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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


予算特別委員会 総括質疑 二〇〇三年二月二四日

曽根はじめ(北区選出)

石原流「都市再生」は、東京一極集中の弊害をつのらせる
「成長管理」は、アメリカでも都市政策の大きな柱

都民の運動で、荏原病院の脳血管疾患などの医療が移転から機能活用に
均衡のとれた都市の成長には、開発の抑制や誘導、開発に伴う弊害の防止政策が必要
IT対応、耐震問題など、中小ビルのリニューアル要望にこたえよ
ビル需要の予測もなく進める大量供給
「都市再生」で、「置き去り」地域、所得の低い人たちが住めないまちが
秋葉原のITセンターの発生する炭酸ガス吸収に、水元公園が三ついる
三環状道路つくっても、差し引き十四万台以上の自動車が都心に流入


都民の運動で、荏原病院の脳血管疾患などの医療が移転から機能活用に

〇曽根委員 本題に入る前に、一言申し上げます。
 去る二十一日の本委員会で、公明党藤井一議員は、日本共産党大田地区委員会のビラを名指しで持ち出し、そこに書かれた内容が事実と違うかのような印象を与える質問を行いました。本論に入る前に、この問題について、まず病院経営本部長に伺います。
 急に聞いて悪いんですけれども、藤井議員の質問に対し、病院経営本部長は、荏原病院が有する医療機能のうち、脳血管障害やリハビリ医療など地域住民のニーズが高い医療については、今後その機能を活用していく方向だと答弁されましたが、その方針を都民に対して明確に示したのはいつですか、事実のみ答えてください。

〇櫻井病院経営本部長 平成十三年十二月の都立病院改革マスタープランでは、荏原病院など公社に移管する予定の病院でございますけれども、この病院の医療機能につきましては、基本的には現行の医療機能を踏まえつつ地域医療の充実を図るという観点から、今後具体的な検討を行っていくとの考え方を示したところです。
 このマスタープランの内容をさらに具体化するために、本年一月に策定しました都立病院改革実行プログラムでは、荏原病院に関し、脳血管疾患医療など、現在有する医療機能について、地域の医療ニーズを踏まえつつ医療資源の有効活用を図る旨の方針を示したところでございます。

〇曽根委員 二〇〇一年十二月のマスタープランでは、今経営本部長が引用されたように、今後具体的な検討を行っていくとしながら、そのすぐ後のところに、荏原病院が実施している重点医療課題のうち行政的医療については、他の都立病院に順次移転していくものとすると明記されていました。
 これに対し我が党は、荏原病院が重点医療として取り組んでいる脳血管疾患やリハビリなどの医療が、公社化されたら、他の都立病院に移転されてしまう心配があることを訴え、荏原病院は都立のままで充実してほしいという運動を多くの皆さんと一緒に続けてきました。
 公明党藤井議員が持ち出した日本共産党大田地区委員会のお知らせビラというのはそのときのものであり、昨年の一月に開かれた報告懇談会のお知らせビラであります。その後、こうした都民運動や我が党の取り組みの結果、先ほど答弁があったように、荏原病院の脳血管疾患などの医療機能を活用していくという方針がことしの一月に発表されたんです。一年前のビラにその時点での都の考え方が書いてあるのは当然のことじゃないですか。
 ところが、公明党藤井議員の議論は、一年前のビラにことし一月の都の方針が反映されていないから問題だというかのような、いわば時間と空間を飛び越えたものであり、ためにする発言といわねばなりません。
 今回の方針で、荏原病院の脳血管障害やリハビリなどの荏原病院の専門的医療機能を今後も活用していく方向が示されたことは、都民運動や我が党の要望してきた内容が、一部でありますが、反映されたものにほかなりません。
 さらに、我が党はこれにとどまらず、荏原病院の公社化は中止をし、都立病院として存続し、充実するよう引き続き求めていくことを表明しておきます。

均衡のとれた都市の成長には、開発の抑制や誘導、開発に伴う弊害の防止政策が必要

 それでは、本題の都市再生問題に入りたいと思います。
 石原知事のこの四年間の特徴は、都民福祉の厳しい切り捨てと、その一方での都市再生を中心とするオフィスビルと大型幹線道路建設の推進でありました。この方向は、今でさえ深刻な環境、産業、住まいなどなど、都市問題を解決するどころか、私は大変一層激しくするものだと思います。
 例えば、東京の現状を見ても、環境問題では、今ヒートアイランド現象の深刻化、またそこから来る集中豪雨などの問題、未解決の自動車排気ガス公害などが議論されておりますし、また産業でも製造業の衰退、大型店などの進出に押されて、シャッター通りといわれるような商店街の衰退、また住まいでも低所得者、高齢者の住宅困窮など多くの問題があります。
 だからこそ我が党は、さきの代表質問で、ヨーロッパの諸都市の経験に学んで、都市の成長を管理する方向に踏み出すことを提案しました。
 そもそも戦後の東京は、高度成長期を通じて、知事のお考えのように、都市の機能が増殖するのに任せてしまったために、産業経済、人口の一極集中が進んで、深刻な住宅難や環境破壊、これに都民が苦しめられてきたわけです。
 ところが、知事は、本会議代表質問の答弁で、都市の機能が増殖していく中で人口がふえる、それに対応した都市の整備というのは、これは必然的にやっぱり必要でしょうと、いわば開き直った答えをいたしました。知事のいうように、都市の機能の増殖に任せて都市をどんどん成長させていったら、また再び一極集中の弊害で東京の町は取り返しのつかないことになるんじゃないか。これは基本的な問題ですので、知事にお聞きしたいと思います。

〇石原知事 日本は自由主義経済国でありまして、あなた方が信奉している隣の中共やロシアのように、都市に集まってくる人間を軍事力をもって途中で阻止することはできません。これは人間の移動は、要するに保障された権利の履行でもありまして、それに対応する、つまり都市というものを行政が必要としているわけであります。

〇曽根委員 知事は、何かというと中国とかソビエトの話を持ち出すんですが、しかし、都市の成長管理というのは、ヨーロッパの諸都市で実際に取り組まれていることなんです。例えば資本主義の本家であるアメリカでも、成長管理というのは都市政策の大きな柱となっておりまして、アメリカでいっている成長管理とは、都市において総合的な計画に基づいて開発の抑制や誘導、開発に伴う弊害の防止を行うことであって、均衡のとれた都市の成長を実現しようとする政策であります。
 例えば、知事がよく引き合いに出すニューヨークでも、ニューヨークは一九八二年にマンハッタン中心部を対象としたミッドタウンゾーニングというのを制定しまして、これは中心部におけるオフィス開発を弊害の目立つ東側の地域から西側の地域に誘導するものです。つまり、東側地域では容積率を下げて、西側地域は容積率を引き上げる、これによってオフィスが西側に移っていくようにする。しかし、六年間の期限つきであって、六年後にはこの西側も容積率を引き下げる。こうした、いわば成長管理を行ってニューヨークの都市政策が行われているわけなんです。
 私は、こういう考え方に立たなければ、知事が先日おっしゃったように、東京は何の規則性もない町になってしまったということを、さらに深刻にしてしまうものだと考えます。
 成長管理の考え方は日本でもとっぴなものではありません。開発優先型ではありますけれども、国は全総というものがあって、これは全体としては首都圏一極集中の是正というのは課題になっています。それから、東京も多心型構造というのを目指して、これも開発型だったんですけれども、それでもオフィスを都心への集中から分散するということが課題になっていたわけです。ですから、はっきりいって知事ぐらいですよ、一極集中をどんどんやれやれというのは。そう思いませんか。

〇前川知事本部長 成長管理でありますが、私どもは、今の経済状況の中で必要なことは、むしろ首都東京のポテンシャルを引き出して、経済の活性化と、それから国際競争力を向上させる、これが基本的に必要であると考えております。そのために、バブル期ならともかく、それも実は問題でありますが、現在必要なことは都市再生を進める。道路、空港等のインフラを整備し、それとあわせて民間の力を活用して都市再開発を進めていく、それが必要であると判断をいたしております。
 それに加えて、そもそも成長を人為的にコントロールすることが、直接コントロールすることが望ましいのかどうか。これは歴史的に見ても、むしろ間接的な、例えば経済金融政策によるコントロール、あるいはその成長に伴う痛みを緩和する、そういう施策こそが必要であることは実証されていると確信いたしております。

〇曽根委員 成長を人為的に管理できないから、もう生まれた痛みだけを何とか手当てするんだと、こういう考え方は歴史的に見れば完全に逆行ですよ。実際に、知事の都市政策によって何が生まれているかということについて、具体的に質問していきたいと思うんです。

IT対応、耐震問題など、中小ビルのリニューアル要望にこたえよ

 一つは、都市の再生ということをいうんなら、私は、何といっても東京の町で一番衰退している中小企業の問題をやっぱり取り上げないわけにいかないと思うんですよ。都心の方を中心に、例えばものづくりでいえば、この一、二年の間に急速に落ち込んで、工場はピーク時の四割も減っているんですよ。それから、商店街についても、小売業でいえば全体で三割以上、特に生鮮品のお店は半減状態ですよ。そういう状態にある中小企業に対して、都市の再生というのはまず目を向けるべきじゃないか。この点で、東京の経済を立て直すというのであれば、九九%を占める中小企業の再生なしにはあり得ないと思いますが、いかがでしょうか。

〇有手産業労働局長 中小企業は、東京の経済再生の牽引力であると考えております。このため、制度融資による資金調達、それから技術開発、経営や人材育成などへの支援策を講じてまいりました。また、先般、重要施策の柱といたしまして、東京の特性を生かした産業力の強化を掲げたところでありまして、引き続き中小企業対策を強力に推進してまいります。
   〔「そうだ」「そのとおり」と呼ぶ者あり〕

〇曽根委員 かけ声はいいんですけれども、実際にその中小企業対策を強力に推進していくものになっているかどうかなんですよ。
 まず、予算で見れば歴然としているわけです。知事が就任した九九年度から四年間で、融資関係などを除いた、まさに中小企業の実額の個別事業費、これは一三・二%も減額されているわけです。もちろん融資だって原資分は減っていますよ。実際に商店街など、ものづくりの事業に使われている予算がこれだけ減っているわけです。それから、公共事業にしても、大体中小企業に発注の多い都営住宅とか、それから生活道路などは減らされて、大きいのは幹線道路ばっかりですよ。また、首都高への出資金、貸付金などですよ。大体中小企業予算が幹線道路予算の五分の一、二百四十七億円で、首都高への出資金や貸付金にさえ及ばないんですよ。
 ですから、公共事業を含めた、本当に中小企業に対して、やっぱり今手厚い支援が必要だというときに、知事がやっていることは、都市再生という大きな流れの中でいっても、中小企業はのけものにされているといわざるを得ないんです。
 さらに、この中小企業が今都心で何に苦しめられているか。オフィスビルの問題です。オフィスビル不況の問題でお聞きしたいんですが、東京では、二〇〇三年問題といわれているように、オフィスビルは供給過剰になっています。ビル不況は現実の問題です。知事のいう都市再生でこれ以上にオフィスが供給されたら、景気回復どころか、逆に景気の足を引っ張ることになるじゃありませんか。これは知事にお聞きします。

〇石原知事 オフィスビル、オフィスビルといいましても、ビルがあって、建物が建っているだけではオフィスにならない。やっぱりそれがどういう機能を備えているかということで、要するにニーズに対応できるか、できないかの問題が出てくるわけです。
 例えば、ワールドカップをやりましたときに、今なら名前を挙げていいでしょうけれども、帝国ホテルのような代表的なホテルでさえITの装置がなくて、東京都が指摘することで、慌ててこれを補強したんです。そのたぐいのビルがやっぱり幾らあっても、これはこれからの、要するに近未来のビジネスのニーズにこたえることはできないということであります。

〇曽根委員 更新とか、IT対応とかいうことを必ずおっしゃるんですけれども、東京ぐらいビルが更新されてきたところはないんですよ。関東大震災、第二次大戦で丸ごと更新されて、大体今使われているオフィスビルの大半は二、三十年来のものです。世界の大都市を見ても、アジアの新興都市は別にしても、古くなったからといって端から建て直したりすることはしていません。ヨーロッパでは、またニューヨークのマンハッタンでも、既存のビルのリニューアルは高度化で対応しているのが多いんです。
 例えば、IT対応だって中小のビルでもできるんですよ、今の最新の機器を入れられるんです。それから、耐震問題でも、例えば免震構造を取り入れるなどは、これはリニューアルの中でできるわけです。こういう中小ビルの要望にこたえることが、東京都としても、国ももちろんですけれども、求められていると私は思うんです。問題は、さらに多くのオフィスがこれから供給されていくという問題なんです。更新だけじゃないんです

ビル需要の予測もなく進める大量供給

 これは今後の予定されているオフィスの問題ですけれども、センター・コア内だけでいっても、新宿三井ビル、十五万平米の床面積がありますけれども、五十棟分、九百七十八ヘクタールも床面積が供給されようとしているわけです。しかし、更新は大体終わってきているんですが、一体この新しく一千ヘクタール近いオフィスビルに対応するだけのオフィス需要が生まれるというふうに知事はお考えですか。
〔「知事答えて」「正確な数字をいった方がいいでしょう」と呼ぶ者あり〕

〇勝田都市計画局長 オフィス需要、今数字の話ということですが、二〇〇三年問題ということで大変大きな供給が図られるわけでございますけれども、その後は平均的な数字に戻る、こういうことが民間の調査の中で想定されております。そういう観点から、供給と需要、そのものを科学的に類推するというのは、なかなかいろんなその要素が複雑でございまして、実際上は予測は難しいということでございますけれども、経験的にはそういうことが立証されるということでございます。

〇曽根委員 何か非常に詳しい数字と知事がおっしゃった割には局長の答えはあいまいだったんですけれども、今局長がおっしゃった話は二〇〇六年までの話でしょう。問題は、二〇〇七年以降に、今知事が進めている都市再生の緊急整備地域などで、既にプロジェクトが立ち上がってきて大変な量が供給されていく、それが一千ヘクタールなんですよ。その多くは二〇〇七年からのものなんです。
 今度は知事に伺いますけれども、これだけのビル需要は一体どこから生まれてくるというふうにお考えなんですか。

〇石原知事 それは新規のビルを建設している当事者にお聞きになっていただきたい。

〇曽根委員 無制限に都市計画の制限を外していって、どんどん建てる誘導をしておいて、あとは知らないというわけにいかないでしょう。それじゃ全く無責任じゃないですか。
 大体もうアナリストはみんな、二〇〇三年問題などでビル不況の悪化は今後も続く、都市再生は逆効果だという分析をずっとしているんですよ。大体このビルが需要以上に供給されているために、結局どこにしわ寄せがいくかというと、中小ビルなんですよ。テナントがちょっと古いビルから移って、それが玉突きでどんどん移って、最後は中小ビルが泣かされるわけなんです。
 例えば、港区のあるそば屋さんですけれども、これは小さいビルですけれども、そこからテナントが出ちゃって、五階建ての二階から四階までのテナントが全然入らなくなった。五階は自分の自宅があって、一階はお店なんです。味に定評があって、この不況の中でも頑張って営業を続けている商店街のもう中核ですよ。そのお店の商売そのものは繁盛しているのに、二階から四階のテナントが埋まらないために、その赤字でつぶれそうなんですよ。こういう問題が、知事が進めているどんどんやれやれのビル供給の中で起きているということ、これに目を向けなければ、首都東京の知事とはいえませんよ、私にいわせれば。
 私は、さらに大きな問題があるというのを、警鐘乱打されているので紹介しておきますが、例えば民間のシンクタンクであるニッセイ基礎研究所、ここが二〇一〇年問題というのを提起しているわけです。
 これはお聞きになった方もいると思うんですが、オフィスワーカーで約二百万人以上、オフィスの需要減では、最悪の場合マイナス五%、三百七十万平方メートル相当の、丸の内の新ビルでいえば二十三棟分が要らなくなる、需要減になると予測しているんです。
 それは、一人当たりの床面積がだんだん小さくなるとか、ITが小型化することとか、いろんな理由がありますが、何といっても、団塊の世代がリタイアしていくからなんですよ。これに一体どういう対応をするのかと、これだけどんどんつくるプロジェクトが立ち上がって。これはまさに都市計画の責任なんですよ。だからこそ成長管理が必要だということを我が党はいっているわけです。

「都市再生」で、「置き去り」地域、所得の低い人たちが住めないまちが

 それと、もう一つ指摘しておきたいんですが、最近の「都政新報」に、「『置き去り』の地域にも焦点を」ということで、東京都立大学の名誉教授である石田頼房さんが論文を載せております。
 この中では、従来の東京の都市づくりについて、急激な成長に対処しようとする余り、問題市街地の解決を後回しにし、頂点を持って引っ張り上げるようなやり方が多く、その結果、最新の華やかな地区と問題を抱えた地区の二重構造を何回も再生産してきたことを反省することが必要ですと述べています。そして、いわば二重構造の下部として置き去りにされてきた地域に焦点を当て、地道な取り組みを強めることが必要ではないかと述べています。これは私、当を得ていると思うんですね。
 例えば東京でも、木村幹事長が代表総括質疑で取り上げた晴海通りの延伸問題、これは、実は区画整理事務所がやっているんですよね。そのために、区画整理の事業費がこの道路に回されて、そのために江戸川区の瑞江の区画整理事業は、住民の強い要望にもかかわらず、予算がきちんと配分されずに、事業がもう事実上ストップした状態。それで、我々、議員連盟をつくって今頑張っているところなんですけれども、(発言する者あり)大西さんも一緒に頑張っているんですけれども、こういうふうに、都の進めている都市再生のための箱物や道路づくり、幹線道路づくりなどのために、周辺地域など、置き去りにされた地域が現に出てきているということを指摘しないわけにはいかないわけです。
 また、都民の住宅の問題についても同じことがいえると思います。ちょっと時間の関係で、指摘だけにしておきますけれども、都市再生で取り残されてしまう庶民の住宅の問題、これは、先日本会議で、江東区で起きているマンションの過剰による公共施設の不足の問題を東議員が取り上げました。
 それで、都市再生、確かに高級マンションはどんどん建っていくんですが、高齢者や障害者、若年ファミリーなど、所得の低い人たちの住宅はつくられず、結局こういう人たちが住めないまちになってしまう、こういうことが大きな問題なんです。
 例えば、石原知事のこの四年間、都内で建てられた住宅は三十万八千戸余りですが、そのうち四分の三は分譲マンションです。一方で、新規の都営住宅は、これはもう新規は建設していませんから、九九年度のみ五百三十五戸。公社の賃貸は、これは区部の統計ですが、六百十一戸。全くお話にならない対比なんですね。したがって、だれもが住めるまち東京という点でいっても、住宅問題でもこれだけ大きなひずみが出ているということを申し上げて、次に行きたいと思います。

秋葉原のITセンターの発生する炭酸ガス吸収に、水元公園が三ついる

 それで、もう一つ大きな問題は、環境との共生という問題です。
 我が党は、この間繰り返し、知事のいう都市再生を進めれば、東京の環境は取り返しのつかないことになるといってまいりました。知事は、この問題に、正面からちゃんと答えようとしていません。
 改めて聞きますけれども、都市再生を進めれば、私は、ヒートアイランド現象とか地球温暖化に対する負荷とか、これはもう取り返しのつかない、幾らいろいろ対策を打っても間に合わない状態に入ってしまうと思いますが、そういうふうなご認識は知事にありませんか。いかがでしょうか。

〇石原知事 全くありません。
 都市の再生というのは、あなた方がおっしゃっているように、単に高層ビルを建てるだけじゃないんです。環境問題の対処も、すべて都市の再生につながる問題であります。

〇曽根委員 今、ビルを建てるだけじゃないんだ、いろいろと対策もやっているんだというお話で、今までも知事は、例えば屋上緑化の話、さっき出ましたよ。それで、ビルの緑化も進めていくという話も出ている。
 確かに、省エネルギー対策も、またビルの緑化も必要です。これは大歓迎であって、私たちも、私自身が、第四回定例会のときにはクールランドをつくっていくことも提案しました。しかし、それでも間に合わないぐらいの大変な環境負荷が起きるということなんです。知事が進めている都市再生では、オフィスビルをとにかく無制限にふやすということになる危険がある、また、それに伴う自動車交通もふやすと。これによるヒートアイランド現象を防ぐことはできないという問題なんです。
 例えば二酸化炭素で、これは地球温暖化の効果ガスですけれども、二十三区内で現在計画されているビルなどによって発生する炭酸ガス、これは、東京全体を七%も炭酸ガスを押し上げることになってしまって、九〇年対比で六%下げるという東京の目標は、全く成り立たないことになるんです。
 それで、一体、一つの大型ビルでどれぐらいの炭酸ガスを発生するか、これは私たち調べてみました。単位床面積当たりの現在の水準での排出量は、一平方メートル当たりのビル床で、大体、年間百キログラムぐらいの炭酸ガスを発生します。それに対して、じゃ、それを吸収する自然の方はどうかというと、これもいろんなデータがあるんですが、成木、樹木一本で年間に吸収できる炭酸ガスは大体百五十キロぐらいです、広葉樹で効果のあるものでも。
 そうすると、例えば秋葉原に今、東京都のあれでつくっているITセンター、十二万六千平方メートルの床面積がある。これ、今の水準のあれだと、それを吸収するのに八万四千本の樹木が必要です。どれぐらいのものかと。先ほどちょっと例が出たので、水元公園で換算するとどうかというと、水元公園には二万二千八百本の樹木があり、都内では恐らく最大級の公園ですよ。メタセコイア、千九百十本あります。しかし、この水元公園が三つぐらいないと、秋葉原のITセンターの発生する炭酸ガスは吸収できないんですよ。それの規模の(「代々木のビルはどれだけ出しているんだよ」と呼ぶ者あり)もう話にならぬな……。
 その規模のビルが、これから計画だけでも六十一棟計画されてきているんですよ。一体どれだけの森をつくらなきゃならないかと考えてみてください。
 確かに、いろんな方法ありますよ、都市公園をつくるのに。先ほどもいろんなご提案があった。しかし、とても間に合わないだけのビルがつくられていってしまう。これは間に合わないんじゃないですか。知事、どうですか。
   〔小池環境局長発言を求む〕

〇曽根委員 知事にですよ、これは。今、詳しくデータを示したんだから。

〇小池環境局長 都市の発展にとりまして、開発事業というのは不可欠だと考えておりますが、今ご質問ありましたが、東京都では、ご案内かと思いますけれども、一定規模以上の新築建築物に対して、環境確保条例で建築物環境計画書制度というものをつくりまして、そこで省エネ対策の充実を図っていく。あるいはまた、一定以上のエネルギー使用実績のある既存ビルについては、地球温暖化対策計画書の提出を求めて、自主的な温暖化対策を促進する。この取り組みは、全国に先駆けて東京都が導入した計画なんですよ。そういう制度を導入して、私どもはCO2の排出量の抑制に努めている。
 ただ、現時点で申し上げれば、現行の制度というのは、自主的な取り組みにとどまっている。これはやはり一つの限界があるのではないかということで、昨年の十四年の十一月、東京都地球の温暖化阻止に関する基本方針というものを作成いたしまして、その中で明らかにしておりますように、東京の地域特性に応じた実効性のある温暖化対策について、環境審議会へ諮問し、専門的、技術的観点から審議をいただくということで、現在審議をしているところでございます。
 こうした取り組みを通じまして、省エネルギー型の都市の転換を図っていくことで進めてまいりたいと思っております。

〇曽根委員 確かに、個別事業者に対しても厳しくやってもらいたい。
 しかし、じゃ、個別事業者が何か考えたら、今技術的に炭酸ガスを有効に吸収する方法が、自然による、例えば森などをつくる以外にあるかと。ありませんよ。私、理科系だからわかるけれども、炭酸ガスというのは、極めて一般的なガスなんですよ。これを吸収するための装置をつくったら、それを運転するだけで物すごいエネルギーがかかるんです。一番効果がいいのは、熱も出さずに炭酸ガスを吸い取って、酸素と水にかえてくれる樹木なんですよ、森なんですよ。
 ですから、東京に、これから都市計画公園とか、それから多摩の自然を守っていかなきゃならない。しかし、そこでつくっていく森に、もうとても間に合わないぐらいのビルを供給してしまったら、環境は守れないですよ。どんなに事業者が頑張ったって、出ません、有効な計画は。
 私は、ですから、やっぱり都心で進めているアンコントロールなビルラッシュ、オフィス計画、開発推進の姿勢をまず改めるべきだということを先ほどから申し上げているわけです。
 しかも、これ、ヒートアイランドだってばかになりませんよ。センター・コア内で九百七十八ヘクタールのビルがもしつくられちゃったら、六千七百五十八テラジュール−−テラというのは十の十二乗ですから、もう非常な大変な莫大な熱なんですが、これによって、その地域から発生する熱が二・六六%も押し上げられるという、これは大変な量です

三環状道路つくっても、差し引き十四万台以上の自動車が都心に流入

 こういう問題も、ビルだけじゃないんですね、ビルに伴って発生する自動車交通も、これはヒートアイランドや温暖化ガスの原因になるんです。
 都は、東京裁判で敗訴したばかりです。この中で、東京の見解が示されていますけれども、一日も早い患者の救済をということをいっているわけですよね。多数の健康被害が発生し、各地で訴訟が提訴されており、今や問題解決を個々の裁判にゆだねられない全社会的な問題となっていると。今早急に実施すべきことは、国の対策もそうだが、健康被害者の救済だというふうに都の見解が出ているんですよ。
 私は、こういうことを見れば、やっぱり自動車交通を大量に発生させる、今わかっている範囲だけでも、センター・コア内で二十五万台自動車が出ちゃうという、こういうやり方を規制するために、例えばロードプライシングなんていう話もされていますが、第一には、自動車をふやす大もとである大型開発を抑えること、それから、自動車対策としては、自動車交通の総量規制などに踏み出すべきだと思いますが、いかがですか。

〇石原知事 ヒートアイランドを含めて、環境の悪化はいろんな要因があるんですよ。CO2もNO2もありますけれども、例えば、ディーゼルで苦労している東京が一番問題にしている軽油に含まれる硫黄分、先進国の中では日本だけよ、五〇〇ppm。欧米は五〇ppmから一五ppmに下げた。この規制をやってこなかったのは国会じゃないですか。与党も野党も、あなた方共産党も、国会で何もやらなかったじゃないか。だから私は、政府を告発しているんです。
 私、共産党が、この大気汚染を要するに軽減するために、国民のためにどういう犠牲を払うかどうか知らないけれども、産業界もそれはある負担を負うでしょう。しかし、共産党も含めて、与党、野党が、この先進国でありながら、要するに軽油の硫黄の含有分を五〇ppmに下げろ、できれば一五ppmに下げろと主張したことは一回も聞いたことないね。あなた方はそんな資格ないよ。

〇曽根委員 何をおっしゃるんですか。知事ね、事実を調べてからいってくださいよ。私たちは、石油の不正軽油の問題も含めて、ちゃんといっていますよ。大体DPFだって、本会議の記録見てくださいよ。最初に取り上げたのはうちの党なんですよ、本当ですよ。私自身が環境科学研究所へ行って、今開発始まったばかりというDPFの装置見てきたんだから、十年前に。
 ですから、そんな、一つ一つの個々の対策はもちろん大事ですよ、それは。知事のやっていること全部だめなんていっていません、私たちは。しかし、この三環状道路をどんどんつくることを進めていけばどうなるかということなんです。
 きょう、パネルをつくって、最後にしかお見せできなかったのですが、見てくださいよ、知事、いいですか。(パネルを示す)センター・コアの開発で、都の資料でも、二十五万台を超える自動車交通が発生するといっているんですよ。ところが、都が同時に出している、三環状が完成したときにバイパスで都心から排除できる車の量は何台かと。十万台にすぎないわけなんです。
 したがって、今のプロジェクトが出ている開発が進めば、三環状をつくっても、その倍を超える自動車交通が都心で発生しちゃうんですよ。この問題が残っちゃうということなんですよ。(発言する者あり)東京都の資料ですよ、これ、使っているのは。ごまかしなんかじゃありません、調べてくださいよ。
 ですから、私たちは、他の交通機関へのモーダルシフト、それからジャスト・イン・タイムとか、それから複数輸送の改善、共同配送システムなど、一つ一つ細かい対策を打つこと、そして、大量生産、大量消費型のシステムの切りかえも、二十一世紀の大きな課題として取り組むべきだというふうに思います。
 公害対策の上からも、経済効率の上からも、渋滞解消も急がれていますけれども、しかし問題は、自動車を増大させる開発を野放しにして、道路を建設すればよいというのは、もう時代おくれだということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。(拍手)