際には、発生場所や時間等を関係する駅に通知し、朝の点呼等において、係員一人一人に共有するなど、日頃から、業務を通じた痴漢等発生状況の把握に努めています。