環境建設委員会 神宮外苑のいちょう並木の確実な保全に関する陳情の審議 原純子都議(江戸川区選出)
*速記録より作成
イチョウ並木の確実な保全は事業者と共に都の責務
〇原委員
原純子です。よろしくお願いします。
神宮外苑のイチョウ並木は、都民のみならず、国民の財産であることに思いを寄せ、陳情者はイチョウ並木の確実な保全策を都と事業者に求めています。
神宮外苑地区市街地再開発計画における三井不動産などの事業主体に課せられている課題でもあると思いますが、東京都の姿勢も問われると考えます。
神宮外苑のイチョウ並木の価値について、環境局はどのように捉えていますか。
〇藤本政策調整担当部長
本年五月に都から事業者に対して、イチョウ並木の保全について万全を期すよう要請をしております。
審議会の答申を踏まえた審査意見書では、工事中の施工及び完了後の一定期間にわたりイチョウ並木のモニタリングを実施し、状況に応じた環境保全のための措置を継続することで、将来にわたりイチョウ並木を健全に育成することなどと指摘をしております。
〇原委員
イチョウ並木の保全について万全を期すよう要請をしているということです。
ありがとうございます。
知事の意見書に異例の文言
環境影響評価審議会は、本年二月十八日より八月十六日まで六回の部会が行われました。都は、その間の五月二十六日、小池都知事名において、既存樹木については複数の樹木医の意見を聞きながら、樹木の状態などを詳細に調査、公表し、設計の工夫などにより極力保存、または移植するなど、一本一本を大切に扱い、神宮外苑の豊かな自然環境の質の保全に努めることとの要請を事業者に対し行いました。
そして、八月十八日に審議会総会が開催され、その答申を受け、環境影響評価書案審査意見書が知事名で出されました。
この審査意見書の1、総括的事項の中には、豊かな自然環境やイチョウ並木のビスタ景などを有する神宮外苑の重要性が記され、本事業については、都民から、樹木伐採への反対意見をはじめ、先人から継承された環境を失うことへの懸念や事業計画の十分な周知、公開を求める意見など、多くの懸念が表明されている。さらに、審議会においても、評価書案に記載された内容に対する根拠の不明瞭さや、都民と事業者との相互不信への懸念が指摘されたとの記載があります。
そして、それに続く文ですが、審議会としても今後の事業者の環境保全措置に継続的に関与することで、寄与していくと記されております。
こうした今後の関与についての一文が、審議会総会後の知事意見に盛り込まれたのは異例のことでしょうか。
〇藤本政策調整担当部長
答申にご指摘の文言が盛り込まれたのは、過去において例がないことでありますが、条例に基づくものであると認識をしております。
〇原委員
異例のことなんですね。
事業者は樹木の詳細データを提出していなかった
知事意見では、その後の具体的な配慮事項のページに既存樹木の、健全度や移植の可能性に関する詳細調査結果をデータと併せて説明し、その結果を反映して、既存樹木への影響を回避、最小化するための考えを示し、残置、移植、伐採等変化の程度について予測、評価を見直すというふうにあります。
本来提出されるべき樹木の詳細データが出されていないので、出して説明をするように、また、その結果を反映させて予測や評価を見直すようにとのことです。要するに、審議するときに最低必要なデータが出ていないままですよと。これから出してくださいねと。そういう指摘ですね。
イチョウ並木に直接触れている指摘部分もあります。イチョウ並木の根系調査を行うこと。調査結果を踏まえ、特に、イチョウの健全な生育へ影響を与えるような根が複数確認された場合は、根を避けるため野球場棟の該当箇所の壁面後退等施設計画の工夫を行うこと。将来にわたりイチョウ並木を健全に育成することとあります。
詳細調査データを提出することと、その調査結果によっては計画の変更も避けられないとの指摘です。これは大変重要なことだと思います。
そして、環境アセスで出されていない樹木調査、毎木調査のデータの提示について、しびれを切らした日本イコモスが十月三日、事業者に要請したのに対し、十二月二十八日、ようやく事業者が最新のデータとして、毎木調査の結果を公表いたしました。
日本イコモスは、世界文化遺産の保護、保存、そして、価値の高揚のための重要な役割を果たす権威ある国際機関イコモスの国内委員会です。樹木ごとの個別データについて、審議委員や日本イコモスに問題を指摘され、八月の審議会答申の後、二か月たってようやく公開したわけです。
こうした事業者の姿勢には問題があると思いませんか。
〇藤本政策調整担当部長
審議会において、評価書案に記載された内容に対する根拠の不明瞭さなどが指摘をされておりました。こうしたこともあり、事業者は、二〇二二年四月から五月に詳細調査を実施し、伐採から移植可に見直した本数について、八月の審議会で事業者は説明をしております。
詳細調査の樹木ごとの個別データが提出されなかったため、審査意見書で指摘をしたところでございます。
〇原委員
そうなんです。個別データを出さないで、最初、伐採本数について、評価書案では九百七十一本としていたのを見直して、五百五十六本に減らしましたといわれても、個別データがないのに信用してくれという方が無理筋ですよね。
事業者はイチョウの枯損の実態を正確につかめていない
今日は、陳情者が求めている四列のイチョウ並木の部分についてのみ言及します。
十月二十八日に事業者が公表した毎木調査結果では、四列イチョウ並木について、健全度A、B、C、Dの評価を出しています。その内訳を伺います。
〇藤本政策調整担当部長
四列イチョウ並木については、百二十八本のうち、活力度Aが百二十四本、活力度Bが四本となっております。
〇原委員
今の説明は、途中から秩父宮ラグビー場へ向かう、いわゆる兄弟木十八本は除 いて、百二十八本という本数かと思います。うち百二十四本がA評価、残りの四本がB評価、事業者の調査では、四列のイチョウはほぼ健全との結果です。
ところが、十一月十日、日本イコモスの石川幹子中央大学研究開発機構教授が、独自に行った調査結果を公表しました。これは、本年十月二十九日から十一月六日にかけて、イチョウ並木百四十六本の一本一本を目視により、幹や大きな枝の欠損状況、また腐朽状況、また、緑量、葉の色、葉の大きさ、葉の密度、先端部の状況、課題などについて調査をしたものだそうです。
調査結果から、百四十六本中六本に枯損の兆候があることをつかみました。うち一本は先端が枯れ、評価でいうとD評価です。
石川教授が枯損を指摘した六本について、事業者はどうだったかというと、全てA評価にしていたそうです。そして、事業者のデータは、四年前の二〇一八年十二月から二〇一九年の調査データだったことが明らかになりました。
イチョウ並木の将来にわたる保全は、都も事業者も表明していますが、現在の樹木状態を事業者は正確につかめていないわけです。枯れかかっているイチョウが六本というのは衝撃です。
樹木の現状を正確につかまなければ、今後の再開発工事で膨大な土が掘り返され、巨大建物が建てられる。ものすごい負荷がかかり、本当に枯れてしまう可能性だってあるわけで、それを回避するための検討がどうしても現段階で必要であるのに、その基になるイチョウの木の現状の正確なデータが事業者から示されていないことは重大ではありませんか。認識についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
〇藤本政策調整担当部長
本年五月に都から事業者に対して、イチョウ並木の保全について万全を期すよう要請しておりまして、本年八月には、事業者から保全をするとの回答を得ております。
再開発事業を実施する事業者が適切に対応すべきことと認識をしております。
都は事業者に誠実な対応を求め、再度審議会を開くべき
〇原委員
イチョウ並木をはじめとした本計画区域の樹木の現状調査を都として行うこと、再開発計画により想定されるイチョウ並木への影響についての厳重な調査、検証が必要だと考えますが、いかがでしょうか。
〇藤本政策調整担当部長
環境局の所管する環境アセスメントとは、条例に基づく制度でありまして、事業者が大規模な開発等を実施する際に、あらかじめ事業者が環境に与える影響を事業者自らが予測及び評価し、専門家が審議会でその内容を審議することなどにより、環境への影響をできるだけ少なくするための制度でございます。
〇原委員
環境アセスというのは事業者がやることであって、都がやるべきことではないというふうな説明だったというふうに思います。
先ほど確認したとおり、都は異例にも、審議会の答申を受けた知事の意見書に、審議会としても今後の事業者の環境保全措置に継続的に関与することで寄与していくと明記をしたわけです。
そして、第三回定例会で我が党の代表質問でも明らかにしたとおり、今後、審議会は、事業者の提出する評価書に改めて厳しい目を向ける機会を持つことになります。事業者は当然、この評価書に、今回新たに明らかになった六本のイチョウの枯損の兆候についても、正しい現状認識と対策をきちんと盛り込む必要があります。
事業者に意見を示した東京都として、少なくともこの点について、改めて事業者に誠実な対応を求めるべきではないでしょうか。この点についてもお伺いをいたします。
〇藤本政策調整担当部長
先ほども答弁申し上げましたが、再開発事業を実施する事業者が適切に対応すべきことと認識をしております。
〇原委員
八月十八日の審議会総会の議事録を見ますと、審議会答申、知事意見を受けて、事業者が今後行う事後調査の資料、報告内容について審議検討が可能かについて議論をされています。
柳会長は、条例上九十条の報告の聴取等から、知事は、この条例に定めるもののほか、この条例の施行に必要な限度において、事業者に必要な事項の報告、または資料の提出を求めることができるという条文を引用し、アセスの手続の中でも活用できることを確認しています。
あまり例がないけれども、評価書が出る前に、その内容について審議会で確認することができるということです。それが、今後の継続的な関与という答申にまとめられています。
新たな調査結果によっては、野球場棟の該当箇所の壁面後退等、施設計画の変更の可能性もあるわけですから、再度審議会を開催することを強く求めておきます。
イチョウ並木の名勝指定へ積極的なとりくみを
陳情者も述べていますが、イチョウ並木は国民共有の財産です。このイチョウ並木は、日本の近代造園の師、折下吉延氏により、九メートル間隔での遠近法の手法を用いて育成が始まり、一九二三年に完成、来年で百年、今のような、いわゆるビスタ景と呼ばれる壮観なイチョウ並木の景観は、百年前に計算の上、植えられ、専門家や多くの人々の手で大切に育てられた結晶なのです。
寿命は三百年はあるそうです。イチョウ並木を将来へ受け渡すための保全、継承は、私たちの代の使命です。
日本イコモスが十月三日に出した提言では、名勝の指定についての記述がありました。名勝とは、文化財保護法第二条第一項第四号に規定された記念物、遺跡、名勝地、動物、植物、地質鉱物のうち、第百九条第一項の規定に基づき指定される文化財であり、芸術上または鑑賞上価値が高いものとされています。
二〇一二年六月、文化庁が行った全国調査、近代の庭園・公園等に関する調査研究報告書では、名勝指定または登録記念物の候補となり得る重要事例に、神宮外苑のイチョウ並木が、今後、特に保護措置を充実させる必要性が高いと認められるものとして挙げられています。
さらなる価値評価及び保護に向けた調査の実施を積極的に行い、そのような調査の結果に基づき、国または地方公共団体による指定、登録の作業を速やかに進めることが必要であるとされていることは、極めて重要と考えますが、このことを環境局はご存じでしようか。併せて環境局としての受け止めをお聞きいたします。
〇藤本政策調整担当部長
ご指摘の調査内容については認識をしております。
環境アセスでは、既に指定されている史跡や文化財の調査を行っており、文化財への新たな指定につきましては、環境アセスメント制度とは切り離して検討すべきものと認識をしております。
〇原委員
要するに、アセス時点で既に文化財指定されているものは、文化財保護法に基 づいて対処すると。それとは別に、文化庁の調査は承知しているが、今後の新たな指定に関しては、アセスとは切り離して検討されるべきとの答弁だったと思います。
所管局ではないかもしれませんが、文化庁の報告書で、今後、特に保護措置を充実させる必要が高い名勝指定候補として、神宮外苑のイチョウ並木が挙げられていることや、地方自治体は指定登録に向けて調査の実施を積極的に行うことが必要と書かれたことについて、東京都環境局としてどう受け止めるのか、もう少しお聞きしたかったなと思います。
都として、東京都の魅力を高めるためにも、名勝指定について積極的に取り組むことが必要です。環境局からも、所管局に積極的な後押しをお願いするものです。
都は、イチョウ並木を将来にわたり保全していくために、どのように尽くされるのか、最後に一問お伺いいたします
〇藤本政策調整担当部長
審議会の答申を踏まえた審査意見書では、工事の施工中及び完了後の一定期間にわたり、イチョウ並木のモニタリングを実施し、状況に応じた環境保全のための措置を継続することで、将来にわたりイチョウ並木を健全に育成することと指摘しています。
事業者は、審査意見書を踏まえて適切に対応することと認識しています。今後は、必要に応じて事業者が審議会に出席し、進捗状況を説明することになると認識をしています。
〇原委員
ありがとうございます。東京都が名勝指定の取組を本気で取り組むことで、事業者に保全策を求めるだけではなく、イチョウ並木を守る主体的な活動ができるというふうに思います。ぜひ検討していただけるよう求めておきます。
陳情者が求めているように、都は、事業者に対し、厳重な調査、検証の上、実効性のある保全策を講じるよう、継続して関与していくべきだと。この姿勢は、本当に東京都に問われていると思います。
イチョウ並木の保全の確実な担保のために力を尽くすこと。都は、事業者に対し、実効性のある保全策を講じるよう関与することを求める陳情の趣旨に全面的に賛同し、採択すべきものと意見を表明し、質問を終わります。ありがとうございました。