「2023年度東京都予算案」について(談話)
「2023年度東京都予算案」について(談話)
2023年1月27日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 和泉なおみ
誰に寄り添う予算案か
本日発表された「2023年度東京都予算案」で、子ども・子育て支援が拡充されたことは重要です。しかしその目的は、「国力」の「先細り」につながる少子化を防ぎ、経済成長を維持するためとされており、子どもの権利、豊かな成長・発達の保障を正面に据えたものではありません。
教育施策も、経済界の求めに応じる「人材育成」「グローバル人材の育成」が重視され、中小企業分野は、急成長などが見込まれる一部の企業への支援に偏重しています。また、高齢者福祉は減額されています。
これらは岸田政権の政策と軌を一にするものです。都民の声と運動、日本共産党都議団の提案と論戦で動かした成果もふくまれていますが、予算案の全体は都民に寄り添うものとなっていません。
軍事的緊張をあおるのでなく、平和を守り抜く積極的努力こそ求められているのに、東京がミサイル攻撃を受けることを前提にしたシェルター整備の調査費用が計上されたのも、敵基地攻撃能力など大軍拡を進める岸田政権に加担するものです。
過去最高の都税収入・予算規模にふさわしい、暮らしと営業を守りぬく予算案になっていない
予算案は、都税収入が、過去最高だった今年度予算よりさらに5,700億円も増え、予算規模も過去最高となっています。ひと握りの大手企業や富裕層がますます豊かになる一方で、物価高騰やコロナ禍で苦しむ人に必要な支援が行き届いていません。
スウェーデンの国家予算を超える、東京都の巨大な財政力を、住民福祉の増進を基本的責務とする地方自治体として、すべての都民の暮らしと営業を守りぬき、格差と貧困を是正するために使うことを、日本共産党都議団はつよく求めるものです。
小池知事が編成した予算案には、岸田政権が進める大増税、負担増、年金削減から、都民を守る防波堤となる姿勢が見られません。暮らしの基盤である住まいの支援が大事な時に、住宅対策予算は減らされ、都営住宅の新規建設は石原都政以来24年間連続ゼロがつづいています。介護保険や、負担増がつづく高齢者医療費、大幅値上げが予測される国民健康保険料(税)の都としての新たな軽減策もありません。障害者への現金給付の福祉手当の額は27年間、1円も上がっていません。
コロナ対策は、5類へ移行させようとしている国の「様子見」で、基本的に予算案に入っていません。都は、今後の補正予算等で対応するとしています。5類への見直しは中止し、検査、ワクチン、医療提供体制をはじめとした公費負担などを継続・拡充することが必要です。
巨大な財政力は何に使われているのか
予算案では、国際金融都市の実現・外国企業誘致をはじめとした「世界を牽引する都市の実現」に4,800億円を超える大きな予算が組まれています。多くの住民に犠牲を強いる外環道をはじめとした大型道路建設の予算は、1,000億円を超えています。
また、これまでの東京五輪準備基金などを統合して、五輪のレガシーを後世に伝える目的の新たな基金1,485億円が予算計上されました。五輪の談合・汚職問題の解決こそ優先課題です。東京五輪準備基金は、1,343億円も余っています。これを、都民のために使うべきです。
旧選手村跡地を五輪のレガシーを生かした先進的まちづくりとして発信するイベントに35億円、臨海副都心の新たな大規模開発を促進するためのイベント準備に21億円も計上され、IRカジノの調査費用も10年連続予算化されています。都市課題を解決するアイデア等を世界に発信するという、意味不明の「スシテック東京」事業に54億円、デジタル化を民間企業と一体になって進めるための新団体「ガブテック東京」の設立に23億円の税金が使われます。
英語スピーキングテストは予算削除し、中止すべき
多くの受験生や保護者達たちが反対し、公平性・公正性が保てないと、批判の声が広がっている、英語スピーキングテストを都立高校受験へ活用する予算が計上されているだけでなく、中学1、2年生にまでアチーブメントテストを実施する予算が盛り込まれていることは重大です。
当事者である中学生の声、専門家の意見に一切向き合おうとしない、小池知事と都教委の姿勢は許されません。英語スピーキングテストは予算削除し、中止すべきです。
都民の運動や世論と結んだ提案と論戦で貴重な前進も
わが党は、暮らしを支える現金給付の実施・拡充や、子どもにかかわる施策の所得制限撤廃を求めてきました。その点で、ゼロ歳から18歳まで、一人あたり月5,000円の給付を、所得制限なしで行う「018サポート」事業は、貴重な前進です。18歳までの医療費助成、第二子の保育料無償化、都立大学、都立高等専門学校の授業料実質無償化、私立中学校授業料の負担軽減も、くり返し求めてきたものです。不登校・ひきこもり・ヤングケアラー支援、教員不足対策の拡充、多摩地域の児童相談所の増設も、重要です。
木造住宅密集地域の全戸への感震ブレーカー無料配布、木造住宅耐震化助成の新耐震基準住宅への対象拡大、また、痴漢被害実態調査や庁内プロジェクトチーム設置などの「痴漢撲滅プロジェクト」、パートナーシップ宣誓制度の実施を受け企業に対し福利厚生制度の見直し等の助言や研修を行う訪問支援、性被害やジェンダーによる差別をなくしていくために大事な「アクティブバイスタンダー(積極的に被害を止める第三者)」を増やすための事業も、わが党が切り拓いた成果です。
気候変動対策では、東京ゼロエミ住宅、既存住宅の断熱・太陽光パネル設置促進の予算は倍増し、小売り電気事業者の再エネ発電整備、中小企業向け省エネ設備導入・運用改善、太陽光パネルのリサイクル経費、EVバス・EVトラック導入促進への支援も、計上されています。
労働環境改善や賃上げに取り組む企業への奨励金、商店街支援、知的財産活用への支援が前進し、公衆浴場対策も増額されています。農業を始める人への都有地貸出や生産緑地保全の支援拡充、ウッドショック対策も、わが党が都民の運動と結んでくり返し求め予算案に反映されました。
救急隊・デイタイム救急隊の増設、デフリンピックの開催支援も、わが党が求めてきたものです。鉄道駅のバリアフリー調査委託、多摩地域を支える交通ネットワークに関する基礎調査が予算化されました。また、多摩地域の市町村下水道は、浸水・震災対策として整備・改良を行う場合に国事業なら4分の1、単独事業なら2分の1へと大幅に引き上げられることも、貴重な前進です。
19議席の力を生かし都民の願い実現する予算へ
日本共産党都議団は、19議席に前進した力を大いに生かして、条例提案や、毎年行っている予算組み替え提案などをふくめ、都民の願いを実現する予算にするため全力をつくすものです。
以 上