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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


2003年第4回定例会 文書質問趣意書

清水ひで子(八王子市選出)

都立の大学改革について

 東京都はことし8月、都立大学の「新大学構想」を発表しましたが、その「改革」の内容と強権的な手法にたいして、大学関係者はもとより、都民、マスコミのなかからも、疑問と批判の声がひろがっています。
 その一つは、この大学「改革」が大学を良くするものとなるのか、どうかということです。
 石原知事は、「新しい大学を東京から発信する」、「学生の需要が大きく変化している」などといって、いかにも都立大学の大改革が必要であるかのようにいいましたが、そもそも都立の4大学は、都市問題など独自の分野の学術研究で成果をあげ、弁護士など国家資格者を輩出、産学公連携の地域連携など、全国の大学のなかでも独自の位置をしめ、たかい評価を受けている大学です。受験には、北海道から九州まで全国からおおくの学生がかけつけ、高倍率をほこるなど、進学希望者にとって、欠くことのできない大学となっているのです。
 また、直下型地震など都市型災害、地域金融問題、都市と居住など先進的な研究は、東京都のそれらの分野の政策化や施策化にあたっておおきな役割を果たしていることも、無視できません。
 したがって、いま、設置者である東京都にもとめられていることは、都立大学のこれらの側面を積極的に評価し、その成果をいっそう実りあるものとするための支援をおこなうことです。
 しかし、東京都が発表した「新大学構想」は、これらの都立大学の役割を否定し、4つの大学を廃止、統合しようというものです。その内容も、これまでの学部を解体し、都市教養学部や都市環境学部、システムデザイン化など、学問的にも不明瞭な分類で学部を再編するなど、大学関係者から疑問が出されているものです。
 また、学部の構成に関する調査を、こともあろうに大学受験のための進学塾に委託までおこないましたが、これこそ東京都が大学のあり方について、必要な見識も学術的蓄積もまったく有していないことを証明するものに他なりません。
 また、「新大学構想」は、法にもとづく「独立行政法人」の適用や、独立採算性の方向をつよくうちだしましたが、その狙いは、東京都の負担を軽減することにあることは間違いありません。このような方向が押しつけられることになれば、大学は経営をなりたたせるために、採算の合わない基礎研究から、外部資金のおおい分野の研究にシフトせざるを得なくなるなど、大学の変質、後退を招きかねない危険をもったものです。
 結局、「新大学構想」の方向は、石原知事がかねてからいってきた、ビジネススクールなどに力をいれることや、「独立採算性」を視野に、「民間」の経営感覚をとりいれることなどの主張に忠実にそったもので、本当に大学をより良いものとしていく立場からの建設的な提案とは到底、言い難いものです。また、これまでの都立大学のめざしてきたものとはまったく逆方向を向いたものと言わざるを得ません。
 二つ目は、この「改革」が、大学人による自主的、自発的なものではなく、石原知事と大学管理本部からのトップダウンによる強権的ともいうべき押しつけによるものということです。
 東京都が、2001年の最初に4大学の再編・統合を打ちだした「東京都大学基本方針」、さらにそれを発展させ、2005年4月に、4大学を統合し、短大を廃止した上で「新大学」を発足させるとした「東京都大学改革大綱」のいずれも、大学の先生や大学の側から自主的に提案されたものではなく、知事の意向を受けた大学管理本部が、事実上、大学関係者の声をおさえつける形で、とりまとめたものに他なりません。しかも、大学関係者は、都側の強権的なやり方に、やむなく合意にいたった経過があります。
 しかも、重大なことは、こうしてまとめられた構想案についても、石原知事が、気に入らないとして、一方的に破棄し、設置者権限をふりかざして、8月1日に「新大学構想」を押しつけるにいたったのです。
 その過程は、自由、自主、独立が尊重され、自治的運営がおこなわれることによって本来の役割と機能が発揮されるべき大学運営を、都が乱暴にふみにじろうとするものにほかなりません。
 「新大学構想」の内容と、都のこのようなやり方がいかに道理のないものであるかは、都立大学総長が異例の反対声明を発表し、学部部長会、教職員組合、院政、助手の会、学生まで、大学を構成する人々がこぞって、「新構想」に反対し、都民的な再検討をもとめていることで明らかです。
 都立大学の学生のアンケートでは、「絶対反対だ」、「もっと学生にとって良い改革にして欲しい」などの声が寄せられ、86%が「今回の改革に反対」と答えるにいたり、学生の声が生かされていないという回答にいたっては93%におよんでいます。
 しかも、重大なことは、「新構想」への疑問や反対の声は、大学内にとどまっていないということです。すでに大学OBや都民による「都立大学を考える都民の会」が発足し、全国の大学の教職員有志による反対の声もあげられています。
 マスコミからも、「都の新構想には、安上がりの大学作りが透けて見える。都が示した『都市教養学』とは何か、といった根源的な問いかけもある」(12月12日付・読売新聞)などの報道もおこなわれています。
 また、法曹界からは、都の強権的な手法について、質問状が提出されるともに、「いま都立大学にもとめられるものは、真にすべての都民に開かれ、平和と共生に寄与できる人々を生み出す学園であって、断じて企業本位・競争本位の大学ではない」というきびしい批判もあげられています。
 このようななか、都立大学の法科の教授が4人辞職を表明するにいたりました。この4人の教授は、都が来年開校を予定していた法科大学院の専任教員に予定されていた方々であり、この結果、来年1月に予定していた法科大学院の筆記試験を延期せざるを得ないという前代未聞の不詳事態をまねくことになったのです。その責任はひとえに、強権的に「新構想」をおしつけた都にあることは明らかです。

:知事、このような前代未聞の不祥事を招いた責任をどううけとめているのですか。
見解を問うものです。

 最近、あるビジネス誌が「ザ・大学ランキング 本当の実力がわかった」という特集をおこなっていますが、そのなかで、都立大学は、国の科学研究費取得を急速にのばし、トップをしめていること、国家資格取得者が多いことなど、全国の大学のなかでたかいランクに位置づけられています。このように、いまでも都立大学は、たかい水準にたっしいるのです。 もちろん、現状に安住することなく、さらなる努力と改革も欠かせませんが、それは上からおしつけるものではなく、あくまでも大学の自発的・自主的なとりくみによってなされるべきものです。

:「新大学構想」はただちに白紙撤回し、都立大学のめざす方向について、大学関係者の自主的な検討にゆだねることこそ、問題解決の道ではありませんか。

:また、「第2次都庁改革アクションプラン」にもとづく、独立行政法人化についても撤回し、都直営の大学として、必要な予算を確保して、全国に誇りうる大学にしていくことをもとめるものですが、それぞれ知事の答弁をもとめるものです。

以上

答弁

質問事項
一 都立の大学改革について
1 都立大学の法科の教授の辞職により、来年1月に予定していた法科大学院の筆記試験を延期せざるを得ないという前代未聞の不祥事を招いた、その責任をどう受け止めているか、見解を伺う。

回答
 都立大学法科大学院については、専任教員に就任する者から平成15年6月1日付けで就任承諾書が提出され、6月27日には文部科学省に設置認可を申請して、開設に向け着々と準備を進めていたところです。しかし、「大学設置・学校法人審議会」に設置を認められた直後から相次いで専任教員の退職願が提出されたため、急きょ学生募集と入学試験を延期せざるを得ない状況となったことは、誠に残念なことであり、受験を予定していた学生の皆さんに多大な迷惑をお掛けしました。
 退職する教員は法学部の教員であるので、就任承諾書提出の意味合いは十分理解できたはずであり、法科大学院の内容に変わりがない中で、専任教員就任の承諾を突然反故にすることが社会に対して通用するものか、考えてほしかったところです。
 その後、平成16年1月23日に「大学設置・学校法人審議会」から教員の補充が認められましたので、予定どおり平成16年4月に法科大学院を開設することができるようになりました。今後は、法科大学院の充実を図り、社会が求める法曹の育成に取り組んでまいります。

質問事項
一の2 「新大学構想」はただちに白紙撤回し、都立大学のめざす方向について、大学関係者の自主的な検討にゆだねることこそ、問題解決の道ではないか。見解を伺う。

回答
 新しい都立の大学は、「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命として、大都市の複合的な課題の解決に向けて積極的に取り組む、旧弊に陥ることのないダイナミックな大学にしていくことが何より重要です。
 都立の大学が現状のままで社会からの要請に応えていけるかは疑問であり、現行の大学関係者だけでは、根本的な見直しを行うことは困難です。.
 今後とも、積極的に大学改革に取り組んでまいります。

質問事項
一の3 独立行政法人化についても撤回し、都直営の大学として、必要な予算を確保して、全国に誇りうる大学にしていくことを求める。見解を伺う。

回答
 少子化の影響で今後ますます大学間の競争が激化する中、現状のように経営の視点が希薄では生き残れなくなります。そこで、新大学は独立行政法人とし、学長とは別に経営の責任者として理事長を置いて、柔軟な人事・会計制度のもと、限られた人員・予算を有効に活用し、効率的な経営を行ってまいります。
 法人化と合わせ、大学を抜本的に改革し、全国に誇りうる全く新しいタイプの大学としていききす。

以上