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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

2001年都議会第3回定例会・討論

松村友昭(練馬区選出)  2001年10月5日

「再生手続き開始申し立て事件において東京都が有する債権の取り扱い及び株式の消却について」、ほか五議案に反対する立場から討論

 私は、日本共産党都議団を代表して、第百六十八号議案、「再生手続き開始申し立て事件において東京都が有する債権の取り扱い及び株式の消却について」、ほか五議案に反対する立場から討論を行います。
百六十八号議案は、経営破たんにおちいった株式会社・多摩ニュータウン開発センターを、民事再生手続きにより救済し、延命をはかろうとするもので、東京都が八十五億円の債権の放棄と、都が保有する額面金額九億円相当の株の五十%を無償消却することに合意し、都が最終的に八九億円の損害をこうむることになるものです。
 わが党は、かねてより開発型第三セクターが、ゼネコンや大銀行のもうけの対象とされ、破たんの責任は一人自治体に負わされる危険性を指摘し、自治体が、不動産事業や開発型ビル経営に手を出すべきではないことをくり返し表明してきました。今回の質疑を通じて、同開発センターの破たんの原因が、採算を無視したビル施設建設、過大な借入金、それにともなう金利負担にあること、さらには民事再生の内容が、東京都に債権放棄など一方的譲歩を迫まる内容となっていることがうきぼりにされました。くわえて、この延命策によっても、ふたたび破たんにおちいらない明確な保証がないということも明らかになりました。
 今回の処理は、臨海副都心開発をはじめとする開発型第三セクターの破たん処理の第一号となるものであり、それだけに安易な解決は許されないのであります。解決にあたっては、破たんの原因と責任を徹底的に追及すること、経営参加している企業をはじめ、多額の貸付金やビル建設もうけをあげた銀行やゼネコンなどにも応分の責任を果たさせること、さらには開発型第3セクター方式をあらためることなど、都民が十分納得でき、今後の三セクの破たん処理の指針となるべき抜本的な処理をおこうことが不可欠であることを申し述べておくものです。
 第百五十五号議案は、特定都営住宅に期限付き住宅を導入するための、都営住宅条例の一部を改定する条例です。若年ファミリー世帯に都営住宅の入居枠を拡充することは、子育て支援にとっても、また高齢化がすすむ都営住宅を活性化させるうえでも重要であり、わが党もこれまで主張してきたものです。同時に、十年の期限がくれば、たとえ子育て真っ最中であったり、子どもの受験期にあっても機械的に明け渡しをせまるものであり、十年の期限をもうけることは、若年ファミリー向けという制度の趣旨にそぐわないものです。よって、反対するものです。
 また、知事は、所信表明で「公平性を確保するには、定期借家権を活用した期限付き入居制度が期待される」とし、国に法改正をはたらきかけ、公営住宅法にもとづく二四万戸の都営住宅全体に広げる意向を表明しましたが、これは、「公営住宅は住宅に困窮する低所得者のために賃貸する住宅であり、居住が継続することを前提として制度が成り立っている」、さらには、「公営住宅に定期借家権はなじまない」とした、政府の見解に明らかに反するものです。
 第百五十号議案、東京都人権プラザ条例は、台東区の東京都産業労働会館を廃止し、東京都人権プラザに衣替えするものですが、長きにわたって、皮革産業や家内労働振興の施設として活用され、これからも地場産業、地域産業、地域のコミュニティー施設として使いたいという強い要望があるにもかかわらず、打ち切ろうとすることは許されません。あらたに設置される人権センターは、人権の名のもとに、同和事業の拠点を提供するものになりかねないものであり、来年の三月にせまった同和事業の終了と一般施策への移行の方針にも逆行するものです。
 今定例会は、都議戦後、初の本格的論戦がおこなわれる議会であり、しかも、かつてない不況と失業、小泉政権がすすめる社会保障制度のあいつぐ改悪のもとで、都政が、都民のためにどのような役割をはたすべきなのかが、鋭く問われました。
 わが党は、都議選を通じてあらためてその切実さがうきぼりとなった切りすてられた福祉の復活や介護保険の減免の実現をもとめるとともに、いま、都政が心を砕かなければならない雇用の問題では、リストラの規制や教員、消防職員などの公的雇用の確保などをつよく求めました。
 ところが知事は、大量の失業者を生み出す小泉内閣の「構造改革」を是とするとともに、「東京を核とした首都圏の再生」が「わが国の経済危機克服の起爆剤となる」として、三環状道路や臨海副都心開発、さらには都心再生などの大規模開発を最優先で推進することをあらためて表明しました。
 この方向は、住民の福祉とくらしを守るという自治体の使命をなげすて、都財政のさらなる破たんをもたらしかねないものであります。
 そのことをもっとも象徴的に示したものが、わが党が高齢者の切なる願いである、シルバーパスや老人医療費助成などの切りすてられた福祉の復活を求めたのにたいして、知事が「議論そのものが陳腐」となどといって、都民要望をかえりみようとしない姿勢をとったことです。
 この、「陳腐」という言葉は、議員の質問そのものをおとしめようとするものであり、反対意見そのものの存在を認めようとしないもので、言論の府である議会を否定することにほかなりません。
 くわえて、知事は、わが党議員の質問中にもかかわらず、不規則発言をくりかえし、さらには、答弁にあたって「余りににばかばかしいんで頭にきた」などという発言をおこないました。これらの言動は、議会の品位をけがし、議員と議会を侮辱するものです。都民を代表しての議会質問に対してなされたこうした発言は、第一回定例会でも、きびしく指摘されたように、「議会の尊厳をじゅうりんする、執行機関として越えてはならない一線を越えた」発言であり、決して都議会として見過ごすことのできないものであります。
 事実にもとづく論戦という点でも、知事の発言は正されるべき点が多々あります。
 認証保育所についての答弁もそのひとつです。わが党は、知事が認証保育制度を手放しでもちあげていることにたいし、第一号の認証保育所が定員の半数に満たない事実を示して質問をしました。これに知事は、「人のやっていることにけちをつけるにしても、実態というものを把握して物をいってもらいたい」「定員が五十四人ですけれど、百七十四人の希望者がございまして、その選択に苦労している」などと答弁しました。
 しかし事実は、八月一日から九月二十五日までに電話をふくめ何らかの問い合わせのあった件数が百三十四人であり、入所待ちをしているかのように言うのは間違いです。問い合わせはあるのになぜ定員の半数も埋まらないかを、わが党は問いかけたのであり、「安心できる認可保育所の方がいい」「保育料が高すぎる」という声が実際にあがっているのですから、その声に謙虚に耳を傾けるべきであります。
 また知事は、この認証保育所は「私企業の協力をえて発足した」と言いましたが、私企業でなく社会福祉法人です。さらに、わが党は「保育室の窓の位置が高く、子どもの目の高さから外の風景が見えない」と聞いたのに、知事の答えは「建物の都合で窓は低いかもしれない」というものでした。知事は、外へ出れば「低い手すりに支えられた庭がある」とも言われましたが、園庭があるのは建物の屋上であり「低い手すり」では危なくて仕方ありません。実際は高い塀に囲まれ、子どもには、やはり空しか見えないことも、指摘しておきます。
 石原知事こそ、実態というものをちゃんと把握して議会で発言していただきたい。そのことを、つよく申し上げておきます。
 知事は、今議会において、再びハイエナという言葉を使って、公党に対する侮辱的発言をおこないました。この際、申しあげておきますが、ハイエナという言葉を使った共産党攻撃の源流は、ホロコーストすなわち大量虐殺をやったドイツの独裁者、ヒトラーであります。あのヒトラーは自身の著書である「わが闘争」のなかで、マルクス主義者や社会主義者をハイエナになぞらえて悪罵を投げつけていることを紹介しておきます。
 都政にかかわる重要問題としてあらためて問われたのが、この夏起きた侵略戦争賛美の歴史教科書の採択、さらには、靖国神社公式参拝でうきぼりとなった知事の憲法否定の政治的立場の都政への持ち込み問題です。
 この立場から、わが党が、知事の侵略戦争への認識と態度について質したのに対して、知事は、まともに答えようとせず、憲法違反の靖国神社公式参拝については、「公人」として許されないものであることについて、認めようとしませんでした。
 また、知事が、侵略戦争を賛美する歴史教科書の編纂に関与していたことも明らかにされたましたが、教科書採択にあたっての知事の関与とあわせて、重大なあやまりであることを指摘するものです。
 憲法否定の政治的立場の都政への持ちこみを許さないために全力をつくす決意をあらためて表明しておくものです。
 米国での同時多発テロに対する報復戦争の危険が高まっています。日本政府も米国の軍事報復を無条件に支持し、憲法九条を蹂躙して自衛隊派遣の新法を制定しようとしています。このようなときに石原知事が、アメリカの軍事報復を容認し、対米支援先にありきの小泉内閣の対応を「是」とする態度をとっていることは、都民の願いに逆行するものと言わざるをえません。
 わが党は、国連憲章と憲法の平和原則にもとづく、法と理性にかなった問題解決のために、全力をつくすことを表明して、討論を終わります。