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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


本会議 一般質問 二〇〇三年九月二六日

河野百合恵(江戸川区選出)

東京を安全な都市として再生していくうえで、災害への備えは、きわめて重要
学校の耐震化、木造住宅密集地域の改善、地震対策など急げ

区市町村への思いきった補助で、公立小中学校の耐震補強を早急に
木造密集地域の改善を重要な課題として位置づけ、予算の抜本的拡充を
木造個人住宅の耐震診断、耐震補強、耐火改修工事への助成制度創設を
超高層ビルでの被害を未然に防ぐ対策をいそげ
都市型災害について調査、被害想定の策定を
【答弁】

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区市町村への思いきった補助で、公立小中学校の耐震補強を早急に

 今年は、関東大震災から八十年、阪神淡路大震災から八年目の年にあたり、ちょうど二ケ月前の七月二十六日には宮城県北部連続地震もおきました。また、今朝、北海道で震度6弱の地震がおきています。
 東京でもこの二〇年ちかくの間に、震度五の地震が二度おきており、日本列島が地震活動期に入ったといわれるなか、いつ東京が大地震におそわれても不思議ではないといわれています。しかも、東京は超過密都市ですから、その被害は、阪神淡路や宮城県北部などとはとうてい、比較にならない規模のものとなることが想定されます。
 それだけに東京における震災対策は、過去の地震災害の教訓にふかく学ぶとともに、大都市に固有の、また、これまで誰も経験したことのない災害がもたらされる危険を踏まえたものとしなくてはなりません。
 私は、先日、学校や個人住宅など、おおきな被害をうけた宮城県北部地域をたずね、地震被害の現状をこの目で見てきました。本日は、この調査もふまえながら、地震はさけられないが、地震による被害をふせぐことはできるという立場に立って、震災予防対策にしぼって質問します。
 まず、学校の耐震化について伺います。
 最初に伺った、宮城県河南町の北村小学校は、耐震補強が実施されていませんでした。このため、つよいタテゆれで被害をうけ、校舎のなかは、窓が落下してあたり一面にガラスが飛びちり、戸棚はたおれ、鉄製の防火扉もはずれて廊下がふさがれていました。また、鉄筋が切れた壁は崩落、男子トイレの間仕切り板ははずれて飛び、床に落ちていました。
 地震がおきた時、学校にいた校長先生は、実際に体験した地震のすさまじさとともに、「夏休みの早朝で、子どもたちがいなかったことが救いだった」、「授業中であったら大惨事はさけられなかった」と率直に話してくださいました。
 私たちが訪れた日、たまたま学校に来ていた卒業生は、母校のあまりの変わりように涙を流していました。
 知事、万が一にも子どもたちを地震による被害にあわせるようなことがあってはならないと思いますが、どうですか。
 となり町の矢本町では、耐震補強がされていた中学校はほとんど被害がなく、未実施の中学校は十七教室のうち十一教室が使用不能になっていました。私は、子どもたちの学びの場であり、災害時には避難所になる学校がこれでいいのか、と率直に思いましたし、東京の現状を考えると、他人事とは思えませんでした。
 私が住んでいる江戸川区では、現在、二十校の耐震診断が未実施でのこされ、そこに学ぶ児童・生徒は約七千六百人もいます。全都的にも、耐震補強が必要と思われる小中学校がおおくのこされているといわれています。
 耐震補強がすすまない理由の一つに、区市町村にとって、重い財政負担ということがあげられます。それだけに都としての支援がまたれているのです。
 今回、聞いたところでは、宮城県では来年度から、県として、小中学校の耐震化に財政支援をおこなう検討をはじめたとのことでした。そこで、東京都としても、公立小中学校の耐震補強を一日もはやく終わらせるように、区市町村に思いきった補助をおこなうよう制度を創設すべきときと考えます。見解を伺います。
 体育館の改修もいそがれます。北村小学校では、耐震補強をしていなかった体育館も全壊で使用不能になりました。国の緊急五ケ年計画では、体育館はかさあげ補助の対象になっていません。災害時には住民の避難所になるたいせつな施設ですから、これは納得がいきません。国に対して体育館をかさあげ補助の対象にくわえるなどの対策強化を要望すること、あわせて、東京都としても必要な支援をおこなうよう求めるものですが、答弁を求めます。
 地震に備えて、日常的に学校施設の安全を確認しておくことが大切です。
 学校防災マニュアルの学校施設・設備などの点検リストについて、ガラスの飛散やトイレの間仕切りの脱落など、宮城県北部連続地震の被害にもとづいて必要なものを補強し、区市町村の小中学校をはじめ、全都でいっせいに安全点検をおこなうこと。また、予算措置をふくめた支援をおこなうことをもとめるものですが、どうでしょうか。

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木造密集地域の改善を重要課題と位置づけ、予算の抜本的拡充を

 宮城県の地震では、住宅の被害も深刻で、損壊した家屋は一万一千五百六十棟におよびました。これが、人口密度が高い東京なら大惨事になっていたことでしょう。阪神淡路大震災では、木造住宅の倒壊によって圧死した人は、死者の八割におよび、その後の火災とあわせて、被害を拡大しました。
 一方、東京には約三万ヘクタールにもおよぶ整備対象地域がのこされており、しかも、そこに住む住民のおおくが、高齢者や低所得者、借家や借地の人でしめられており、これらの人への支援と対策をぬきに、改善をすすめることは困難です。
 また、事業の推進には、用地の確保など公共の関与が不可欠ですが、東京都は、「防災都市づくり計画」の見なおしで指定地域を縮小して、民間主導の再開発にシフトさせるなど、改善事業を後退させようとしていることは、問題です。
 木造住宅密集地域の改善には、家や土地を借りているなど弱い立場の人のための公共住宅の建設や住宅再建のための種地の確保は欠かせません。また、建て替えや住み替えなどへのゆきとどいた支援の仕組みがあってはじめて、整備が前進するのではないでしょうか。見解を伺います。
 木造住宅密集地域の整備が進まないのは、東京都が必要な予算を確保してこなかったことも原因の一つです。江戸川区内では、西瑞江・篠崎地域などの木造密集地域で区画整理事業が進められていますが、東京都はその予算を年々削り、逆に臨海部の道路建設などにまわしているではありませんか。
 木造密集地域の改善を重要な課題として位置づけ、予算を抜本的に拡充することが必要です。さらに、木造密集地域整備にあたっている区市町村への財政支援を強めることを求めるものですが、それぞれ、答弁をもとめます。

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木造個人住宅の耐震診断、耐震補強、耐火改修工事への助成制度創設を

 これまでの地震で倒壊、大破した木造住宅のおおくは、たてゆれで柱が土台からぬけたり、開口部が破かいされたり、重い瓦屋根で家がおしつぶされるなど共通した特徴が見られます。
 しかし、このような木造住宅でも、建てかえなくても、土台と柱の結束、柱の間の筋交い、壁の補強、屋根の軽量化などの耐震改修をおこなうことで、倒壊をふせぐことができます。また、不燃・耐火の改修も被害防止におおきな効果を発揮します。
 しかもこれらの耐震、耐火工事は、そんなに高額ではなく、一定の補助をおこなうことで、促進することは可能です。実際に、震災対策がすすんでいる静岡県では、改修補助を実施しており、横浜市でも、上限額五百四十万円までの耐震改修補助制度を導入しています。
 家屋の倒壊から、都民の生命と財産をまもることは最優先の課題です。木造個人住宅の耐震補強、耐火改修工事への助成制度を創設すること、また、その前提となる耐震診断助成制度を実施することを求めます。
 くわえて、都民の防災意識の向上と地震につよい住宅づくりを促進するために、わかり易いパンフレットを作成し、全都民に配布することなど、区市町村と協力して、啓発をつよめるように求めます。それぞれ答弁を求めます。

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超高層ビルでの被害を未然に防ぐ対策をいそげ

 巨大・過密都市、東京が大地震におそわれた場合、はかりしれない規模の被害が起こることが想定されます。
 しかも、東京の場合は、林立する超高層ビルや、広大な地下街、縦横にはしる地下鉄など、都市型災害の危険ととなりあわせの開発がすすんでいます。また、ビル・パニック、帰宅困難者、高層住宅での孤立など、まだ解明されていない混乱や被害が発生することが想像されます。
 まず、超高層ビルの耐震安全性の問題です。
 一つは、揺れによる被害です。研究では、東海地震が想定された規模でおきた場合、四十階の超高層ビルの最上部では、最大八十センチちかい振幅におそわれると見られています。この場合、室内の家具の倒壊やテレビなどの散乱、壁への激突によるけがなどの発生が心配されています。
 ビルそのものの安全性も問題が指摘されています。現在の超高層ビルは、短かい周期の波動の地震に対応するように設計されていますが、実際には、長い周期の波動の地震の発生の可能性も否定できないこと。その場合、長い周期の地震波をうけた超高層ビルでは、「共振」現象やおおきな横づれによるビル破かいの危険も考えられるということです。
 「阪神淡路大地震で被害がなかったからといって、超高層ビルの安全性が保障されたわけではない」という、学会の見解も示されています。
 超高層ビルの安全度、地震時のコンピューターの機能停止やエレベーターの故障のおそれ、ビル・パニック、高層住宅内の安全問題など、おおくの問題が未解明のままです。建築基準が満たされていれば良い、ということではなく、これらの問題の解明をいそぎ、超高層ビルでの被害を未然にふせぐ対策がいそがれていると考えますが、見解をお聞かせください。

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都市型地震災害について調査、被害想定の策定を

 阪神淡路大震災では、地下鉄にも被害がでました。開削工法による建設だったことが原因でしたが、地下鉄は安全であると言われてきたことに疑問をいだかせる被害でした。一方、東京の地下鉄は、総延長二百三十九キロのうち、耐震補強が終わったとはいえ開削工法によるものが七十%を占めています。
 また、都内には、営団と都営の地下鉄が合わせて十二路線が走っており、大手町や新宿などのように複数の路線が集中している駅が数おおくあります。地下鉄の耐震設計は一路線ごとに完結していることから、複数の路線が交錯している駅全体の耐震性は考慮されていないといわれています。
 開削工法の安全性、複数路線駅の耐震性、震度七対応、縦ゆれ対策など研究と対策がいそがれます。地下街も同様です。国にはたらきかけて、これらの地下都市施設の安全確保のための取りくみをはじめることが必要ではないでしょうか。答弁を求めます。
 知事が進めている「都市再生」のもとで、超高層ビルや地下鉄、地下街などの都市施設がつぎつぎに建設され、東京は急激な膨張をつづけています。ところが、東京都はこれらの大規模な複合施設のもとでの地震災害について、調査も被害想定もおこなっていません。これでは、都市災害に無防備な状態といわれてもしかたありません。
 ただちに、調査をおこない、被害想定を策定すること、そのうえで必要な対策を講じるよう提案します。答弁を求めます。
 最後に、東京を安全な都市として再生していくうえで、都市の災害への備えは、きわめて重要であると考えますが、知事の答弁を求め、質問を終わります。

以上

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【答弁】

〇知事(石原慎太郎君)
 河野百合恵議員の一般質問にお答えいたします。
 震災時における子どもたちの安全対策についてでありますが、学校は、我が国の将来を担う子どもたちを育成する場所でありまして、何よりも子どもたちの身体、生命の安全確保を第一として安全対策に取り組んでいくことが肝要だと思います。
 私も、就任早々、台中で大地震がありまして、知己であります李登輝前総統に請われて、東京の建築の専門家と同伴して、視察に行き、すべき援助もいたしましたが、あのときにやっぱり震源地に近いところでの中学校が、三階建てですが、完全につぶれておりまして、案内された人が、もしこれがやっぱり、子どもの通っている日中だったら、とんでもないことになった。あなたが視察された学校も幸い夏休みということで助かったんでしょうが、やっぱりいつ地震が来るかわかりませんから、子どもたちのためにも安全対策は肝要だと思います。
 次いで、東京の震災対策についてでありますが、東京を災害に強い都市にしていくためには、ハード、ソフト両面からの取り組みが必要であります。このため、都では、災害に強い都市構造とするために、都市の再生を推進しておりますが、一方、みずからの命は自分で守るという自助、自分たちの町は自分で守るという、いわゆる共助があって初めて、都なら都が乗り出した公助も生きてくるというわけであります。そのための訓練や啓発を通じ、災害に強い地域社会づくりを促進しております。
 今後とも、首都東京の一層の安全性を目指して、災害への備えに万全を期すつもりでございます。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁します。

〇教育長(横山洋吉君)
 学校施設の耐震に関します三点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、区市町村に対する補助制度の創設についてでございますが、公立小中学校の耐震化につきましては、設置者である区市町村が、子どもたちの身体、生命の安全を確保するために、それぞれの責任において対応すべきものであると考えます。お話の新たな補助制度につきましては、財政上の理由からも困難でありますことから、区市町村は、国の助成制度を十分に活用して、公立小中学校の耐震化を適切に推進していくことが必要であると考えます。
 次に、体育館の耐震性強化に関する国への要望や都の支援策についてでございますが、体育館の補助率のかさ上げにつきましては、体育館の耐震化を促進するため、平成十二年度より、地震補強事業予算額の拡大などとともに国に対して要望しておりまして、今後とも強く要望してまいります。
 また、お話の区市町村に対する支援につきましては、都教育委員会としましても、区市町村が国の助成制度を十分活用して学校施設の耐震化を適切に推進するよう、指導、助言しますとともに、耐震化に関する講習会を実施するなど、引き続き行ってまいります。
 次に、学校防災マニュアルの補強と全都一斉の安全点検等についてですが、学校防災マニュアルの学校施設、設備等の点検リストは、過去の震災等を教訓に点検項目を設けておりまして、今後も必要に応じて改定をしてまいります。また、都立学校では、学校防災マニュアル等に基づきまして、施設、設備等の安全確認を行ってきております。
 なお、区市町村教育委員会に対しまして、学校防災対策等の一層の充実が図られるよう、学校防災マニュアルを配布しておりますが、区市町村の小中学校の安全対策等につきましては、設置者でございます区市町村がそれぞれの責任において適切に対応していくべきものと考えております。

〇住宅局長(高橋功君)
 木造住宅密集地域の整備についてのご質問でございますが、都が区市と連携し、木造住宅密集地域整備促進事業を六十四地区を対象に実施しております。この中で、老朽化した木造住宅の建てかえ促進や、道路、公園の整備などに伴う代替地や代替住宅の確保など、これまでさまざまな支援を行ってきております。今後も、これらの手法を活用いたしまして、木造住宅密集地域の整備を進めてまいります。

〇都市計画局長(勝田三良君)
 木造密集地域の対策等につきます五点のご質問にお答え申し上げます。
 まず、区市町村への支援についてでございますが、防災都市づくりは、震災時における都民の生命、財産を守ることを目的としておりまして、早期に安全性を確保していくことが重要でございます。特に、密集地域におきましては、現在改定中の防災都市づくり推進計画におきまして、関係区市と連携を図り、重点整備地域を選定し、事業を重点化して実施することとしております。
 都といたしましては、主要な延焼遮断帯となります都市計画道路を整備するとともに、区市が実施をいたします事業について、技術的支援や補助金を交付するなど、防災都市づくりの推進に努めております。
 次に、木造住宅の耐震、耐火補強についてでございますが、耐震診断等は、本来、建築物の所有者等の責任において行われるべきであると考えております。都といたしましては、耐震診断講習会の開催や診断機関の紹介、所有者みずからが診断できる簡易診断方法の周知等を行ってまいりました。また、耐震診断等に関するパンフレット、ビデオ等を作成し、区市町村の窓口を通じまして都民に配布をいたしております。
 今後とも、耐震診断、改修への助成等を行っている区市町村と連携をいたしまして、木造住宅の耐震性の向上及び都民への普及啓発に、より一層努めてまいります。
 次に、超高層建築物の安全性についてでございますが、建築基準法では、高さ六十メートルを超える建築物を超高層建築物と定めております。これらの建築物は構造上の安全性につきまして国土交通大臣の認定が必要でございまして、一般の建築物を上回る高い安全基準が適用されております。
 防災性につきましては、避難誘導を初め、ビルの災害対策を指揮する防災センターとしての中央管理室の設置が義務づけられておりまして、高い安全性が確保されております。また、超高層建築物は、総合設計制度などの開発手法により計画されることが多く、その際、構造上の強度、防災性以外にも、道路など交通環境に与える影響、風害、落下物対策など、周辺環境に与える影響につきまして、特定行政庁が審査をしております。
 このように、震災対策には万全を尽くしておりまして、今後とも超高層建築物の安全確保に努めてまいります。
 次に、地下施設の安全確保についてでございますが、都内の地下鉄は、これまで、関東大震災クラスに対応できる耐震設計を行ってまいりましたが、阪神・淡路大震災後は、各鉄道事業者が震度七程度の地震にも対応できるよう補強工事を完了しております。また、地下街につきましては、建築基準法及び東京都建築安全条例に基づきまして、火災拡大の防止並びに避難安全性の確保を行っております。
 今後とも、都といたしましては、国など関係機関と連携を図りまして、これら地下施設の安全確保に努めてまいります。
 最後に、地震災害に関する調査についてでございますが、都は、防災まちづくりを進めるため、超高層ビルが集中する地域も含め、五年置きに地域危険度測定調査を実施しておりまして、昨年十二月には、建物倒壊危険度、火災危険度、避難危険度などを第五回危険度測定調査結果として公表いたしました。この結果を防災都市づくり推進計画に反映させることによりまして、危険度の高い地域で早期に防災性の向上を図っていくこととしております。
 なお、ただいま申し上げましたとおり、超高層ビルなどは最新の技術基準に基づき設計、施工されるため、震災時も十分安全が確保されると考えております。