■ 議会での質問 日本共産党東京都議団 |
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日本共産党を代表して質問します。
九月十七日の日朝首脳会談で、「日朝共同宣言」がかわされ、国交正常化交渉の再開が合意されました。
北朝鮮が、国際社会におけるルールについて、国際的常識が通用しない国だけに、対話のルートをひらき、交渉をつうじて両国の間にある様々な問題の解決をはかることが何よりも求められていました。今回の合意は、その道をひらいたものとして重要な前進です。 わが党は、一九九九年一月の国会質問で、日朝両国間の対話のルートをひらき、ミサイル、拉致問題、過去の植民地支配の清算などの問題を、交渉によって解決していく道をすすむよう提案した党として、心から歓迎するものです。国民の多くのみなさんも今回の合意を支持し、国際的にも高い評価をうけています。
今回の大きな問題に、北朝鮮が日本人拉致問題など国際的な無法行為をきちんとただすかどうかがありました。その点で、北朝鮮が拉致問題をはじめて認め謝罪したことは重要な一歩です。しかし、安否がきづかわれていた被害者のうち、すでに八名の方が亡くなっていたという痛ましい事実が明かにされたことはあまりにも衝撃的でした。
わが党は、拉致という許すことのできない犯罪がおこなわれたことに対し、きびしく抗議するともに、帰国をはたせず亡くなられた方々と、そのご家族に心からお悔やみをもうしあげます。
発表されたものがすべてなのか、事実に相違ないのか、拉致問題をおかした責任者は誰で、被害をうけた方々がどのようなあつかいをうけたのかなど、真相の解明はこれからです。
わが党は、国交正常化交渉によって、日朝間の懸案が道理ある形で解決され、日朝間の関係が敵対から協調に転換することをつよく願うものです。そして、このなかでこそ、拉致問題の真相解明と責任者の厳正な処罰、被害者への謝罪と補償などの解決がはかられることを強調するものです。
本都議会は、本日、「北朝鮮による日本人拉致問題に関する意見書」を採択しました。自民党などの意見書案は、「政府が北朝鮮との国交正常化交渉の前に、全力をあげて拉致問題の全容を解明」することを求めるものです。この文案では、小泉首相の正常化交渉のなかで拉致問題の全容を解明するという方針とはことなり、政府の手をしばるものです。そればかりか、拉致問題の全容を解明することを正常化交渉の前提にすえることになれば、話し合いそのものをストップさせることになり、結局は、問題の解決の道をもふさぐことになりかねません。
わが党は、この立場から議会運営委員会理事会において、「正常化交渉の前」でなく「正常化交渉のなかで」と文案の修正を提案し、全会一致で採択するよう主張しました。残念ながらこれは不調となり、わが党の修正案を本会議に、上程するに至らなかったことはきわめて遺憾です。
わが党は、「全力をあげて拉致問題の全容を解明」することは当然必要なことであるという大局の立場にたって、今回の意見書に賛成しました。今後とも、小泉政権が国交正常化交渉のなかで、拉致問題の全容の解明をはじめ様々な懸案事項の解決をはかるという道を切り開くことを心からのぞむとともに、国政上の基本的問題では小泉内閣と一番対決している党ですが、国益にかかわるこの問題については協力を惜しまないことを申しのべておきます。
長期不況と、大企業のリストラの嵐のもとで、都民のくらしと営業は、ますます、苦しさをましています。
都内製造業は、この十年間に、北海道分の事業所と従業員が消滅、都内勤労者の消費支出は前年を二%も下まわりました。失業者も六%をこえ、生活保護受給者は、十五万人をこえ、この十年間に一・七倍も増加しました。
くわえて、小泉政権は、この十月からの医療費改悪をはじめ、年金支給額の削減、介護保険料引き上げなど三兆円をこえる負担を国民に押しつけ、消費をいっそう冷え込ませる政策をおしすすめようとしています。
このようなときに、東京都にもとめられるのは、都民のくらしと営業をまもるために、全力をつくすことではないでしょうか。ところが、石原知事が福祉、医療、教育のあいつぐきりすてを、いっそう大規模にすすめようとしていることに、都民の怒りがひろがっています。
医療の問題では、今定例会に母子保健院の廃止条例を提案し、さらに今後、都立病院を半分に減らそうとしています。
母子保健院は、小児科、産科と、福祉施設である乳児院を併設しており、妊娠から出産、子育て支援まで総合的にとりくむ「母と子の安心センター」として、都民からあつい信頼を受けています。そして三百六十五日二十四時間、いつでも救急の子どもを受け入れて、世田谷区民はもちろん、杉並区をはじめ周辺住民にとってもかけがえのない役割をはたしています。
だからこそ、存続をもとめる署名は九万をこえ、「母親が安心して産み、育てられる条件整備が少子化をくいとめる必要条件です。このような時に母子保健院のような施設をなくさないでください」「子どもの救急医療機関はふやすべきで、減らすなんて絶対にあってはならないと思います」などの声が、続々とよせられているのです。
東京都は国立成育医療センターがあるから大丈夫だといってきましたが、それだけでは不十分だから、世田谷区は小児初期救急医療施設の開設を提案しているのではありませんか。しかしこの施設も、夜七時から十時までの初期対応しかできず入院ベッドもありません。母子保健院のかわりになるものではないのです。
深夜に突発的な病気を発症することが多く、急変しやすい乳幼児にとって、いつでも対応できて入院ができる小児救急医療機関が身近な地域にあることは欠かせません。不採算で、小児科や産科が減少し夜間診療から撤退しているときに、都立病院がその役割をになうのは当然のことです。母子保健院の廃止は、小さな尊い命の一つひとつがまもられるかどうかに直結した問題であります。
知事は所信表明で、夜間突然の発病にも対応できる小児救急医療機関の確保は切実なねがいであり、三百六十五日二十四時間の医療を実現していくと発言しました。それなら母子保健院の廃止はまったく逆行ではありませんか。廃止条例は撤回し、都立病院と民間医療機関、区市町村との連携もふくめた小児医療、小児救急の総合的な拡充策の検討をまずおこなうよう提案するものです。見解を伺います。
福祉の問題では、民間福祉施設への補助の抜本見直しと、都立福祉施設からの撤退を、「福祉改革」だといってすすめようとしています。これは、全国で有数の水準をきずいてきた東京の福祉をささえるしくみを、根底からくつがえすものです。
たとえば保育園のばあい、いままで東京都は、公立も私立も、同じように質の高い保育ができるように、低すぎる国基準に加えて保育士をふやしたり、ゼロ歳児保育をするときは保健士を配置するなどの運営費補助や、人件費補助をおこなってきました。これは保育園が、人格形成に大きな影響をおよぼす乳幼児期の生活と成長を保障する役割を発揮できるようにするためでした。
ところが福祉局が設置した委員会は、私立保育園をはじめ民間福祉施設への人件費補助の廃止と、その他の都独自補助の全面見直しを提言しました。そして東京都は、この問題提起をうけとめて検討していくとの方針を表明したのであります。
多くの都民から、「保育の充実が大事なときに、なくてはならない補助をけずらないで」という声があがったのは当然のことです。私立保育園連盟が「人件費を減らせば児童の処遇に多大なる影響をおよぼすことは明らか」であるとして人件費補助の廃止に反対を表明したのをはじめ、現在の保育・福祉の水準の維持を求める声が、大きくひろがっています。東京都市長会も、「福祉サービスの維持・向上を図る視点からは、民間福祉施設への適切な配慮が必要」だとの見解を明らかにしました。知事は、こうした声をどう受けとめているのですか。
知事は所信表明で福祉にたいする都の役割を、「区市町村や民間事業者を支援していくことに比重を移す」といいましたが、実際にやろうとしていることはまったく逆で、私立保育園など民間福祉施設への支援の大後退ではありませんか。民間事業者を支援するというなら、人件費補助の廃止や運営費補助の削減はしないことを明言すべきであります。お答えください。
しかも、知事は、週刊誌で「社会福祉法人なんて、もう東京みたいな大都市では役立たなくなってきた」と発言しました。しかし、ゼロ歳児保育や延長保育、子育て支援について、社会福祉法人が運営する私立保育園は、率先してとりくんでいます。いま東京都がもっとも力を入れている知的障害者や痴呆性高齢者のグループホームに、全国に先がけてとりくんだのは、東京の社会福祉法人ではありませんか。このような努力を無視して「役立たなくなってきた」などいうのは、暴論というほかありません。
東京都は、いっかんして民間社会福祉法人と協力して、東京の福祉を前進させてきました。都の支援があればこそ、社会福祉法人は思い切って先進的事業にとりくみ、新しいサービスをきりひらくことができたのです。実際に東京の保育園の四割、児童養護施設の八割は、社会福祉法人を中心とした民間福祉施設です。安定的・継続的にサービスを確保することや、弱者への配慮が必要な福祉事業にとって、営利の追求ではなく公益性の立場から福祉事業にとりくむ社会福祉法人の役割は、東京においても今後とも重要なものです。
知事、社会福祉法人の役割を否定する発言は撤回し、社会福祉法人と協力して東京の福祉を前進させる姿勢にたつよう求めるものです。
知事は、「これからの福祉は、多くの事業者が、競い合いの中から多様なサービスを提供し、利用者は、自分に最も合ったサービスを選択できる仕組みとすべき」だとも述べています。いわば、そのモデル事業として導入されたのが、営利企業による経営を基本とした認証保育所でした。そして認可保育所はわきにおいやり、認証保育所を中心にしようという方向をつよめています。これは、とんでもないことです。営利企業による保育が中心のアメリカでは、払える保育料の額で、保育サービスの質や量が左右される状況がうまれています。
認証保育所の状況はどうでしょうか。わが党は、現在五十三カ所の認証保育所A型のうち四十一カ所を訪問して、お話を伺いました。与えられた条件のなかで、がんばっている施設もたくさんありました。しかし、何よりも、保育料が高いことが大きな問題点です。一日十一時間、週に六日利用したばあいの保育料の月額をしらべましたが、ゼロ歳児のばあいに、いちばん安いところが四万三千円で、高いところは十二万円、このほか入会金もかかります。ちなみに杉並区の認可保育園利用者の平均保育料は二万三百円です。まさに、高い保育料を払える人でないと利用できないという実態がうきぼりになりました。
そしてそのほかでも、ひとつは、施設の狭さの問題があります。都は国基準にそったものだといいますが、施設整備の国基準が、子どもたちの成長・発達を保障することから見れば、いかに不十分なものかがうきぼりになりました。
ふたつに、保育士の賃金や働く条件が低いことです。正規職員でも年収で二百万円前後、認可保育所とくらべて比率が高い契約社員やパート職員の多くは、時給八百円から九百円ていどとなっています。これでは保育の質を高めるために大事な人材の確保、定着に大きな支障があることは明らかです。三つに、保育内容では、認可保育園では義務づけられている園児一人ひとりにたいする指導計画をもたず、実態としてはただあずかるだけというところもありました。
今回の調査で、保育の質を高めたいと真剣に努力している施設では、〃保育園は本来、認可でやる仕事。しかし圧倒的に足りないので、認証保育所は補完する役割がある。認証保育所のかたちでよいとは思っていない〃など、その限界をはっきり指摘し、認可保育所の役割を率直に評価する意見が、少なからずだされたことも印象的でした。
以上のことをみれば、若いファミリー世帯にとって認証保育所は、安心してあずけられるという条件では、やはり認可保育所にくらべて多くの不十分さがあることは否めません。認証保育所は、あくまで認可保育所の不足を補完する役割であって、これを保育の中心にすべきでないと考えますが、知事の見解を伺います。
都民の保育への要求に真にこたえるには、安心できる質の高い認可保育所の新設や増改築を基本にすえてとりくむ姿勢を明確にし、認可保育所でのゼロ歳児保育や延長保育の拡充ができるよう、あらゆる支援をつよめることが必要だと考えますが、お答えください。
都立福祉施設からの撤退も重大です。特別養護老人ホームだけで、二万五千人が入所待ちをしているのをはじめ、まだまだ施設が不足しているのに、都は、都立福祉施設の廃止や民間移譲を全面的におこなう方針をうちだしました。
わたしは先日、多摩療護園を訪問しましたが、最重度の障害者の入所施設で、大半の人が電動車イスやストレッチャーであり、介助なしに生活できない状態です。しかし施設では、一人ひとりの入居者の要望にそって、個別に買い物などの外出ができるよう職員が対応するなど、できるかぎり地域のふつうのくらしに近づけたい、ノーマライゼーションの理念を実現したいという努力を、職員が一丸となってつづけていることに感動しました。現場の方々は、入居者二・五人に職員一人という国の配置基準を大幅にうわまわる、入居者一人に職員一人という都立基準の職員配置が保障されているからこそできることだと、つよく訴えていました。
知事は簡単に、東京都は直接サービスの提供から手を引くといいますが、重度障害者施設のように、対象となる人数は少なく、採算もとれないために、民間や区市町村まかせにすることができず、人間としての生活と生命をまもるため、どうしても都が責任をもたなければらない施設があるのではないですか。しかも都立施設の民間移譲とは、民間施設への補助を削減する中でのものですから、現行の福祉水準の大幅な低下をまねくことは明らかであります。知事、どうですか。
結局、いま知事がすすめている「福祉改革」のねらいは、福祉を市場原理の中に投げ込むことと、民間福祉施設への補助四百億円、都立施設の運営費三百七十億円を極力けずりたい、ということを指摘せざるをえません。
教育も、石原都政の切りすてにさらされています。
来年度の高校受験を目前に、都内の受験生に深刻な不安がひろがっています。それは、改革の名による都立高校再編の結果、来年の受験の様相が一変し、高校進学希望者はこれまで以上に、きびしい受験競争を強いられることになるからです。
都教委が、十月に決定を予定している「都立高校改革推進計画」によれば、二〇一〇年までに、全日制高校が二八校削減され、夜間定時制も半分に減らされることになります。その一方で、「進学重点校」や「中高一貫校」を大幅にふやして、すべての高校を「進学指導重点校」「中堅校」「教育課題校」などに序列化することで、進学率や応募倍率などの目標で競争させようというものです。そして、この方向にそって特色を出した学校には、「人・物・金」の配分を優遇しようというのです。
これと合わせて、実施される都立高校の学区全廃も、その影響が憂慮されています。
都知事選挙の際の、石原知事の確認団体の選挙政策には、「公立中学、高校の学区制は、学校間に一種の競争原理を持ち込むためにも廃止されるべき」とありましたが、まさに東京の教育はそのとおりになろうとしています。
これまでのグループ選抜であれば、志望校の受験に失敗しても、いずれかの学区内の都立高に安心して進学できました。しかし、いまは子どもにとっては、学区なしに東京中の受験生とあらそう単独選抜試験で、志望校におちたら、行くところがないと言う、失敗の許されない一発勝負を強いられるのです。
このような受験競争中心の日本の教育について、国連の「経済社会、文化的権利に関する委員会」は、過度の競争で子どもを苦しめ、自殺にまで追い込んでいると指摘しています。ところが知事は、この是正にとりくむのではなく、子どもたちをさらなる受験競争に追いこもうとしているではありませんか。多くの生徒や父母の願いにこたえて、都立高校の学区廃止などのやり方をやめ、希望するどの子も都立高校に入れるようなシステムをこそ、つくるべきだと考えますが、答弁を求めます。
また、知事は、おなじ選挙政策で、「水準の低い都立高校は思い切って削減し、民間の教育機関に移譲して、独自の個性的な教育機関に変貌させる」とも言っています。本来、希望する子どもたちに高校教育を保障するため最大限努力すべき自治体が、学校を「水準が低いから」などといって、切り売りするとはどういうことですか。
知事は、なにを基準に「水準」を判断するというのでしょうか。知事の言う「水準」以下の高校にしか入れない子どもは、都立高校から排除し、行き場がなくてよいということですか。はっきりお答えください。
都立高校を十年間で、一割以上削減するという都の推進計画には、都民からの批判が集中しています。とりわけ今回、夜間定時制高校を三十三校廃止し、将来には全廃するという問題は重大です。現実に、夜間の生徒はバイトも含め六割以上が働いており、少人数教育の中で自分の成長の場を見出している生徒、不登校経験などの生徒にとって、かけがえのない存在となっているのです。
廃止が計画されているある高校の生徒会長は、「自分のペースで学べるのが良い」、「あたらしい三部制では、通学時間、学級人数、施設の利用、働く条件、先生との近さなど定時制のメリットがない。自分たちなら辞めてしまうだろう」といっています。
様々なハンディーをかかえる若者にとって、定時制高校は、そこにしかない教育の場です。東京の高校教育の貴重な財産である夜間定時制の廃止計画は撤回すべきです。知事の所見を伺います。
統廃合計画の中身もひどいが、やり方もまったくひどいものです。これまで、都は学校現場や都民からどんなに反対があっても、問答無用で強行してきました。
都教委は、トップダウンでの、上からのおしつけるをやめるべきです。今回も、廃止対象校をはじめ、PTA連合会などから、性急な決定をさけ慎重な論議をもとめる声が広がっています。北、板橋、文京区などの議会をはじめ、二三区の文教委員長会でも同趣旨の要望や意見書が採択されました。推進計画の十月決定はとりさげ、これまでの統廃合計画未実施分をふくめて、時間をかけひろく都民的な論議をつくくすべきと、考えますが、見解を求めます。
石原知事がおしすすめようとしている「都市再生」についても、都民生活と都政に重大な支障をあたえるものになりかねないという、警告が発せられています。
その第一は、ヒートアイランドなど環境破壊の問題です。
わが党が、第二回定例会で指摘したヒートアイランド現象の深刻化と対策の緊急性は、この夏の異常気象として、あらためて証明されました。
この夏、最高気温が三〇度を超えた真夏日は、年平均の三八日を一五日も上まわる五三日におよび、七、八月の間に熱中症で搬送された都民は、過去最多の六五五人に達しました。くわえて、集中豪雨も増加しましたが、これらの事実は、バブル崩壊後もつづく都市開発によって、ヒートアイランド現象がいっそうはげしさをましていることを示しています。
今定例会で石原知事は、「ヒートアイランド対策は、重要な都市政策」との認識を示し、「来年早々に、今後の取組方針を策定したい」と述べました。わが党がかねてから提案してきたように、東京都がヒートアイランド対策にふみだすことは重要です。
しかし、問題は、大量の排熱や二酸化炭素を排出する超高層ビルや大型道路などの建設が、ヒートアイランドの解消と両立できるのかという問題です。
わが党は、石原知事がすすめようとしている「都市再生」によって、どれだけ二酸化炭素が発生するのか、今回、あらためて試算したところ、二三区内で、現在計画中、もしくは開発中のビルの延べ床面積は、七五地区、一〇〇四ヘクタールにおよび、そこからあらたに排出される二酸化炭素百十万トンによって、二三区内の二酸化炭素が六・七%もおしあげられることが推定されます。
これでは、二〇一〇年までに、一九九〇年比で六%削減するという、東京都の目標達成は到底およびもつかないではありませんか。しかも、自動車発生交通量も五・六%も押し上げられ、ビルや道路から排出される熱量も激増することは明らかです。
環境省が、九月に発表した報告書は、ヒートアイランド現象の要因となる排熱の多くが都心三区や副都心などの再開発地域に集中し、しかも、空調機器や自動車によるものがその半分を占めていること、さらに、これらのビルで、ヒートアイランド対策として、屋上緑化や壁面緑化などを講じた場合でも、その効果は、二三区で気温を〇・二度下げるにすぎないことを明らかにしました。
この報告書が示したものは、個別の対策も重要ですが、その一方で、「都市再生」で大規模な超高層ビルを林立させるというのであれば、焼け石に水にすぎなくなるということです。
知事、であるならば、なによりもまず「都市再生」による開発が、東京の環境にどのような影響をあたえることになるのか、温室効果ガスがどれだけ増大し、気温がどれだけ上昇するのか、そしてそのことが、都民生活と地球環境にどのような影響を及ぼすのかについて、科学的な予測をおこない、都民に示すべきではありませんか、見解をもとめます。
同時に、「都市再生」が経済にあたえる影響にも、疑問と心配の声があげられています。
都内のオフィスビルは、「二〇〇三年問題」と騒がれているように、来年だけで、バブル期の二倍のオフィス床が供給されることから、供給過剰による、空き室率の上昇と、賃貸料の大幅な値下がりが予想されています。
そのうえ、「都市再生」によって、膨大なオフィスビルが供給されることになれば、本格的なビル不況が到来することはさけられません。
知事は、十三日の定例記者会見で、「都市再生」の質問に答えて、オフィス需要について、「だれにも予測できない」、「そこにビルを建てたから人が入ってくるというわけでもない」と発言しました。これは、「都市再生」を推進した当事者として、あまりに無責任な態度とは思いませんか。知事の見解を伺います。
本来、都市再生というなら、「総合的な都政政策の視点からとらえられるべき」という都市政策の専門家の指摘にもあるように、環境への負荷、居住の確保、地域経済振興、都財政、都民負担などあらゆる角度からの検討が欠かせません。
また、景気対策や大企業のための基盤整備としての日本の「都市再生」にたいし、ヨーロッパの都市再生は都市を人間の生活の場」として再生しようというもので、自然環境の再生をはじめ、まちの歴史的伝統や文化などに着目したものです。いま、東京都にとってヨーロッパでの都市再生に学ぶことこそ重要だと、考えますが、あわせて、答弁をもとめます。
都財政への影響も重大です。
知事は、所信表明で、三環状道路の建設について、「国が責任を持つべき」としたうえで、「相当の覚悟をもって整備の促進を働きかけていきたい」と述べ、あくまでも促進を図っていくことを表明されました。
しかし、今日、高速道路をはじめとした大型公共事業の見直しは、国民的な大きな流れとなっており、国の道路四公団の見直しのなかでも、これらの三環状道路の見直しが検討され、専門家委員のなかからも、計画の必要性について疑問がだされています。しかも、三環状道路は、残事業費がおおむね九兆円といわれ、この推進は借金地獄にくるしむ国および都の財政に重い負担となってのしかかります。
すでに三環状道路に関連する都の支出は増えつづけています。わが党がかねてから指摘している国直轄事業負担金や首都高速道路公団への支出は、石原都政の三年間だけでも、すでに二二〇〇億円をこえる規模にふくらんでいるのです。
しかも、国は、高速道路についても地方負担の導入をいいはじめています。たとえば、外郭環状道路が圏央道と同じように、道路公団と国の分担方式ということになるだけでも、国の直轄事業負担金として、都の負担が義務づけられることになります。
いま、東京都がやるべきことは、三環状道路に固執することではなく、大型公共事業を見直す道にふみだすことではないでしょうか。また、交通渋滞の解消をいうのなら、なによりも、都心への交通を激増させる超高層ビル建設のための大型開発をあらためるととともに、適正な交通総量規制をおこなうことではありませんか。知事の所見を伺います。
全国の地方自治体なかで、『住民が主人公』の方向へのあらたな変化と胎動がおきはじめています。
田中知事が再選をはたした長野県では、脱ダム宣言など土木型公共事業重視をやめ、福祉・環境重視型の公共事業への転換、福祉の充実や三十人学級などがすすめられています。
徳島県や高知県、鳥取県などでも、これまでの国の公共事業追随の姿勢からぬけでて、乳幼児の医療費の無料化や三十人学級、住民参加の推進など、住民本位の自治体への模索がはじめられているのです。
それと比較して、東京都の場合はどうでしょうか、石原知事のもとですすめられているのは大規模開発の推進と、「福祉改革」の名による福祉・医療の大後退ではありませんか。都財政も、知事の「借金漬けの都政にノー」の公約にもかかわらず、借金は増えつづけています。
来年度予算編成にあたっても、財源が大幅に不足するなどとして、都民施策の一律一〇%マイナスシーリングをもとめ、さらには、財政支出が高い水準にとどまり「高止まりしている」などといって私学助成や区市町村補助の事実上の見直しをせまるなど、あからさまな施策の削減をうちだすなど、住民のくらしと福祉を守るという自治体の責務の放棄ともいうべき、方向をつよめています。
わたしは、あらためて、東京都が自治体のあるべき姿にたちもどり、都政の重要施策はもとより来年度予算の編成にあたっても、なにより、今日の都民のおかれている苦境を直視し、福祉や教育、中小企業など都民生活をささえるうえで欠かせない分野の拡充に目を向けることをつよくもとめて、質問をおわります。
〇知事(石原慎太郎君) 吉田信夫議員の代表質問にお答えします。
まず、母子保健院の廃止条例と、小児医療の総合的な拡充策についてでありますが、母子保健院の廃止に当たりましては、地域の小児医療を確保するため、地元世田谷と十分に協議を行い、区の小児初期救急医療への取り組みを都が支援するという形で合意を得ました。
都における小児医療の充実には引き続き取り組んでいきますが、母子保健院の廃止条例を撤回する考えはございません。
今後とも、東京発医療改革の核として、都立病院の改革を着実に推進していきます。
今まであったものがなくなった。住民にとっては非常に不安でしょうけど、それを解消するために十分な説明をこれからも尽くしてまいります。
次いで、社会福祉法人に関する私の発言についてでありますが、東京のような大都市には、地方にないさまざまな可能性がありまして、福祉の事業者は、民間企業などたくさん存在しております。国は、大都市の状況を踏まえず、全国一律のさまざまな規制を設けて、民間企業等の参入を抑制しておりますが、都においては、利用者本位の福祉を目指して、大都市の特性を生かし、多様な事業主体を参入させ、競争の中で、サービスの質の向上と量の拡大を図りたいと思っております。こうした競争の中、これまでサービス提供の中心を担ってきた社会福祉法人であっても、サービス向上に努力しなければ、利用者に見放され、振り落とされる、これらのことを踏まえたものであります。
先般も、国の労働局が、社会福祉法人の就労問題について立入検査もいたしました。こういった残業手当も出ないようなていたらく経営というのは、どこかに問題があるわけでありまして、民間ではあり得ないことでもあると思いますし、そういう意味で、いろんな競争の状況を設けて、よりよいサービスというものを福祉を通じて行っていきたいと思っています。
それから、私の確認団体が私の選挙公約で言及しましたが、当然、学区の廃止は行わなくちゃいけないと思います。そもそも、学校という大事な事業の中で、競争原理が働かないということそのものが面妖でありまして、結果としては、先ほど申しましたが、そういうものに腐心している私学に都立の高校が完全に抜かれた。相対的に水準が下がった。それを立て直すために、現在、東京都の教育委員会では、さまざまな案を講じて、東京全体の教育の水準というものをとにかく上げようということで努力しているわけでありまして、そのためにも、学校がそれぞれの特色性を持って、そこに就学する子どもたちの選択の幅をやはり考える必要があると思います。
それから、都市のオフィス需要でありますが、オフィスの需要は、必ずしもそこに入るテナントの問題だけではございませんで、そのテナントが、特に、例えば外国の企業などが、新規に設けられた高層ビル、オフィスに来るか来ないかということは、その吸引力であります日本の経済状況というものが左右する、そういう大きな要因もあります。こういう複合的なことは、単細胞というか、発想の一元的な共産党には理解に遠いことかもしれませんが、いずれにしろ、オフィスの需要というものは複合的なものでありまして、それを理解しなければ問題の解決にはならないと思います。
それから、都市再生についてでありますが、首都東京には、我が国が抱えるさまざまな危機の本質が日本の縮図として先鋭的にあらわれておりまして、例えば、環境汚染など環境の悪化、慢性的な交通渋滞、経済力の低下など、さまざまな問題に直面しております。こうした問題を解決し、東京を魅力のある活力に満ちた都市とすることが、我々が取り組んでいる都市再生の目標であります。
都市の再生を強力に推進していくためには、道路などの都市基盤の整備とあわせ、拠点となる地域に集中的、戦略的に民間の力を振り向け、これにより、新たな需要を喚起することが不可欠であります。
こうした取り組みがスピード感を持って展開されていくことが、首都東京、ひいては我が国の再生につながるものと確信しております。
次いで、自然、伝統、文化などに着目した都市再生についてであるが、こんなことは自明のことでありまして、別に外国のまねをしなくても、東京が江戸以来持っている特性というものを、私たちは十分に生かした形で都市の再生というものを図っていく必要があると思います。
それから、公共事業についてでありますが、共産党はいつまでも変わらないね、これ。この東京の致命的な問題であります渋滞というのは、だれが引き起こしたか。あなた方が支持した美濃部さんが、全部環状道路を切ったからじゃないか。そのために、みんな都民、四苦八苦しているんですよ。
来年度予算編成に向けての私の基本姿勢についてでありますが、大きな時代変化の真っただ中にありまして、首都東京の再生や都民サービスの向上を実現するためには、都政の構造改革を実現し、大都市東京にふさわしい独自の施策展開をすることが不可欠であります。私は就任以来、こうした立場に立って都政運営に当たってきました。
そのため、都市基盤の着実な整備とあわせて、環境、福祉、産業などさまざまな分野で改革を進め、都民の求める施策を実施してまいりました。現在策定を進めている重要施策は、こうした取り組みをさらに積極的に推進しようとするものであります。
都政を取り巻く環境は極めて厳しゅうございますが、来年度予算編成に向けても、この姿勢を堅持してまいります。
他の質問については、教育長及び関係局長から発言します。
〇教育長(横山洋吉君) 教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
まず、学区廃止や進学校指定についてですが、都教育委員会はこれまでも、価値観が多様化している生徒の能力や個性を伸ばすため、特色ある学校づくりを進めてまいりましたが、そうした中で、学区制の廃止は、生徒の学校選択幅が広がること、また生徒が主体的に学校を選択することにより、都立高校の活性化を図ることができるものでございますことから、本年度の入学者選抜から実施をいたします。
また、進学指導重点校の指定は、都民の期待にこたえるため、進学対策を重点にした特色ある学校づくりの一環として導入したものでございます。
今後とも、それぞれの都立高校が創意工夫を凝らし、互いに切磋琢磨して、生徒、保護者に選ばれる学校づくりを進めていくよう、必要な改革を実施してまいります。
次に、夜間定時制高校についてですが、勤労青少年に後期中等教育の機会を提供するため、主に夜間に設置された定時制課程では、現在、生徒数は減少し、不登校経験のある生徒や高校の中途退学者など、生徒の多様化が進んでおります。こうした生徒の実態に対応し、保護者、生徒の新たなニーズにこたえますとともに、全・定併置校が抱える施設利用や指導時間の確保等の課題解決を図っていくことが強く求められていると認識しております。
今回の都立高校改革・新配置計画案は、昼夜間定時制独立校を周辺の夜間定時制課程を統合して設置することによりまして、こうした課題に対応していくものでございまして、計画の着実な推進を通して定時制課程の教育条件を改善してまいります。
最後に、都立高校改革の新実施計画の決定時期についてでございますが、実施計画の策定に当たりましては、改革の対象となる学校の新配置計画案を計画決定に先立って六月に発表し、保護者、同窓会、教職員等の学校関係者や地元自治体等への説明を積極的に行っておりまして、今後とも関係者の理解を得るよう努め、十月には実施計画を決定することとしております。
〇福祉局長(川ア裕康君) 福祉改革についてのご質問にお答えいたします。
まず、福祉サービス提供主体の改革への取り組みに関します各種団体の意見についてでありますが、この件についてさまざまな意見が寄せられていることは承知しています。都が進める福祉改革の目指すものは、行政が広範囲にわたってコントロールする既存の仕組みを根本から改め、利用者本位を徹底する新しいシステムを構築することであります。
社会福祉法人改革もその一環であり、この理念に沿って、広く都民の視点から利用者本位の新しい福祉の実現を目指し、サービス向上に向けた法人の主体的な自己改革への取り組みを支援する観点に立って進めてまいります。
次に、民間社会福祉施設サービス推進費補助等についてでございますが、利用者本位の新しい福祉の実現のためには、社会福祉法人も社会経済状況等の変化に対応し、自己改革を実行する必要があり、東京都はこれを支援してまいります。
この観点に立って、民間社会福祉施設サービス推進費補助の検討に当たっては、これまでの画一的な仕組みを、サービス向上に向けた努力が真に報われるものとするよう、施設の代表者の意見などを聞きながら進めてまいります。
次に、認証保育所の役割についてであります。
現行の認可保育所は、ゼロ歳児保育や延長保育の実施率が低いなど、都民のニーズにこたえ切れておりません。
認証保育所制度は、こうした大都市特有の利用者ニーズに柔軟かつ的確にこたえるために創設したものであり、直接契約を導入するとともに、すべての保育所におけるゼロ歳児保育や十三時間開所を義務づけており、多様な事業者の参入による運営上のさまざまな創意工夫によって、利用者本位のサービスの提供を目指しております。したがって、認証保育所の役割は、認可保育所の補完ではなく、本来、認可保育所が実施すべきサービス内容を先導するものと考えております。
次に、認可保育所の待機児解消についてであります。
都内の認可保育所の入所児童数は定員を下回っており、待機児発生の原因は、年齢や保育時間等の保育内容のミスマッチと地域での需給の不均衡によるものであります。
待機児解消のためには、保育の実施主体である区市町村が、その地域の保育ニーズを的確に把握、分析し、受け入れ枠の拡大、定員の弾力化など、実情に即した対策を講ずるとともに、認可保育所自身がゼロ歳児保育、延長保育などの充実に取り組んでいく必要があると考えております。
都としては、これまでもその支援に努めてまいりましたが、今後とも区市町村や認可保育所が積極的に取り組むよう働きかけてまいります。
次に、都立福祉施設の改革についてであります。
これからの福祉は、多くの事業者が競い合いの中から多様なサービスを提供し、利用者は、自分に最も合ったサービスを選択できる仕組みとすべきであります。
その中で、都は直接サービスを供給することではなく、新しい福祉の枠組みを整え、その実現に向け、区市町村や民間事業者を支援していくことに比重を移す必要がございます。
こうした考えのもとに、七月に示した方針に基づき、都立福祉施設の改革を進めるとともに、競い合いの中で努力したものが真に報われるシステムを構築し、東京の福祉全体のレベルアップを図ってまいります。
〇環境局長(小池正臣君) 温暖化が東京の環境にもたらす影響についてのご質問にお答えいたします。
東京には、温暖化やヒートアイランド現象など、環境の危機的状況が集約的にあらわれております。このため、都は既にエネルギー使用の抑制等の観点から、既存の大規模事業所を対象として、地球温暖化対策計画書の提出や新築建築物を対象とした建築物環境計画書の制度をスタートさせています。また、本年七月からは、ヒートアイランド現象を広域的に解明するため、区部を中心に百二十カ所で温湿度等のモニタリングを開始したところでございます。
今後、こうした取り組みを踏まえ、温暖化の状況とその影響の把握に努め、環境に配慮した都市づくりを推進してまいります。
〇都市計画局長(勝田三良君) 都市再生に関連をした交通渋滞の解消についてでございますが、東京の魅力と国際競争力を高めるため、都市の機能更新や都心居住の推進など、多様な機能が複合した都市開発を促進することは極めて重要でございます。これにより、職と住が近接した市街地が形成され、通勤混雑の緩和など交通負荷の軽減にも寄与するものと考えます。
また、三環状道路などの基盤整備や交通需要マネジメントを着実に推進することにより、都心部への交通の過度の集中を抑制し、交通渋滞の解消に積極的に取り組んでまいります。