文書質問 都立松沢病院における行政的医療の推進・拡充について 里吉ゆみ(世田谷区)
2024年第二回都議会定例会
文書質問趣意書
提出者 里吉ゆみ
質問事項
一 都立松沢病院における行政的医療の推進・拡充について
答弁
一 都立松沢病院における行政的医療の推進・拡充について
都立松沢病院は都内の精神科病院の中心的役割を果たしています。独法化された下でも、その役割は変わることなく行政的医療の推進と更なる拡充が求められています。日本の精神科医療はこれまでの入院中心から地域ケア中心へと、地域移行・地域定着を進めることが求められています。精神障害者が、地域の一員として、安心して自分らしい暮らしができるよう、医療、障害福祉・介護、社会参加、住まい、地域の助け合い、教育などが包括的に確保される「精神障害」にも対応した地域包括ケアの推進が強く求められています。
松沢病院の運営方針に示されている、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの拠点となることは大切な取組です。その一方で、「転退院が困難な長期入院患者に対して、転退院に向けた取り組みを継続して行いながら、引き続き医療を提供する」とされた社会復帰病棟の役割が問われています。
3月の厚生委員会で、社会復帰病棟での取り組みを伺ったところ、松沢病院では、医師や看護師、精神保健福祉士など多職種の退院促進チームが、患者やその家族、地域関係者などを交えた退院支援カンファレンスを行うなど、退院を促進してきたということでした。しかし、過去5年間で退院した507名のうち106名が他の病院への転院だったことが明らかになりました。せっかく社会復帰病棟があるのに、なぜ他の病院へ転院させる必要があるのか、大変疑問です。
松沢病院から他の病院へ転院をされた患者ご家族の方の話を伺いました。今から思えば、小学生のころから統合失調症を発症していたのではないかと思われる症状がでていたそうですが、実際に病院にかかったのは発症してから数年たっていたそうです。病院にかかった日から即入院となり長期入院となったため、社会生活をほとんど経験できていません。治療がおくれたこと、社会生活の経験がないことから、退院して生活することが困難だとご家族の方はご苦労された話を聞かせてくださいました。グループホームで生活できた時期もあったそうですが、トラブルを何回か起こし、病院へ戻ってきたりと繰り返してきたそうです。やっと松沢病院に入院できて安心していたのに、転院するよう繰り返し病院から迫られ、転院先を紹介されたけれど、納得がいかないとおっしゃっていました。結局この患者さんは、ご家族が探してきた病院に転院されたそうですが、こうした困難な方こそ地域で暮らせるように松沢病院で時間がかかっても取り組むべきではないでしょうか。
以下、質問します。
1 社会復帰病棟に入院していた患者の方106名の方は、どのような理由で他の病院に転院させたのか、その理由を伺います。
2 松沢病院の長期在院患者や処遇困難患者への考え方と処遇についての考え方を伺います。
3 松沢病院の運営方針である、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの拠点となる「スーパー精神医療センター」構想の推進を目指すとされているが、これはどのように具体化されているのか、伺います。
2024年第二回都議会定例会
里吉ゆみ議員の文書質問に対する答弁書
質問事項
一 都立松沢病院における行政的医療の推進・拡充について
1 社会復帰病棟に入院していた患者の方106名の方は、どのような理由で他の病院に転院させたのか、その理由を伺う。
回答
松沢病院は、急性期の精神科医療を提供しており、医師が、急性期症状に対する治療は終了し転院が適切と判断した患者等については、状態に応じた適切な医療機関への転院等を行っています。一例として、薬物療法により症状が安定したため、長期のリハビリテーション等の支援に移行する患者などが当たります。
転院等に当たっては、患者や家族の意向も踏まえながら、可能な限り地域移行に積極的に取り組んでいる医療機関等を紹介しています。
質問事項
一の2 松沢病院の長期在院患者や処遇困難患者への考え方と処遇についての考え方を伺う。
回答
国や都は、精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けて取組を進めています。
松沢病院では、医師や看護師、精神保健福祉士など多職種の退院促進チームが、患者や家族、地域関係者などを交えた退院支援カンファレンスを行うなど、長期入院患者に対する転退院の促進や、新たに入院する患者の早期社会復帰に向けた取組等を積極的に行っているほか、精神保健福祉士等による医療福祉相談を実施し、地域の関係機関と連携して患者の状況に応じた支援を行っています。
質問事項
一の3 松沢病院の運営方針である、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの拠点となる「スーパー精神医療センター」構想の推進を目指すとされているが、これはどのように具体化されているのか、伺う。
回答
松沢病院は、精神科の急性期医療を中心に、精神科救急医療、精神科身体合併症医療、アルコール等依存症の専門医療などを提供するとともに、地域の医療機関では対応が困難な患者を受け入れています。
国や都は、精神科医療における地域移行・地域定着を測るため、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けて取組を進めており、松沢病院では、他の医療機関等との適切な役割分担と密接な連携を通じて、長期入院患者に対する転退院を促進しています。また、退院後は外来での診療や訪問看護チームによる自宅等で生活している患者への支援のほか、緊急時や症状の悪化が見込まれる際の再入院への対応等を行っています。