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申し入れ・談話

2024.07.26

東京都に対してPFAS対策の強化のための、汚染源の特定と汚染実態の把握などを求める要望


東京都知事 小池百合子殿

2024年7月26日 
日本共産党東京都委員会
日本共産党東京都議団
日本共産党区市町村議員団

東京都に対してPFAS対策の強化のための、汚染源の特定と汚染実態の把握などを求める要望

 発がん性が疑われ、航空燃料火災用の泡消火剤やフライパンの表面加工、半導体製造などに使われている合成化学物質の有機フッ素化合物「PFAS」による汚染が全国で明らかになり、深刻な事態となっています。
 PFASについては、その一部のPFOS、PFOAなどで発がん性等が指摘され、PFOS が平成 21 年(2009 年)に、PFOA が令和元年 (2019 年)に残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)で製造及び使用が原則禁止となりました。締結国である日本においても、PFOSは2010年、PFOAは2021年に原則禁止となっています。
 ところが米軍基地やPFAS等の製造・使用工場周辺での汚染など、全国各地の河川や飲料井戸水の地下水源で、現在の国の暫定目標値を上回る汚染が明らかとなり、岡山県吉備中央町では、浄水場から高濃度の PFASが検出され、発生源の可能性が高い地元企業に対して損害賠償を請求する事態にもなっています。
 特に米軍基地を原因と指摘される汚染問題については、沖縄県では2016年に米軍普天間基地からの漏出が原因とみられるPFASが水道水から検出され、その後も沖縄県内の米軍施設からの漏出する事件が起きています。また神奈川県では2022年には米海軍横須賀基地の排水からPFASが海に流出し、最大で暫定目標値の258倍もの高濃度のPFASが検出され、米軍厚木基地でも、PFASを含む泡消火剤が河川に漏出する事件を起こしています。
 東京においても、米軍横田基地周辺の、複数箇所の井戸水から暫定目標値を超えるPFAS検出され、多摩地域での市民団体による血液検査(2022~23年)の結果、2021年の国の全国調査よりも2~3倍も高いPFOSなどの血中濃度が検出されています。同時に、多摩地域にある東京都の飲料水用の水源井戸からも高濃度のPFASが検出され運用を停止する井戸があるなどの事態も起きています。
米軍横田基地では、2010年から22年にかけて7回ものPFASなどを含む泡消火剤やその汚染水の漏出が起きていることが明らかになり防衛省もこれを認めています。
 さらには昨年1月に、暫定目標値の5万3000倍にあたる濃度のPFASを含む汚染水の漏出事故を起こしていたこと、しかも日米政府がその事実の詳細を非公表の方針で合意したことがマスコミ報道で明らかにされました。
 この問題では、都や周辺6市町でつくる連絡協議会の地元自治体から事実関係を明らかにするよう米軍や国に要請がされているものの、いまだ明らかにされず、国は、「随時アメリカ側に照会をしている」「アメリカ側からは事実関係や状況について、引き続き調査確認作業を進めているという説明を受けている」「アメリカ側から情報提供を受けたものは速やかに関係自治体に説明している」(24年7月10日、林官房長官記者会見)とのみの答弁に終わり、また東京都の小池都知事も、「事実関係や状況について引き続き調査確認を進めていると、アメリカ側から説明を受けていることを国から聞いている」(24年7月12日、定例記者会見)と述べるのみに留まっています。
 いまPFASによる環境汚染が広まり、国民の不安が高まっているもとで、その解決のための対策をとるためにも、汚染の状況、実態を明らかにすること、汚染源を特定し対策を立てること、厳しい環境基準を設定し住民の安全を確保することが求められています。

 環境基準においては、日本では、水質管理の目標として給水栓水(蛇口)においてPFOS及びPFOAの合算値が1リットルあたり50ナノグラムの暫定の目標値が設定されているものの、人体摂取許容量などの規定についてはいまだ設定されておらず、その策定に向けた作業が進められてきました。この6月25日には、食品や飲料水の1日当たりの摂取許容量を審議してきた内閣府の食品安全委員会は、PFOSとPFOAの2物質でそれぞれ、体重1キロ当たり20ナノグラムを指標とする「評価書」を正式決定しましたが、この数値は、アメリカ環境保護局の、PFOSで同0.1ナノグラム、PFOAで同0.03ナノグラムの設定や、欧州食品安全機関のPFOSとPFOAを含む4種類の合計で同0.63ナノグラムの設定より数十~数百倍の摂取の緩いものとなっています。PFHxSについては「指標値の算出は困難」としています。約4000件ものパブリックコメントは「緩すぎる」などの批判がほとんどでしたが、反映もしていません。
 このように緩い値となった要因には、科学的証拠の確実性にこだわるあまり、因果関係に科学的な不確実性があっても予防的に対応するという「予防原則」の立場に立ち切れていないからだと指摘せざるを得ません。環境省は、今回の内閣府の食品安全委員会の「評価」決定を受け、PFASの水道水の摂取基準の見直し作業に入りましたが、「予防原則」の立場に立って進めるべきです。
 以上の点を踏まえて、都民のいのちと健康を守る立場の東京都として、PFASによる環境汚染対策を抜本的に強化するため以下の点を、攻勢的に取り組むよう強く要望します。

【1】PFASの汚染源の特定と汚染実態の把握について

  1. PFASの製造・使用に関わった事業者・工場、施設を特定し、製造・使用状況の調査、及び、当該施設の排水施設、周辺の井戸水や河川などの調査を実施すること
  2. 3月に行った水質調査については、PFOS、PFOA、PFHxSなどの物質ごとに区分して公表すること
  3. 都として大規模な血中濃度調査を実施すること
  4. 民間井戸水(食品工場などの地下水利用など)の調査を行うこと

 

【2】米軍横田基地について

  1. 度重なるPFASの漏出を起こしている米軍横田基地に対しては、東京都として立ち入り調査を行うこと
  2. 昨年1月のPFAS漏出事故については、東京都として、国および米軍から直接聞き取りをし、資料の提出をもとめることをはじめ、事故の全容を明らかにすること。また処理にあたって、吸収材の処分はどうしたのか、基地外に流れた量はどのくらいなのかも明らかにすること

 

【3】PFASの環境基準について

  1. 内閣府食品安全委員会が決定した人体の「リスク評価」を見直し、予防原則に立った摂取基準に改め、少なくとも欧米並みの基準とするよう国に働きかけること
  2. 都としても、欧米並みの独自の基準を設定し、必要な対策を立てること

         以 上