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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団


2004年第2回定例会 文書質問趣意書

木村陽治(葛飾区選出)

文化行政について

 文化行政のあり方について伺います。
 1958年に策定された東京都文化振興条例は、都の責務として文化振興のための施策を総合的かつ効果的に推進するとのべ、区市町村への支援、伝統的文化の保存、継承、自主的文化活動の促進、場の提供、文化施設の体系的整備などをうたっています。1999年に発表された21世紀への提案――文化都市ビジョンでは、東京の「文化都市」づくりを目指して、従来の文化行政の枠組みを超えて総合的な都市政策として取り組んでいく、と文化行政に高い位置づけを与え、芸術には公的財政支援が必要であると、アメリカ政府が全米芸術基金を設立した根拠となったとされる著作をひいて、都民の創造活動への支援などを施策にかかげています。

 さらに2001年に成立した文化芸術振興基本法では、国民が等しく文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるような環境の整備、地域の人々により主体的に文化芸術活動が行われるための配慮などが、文化振興の基本理念としてあげられています。
 いずれも、文化芸術が心豊かな活力ある社会を形成するうえでもつ重要性と、その振興についての国および地方自治体の責務が強調されています。

 さて、石原都政になって5年、都の文化行政はどのように進められてきたでしょうか。
 最初に行われたのは、当時、まだ試行の段階であった行政評価制度の対象に、「東京都庭園美術館の運営」など、都市文化づくり関連の事務事業13事業があてられたことでした。そしてこれらの事業が、市街地再開発事業や不動産相談事業などと同列に、同じ手法で効率性、費用対効果などを比較され「評価」がくだされました。その結果、対象とされた13事業はすべて、見直し、抜本的な見直し、廃止と評価され、「拡大して実施」はもとより「現行水準で維持」という評価をうけたものも全くありませんでした。
 特に13事業のうち、9つを占めた美術館、博物館などの都立文化施設の運営については、いずれも経営感覚をもつことが強調され、入場料収入を念頭においた入館者数の目標を設定し、施設の管理運営から施設経営への転換を図るとされました。

 さらに、「東京構想2000」「都庁改革アクションプラン」「監理団体改革計画」などで、それまで生活文化局と都教育委員会にわかれて所管されていた都立文化施設の管理運営主体を一元化して、施設運営経費を減少させることのできるメリットを最大限生かすとともに、都の委託費を削減するために料金収入を受託団体の収入とすることによって、委託費交付と組み合わせて料金設定も可能な利用料金制度を導入し、文化施設経営のインセンティブを発揮させようとする方向が打ち出されました。
 そして2002年度にこの方針によって文化行政の一元化が行われました。

 このように石原都政下の文化行政は、採算性と効率性の重視を軸に推移し、文化行政のもつ多様性、独自性が軽視されてきたのではないでしょうか。

 その結果、近代文学博物館、高尾自然科学博物館が廃止され、いくつかの文化振興事業が打ち切られたことは重大です。
 東京芸術劇場のオープンを期に、1991年から毎年1月に東京芸術劇場小ホールで行われてきたトーキョー・リージョナル・シアター・フェスティバル=東京地域劇団演劇祭は、文化行政一本化による影響で、打ち切りとなった文化振興事業のひとつです。
 この演劇祭は、都内各区市町村で地域に根ざして活動している非営利の都民参加型の地域劇団を中心とするもので、日頃はそれぞれの地域で活動している演劇集団が年1回、芸術劇場小ホールを借りてフェスティバルを行うことで交流し、競い合うことによって水準を高め、都内の文化的ネットワークをひろげるという、まさに、自治体がとりくむべき文化振興事業として意義あるものです。芸術劇場には小ホールが2つあり、展示室も使うことができ、これまでは3回土曜日、日曜日をはさんで17日から18日間借りることができておりました。これが文化行政の一元化という名による都教委の文化振興事業からの撤退によって打ち切りとなったものです。

 しかし、都は文化行政の一元化をあくまで文化行政事務の拡大強化を図るためだといってきましたし、生活文化局も「あなたの芸術活動を支援します」とのリーフレットを発行し、築地市場など都施設の空きスペースを演劇練習場として解放する事業を始めたことを大いに宣伝しているのですから、昨年度打ち切られたトーキョー・リージョナル・シアター・フェスティバルへの助成は復活すべきではありませんか。お答えください。

 また、都は文化行政の課題と施策についての基本指針を年内に策定するとのことですが、どのような視点にたって基本指針を策定するのかが問われます。すでに述べてきたように、文化行政のもつ独自の多様性を抜きに行政評価が行われ、経営効率の視点から文化施設の管理一元化が行われた結果、文化芸術活動を行う者の意見も聞かずに、事業が打ち切りになるという事態が生まれています。

 これまで多少なりとも都の文化行政に対する都民意見の反映の場となっていた各財団の評議委員会も、文化行政の一元化の名のもとに、東京都文化振興会、江戸東京歴史財団、生涯学習文化財団がそれぞれなくなり、東京都歴史文化財団に一元化されました。その歴史文化財団の評議委員会には、財団の予算、決算が諮られる程度で、東京の文化行政のあり方を論じ合う機会はほとんどないといっても過言ではありません。
 なにより教育庁から文化振興事業がなくなり、知事部局である生活文化局に文化行政が一元化されたことにより、知事の恣意的な文化への好みが入り込みやすい条件が強まったことが懸念されます。さらに文化施設の運営には、これから指定管理者制度の導入という課題がひかえていることを考えると、いっそう都民からかけ離れた、採算性、効率性偏重の文化行政にむかうことが危惧されます。

 基本指針の策定にあたっては、基本法を生かす立場で、広く都民参加による論議がつくせるようにすべきと考えますが、見解を伺います。

以上