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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


2003年第2回都議会定例会 文書質問

河野百合恵(江戸川区選出)

DV防止対策について

 2001年10月13日に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(以下「DV防止法」)が施行されました。
 ドメスティックバイオレンス(DV)は、配偶者または親密な関係の男女間の暴力であり、被害者の多くは女性です。DVは個人の尊厳を侵し、男女の平等を妨げ、命に関わる事態を引き起こす重大な犯罪行為ですが、長年にわたって被害者救済が十分に行なわれてきませんでした。
 2001年の法律制定によって、国、地方自治体、司法、警察などの責務が明確になり、被害者が救済を申し立て、保護を受けるしくみが確立されました。ある自治体の担当者は「法律ができたことによって、被害防止にむけて自治体の果たすべきことがはっきりした。警察との関係でも被害者が保護を求めやすくなった。なにより、これまで長い間、我慢をすることを強いられてきた被害者(ほとんどが女性)に人権意識の高まりが生まれてきた」と感想を述べています。
 しかし、未だDV被害は深刻で、東京都に寄せられたDV相談は2001年度3334件、2002年度7300件と2倍以上に増えています。また、2002年度の全国のDV相談件数のうち、東京の相談件数は16.7%を占めています。
7月1日に板橋区で、DV法によって妻に接近禁止の保護命令をうけていた男性が妻の知人を刺殺するという痛ましい事件が起こりました。DV被害根絶にむけて取り組みを強化することが急がれています。以下、東京都の努力を求めて質問します。

 DV被害の相談は、東京ウィメンズプラザと東京都女性相談センターで受けています。その他、区市町村の女性センターや福祉事務所、民間のNPO法人などにも多数の相談が寄せられています。現在、東京都が発表している相談の件数はウィメンズプラザと都の女性相談センターで受けたものだけです。各区市町村やNPO法人に寄せられている相談状況の調査を行ない、DV被害の実態を総合的に把握し、DV根絶の施策構築に活かすべきです。実態調査の実施について東京都のお考えを示してください。答弁を求めます。

 東京都は、2002年度から担当職員を増やすなど「配偶者暴力相談支援センター事業」を強化しました。しかし、電話相談は「混み合っていてつながらない」ということがしばしばあるのが現状です。これでは、勇気をだして電話をかけた人が相談を諦めてしまうことにもなりかねません。DV被害は緊急を要することがあります。いつでも、被害者の拠り所になれることが必要です。相談体制をさらに強化するようもとめるものですが、お答えください。

 DV被害者の保護は国と自治体の責務です。DV防止法が施行されたにもかかわらず、DVから逃れて身を隠すための一時保護所(シェルター)が不足していることが指摘されています。被害件数の増加に見合った施設の増設が求められていますが、増設にむけての東京都の見解をお示しください。

 現在、都内では16の法人が民間シェルターを運営しているとのことです。被害者は着の身着のままで避難してくることもあり、経済力が乏しくて、シェルターの入所費用の負担もままならないのが実情です。そのために、民間シェルターが費用負担を肩代わりせざるをえず、国や都の財政支援も十分でないことから、結局、法人への寄付金を主な財源として苦しい施設運営をしている例が少なくありません。「国や自治体が民間シェルターの運営について財政支援を強めて欲しい」との要望強まっています。
 ところが、国は今年度、補助の仕組みを一部変更し民間シェルターへの補助金を減額しました。あるシェルターでは「スタッフを1名減らすことになった」と国に対して批判を表明しています。東京都として国に対し、民間シェルターへの支援を強めるよう要請していただくことを求めます。答弁をお願いします。

 東京都が行なっている民間シェルターへの支援は2施設であり、地域福祉振興基金で行なっている3施設への支援と合わせても5施設にとどまっています。都内の民間シェルターの運営実態を把握し、適切に支援を強める必要があると考えます。また、入所者の費用負担軽減策について、検討・実施することを求めます。合わせて、お答えください。

 DV被害者が急を要して避難して来た場合、一時的な宿泊について費用負担の制度を設けている自治体があります。都としてもこのような制度を確立することが求められていると考えますがいかがでしょうか。お答えください。

 DV被害者は自らの所在や氏名を明らかにすることが困難な立場におかれています。そのために、自立を志しても住居を定めること自体が容易ではありません。民間アパートなどは入居の際、保証人が必要ですが、適切な人を依頼できない場合が少なくありません。こうした問題を改善していくための東京都の支援策が必要です。DV被害者が保証人をたてなくても借家・借間の契約ができるような施策の検討を求めます。お答えください。

 北海道では、DV被害者が、離婚成立前でも母子世帯向けの道営住宅に入居できるように対策を講じています。東京都としても都営住宅への入居ができるような対策をとることは可能と考えますが、いかがでしょうか。答弁をもとめます。

 DV法は「施行後3年を目途に改正を行なう」とされています。板橋区でおきた事件が示すように、以前から指摘されてきた被害者の近親者(親、子、親戚、知人など)についても保護命令の対象範囲を広げていく検討が急がれます。東京都として、この点について国に強く要望を行うよう求めますが、いかがでしょうか。

 昨年1月、東京都が策定した「男女平等参画のための東京都行動計画」(チャンス・アンド・サポート東京プラン2002)に、DVの「加害者である男性も社会のひずみの犠牲者である場合が多い」と記されています。実際、各自治体の女性センターには、被害者と連絡がとれなくなって戸惑っている男性の相談が寄せられています。こうした男性へのケアについて適切な対策を行なっていくことが、DV根絶のために重要になっています。カウンセリングの実施など、都としての施策の検討を求めます。お考えを示してください。