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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

予算特別委員会 しめくくり総括質疑 二〇〇二年三月二五日

吉田信夫(杉並区選出)  2002年3月25日

「都市再生」最優先の一方で、あらゆる分野で施策の見直し
避けて通れない借金依存型財政運営・・・税金の使い方の転換を

「重要施策」、首都再生に五七%、福祉、医療は一二%

〇吉田委員 日本共産党都議団を代表して、締めくくり質疑を行います。
 初めに、予算のあり方についてです。
 都民をめぐる情勢の最大の特徴は、戦後最悪の完全失業率など、これまで経験したことのない規模で不況、リストラが進行し、その上、小泉内閣による不良債権早期処理、医療制度改悪によって、都民生活がかつてなく脅かされている。それだけに、来年度予算案に求められることは、都民の暮らしや福祉を守るために手だてを尽くすということではないでしょうか。
 しかし、この間の質疑を通じて、来年度予算案が、こうした都民の願いにこたえないことが浮き彫りとなりました。それを示しているのが、重要施策とその予算配分の問題です。
 知事は、来年度予算編成に当たって、重点的に実施すべき施策を重点施策として選定する、そして、それは一律削減の枠外とするというふうにいたしました。施策全体の中で重点を検討するということはあり得ることだと思います。しかし、問題は、何を重点にし、どのように予算措置がとられたかということであります。
   〔資料配付〕
 (パネルを示す)これが重要施策と来年度予算案で予算が配置をされた比率であります。全体が約四千億円。一番求められている一つである雇用対策は、一%、約四十一億円。福祉、医療の分野は、一二%、四百八十億円。それに対して、首都再生、五七%、二千三百九十五億円。こういう実態であります。
 結局、都市再生、大規模開発は優先されるけれども、一番求められている不況打開や、あるいは福祉の拡充という点では、都民の願いにこたえていないといわざるを得ないと思うんです。
 これから、限られた時間の中でありますけれども、特徴的な事例に基づいてただしてみたいと思います。

慢性肝炎など通院医療費助成打ち切りは撤回を

 まず、そもそも行政運営において、また予算編成に当たっても、都民の要望にいかにこたえるのかということが最大の前提だと思うんですね。
 生活文化局長にお聞きしますけれども、東京都は、毎年世論調査を実施しております。昨年十一月に、都民生活に関する世論調査が発表されました。そこで都政要望が挙げられておりますけれども、この都政要望で挙げられた上位一位、二位をご紹介ください。
〇高橋生活文化局長 平成十三年度に実施しました都民生活に関する世論調査における都政への要望では、第一位は高齢者対策であり、第二位は医療・衛生対策でございます。
〇吉田委員 こうした世論調査に占められた高齢者対策、そして、医療・衛生。福祉、医療ですね。やはりこうした都民のストレートな要望にどうこたえるかが問われていると思うんです。
 まず、その中で、医療についてです。特に、その中で、新たな事態が明らかになった肝炎問題についてこの機会にただしたいと思います。
 慢性肝炎の大半を占めるC型肝炎の場合、その原因が輸血や血液製剤によって大規模に感染が広がったということは、我が党が代表質問でも指摘をいたしました。その後、この指摘をまさに裏づける新たな事態が明らかになりました。先週のテレビ、新聞で一斉に報道された、旧ミドリ十字によって製造、発売をされた止血剤、フィブリノゲンが肝炎ウイルスによって汚染をされていたという問題であります。
 フィブリノゲンは、血液を原料につくられた血液製剤ですけれども、出産時の異常出血に対する止血剤などとして、産婦人科だけではなく、外科、内科、小児科など、幅広く使われてきました。このフィブリノゲンがC型肝炎によって汚染をされていたことが、テレビ局の調査で改めて確認をされました。
 さらに重大なことは、実はアメリカでは、肝炎感染の危険があるとして、一九七七年に製造禁止になったにもかかわらず、旧厚生省はこれを放置し、十年にわたって販売を認めてきたということです。その結果、二十八万人がこのフィブリノゲンの投与を受け、一万人余がC型肝炎に感染をされているのだと新聞で報道されています。ある新聞は、見出しで、薬害肝炎明白に、とし、知らなかったでは済まされないという、ある患者の声を紹介をしております。
 知事もこの報道をご承知と思いますが、今回明らかになったウイルス感染は、あの薬害エイズやヤコブ病と同じ、国の責任が問われる問題だと思うんですけれども、まず、知事、どのようにこの問題を認識されているでしょうか。

知事「国の責任は免れない」・・輸血や血液製剤によるC型肝炎の感染

〇石原知事 私、薬事に関しては余り詳しく存じませんが、その問題も含めて私が思い出しますのは、例のサリドマイドという薬の弊害で、非常にみじめな赤ちゃんがたくさん生まれました。あのとき、日本もまたやっぱりそういう被害をこうむったわけでありますけれども、アメリカの場合に、女性の薬事部長でしたか、この人が頑張って、アメリカだけはこれを認めずに過ごしたために、その惨禍を免れて、ケネディはこの人にたしか勲章を、異例のこととして贈りました。
 やはり国のこういう大事な薬物に関する管理というのは決定的な意味を持ちまして、私はこの問題を詳しく知りませんけれども、いずれにしろ、いろいろ事例をさかのぼって考えますと、私はやはりこのケースについても国の責任は免れないと認識しております。

慢性肝炎患者の九七%は外来・・・打ち切りに道理はない

〇吉田委員 やはり今、知事もいわれましたけれども、衛生行政の責任ということが改めて問われる問題だと思うんですね。
 それで、これはフィブリノゲンだけではもちろんありません。九二年以前に輸血を受けた人は、肝炎の可能性が高いということも指摘をされております。慢性肝炎患者のほとんどが、ずさんな衛生行政のまさに犠牲者、だから、患者団体は医療費の公費負担によって救済を強く要望しているところであります。
 ところが、こうした新たな事態が明らかになったにもかかわらず、全国に先駆けて慢性肝炎患者への医療費助成を実施をしてきた東京都が、なぜ治療のかなめである通院医療への助成を打ち切るのかということが問われている状況だと思うんです。
 代表質問でも、慢性肝炎の場合、肝硬変、そして肝がんへの進行を抑えるためには、服薬、検査という通院医療を永続的に続けていくことが唯一の治療法であり、通院医療こそ慢性肝炎治療の基本だということを強調してまいりました。これは、患者団体やあるいはまた専門医共通の声だけではなく、実際の医療実績から見ても明らかだと思うんです。
 それで、衛生局長にお伺いしますが、衛生局が毎年行っている衛生年報には、慢性肝炎患者の医療費助成の実績が示されていると思うんです。その年間総延べ件数及び医療費助成のうち、通院はどれだけの比率を現実に占めているのか、ご答弁をお願いいたします。
〇今村衛生局長 平成十二年版の衛生年報では、平成十一年度の慢性肝炎の延べ助成件数は約三十三万七千件であり、うち外来は約三十二万八千件で、その割合は九七%であります。また、総助成額は約十八億円であり、うち外来の助成額は約十四億四千万円で、その割合は八〇%となっております。
〇吉田委員 知事、こういう数についてご存じだったんでしょうか。約二万五千人の慢性肝炎患者の方々が認定患者としていらっしゃいますけれども、改めて、こうした方々の治療の大半が通院治療、件数でいえば九七%、金額でも八〇%ですよ。こういう現実から見れば、通院医療費助成を打ち切って入院だけにするということが、全く現実からも乖離し、道理がないということが私は明らかだと思うんです。ぜひ再検討すべきだと思いますが、知事、いかがでしょうか。
〇今村衛生局長 昨年十月の外部の識者による新たな感染症対策委員会の報告では、ウイルス肝炎についても保険診療を原則とするが、検診に続く医療を円滑に行うためには、医療費の助成が望ましく、その際、入院、外来すべてではなく、治療上特に必要な内容や時期に限るべきとする趣旨の提言を受けています。
 都といたしましては、この提言を踏まえ、医療助成のない他の疾患との均衡も考慮の上、病態の診断やこれに伴う治療方針の決定、また病状が悪化したときなど、治療上極めて重要な入院時の医療費について新たに構築し、助成することといたしたものでございます。
〇吉田委員 とんでもありませんね。あなた方がとっている統計でも、治療の九七%が通院だと。必要な時期にといったって、実際必要で使われているのは通院じゃないですか。その現実を無視してこれを打ち切るということは、もう本当に慢性肝炎の方々にとってみれば、命に直結するだけの事態なんですよ。ですから、私は、これだけの重みのある問題だから、知事、お答えを求めたわけです。
 実際に、九七%、八七%ということを打ち切ることがいかに乱暴かということが、私はこの数字でも明らかだと思うんです。繰り返し述べてきましたけれども、通院医療費の助成の打ち切りは、患者の方の命に直結する問題です。治療を中断することによって、肝臓機能の悪化が進み、肝硬変、肝がん、肝がん死に直結するという事態になりかねないんです。にもかかわらず、何ら問題がないというふうにいえますか。通院治療が後退をして、病状が悪化する事態が生まれるというふうに思わないんですか。
〇今村衛生局長 慢性肝炎等は、最近の医学的知見によりまして、難病ではないという報告を受けております。難病ではないので、我々は施策の再構築を図ったわけでございまして、医療費助成の対象とされていない他の難治性疾患、例えば胃がんなどと同様、保険診療の中で治療を継続できるものと考えております。
〇吉田委員 保険診療といいますけれども、この方々は生涯にわたって治療を続けなければならないんですよ。しかも、その医療費の負担たるや、決して低いものではありません。一日置きに例えばキョーミノファーゲンを打つ、投薬を繰り返す、月二万から三万は常識なんですよ。それを生涯強いるんですよ。しかも冒頭述べたように、衛生行政の責任に由来する問題なんですよ。(石原知事「それはちょっと違うんじゃないか。そんなこじつけってないよ。ひっかかるなよ」と呼ぶ)こじつけじゃないですよ。これは衛生局自身、厚生労働省自身が認めているんですよ。(石原知事「酒飲み過ぎたって慢性肝炎になるんだよ」と呼ぶ)C型肝炎はウイルス肝炎ですよ、知事。それすら知らないで、こういうことをオーケーするんですか。
 さらに、私は訴えたいことは、厚生委員会では、全会派一致でこの慢性肝炎患者に対する医療費の継続ということが可決されたんですよ。議会の意思ですよ。これを、行政として知事を先頭に尊重するのは当然だと思うんです。そのことを改めて強調しておきたいと思うんです。
 この衛生局にかかわる最後に、一言述べておきたいと思うんです。
 先ほど母子保健院に関連をして発言がありました。我が党は、この記述について、実は厚生労働省に直接確認をしたんです。三百六十五日二十四時間、それは地域医療のことじゃありません、入院中の子どもの面会について、三百六十五日二十四時間いつも開かれているという意味なんですと。これが厚生労働省の説明なんですよ。厚生労働省にも確かめないで、パンフレットだけで発言するというのは極めて乱暴ですよ。(発言する者あり)ましてや、東京都の説明も、全夜間・休日救急活動に参加をするという確約は得ていませんというのが厚生労働省から東京都が得ている結論じゃありませんか。そのことを一言発言をしておきます。(「委員長、局長答弁」と呼ぶ者あり)いいよ、私、質問続けるから。
 それでは、続きまして……(石原知事「厚生省の役人呼んでこい、ここに」と呼ぶ)知事、呼べばいいじゃない、それだったら。

老人保健施設の整備・・・東京は全都道府県及び政令市中最下位

 次に、高齢者対策に関してです。
 世論調査の二番目に、(発言する者多し)一番目が高齢者対策でした。ちょっと静かにさせてもらえませんか。
〇星野委員長 ご静粛にお願いします。
〇吉田委員 世論調査の都政要望で第一位は、やはり高齢者対策でした。私、調べてみましたけれども、この高齢者対策で何を都民の方が望んでいるのか。一位が施設サービスの充実整備、二位が在宅サービスなんですね。まさに都民の皆さんの要望を反映したものだと思うんです。特別養護老人ホームは希望者が急増していながら極めて深刻な問題となっていることは、繰り返し指摘をしてまいりました。
 同時に、施設サービスのもう一つの柱である老人保健施設の整備も、東京は大変おくれております。ご存じと思いますけれども、老人保健施設は、医療と介護の両方を必要とする高齢者に対して、リハビリテーションなどを提供し、家庭復帰を目指す施設です。そのために、特別養護老人ホームなどとは違って、医師とともにリハビリを行うための作業療法士、また理学療法士が義務づけられております。高齢者が地域に暮らすためには、まさになくてはならない施設だというのが老人保健施設です。
 ところが、東京での設置状況はどうかといえば、本委員会にも資料が示されておりますけれども、近く、全国の到達点について厚生省が福祉マップとして発表を予定しています。事前に確かめましたけれども、定員率、いわゆる六十五歳人口に対する定数ですね、定員数で見ると、東京は全都道府県及び政令市中五十九位であるという説明を受けました。すなわち全国最下位です。
 実は、私の義理の母も脳梗塞に倒れて、何とか東京の老健に入れたいと思って妻が努力をしましたけれども、直ちに入れるという状況がなくて、今、金沢の老健に入っておりますけれども、知事、まず、こうしたやはり重要な施設でありながら、全国最低水準というこの老人保健施設の現状をどのように考えますか。また、こうした状況をやっぱり放置するわけにいかないと思うんですね。知事の姿勢が問われる問題だと思うんですが、お答えください。
〇前川福祉局長 今お話がありました老人保健施設、これは都内の老人保健施設は百二カ所、定員九千六百五十五人でありまして、全国五位でありますが、高齢者人口千人当たり定員数で見た場合は、お話のとおりであります。
 ただ、近年これは急速に増加しておりまして、例えば過去五年間を見ると、年千五百人以上の定員増が図られており、全国の二倍以上のペースで伸びてきております。これには、東京都が全国に例のない手厚い独自の補助を実施している。例えば定員百人規模の施設で見た場合に、九千五百万円の国庫補助に加えて、四億円の施設整備費補助を上積みをしている。また、一施設当たり六百万円を限度とする設備整備費補助、それから建築資金の借り入れに係る償還利子の補給、こういったさまざまな努力をしていることが大きくあずかっていると考えております。
 今後とも、こうした努力を積み重ね、区市町村と協力をしながら整備を促進していきたいと考えております。

計画に対する到達も達成率も低く、予算も十三億円減

〇吉田委員 実数で全国で五位だといわれましたけれども、まさにこれがおくれを象徴的に示している話だと思うんです。人口的にいって全国トップが当たり前、定数でいえばやはり全国最下位なんですよ、定員率でいえば。これは私、やっぱりしっかりと直視をして、必要な対策をとるということが当然のことだと思うんですね。
 しかも、計画に対する達成率がどうかということです。十三年度が間もなく終わろうとしておりますけれども、十三年度に対する計画達成には、現時点では至っておりません。それだけではなくて、ここに厚生労働省の現時点での計画に対する達成状況の一覧がありますけれども、到達が低いだけではなく、東京都自身が立てた計画に対する達成率も、全国で最低だと指摘をされているんです。そのことをしっかりと今こそ直視をして、そうしてやはり福祉局自身も、これを解決するためにやっぱり緊急整備をしなきゃならないというふうに提案をしたじゃないですか。
 ところが、知事、来年度予算は、昨年度よりもこの老健の整備費は後退をしているんです。今年度七十五億円に対して来年度六十二億円、十三億円の減ですよ、幾ら整備をするといっても。私は改めて、整備に努めていくというならば、本当に抜本的な支援策に取り組む、当然のことじゃないですか。そのことを強く要望しておきたいと思うんです。
 あわせて、こうしたおくれという点では、施設の問題だけではありません。もう既に繰り返し述べてきましたけれども、例えばシルバーパスの問題にしても老人医療費助成にしても、多くの政令都市では無料制度の継続、医療費助成制度の継続がされている。ところが、東京はかつて全国の福祉をリードしていたにもかかわらず、シルバーパスの全面有料化、医療費助成制度はあと五年で廃止をすると。まさに全国最低の水準に福祉がなりつつあるというのが現状ではないでしょうか。また、二〇〇〇年度の決算を見ても、切る方は切りながら、実際に予算を使わなかった金額、不用額三百十六億円と。いかにやるべきことも実際にはやられてないかということが示されていると思うんです。
 時間の関係で、肝炎の問題と、そして老健の問題について触れましたけれども、来年度予算は、こうした問題にとどまらず、十事業の切り捨て進行だけではなく、冒頭述べた重要施策から外した事業は一律一〇%カット、あるいは施策の見直しということが各分野にわたって広がっております。障害者のホームヘルプサービスの有料化の拡大や母子保健院の廃止、医療や福祉だけではなく、多摩地域を中心とした社会教育施設や労政事務所の廃止、こうしたことが進められているということを改めてこの機会に、締めくくりに当たって指摘をしておきたいと思うんです。

避けて通れない借金依存型財政運営・・・税金の使い方の転換を

国直轄事業負担の見直しは最優先に・・・知事「制度の改善を積極的に働きかけていくつもり」

 その一方で、来年度予算では、投資的経費は根本的見直しをしないばかりか、逆に重点的に促進をする。この税金の使い方ということを今こそ見直すことが、私は求められていると思うんです。
 例えば国の直轄事業負担金の問題です。昨年の予算特別委員会でも、我が党の木村幹事長がこの問題を取り上げました。とりわけ国道の維持管理費六十一億円、こういう実態を明らかにし、検討を求めました。知事も強く申し入れておりますというふうに答弁をいたしました。来年度予算はどうなっているか。道路、橋梁関係の直轄負担百二億円など総額二百億円、直轄事業負担が都に課せられ、都は払おうとしております。知事、この国直轄事業負担こそ最優先で見直すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
〔「これは一致するからちゃんと答えてよ」と呼ぶ者あり〕
〇石原知事 これは一致するね、共産党と。
 例えば、羽田の再拡張などについても、財務省は何を血迷ったのか、東京が半分持てなんてばかなことを申していますけれども、要するに国の直轄事業に関して、地方の自治体というものの負担というものを国が見込むというんでしょうか、それを強いるということは、基本的にこれは間違いだと思います。これは文明工学といいましょうか、社会工学といいましょうか、そういう性格の認識を、国の政府を形づくっている政治家というより、むしろそれを支えているつもりの役人が認識してないから、こういうばかな現象が起こってくるのでありまして、一方では地方分権一括法というものをつくりながら、こういうものが依然として続いているということは、非常におかしなことだと思います。
 都市再生のような首都圏の活性化に必要な広域的見地から行う事業というのは、これは首都の再生、大都市の再生がすなわち国の再生につながるからこそ、今度も法律ができたわけでありまして、その中で行われる国の直轄事業であろうと、地方への影響が大きいため、地方公共団体と十分にもともと協議して行うべきであります。
 それで、どの道路を、国道を直すか直さないかということについても、国が一方的に決めて、その後その分担を強いるということは、本当におかしな制度だと私は思います。国事業の維持管理費まで負担させられている現在の制度は本当におかしいと、かねてから強く主張してまいりました。
 これまでも具体的な改善策を国に求めてきておりますが、今後とも、国に対して制度の改善を積極的に働きかけていくつもりであります。
〇吉田委員 二年越しの議論ですけれども、改めて、間違いである、おかしいということを知事いわれました。首都再生についての考え方は違いがありますけれども、おかしいという点では一致をしているわけですから、(笑声)ぜひ、国に積極的にこれは働きかけていただきたいということを改めて強調しておきたいと思うんです。
 二百億円の直轄事業負担金、この中で、都債を使わずに現金が直接投入される一般財源は八十七億円です。これは決して小さい金額じゃありませんよ。例えば老人医療費助成制度をもとに戻すのが八十七億円という金額もあります。それだけではなくて、やはり今求められていることは、直轄事業負担金の見直しだけではなくて、大型開発などの不要不急の事業の見直し、大半が不用額として使われていない、残されている用地会計への繰出金の削減など、財源はまだ努力をすれば確保できると思うんです。厳しい財政のもとでも、メスを入れるべきところにメスを入れれば、まだ都民のための施策を拡充することは十分可能だと思うんです。議論になった慢性肝炎の通院医療費助成を継続するには、来年度では五億円です。母子保健院、この継続、九億七千万円です。さらに不況対策や三十人学級を初めとする準備の問題、こうした点に本当に税金の使い方を改めて努力をするということが求められているのではないでしょうか。

都債発行を現在の水準で発行しつづけた場合、三十年後の都債残高は約七兆円

 財政運営で次に述べておきたいことは、やはり避けて通れないのが借金依存からの脱却問題です。
 確かに、九〇年代当初の一兆円を超える都債から比べれば減ってきていますけれども、今日の厳しい財政状況のもとで一層の抑制が求められているのではないでしょうか。
 来年度予算案で投資的経費を九百十一億円に抑制したというふうに伝えられておりますけれども、特別会計に移った住宅局分を含めると、ほぼ今年度と同水準、さらに最終補正予算で一体ととらえれば、逆に投資的経費が八百七億円の増となるという状況であります。
 決して投資的経費一般に反対しているわけではありません。公共投資は、財政状況も勘案しつつ、生活道路、都市公園、都営住宅、さらに介護基盤整備など都民生活に欠かせないものは優先すべきなんです。不要不急の大規模開発や取り返しのつかない環境破壊となる事業は、抜本的に見直すべきだというのが私たちの立場であります。
 この投資的経費の見直しの問題は、私、二つの側面があり、検討が求められていると思うんです。
 一つは、今いった過去の公共事業の借金のツケが、財政難を理由に今日の都民サービスにしわ寄せとなっている問題です。もう一つ重大なことは、将来への影響ということです。
 「都財政の収支見通し」、ことし発表されましたけれども、都財政収入の見通しが厳しいとして、二〇〇六年まで都債の発行を三千五百億円にするということが書かれています。この水準で都債を発行し続けた場合に、条件として二回、五八%ずつ借りかえをするというふうにした場合に、三十年後の都債残高は一体幾らになるでしょう。
〇安樂財務局長 ご質問のように、都債の発行額を三千五百億円に固定して試算いたしますと、三十年後の都債残高は六兆七千億円となる見込みであります。これは、十四年度末残高の七兆二十四億円に比べて、三千億円程度減少する計算になります。
 しかし、この計算は、都債発行を三千五百億円に固定するというほかに、ただいまお話がありましたように、十年満期ごとに五八%の借りかえを二回行う、これによって三十年間、現行の慣例的な都債発行ルールをそのまま続けるとしての機械的な計算であります。
 しかし、実際の都債の発行というのは、現実には毎年度の財政状況によって変動するものでありますし、最も弾力的な運用を必要とするものの一つであります。このような機械的な計算を前提とした三十年間という極めて長期間にわたる試算、どこまで意味があるかというのは若干疑問なしとしない……。
〇吉田委員 意味がないといいますけれども、あなた方が発表した財政収支の見通しの中で、極めて機械的に同額で並んでいるんですよ。こういうことを続ければ、将来にわたって都債残高が現状から見ても減りませんよと、そういう、いわば財政の基本的なスタンスについて、私は改めてこの機会に問いただしたのであります。
 こういう借金依存体質が続けば、そのツケというものは、当然将来の世代にかかる。例えば、ほぼ七兆円の都債残高が続くということで検討した場合に、利払いだけで毎年二千億円ということになるんです。都民四人家族で毎年七万円利払いになるということですよ。
 そこで、改めて−−金額的な問題はいろいろ、でこぼこあるでしょう。しかし問題は、やはり将来に負の遺産を残すような都債発行は慎重に行うべきだということが当然のことだと思うんですが、知事、お考え、いかがですか。
〇石原知事 都債も国債も一種の借金の手だてであります。共産党は理解にほど遠いかもしれませんが、経済というものは、場合によったら、あえて借金をすることで経済としてのダイナミズムを発揮するわけでありまして、今、世界じゅうでIMFが総スカン食っているのは、ばかの一つ覚えみたいなその手法でしか出さない。いわゆる縮小均衡というんでしょうか、すべての借金を封じる手だてを講じるために、IMFが扱う途上国はますますその泥沼に陥っていくというのが通例でありますけれども、そういう観点を踏まえて、都債は必要に応じて講じられるべきものだと思いますが、しかし、おっしゃるとおり、これが過剰に発行されますと、大きな禍根を将来に残す。そのときには私たちが生きているか生きていないか知りませんが、負の遺産を残すことになります。
 いずれにしろ、都債は、幹線道路や公共交通網の整備、交通渋滞の解消など、その便益が将来に及ぶ都市基盤整備の財源として、世代間の負担の公平を図るという重要な機能を有するものと心得ております。
 このため、都債については、将来の財政負担に十分に配慮しながら、その時々の経済情勢や都財政の状況に応じて、有効に活用していく必要があると思います。
 現在は、財政構造改革の一環として、新たな都債の発行を極力抑制しつつ、都市再生などの投資効果の高い事業に重点化を図っているところでありまして、こうした都債の適切な活用を継続していけば、都民の期待に必ずや将来にわたってもこたえることができると心得ております。
〇吉田委員 過剰であってはいけないということが知事からもいわれましたけれども、しかし、今の状況を推移すれば、都債残高が将来にわたっても七兆円レベルが続く危険性があるということを私は指摘をさせていただきました。
 しかも、これから当然かつてのような経済成長を今の段階で望むことはできません。さらに、少子化の進行などの状況があるわけですから、私は、やはり将来の世代に負担を残すというような事態を避けるために全力を尽くすべきですし、また、都市再生という問題についても、真に都民生活に直結したものが求められているというふうに思うんです。

収支のやりくりにすぎない臨海副都心開発の長期収支の見通し

 次に、今の問題に関連いたしまして、臨海副都心開発、先ほども議論がありました。知事は、昨年のこの予算特別委員会で、我が党の議員の質問に答えながら、進むも地獄、退くも地獄という発言をされましたけれども、今日ますます深刻な事態を迎えていると思います。
 先日、東京都は、臨海副都心開発の長期収支の見通しを発表いたしました。そこでは、収入の確保策として処分用地を全面売却に切りかえ、支出については見直しで約千三百四十億円の削減を打ち出しております。問題は、このプランで利息を含めて約八千四百億円の借金の返済を無事済ますことができるかどうかという問題だと思うんです。
 見直しでは平成三十一年、つまり十七年後には収支均衡させることができるというふうに述べていますが、これをやはり検証することが議会としても問われていることだと思うんです。
 それなら、毎年の収入と支出を算出した計算根拠があって当然だと思うんですけれども、この長期収支試算の前提となる各年度ごとの収支見通しはどうなっているのか、簡潔にお答えください。
〇川崎港湾局長 臨海副都心開発事業は、料金など毎年度の安定的な収入を見込むことができるほかの公営企業事業とは性格が異なり、収入の多くを年度ごとの額を見込むことが難しい土地処分によっております。そのため、将来の各年度ごとの収支を見通すことは、事業の性格上なじまないものと考えております。
 したがって、従来から、長期収支の試算には、事業の開始から収支均衡年度までの間の収入と支出の累計額を計上しており、今回の試算においても、前回同様、平成三年度から二十五年度までの間に土地処分が完了することを前提としております。
〇吉田委員 二問続けて質問いたしますけれども、二つ目に、やっぱり長期収支の最大の前提は、未利用地をすべて売却することができるかどうか。それが計画したような金額で果たして売ることができるかどうかという問題だと思うんですけれども、この土地区画ごとの売却予定価格はどのように設定しているのか。
 さらに、臨海副都心開発の単年度収支で黒字を達成するのは一体いつになるのか、そういう見通しを示すことができるのかということについて、簡潔にお答えください。
〇川崎港湾局長 まず最初の土地区画ごとの売却予定価格についてですけれども、平成九年の長期収支試算では、平均土地価格を一平方メートル当たり百十四万円と設定しておりましたが、今回の試算では収入見込み額の精度を高めるため、基準標準画地の価格をもとに、現時点における区画ごとの価格を設定して収入額を積算しております。
 従来から区画ごとの価格につきましては、公募する時点で参考価格として示しており、最終的には契約直前の財産価格審議会の評定を経て決定してきております。将来、いつの時点で公募するか未定の土地の価格を明らかにすることは、今後の土地処分に支障を来すため、お示しすることはできません。
   〔吉田委員「二つ目」と呼ぶ〕
〇川崎港湾局長 次に、単年度収支で黒字を達成するのはいつかということでございますけれども、この事業は、収入の多くを年度ごとの額を見込むことが難しい土地処分によって得ていると、先ほど答弁したとおりでございます。
 これは例えばの話ですけれども、今後、数年間処分がほとんど進捗しない可能性もあるし、反対にここ二、三年のうちに、現在公募している区画すべてが処分できることも全く否定されるものではございません。このように土地がいつ売却できるかについて確定できない以上、単年度ごとの収支については意味をなさないものと考えております。
〇吉田委員 結局、収支の見通しは出したものの、その裏づけになる単年度、あるいは土地価格等々については何ら具体的な根拠を示すことができないというのが現状なんですよ。

七年後までに、利息を含め約三千億円の土地が売れなければ、資金ショートをする

 それだけではありません。重大なことは、この二十年後に収支が合えばいいという問題ではないんですよ。それぞれの年度ごとにこれだけ返さなければならないという問題に直面をするわけですよ。それにふさわしく土地の売却ができるかどうか。できなければ、長期的には見通しがあったとしても、直ちにその段階でショートしかねないということだと思うんですね。
 短期、中期にわたってそれぞれ危険をはらむものですけれども、例えば長期という点で見れば、これは港湾局からいただいている説明によれば、二〇〇六年十二億、二〇〇七年百九億、二〇〇八年三百九十七億、ここまではまだ低いのです。しかし、二〇〇九年千五十三億円、二〇一〇年千三百四十億円、これだけの返済がその年度、年度ごとで求められるわけですよね。あと七年後の二〇〇九年、そして二〇一〇年までに利息を含めれば約三千億円の土地が売れなければ、資金ショートをするというのが現状だと思うんです。
 それで、実際、第二次公募に取り組み、しかも昨年七月、土地が売れなければ民間会社だったら倒産だというハッパをかけて、課長級の職員四十数名ですか、二千社に対するセールスを行うということをしましたけれども、現時点で聞いている話では、売れたのは一社のみという状況なんですよ。(「頑張っているじゃないか」と呼ぶ者あり)私は、本当に幹部職員の方々は頑張っていると思うんですよ。
 しかし、どんなに局長がしりをたたいて、頑張れ頑張れといっても、やはり今の状況では売れないという現実があるということを、私は、やっぱり直視をすることが今求められていると思うんです。

冷静に考えれば、安定的に土地が売却できる保障はない

 これは、不動産業界では常識な話ですけれども、二〇〇三年問題という言葉が不動産業界で大きな問題になっています。今、バブル期をはるかに上回るオフィスビルの過剰供給が引き起こされている。これは二〇〇三年にとどまらず、さらに将来にわたって続くだろう。しかも、供給は過剰だけれども、新たな需要の見通しはない、これが共通した指摘であります。
 日経新聞なども、オフィス需要が冷え込んで、東京の空室率は四%台だというふうに書いています。「エコノミスト」の二月二十六日、これは都市再生が逆効果を及ぼしていると。すなわち、二〇〇四年以降もビルの大量供給が広がって、ビル市況は不況であるということを書いております。また、「不動産研究」という雑誌では、新たな需要があったとしても、それは新規ではなくて、既存の企業が入りますから、従前入っていたビルが丸々あいてしまうという点では、深刻だという指摘をしているわけですよね。
 ですから、どんなに努力をしても、今日の状況というものを冷静に判断をすれば、都心部を含めたビル不況というものが広がっているときに、いわば飛び地のような状況のこの臨海部で、予定したとおりに土地が売却できる、あるいはビルが埋まるという何ら保障というものはないというのが現状だと思うんです。
 それで、そういう状況を含めて、知事に改めて質問したいわけですけれども、知事はもともとこの計画、プランについては全面見直しをするんだというふうにいっていますけれども、このプランなるものは、ただ収支のやり繰りをしているだけですよ。何ら全面的なフレームの検討もされていないじゃないですか。これが全面見直しですか、知事にとって。お答えください。
〇石原知事 基本的にあすこの余っている土地をリースするという建前を今度変えまして、売却するわけでありますが、そういうものも含めて臨海副都心の開発もまた全面的な見直しの必要があるということを申し上げました。
 依然として変わらない厳しい環境の中で、引き続きこの開発を推進していくために、バブル崩壊後の事業のあり方を徹底的に見直したのがこのプランでございます。
 本年十二月にりんかい線が大崎に延伸することになりまして、交通基盤が従来よりもはるかに整備されまして、さらにあの地域の魅力なり可能性が開発されていくと思います。この地域は必ずや飛躍的な発展を遂げて、都全体、国民全体の大きな財産となるものと確信しております。引き続き都の総力を挙げて開発に取り組んでまいります。
 それからもう一つ、私からお願いといいますか、質問は許されないようですから、申し上げたいことがありますが、先ほどのご発言の中で、世田谷の育成医療センターの件についてのパンフレットと厚生省の役人の発言の食い違いがありました。指摘がありました。
 これは聞いて、多くの都民が不安にさらされるかと思いますので、ぜひパンフレットにあるのと違った発言をした厚生省の役人がいかなる部局のだれということかを、ひとつ区民、都民の不安を晴らすために、公党の責任においてはっきりと今会期中にご回答願いたい。
   〔「そうだ」と呼び、その他発言する者あり〕
〇吉田委員 まず、臨海について述べさせていただきますけれども、先ほどから述べているように、このビル不況、さらに経済悪化という状況の中で、しかし、知事が全面見直しだといって示したプランは、例えば就業人口も何ら見直しをしていない。青島知事時代につくったものを、そのまま進めるんだというものなんですよ。(「そうじゃないよ、よく読みなさい」と呼ぶ者あり)ですから、私は、改めて全面的な見直しが必要であるというふうに述べました。
 同時に、母子保健の問題については、これは私は、逆に衛生局が明確に、この間の厚生省と会って、どのような話をし、どのような回答を得ていたかということを、知事に明確に説明すべきである。(発言する者多し)そのことをあいまいにして答弁をしたところに最大の問題がある。必要なら後で知事に説明しますよ。そのことを明確に述べておきます。(発言する者多し)
 以上で終わります。(拍手)
〔「だめだよ、そんな適当なことをいっちゃ」と呼ぶ者あり〕
〔吉田委員「何いってんだよ」と呼ぶ〕
〔石原知事「役人の名前、教えるんだな」と呼ぶ〕
〔吉田委員「ちゃんといいますよ、知事には、そんなことぐらい。あなたも調べなさいよ、それだったら衛生局に」と呼ぶ〕
〔発言する者多し〕
〔吉田委員「衛生局の説明が悪いんだよ」と呼ぶ〕
〇星野委員長 吉田信夫理事の発言は終わりました。