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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

2002年第1定例会文書質問

河野百合恵(江戸川区選出)  2002年3月27日

林業振興策と住宅支援について

 

長期的見通しをもった森林再生のプランづくりを
公共施設への多摩産木材の積極的利用について
「多摩の森林再生計画」による切捨て間伐について
多摩産材活用促進の仕組みづくりについて

 

  私は、林業振興策について質問します。
 東京都の総面積の36%、79000haを森林が占めています。なかでも、多摩地域の森林は52000haで、東京の総面積の約24%におよんでいます。多摩の森林保全と林業の振興は都政の重要課題であり、多摩振興にも大きな力となるものです。多摩地域の森林は、戦後植林された人工林が充実期を迎えており、蓄積量は年々増加しています。しかし、国の林業政策の後退・切捨てが林業の衰退をまねいて、多摩の木材は有効利用されず、森林は荒廃の一途をたどっています。
 東京の森林を守る林業従事者は、1995年で682人と10年間で82%に減少しています。森林組合の作業班員の平均年齢は63歳で、高齢化と後継者難は深刻です。
 多摩地域では、所有面積5ha未満の森林所有者数は88%、面積は16%であり、20ha以上の所有者数は3%、所有面積は65%を占めています。寡少な面積しか所有していない林業家が圧倒的多数です。加えて、輸入外材などの影響による木材価格の低落と循環低下、人件費や造林経費の増加、相続税の負担の重さなどにより、林業経営が困難を極め、森林整備の遅れに重大な影響を及ぼしています。昨年6月に改正された森林・林業基本法では、「木材産業等の健全な発展」が位置付
けられ、地方公共団体の責務として「基本理念にのっとり、森林及び林業に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」としています。ふりかえって、これまでの東京都の林業施策はどうだったでしょうか。森林再生・林
業振興には国の取り組みが欠かせませんが、東京都の林業予算自体が毎年削減され、1996年度の64億円から2001年度は27億円にまで減っています。これまでのような東京都の姿勢では、森林の保全・林業の振興を進めることはできないのではないでしょうか。東京の森林を再生するために、今、求められているのは、多摩産材の利用促進と林業を振興することです。多摩の林業にかかわっている業者からは、多摩の木材を循環させることが、森林再生の大きな力になること、同時に、もっと安定した供給体制と需要の拡大が必要であるとの声が強まっています。
 こうした状況をふまえて、以下、質問します。

1.長期的見通しをもった森林再生のプランづくりを
 今年4月から、東京都農林漁業振興対策審議会では「21世紀の東京の森林整備のあり方と林業振興の方向について」という諮問を受けて、答申作りが行なわれると聞いています。その際に重要なのは、関係自治体・森林組合・山林所有者などの参加です。
 ここまで荒廃してきた森林の再生には、長期的視点に立った林業従事者の育成などが欠かせません。東京都も多摩の森林再生について、「急峻な斜面や、林道が整備されていない場所も多く、山仕事のプロとしての地元林業従事者の活用が不可欠」と説明してきました。
 新年度から「東京の森再生プロジェクト」がスタートすることになり、地元自治体や森林組合は、この事業が長期にわたって実施されれば、人材育成を含めて、長期的な戦略を立てることが可能になると歓迎しています。
@4月から予定されている東京都農林漁業振興対策審議会の中間答申、最終答申のまとめにあたっては、公聴会を開催することや審議会として多摩の現地調査を行なうことなど、地元自治体・森林組合・山林所有者などの意見を反映できるように東京都としても努力することを求めます。
また、長期的・総合的視点に立った東京の森林再生のためのプランを策定するよう求めます。見解を伺います。

2.公共施設への多摩産木材の積極的利用について
 東京都は1998年5月に「東京都木材利用推進連絡会」を設置し、その目的を「森林資源を持続的に利用する都の林業・林産業は、需要の減退と価格の低迷から厳しい状況におかれている。一方、都は社会の持続可能な発展のため、環境への負担ができるだけ少ない『循環社会づくり』を重要な政策課題として位置付け、その推進に取り組んでいる。都の林業・林産業の振興を図るため、庁内関係部局相互の連絡・調整、情報交換を密にし、公共事業における積極的な木材の利用推進」としました。そして、公共土木工事、公共施設への木造化・木質化などを目標にしてきました。
 しかしながら、「東京都木材利用推進連絡会」が設置されているにもかかわらず、実際の公共施設整備における木材の利用実態は把握されていません。
 東京都の2002年度予算案を見ると、施設整備費は例えば、福祉費で518億円、教育費で218億円とかなりの予算額になっています。保育園・特別養護老人ホーム・病院
・学校・体育館をはじめ、住宅局関連でも、都営住宅のリフォーム、建設などに多くの住宅資材が使われます。
 東京都が「木材の利用実態さえ把握していない」という現状を改め、公共施設で多摩産材を積極的に利用促進していくことが求められています。
 秋田県では、公共建築物の木造化、内装木質化、並びに公共土木工事への間伐材利用を進めるために県庁内に副知事をトップに各部局長を委員とした県産材利用推進会議を設置しています。宮崎県では、県産材利用推進委員会を設置し、県営事業・補助事業等における木材利用推進や施設の木造化及び木質化の推進を図っています。
@ 「東京都木材利用推進連絡会」が公共施設整備における多摩産材の利用実態をきちんと調査し把握できるようにすること。また、公共施設整備への多摩産材の利用目標値を決め、促進を図ることを求めます。合わせて、見解を伺います。
 区市町村への支援策も重要です。埼玉県では、施設整備の内装・外装に県産材利用についての助成を行い、県産材を使用した学校の机・椅子への助成をしています。岡山県も、小・中学校における県産材の利用への補助をしています。  
A東京都でも、区市町村が施設整備をする際に多摩産材を利用するよう働きかけをし、実際に利用した場合は、木材費の一部を助成することなどの促進策を講じることを提案するものです。所見を伺います。

3.「多摩の森林再生計画」による切捨て間伐について
 東京都は2002年度の重点施策として「東京の森林再生プロジェクト」をうちだしました。これまでの産業労働局を中心とした林業施策に加えて、環境局・建設局・水道局の四局がそれぞれ森林再生に取り組む事業です。
環境局の「森林再生」は、今後50年にわたって多摩の山林18000haを間伐し森林を守るという事業で、これにより新たな仕組みのもとで広範囲に間伐が行なわれることになります。初年度は960haの間伐が予定され3億5000万円の予算が計上されていますが、間伐材の処理費用は含まれていません。環境局の事業が切り捨て間伐となれば、さまざまな問題が発生することが予測されます。
昨年9月の台風15号による被害状況に見られるように、間伐した材木の置き方に注意しなければ、災害の原因になります。さらに、森林総合研究所は、スギ・ヒノキの材質劣化害虫の1種であるニホンキバチが切り捨て間伐を中心に局所的に多発することがあるとの研究結果を発表しています。放置された間伐材が腐食する時に出るCO2で温暖化現象を加速させるという指摘もあります。
こうした問題の発生を防ぐうえで、間伐材の活用は大切な課題です。
間伐材の活用については木質バイオマスが注目されていますが、木材利用は地球温暖化防止に効果があると期待されています。木材を利用することで炭素固定を行なうことができ、さまざまな木製品は「町の中の第2の森林」と言われています。
残念ながら間伐材は、木材流通価格の低迷、搬出コストの問題などから、なかなか利用が進んでいなかったり、切捨てが主になっているのが現状です。
 そもそも、これまでの都の事業では、間伐の方法や利用間伐について、森林の荒廃に歯止めをかけるには十分な取り組みとは言えなかったのではないでしょうか。
@今後「東京の森再生プロジェクト」として行なわれる間伐には、関係各局の連携はもちろんのこと、地元の自治体・森林組合・山林所有者や利用者を含めて協議会をつくり、「東京の森林再生」に役立つ間伐方法や間伐材の利用の検討を進めるように求めます。見解を伺います。
 
4.多摩産材活用促進の仕組みづくりについて
 多摩の森林の再生や、山林地域の街づくりにあたって、住宅建設の側面から考察していくことは、安心して住める住宅づくりにもつながります。それ故に、個人住宅への多摩産材活用促進の仕組みづくりも大切な課題です。
 多摩の木材を積極的に利用した家づくりをすすめる「東京の木で家をつくる」などの取り組みが進んできています。
東京都は昨年11月に、木材生産者・工務店・設計者・都民が情報を共有できるネットワークとして、住宅局・産業労働局が関わり「東京の木・家づくり協議会」を発足させましたが、東京都としても、「地産地消」の考え方に立って、個人住宅への多摩木材の活用について、足を踏み出すべき時ではないでしょうか。
 近年、奥多摩森林組合では、生活協同組合などに多摩の材木を自然乾燥させて出荷できるようになっていて「品質が良い」と喜ばれています。また、桧原村森林組合も内装材を中心にプレカットして出荷しています。それでも、まだ製材機械の稼動状態は5割程度にとどまっています。より良質の(含水率が少ない)木材を供給して行くうえでは「ストックヤードが必要である」との強い要望もあります。
@ 多摩産材の安定的供給のために、東京都がストックヤード設置にむけて支援するように求めます。
A 大手ハウスメーカーが率先して多摩産材を活用するよう、東京都が働きかけを行なうことを求めます。
B 今後、さらに需要を開拓していくためには、家を建てる人・工務店・設計者に多摩産材の良さを知ってもらう必要があります。多摩産材のPRのためには、展示や交流の場などの仕組みづくりが不可欠です。東京都として、具体的にどのような支援策を進めようとしているのか伺います。
以上、3点について答弁を求めます。
 1999年8月の「住まい及び住宅政策に関するアンケート」(住宅局)によると、都民は住宅に関して多くの要望を持っています。
 都内には、新耐震基準が施行された1981年以前の建物は、40%以上あります。また、バリアフリー住宅の割合は5.4%という水準です。都内には、潜在的に住宅リフォーム需要は相当の量があると言えます。
 全国各地では、林業振興と住民の住宅支援を結びつけた取り組みが進んでいます。
岩手県、三重県、島根県、岡山県、徳島県、愛媛県、高知県などでは地場産材を利用した木造住宅の建設、購入した人に借入金の利子補給や助成などを行なっています。
@東京都として、都民が家を新築・リフォームする際、地元工務店が多摩産材を利用して施工した場合、借入金の利子補給や、木材費の一部を補助する制度を設けることを求めます。見解を伺います。
 現在、東京都では個人住宅に関する相談体制で、建築基準法に関わる問題は都市計画局、有害化学物質の室内汚染などの問題は衛生局か環境局、不動産取引でのトラブル問題になると住宅局の不動産指導、住宅建設資金融資あっせんは住宅局開発調整部など各担当ごとの対応になっています。
 2000年4月には「住宅の品質確保の促進に関する法律」が施行され、東京都でも有料ではありますが、測定器貸し出し、有害化学物質の室内汚染に関する相談など、住宅局が対応を始めています。
 また、室内の化学物質対策については、居住者の健康や住まいについて配慮するために、設計・施工者に指示し、設計や材料選択が適切か建築現場で正しく施工されているか、住宅を購入する際の注意など、都立衛生研究所や衛生局での取り組みが行なわれてきています。しかしながら、まだ個人住宅について総合的に相談にのれる体制は十分とは言えません。
@ 都民の住宅取得などについて、都に総合的な住宅相談窓口を設け、様々なトラブルの解決、新しい住宅の建築相談など、都民の住宅関係の問い合わせにワンストップサービスを提供できるような制度をつくるべきと考えます。答弁を求めます。

文書質問に対する答弁
質問事項一、林業振興策と住宅支援施策について

1. 農林漁業振興対策審議会のまとめにあたって、公聴会の開催や多摩の現地調査を行うなど、地元自治体、森林組合、山林所有者等の意見を反映できるよう努力すべきであるが、見解を伺う。また、長期的、総合的視点に立った東京の森林再生のためのブランを策定すべきだが、見解を伺う。
<回答>
 審議会には、地元自治体、森林組合、森林所有者及び学識経験者などにも委員として参画していただくとともに、今回、特に専門的事項を調査、審議するための専門員を委嘱・活用して、地元の意見や専門的意見を十分反映できる体制を整えています。また、審議会の答申をまとめるにあたっては、中間のまとめを公表し、広く都民の意見を聴く予定にしております。都としては、長期的かつ総合的な視点に立って、今後対応してまいります。

質問事項一の2.
 公共事業における積極的な木材の利用促進について
ア、「東京都木材利用推進連絡会」が公共施設整備における多摩産材の利用実態を調査把握できるようにすべきだが、見解を伺う。また、公共施設整備への多摩産材の利用目標値を決め、促進を図るべきだが見解を伺う。
<回答>
 東京都木材利用推進連絡会は、循環型社会づくりの推進と都の林業・林産業の振興を図るため、庁内関係部局相互の連絡、調整及び情報交換を密にし、公共事業における積極的な木材の利用を推進することを目的に、平成10年度に設置したものです。この連絡会では、庁内の木材利用実績を毎年調査しており、今後とも、利用実態の把握に努めてまいります。また、現在、東京都農林漁業振興対策審議会に対し「21世紀の東京の森林整備のあり方と林業振興の方向」について諮問しており、その中で、多摩産材利用促進の方策について審議していただいております。都としては、その答申を踏まえて、公共施設への利用促進策を検討してまいります。

質問事項一の2
イ,都は、区市町村が施設整備をする際に、多摩産材利用の働きかけをし、実際に利用した場合は、材料費の一部を助成ずるなど促進策を講じることを提案するが、見解を伺う。
<回答>
 多摩産材の利用拡大を図るためには、都や区市町村が率先して木材を使用することが重要であると考えています。このため、現在、東京都農林漁業振興対策審議会で「21世紀の東京の森林整備のあり方と林業振興の方向」について審議していただいており、多摩産材の利用促進策については、その答申を踏まえて検討してまいります。

質問事項一の3.
 今後、「東京の森再生プロジェクト」として行われる間伐には、関係各局の連携はもちろんのこと、地元自治体、森林組合、山林所有者及び利用者を含めて協議会をつくり、「東京の森林再生」に役立つ間伐方法や間伐材の利用の検討を進めるべきだが、見解を伺う。
<回答>
 間伐材については、木材資源活用の観点から、都は、これまでも間伐材の搬出経費の補助や、土木資材、建築資材など幅広い分野での間伐材の活用を進めてきました。間伐方法等については、地元自治体、森林所有者及び木材流通事業体等で構成され、流域内の森林の整備及び木材の生産、流通の活性化を協議するために設けられた東京都流域林業活性化協議会などの場を活用して検討してまいります。なお、今年度から実施する「多摩の森林再生事業」につきましては、その具体的方法を地元自治体等と協議しながら行ってまいります。
質問事項一の4.
 多摩産材活用促進の仕組みづくりについて
ア、多摩産材の安定的供給のために、都がストックヤード設置にむけて支援をすべきだが、見解を伺う。
<回答>
 多摩産材の安定供給と品質確保のため集荷と製品保管機能を持つ拠点整備は重要であると考えています。このため、都としては、東京都森林組合が進めている製品の保管及び展示機能を持つストックヤードの整備について支援しております。

質問事項一の4のイ.
 大手ハウスメーカーが、率先して多摩産材を活用するよう、都が働きかけるべきだが、見解を伺う。
<回答>
 都は、多摩産材を活用した木造住宅の供給を促進するため、「東京の木・いえづくり協議会」を設立し、都民や住宅の生産に携わる方々(住宅生産業者、木材供給者)への情報提供を行い、多摩産材を使った家づくりの普及を目指しているところです。今後とも、住宅生産業者等に対して、多摩産材の利用拡大を働きかけてまいります。

質問事項一の4のウ.
 多摩産材のPRのためには、展示や交流の場等の仕組みづくりが不可欠であるが、都として具体的にどのように支援するのか、伺う。
<回答>
 都は、多摩産材を活用した木造住宅の供給を促進するため、「東京の木・いえづくり協議会」を設立し、多摩産材を使った家づくりのPRと普及を目指しています。また、この運動を盛り上げていくために、協議会に参画している「東京の木で家を造る会」や「生活協同組合・消費者住宅センター」などの各団体が進めている生産者と消費者の交流活動についても支援しているところです。

質問事項一の5.
 都民が、家を新築・リフォームずる際、地元工務店が多摩産材を利用して家を施工した場合、借入金の利子補給や木材費の一部を補助する制度を設けるべきと考える。
見解を伺う。
<回答>
 都においては、今後の民間住宅施策としての個人住宅への利子補給は、木造住宅密集地域での防災性の向上を図るための制度に限定して実施することとしています。都としては良質な建築資材が市場において活用されることが、必要と考えており、平成13年11月に設立された「東京の木・いえづくり協議会」を通じて、良質な多摩産材の普及を関係機関に働きかけていきます。

質問事項一の6.
 都民の住宅取得などについて、都に総合的な住宅総合窓口を設度をつくるべきだが、見解を伺う。
<回答>
 都民の住宅取得などに関する様々な問題の解決は、本来、都民の自助努力によるべきものと認識しています。行政は側面的な支援として相談業務を行うもので、基本的には住民に身近な区市町村の窓口で行なうものと考えています。都においては、不動産トラブルについての弁護士相談をはじめとする専門的な相談を行っています。これらの相談に際しては区市町村の窓口と連携して、取り組んでいます。