気候危機対策都内自治体アンケート調査結果について
記者会見を行う日本共産党都議団気候対策チーム
(左から)原純子(江戸川区)、曽根はじめ(北区)、里吉ゆみ(世田谷区)、
米倉春奈(豊島区)、原田あきら(杉並区)各都議(2022.12.5)
日本共産党都議団は5日、8月~9月に都内全区市町村を対象に行った「気候危機対策都内自治体アンケート調査」の結果を公表し、記者会見を行いました。
調査の概要
★東京都議会局を通じて、都内自治体にアンケート調査を行い、全区市町村
(23区26市5町8村)から回答を得た。
★回答期間は2022年8月下旬から9月上旬。
質問項目
- 問1 貴自治体において、地球温暖化対策として次の(1)から(3)について、策定している目標があれば教えてください。また、策定中の場合は、その旨を記入願います。
(1)温室効果ガス排出量の削減目標
(都の事例:2030年までに温室効果ガス排出量を2000年比で50%削減する)
(2)エネルギー消費量の削減目標
(都の事例:2030年までにエネルギー消費量を2000年比で50%削減する)
(3)再生可能エネルギーの導入目標
(都の事例:2030年までに再生可能エネルギーによる電力利用割合を50%程度まで高め、2050年までに使用エネルギーの100%脱炭素化を目指す) - 問2 省エネルギー化促進に関する施策があれば教えてください。その事業の名称等について、今年度の予算額が大きい事業から順に五つまで、下欄に記入願います。
- 問3 再生可能エネルギーの導入に関する施策があれば教えてください。その事業の名称等について、今年度の予算額が大きい事業から順に五つまで、下欄に記入願います。
- 問4 貴自治体が保有する公共施設(学校を含む)における省エネルギー化の促進及び再生可能エネルギーの導入に関する対策について、現在、実施している施策及び実施予定の施策の概要を教えてください。
- 問5 地球温暖化対策に関する国や都の補助事業の中で、今年度を含め、過去5年間(平成30年度から令和4年度まで)で活用しているものがあれば教えてください。その補助事業の名称等について、下欄に記入願います。また、予算額又は決算額に占める補助金の割合について、過年度に関しては、決算額に占める補助金の割合を記入願います。
(1)国の補助事業
(2)都の補助事業
●気候危機対策の前進へ、自治体の力の発揮を都の戦略的課題に
残された時間があとわずかと迫る中、気候危機の打開へ、今、全世界が持てる英知と努力を傾けています。大規模にエネルギーを消費し、温室効果ガスを排出する日本の首都・東京で、東京都が果たすべき役割はきわめて重大です。
なかでも、都内の自治体が、責任を負う地域で気候危機対策にふさわしく力を発揮できるように支援することは、東京都が自ら戦略的にとりくむべき課題です。
こうした見地から、日本共産党東京都議会議員団は、①今、都内の自治体が気候危機対策でどんな施策に力を入れているか、②自治体自らの率先行動、特に公共施設・学校の対策はどうなっているか、③東京都の支援の柱の一つである補助事業について、どのように活用されているか、といった点について、都内全自治体を対象にアンケート調査を行いました。その結果から、日本共産党都議団が重要と考えるポイントは以下の通りです。
●目標設定の支援が必要
問1(1)~(3)の回答結果から、温室効果ガスの排出削減目標については設定している自治体が多数となっているものの、世界の水準から遅れをとっており、エネルギー消費量の削減目標や再生可能エネルギーの導入目標については設定できていない自治体が多く残されています。国も環境省の「再生可能エネルギー情報提供システム(REPOS)」等で支援を強めていますが、都としても技術的・財政的支援を強める必要があります。この点で、都の補助制度が一定活用されていることは重要です(問5(2)より)。さらに目標未設定の自治体への周知を強めるべきです。
●住宅・事業所の省エネ・再エネ機器設置補助-実施自治体の拡大を
問2、3の回答結果から、住宅・事業所の省エネ・再エネ機器設置補助を実施する自治体が多くみられます(住宅の省エネ機器設置補助の実施は23区83%、26市58%。同再エネ機器は23区70%、26市65%。町村は省・再いずれも1町)。都内の温室効果ガス発生の65%を家庭と事業所が占めている(「ゼロエミッション東京戦略2020 Update & Report」より)ことに照らして合理的な選択です。またこの間の電気代高騰をうけ、省エネ改修などの都民のニーズが急増している状況もあります。さらに実施自治体を増やし、制度を拡充していくために、都のイニシアチブが求められています。また国や都は独自に省・再エネ機器設置の補助制度を持っており、この拡充を通じて自治体間格差を解消していくことも一つの方策です。都の検討を求めます。
●気候危機対策においても多摩格差(区部と市町村の格差)の解消が必要
問2、問3の回答結果から、今年度の省エネ・再エネ施策上位5位の予算額を比較すると(〔資料編〕18p、25p)、特に省エネの方の予算について区部と市町村で大きな開きがあります。
また問4の回答結果から、具体的な施策で区部と市町村の違いが顕著なのは、公共施設の低炭素・再エネ電力の購入です。RE100のとりくみも広がる中、自治体が安定した再エネ電力の購入者となることは再エネ電力の普及拡大にとって重要ですが、実際にはとりくみに差が生じています。
気候危機対策においても多摩格差があらわれています。都としてこれを解消するための支援を求めていきます。
●学校施設の省エネ・再エネ、ZEB化の本格化にむけて
問4の回答結果から、区市町村の所有する施設、とりわけ学校の省・再エネ対策、ZEB(Net Zero Energy Building)の本格化はこれからの課題となっていると思われます。今回、学校施設のZEB化を回答したのは板橋区のみでした。学校のZEB化に国の補助制度が使いづらいとの声も寄せられており、日本共産党都議団は第3回定例会の代表質問で、都独自に使いやすい補助制度を実施するよう求めました。
補助制度の主力は国や文教予算ですが、都環境局の補助制度でも学校施設の太陽光パネル設置に活用できるもの(「地産地消型再エネ増強プロジェクト 」)があり、実際に今年度、調布市が利用しています。さらなる周知が必要です。
また都は日本共産党都議団の質問に都立学校を含む都有施設の省・再エネ整備の指針(「省エネ・再エネ東京仕様」東京都財務局)のZEB水準へのレベルアップを表明しており、これにもとづく都立学校の改修などを通じて、各自治体への技術的支援にも取り組む必要があります。
●都の補助制度の活用をさらに広げるために
都環境局が所管する補助制度は、都環境公社の事業として実施されるため、活用状況など実態がつかみにくく、今回、自治体からの回答で初めてこれを明らかにすることができました。その結果、使われているものとそうでないものの差が激しいことがわかりました(問5(2)の回答結果)。
補助制度のメニューを多く用意することで、区市町村のとりくみの幅を広げることは良いことです。荒川区は唯一、リユース家電(エアコン・冷蔵庫)の購入費補助の制度を回答しましたが、都の補助制度でリユース家電が対象に加えられた(「省エネ家電リユース促進事業」)ことがきっかけだったとのことです。
同時に、できるだけ柔軟に活用できるようにすることも必要です。狛江市は都と相談の上、主に〝打ち水″などの事業に活用されている「暑さ対策推進事業」の補助を、台風19号の被害をうけた多摩川の堤防の天端の保水性舗装に活用しており、一つの工夫と言えます。
今、各自治体で「気候市民会議」のとりくみが広がっていますが、この実施に使える補助メニューの創設も求められます。
いずれも区市町村のニーズをよくつかみ、それをふまえた的確なメニューの整備を都に求めるものです。
この報告書は、上記のアンケート調査結果を日本共産党都議団が分析し、まとめたものです。同時に、問題意識によって分析の角度はさらに多様にあるのではないかと考えます。ぜひ多くの方から様々な分析が試みられることを期待して、〔資料編〕に各自治体からの回答をほぼ全て掲載しました。また電子データでの提供も可能です。積極的にご活用いただければ幸いです。
以上