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■ 議会での質問 日本共産党東京都議団
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DV防止法改正にあたっての都政における課題について
2001年に配偶者暴力防止法(DV法)が施行になり、東京ウィメンズプラザと東京都女性センターに寄せられた相談件数は、H13年度3334件に比べて、H15年度は9253件と約3倍に増加しています。DV被害者の多くが女性ですが、自分らしい生き方を求めての人権意識の高まりが示されています。法施行後3年経った今年5月27日に、改正DV法が国会で成立しました。
改正法では、これまで配偶者が対象だった保護命令を元配偶者にも出せるようになり、子どもへの接近も禁止されます。住居からの退去命令は2ケ月に拡大しました。被害者の要求を反映させながら、公営住宅への優先入居や就労支援、民間シェルターへの財政支援、被害者の住所情報の非開示など、実効ある施策を進めていく道筋ができました。しかし、課題も残っています。今年3月29日の東京都男女平等参画審議会「中間報告」にまとめられた生活文化局によるDV被害者への調査結果は、被害の深刻な実態を浮き彫りにしています。被害者の年代は20歳代、30歳代、40歳代が76.6%で、被害者の83.9%に子どもがいます。そのうち、就学前の乳幼児がいる被害者は40.3%を占めています。夫からの暴力が始まったのは結婚1年未満との回答が42.8%で、結婚当初から暴力を受けている人が多数です。暴力を受けたときに、77.2%が「怖い、恐怖、脅え」を感じており、40.0%が「相手と別れたい」思っているのです。被害者が受けている暴力は、「殴る」「蹴る」の身体的なものだけでなく、相手を貶める暴言や、生活費を渡さなかったり、働くことを妨害する経済的暴力、性的行為の強要など性的暴力、さらにこれらの暴力が重複してふるわれている状況があります。
被害者たちは、長期間の暴力に対して、「相手に見切りをつけ、離れて自活の道を歩みたい」と希望しつつも、暴力から逃れることができないでいます。その理由として、もっとも多いのが「経済的な不安」で、43.9%に及んでいます。子どもがいる被害者の41.7%が「子どもをひとり親にしたくない」、21.2%が「転校・転園させたくない」という回答をしています。
現在不安に思っていることは、「経済的不安なこと」が57.2%で最も多く、37.2%が加害者の追跡となっています。こうした実態に即した対策が急がれています。改正法は、国と自治体は「自立を支援する」責務を有すると明記し、配偶者の暴力の防止と被害者保護の施策に関して、国は基本方針を、都道府県は基本計画を策定することを義務付けました。区市町村に配偶者暴力相談支援センターの設置をすることも制定しました。国と合わせて、自治体としてもDV防止施策を強めることが明確になりました。
また、DV被害者からは、行政機関に相談に行った際、事態を正確に受け止めてもらえないことも多く、そのことで逆に気持ちが落ち込んだり、傷ついたりすることがある、との相談が少なからず寄せられている現状があります。
そこで、東京都として実施にうつすべきDV施策について提言をふくめ質問します。第一は、都が策定する基本計画に関する問題です。まず、基本計画策定のスケジュールについてお示しください。合わせて、基本計画は都民参加で策定するよう求めます。見解を伺います。
第二に、基本計画に被害者支援のために次のような具体的施策を示していくとともに、必要な改善策を直ちに講じることが求められています。
(1) DV被害者が切迫した状況におかれた時にいつでも受け入れられるように相談体制をさらに拡充すること。また、都の職員を含めて、相談に携わる関係者への研修を充実させること。(2) DV法が施行になって急増している被害者の数に見合った緊急一時保護施設の増設を進めること。
(3) 一時保護施設は、従来の売春防止法を根拠法とする入所者と、DV法による入所者が一緒に生活しているのが現状です。DV被害者は、固有の問題を抱えて入所していることから、一律の処遇にならないような配慮が必要です。したがって、DV被害者の固有性に対応出来る施設整備や職員配置を行うこと。
(4) 被害者の生活再建と経済的自立促進のための生活資金の貸付や都営住宅への優先入居制度を確立すること。また、就労がしやすくなるような支援体制づくりを行うこと。
(5) 女性たちの自立支援と人道的立場に立って被害者救済に大きな役割を果たしている民間シェルター(避難施設)への財政援助の拡充を図ること。
(6) 暴力によって傷ついたDV被害者の心のケア体制を充実させること。
(7) 東京都の公式ホームページのトップには、「人権」という見出しはありますが、「DV」や男女平等参画」という見出しはありません。ホームページの見出しから、検索しやすいような改善を行なうように求めます。
以上、7点についてお答えください。
第三に、子どもの保護の問題です。
法務省の調査では、DV加害者の4割は子どもの前で暴力をふるっています。親同士の暴力を目撃している子どもは、強い恐怖感、暴力を止められない無力感など精神的ダメージを受けています。こうした行為は、先に成立した改正児童虐待防止法で「児童に著しい心理的外傷を与える言動」として「児童虐待」にあたるという新たな定義がされました。東京都の調査では、子どもがいる家庭の51.1%で、子どもも暴力をふるわれていることが明らかになっています。
子どもの成長に不適切であると判断される場合、加害者の「監護権や面接交渉権の制限」などの検討も課題になっています。東京都がこの点で、対応を急ぐことを求めるとともに、子どもへの「ケアシステム」について検討されるよう提言するものですが、いかがでしょうか。第四は、加害者更正についてです。
東京都は、昨年、リーフレットを作成して、加害者更正への取り組みを一歩前進させました。しかし、用意したリーフレットはすでに配布しきってしまった、と聞いています。加害者に対し、DVは犯罪行為であることを認識させる啓発活動に力を注ぐことが重要です。
今回の法改正で、保護命令の対象が元配偶者にも拡大され、家からの退去命令期間が2週間から2ケ月間に延長されました。しかし、保護命令はあくまでも緊急の場合であり、期間が過ぎれば命令は解かれます。その間に、被害者の自立、生活再建の方向のめどがたたず、加害者の反省がないままであれば同じことが繰り返される可能性があります。DVの防止、被害者救済のためには、遅れた分野とも言える加害者への更正対策も行政の責任で位置付けることが重要です。東京都として、DV被害の悪循環を断つ実効ある加害者への啓発・更正策を講じるように求めます。お答えください。以上