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■ 議会での質問 日本共産党東京都議団
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銀行税の和解案は、大銀行不良債権処理による課税のがれを継続するもの
都民のくらしと福祉を第一にした財政立て直しを
日本共産党都議団を代表して、第二百六号議案「東京都における銀行業等に対する事業税の課税標準等の特例に関する条例の一部を改正する条例」ほか六議案に反対する立場から討論を行います。
まず、銀行税の和解についてです。
そもそも銀行税は、ばく大な利益をあげながら、不良債権処理をおこなうことで、課税をのがれてきた大銀行に対して、適正な税負担をもとめるために制定されたものであり、また、今回、銀行側の提訴であらそわれた裁判でも、第二審の東京高等裁判所は、東京都の主張をおおむね是としたうえで、この銀行税の基本的立場をみとめ、「税負担の均衡要件を満たす検討がなされていない」ことという、一点をもって東京都の敗訴としたものです。
したがって、和解にあたってもとめられていることは、単に、外形標準課税の形式が守られているだけでなく、実質のうえでも、すなわち、確保されるべき税額のうえでも、不良債権処理の影響を受けない税制を継続することにほかなりません。
しかるに、知事が銀行側と政治決着をはかった和解案は、税率の算定の根拠となる期間を、一九九三年度からの十年間とすることで、これまで三%であった税率を〇・九%までひき下げ、総額二千三百四十四億円もの税金を銀行側に還付することとしているのであります。
知事は、この税率を「合理的水準」としていますが、基準となるこの十年は、まさに、大銀行の不良債権処理の期間そのものであります。質疑を通じてあきらかにされたように、この十年の間、大銀行は不良債権処理をおこなうことで、見かけ上の収益をおおきく圧縮してきたのです。このような状態の銀行の所得基準税額をもとに税率を算定することは、「合理的」どころか、不良債権処理による課税のがれを追認するものにほかなりません。
また、知事は和解を決断した理由として「金融機関の体力低下」をあげましたが、大銀行はこの課税期間を通じて、三兆円台の高水準の業務粗利益を維持していること、さらには、この九月期決算でのきなみ大幅黒字を計上していることなど、「体力低下」はあたらないことは明白です。国の外形標準課税の導入についても、そもそも、都の銀行税は、東京都の課税自主権にもとづいて制定したものであり、国の動向に左右される必要はまったくありません。
わが党は、知事が和解案を撤回するとともに、都民の納得と合意が得られるあらたな和解案を策定し、あらためて銀行側と交渉をおこなうことをもとめるものです。
銀行税をめぐって、知事の密室の行政運営に対して、各会派や職員のなかから、きびしい批判の声があげられたことは当然です。にもかかわらず、知事は、「秘密主義」と批判されたことに対して、「議会の情報管理もあてにしているわけでもない」といい、「ああいう形で持ち出して良かった」と開きなおりました。これは政策決定過程の公開という、自治体として当然のあり方を否定するもので、自治体の長としての見識が問われる問題であります。
密室の都政運営をこれ以上つづけるならば、今後の都政に重大な支障をおよぼすことになることを、この際、きびしく警告しておくものです。
第百九十二号議案、すなわち迷惑防止条例の改定案は、「専ら、特定の者に対するねたみ、恨み、その他悪意の感情を充足する目的」によって規制し、人間の内心の感情の問題を警察官の判断で合法、違法にきりわけるという根本的欠陥をもつものであり、わが党は反対するものです。同時に、質疑を通じて、政治活動、労働運動、市民活動、取材活動などはもちろん、憲法が保障する諸権利の行使などは、条例の対象外であることが明確に確認されました。
本定例会では、策定中の「第二次財政再建推進プラン」について、議論が交わされました。
わが党は、これまでに発表された同プランの「中間まとめ」および「途半ばの財政再建」などが示した方向について、「高止まり」しているとして、区市町村補助や私学助成などが名指しされ、さらには、都独自の任意補助や少額補助なども問題視されるなど、あらゆる都民施策の削減の危険があることを指摘し、都の考え方を質しました。
これに対して、知事は、「都市再生」を最優先にするとともに、財源捻出のために、「休止・廃止を含む聖域のない施策の見直しを徹底」することをあらためて表明しましたが、これは都民の苦しみをかえりみようとしない姿勢のあらわれといわざるを得ません。
わが党が、くり返し表明しているように、自治体は、たとえ、どんなに財政が苦しくても住民のくらしと福祉をを最優先にすることを、その使命としているのであります。
各党の質疑のなかで、区市町村補助の見直しについて、「サービス低下があってはならない」という注文がつけられ、私学助成についても、「いっそうの振興」をもとめる質問がおこなわれたことについて、知事は謙虚に耳を傾けるべきであります。
私立保育園へのサービス推進費補助の見直しについて、この議会の期間中にも、おおくの施設や団体から、不安と怒りの声が寄せられました。それは、東京都が計画している見直しの内容が、あまりにも施設の実態を無視した乱暴なものであり、関係者と父母の力でこれまで築きあげられてきた東京の福祉の水準をおおきく後退させるものとなりかねないからです。
福祉局長は、「保育所の運営は、基本的に国基準の運営費で運営すべきもの」と、驚くべき答弁をおこないましたが、いま、全国各地では、この国基準の運営費があまりにひくすぎるということが大問題となっているのです。都の運営費補助が、国基準なみに引き下げられることになれば、東京の保育水準は一気に後退することはさけられません。
だからこそ、関係者から「あまりに現実を無視した内容に驚き、怒りさえ感じました」などの、声があげられているのであります。
質疑をつうじて、人件費補助の廃止の道理のなさがうきぼりにされるなかで、福祉局が「施設運営に支障のないよう、十分配慮していきたい」と答弁せざるを得なくなったことは重要です。そうであるならば、いま、施設側に示している単価の若干の上乗せや、経過期間の延長などの部分的譲歩にとどまるのではなく、人件費補助を存続し、すべての保育園が職員の定着率をたかめ、経験豊かな保育士を確保できるよう保障することを、あらためてもとめておくものです。
問題は、知事が財政難を口実に、これらの都民施策の切りすてをすすめようとしていることです。しかし、「中間のまとめ」で示された巨額の財源不足は、国の税制改正に伴う減税分について認められている減税補填債などの財源措置を計上していないなど財源不足が過大に設定されていること、九月期の民間企業の決算によって、今後、税収増が見込まれることなど、財源不足額が絶対的なものでないことが、わが党の質疑を通じてうきぼりとなりました。
また、石原知事は、「財政危機」を強調しながら、その一方で、超高層ビルと大型幹線道路中心の「都市再生」をひきつづき聖域扱いすることを表明したことは、都財政の現状を直視しない態度といわざるを得ません。
しかも、知事が、首都高や羽田空港の再拡張さらには、東京地裁が土地収用の停止決定をおこなった圏央道をはじめとする国の大型公共事業について、「都が応分の負担をするのは当然」としたことは、都財政をいっそう困難においこむものであり、無責任のそしりはまぬがれないものです。
日本共産党は、財政難を口実に、都民施策の切りすてをすすめるプランの策定に反対するとともに、大型開発優先の行財政運営をあらため、都民のくらしと福祉を第一にした財政の立て直しの実現のために全力をつくす決意を表明するものです。
最後に、石原知事のテロ容認発言についてです。
あらためて申しますが、いかなる理由であれ、テロを容認する発言は絶対に認められないものです。しかるに知事は、外務省幹部の言動は「万死に値する」から、「ああいう表現をした」などと開きなおり、いまなお、テロ容認発言を撤回しようとせず、謝罪もこばみつづけていることは、知事の資格が問われる重大問題です。
また、知事は、わが党が、知事が私が総理になったら、北朝鮮と戦争をおっぱじめるなどと発言していることを、指摘したことに対して、デマだ、うそだなどと言いはりました。
しかし、知事が、「ニューズウイーク」誌をはじめ、「週刊文春」でも、「僕が総理大臣なら、実は百人もいるという拉致された日本人をとり戻すためになら北朝鮮と戦争をおっぱじめるよ」と発言していることはまぎれもない事実であり、この点を指摘したわが党に、うそだなどというのは、事実をいつわるものにほかなりません。
北朝鮮の拉致問題に関するとりくみについても一言申し述べておきます。まず、日本共産党が国会で早くからこの問題を質問でとりあげてきたことは、天下周知の事実であります。石原知事は、本会議でいみじくも、「私も国会でその問題についての質問通告をしますと、そのたびにつぶされてきました」と答弁されました。知事は、二十五年間、国会議員をつとめながら、拉致問題を国会で質問さえしてこなかったではありませんか。拉致問題に真剣にとり組んできた公党を誹謗したり、他人の悪口をいうまえに、自ら反省すべきであります。
見過ごすことができないのは、議会のルールとして、知事や理事者には質問権が認められていないにもかかわらず、知事が、くりかえし、このルールをやぶり、質問という形で、公党への誹謗をくりかえしたことです。この問題は、すでに、一昨年の予算議会において、わが党以外の他会派の議員からきびしく批判された経緯があります。にもかかわらず、平然と同じことをくりかえすことは、議会制民主主義を否定し、議会を冒涜するものであり、猛省をもとめるものです。
石原知事のテロ容認発言は、テロ容認の風潮を助長するおそれのつよいものであり、わが党は、知事が発言を撤回し、謝罪をおこなうまで、きびしくただしていくことを表明するものです。
おわりに、二十一世紀の日本の進路がおおきく問われる総選挙が目前に迫りました。日本共産党は、自民党政治の古い枠組みを打破し、野党らしい野党としてかならず躍進を果たすために全力をつくす決意を表明して、討論を終わります。
以上