一、東京都の男女平等参画施策について
1975年の国際婦人年を契機に、男女差別撤廃、女性の地位向上のための気運が国際的に大きく高まりました。
1976年から1985年は、平等、発展、平和の「国連婦人の10年」と位置付けられ、1976年、日本政府が「婦人問題に関する国内行動計画」を発表、1978年には東京都が「婦人問題解決のための東京都行動計画」を策定しました。
1999年、国は「男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任を分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、緊急な課題となっている」として男女共同参画社会基本法を制定しました。東京都も2000年に、「東京都男女平等参画基本条例」を制定し、2002年には新たに「男女平等参画のための東京都行動計画、チャンス・アンド・サポート」が策定されました。
「チャンス・アンド・サポート」は、基本理念として、(1)男女が、性別により差別されることなく、その人権が尊重される社会、(2)男女一人一人が、自立した個人としてその能力を十分に発揮し、多様な生き方を選択できる社会、(3)男女が家庭生活および社会活動に対等な立場で参画し、責任を分かち合う社会を掲げています。この理念は貴重なものでありますが、行動計画策定時に疑問が出されたのは、実効性の有無でした。
1978年から1999年までに4回にわたり策定された都の行動計画は、都が取り組むべき各事業の実施時期や、重点推進事業について、いつまでにどれくらいやるという数値目標が示されていたのに比べて、「チャンス・アンド・サポート」には、明確な達成目標値があるのは、国が地方自治体に要請している「審議会等への女性委員の任用促進」だけです。具体的な男女平等達成のための目標値があいまいなままでは、実効性が保障されない、との意見が出されたのは当然です。
今、男女平等参画の要求が高まっているなかで、都が行動計画に掲げた理念を尊重し、その実現へ努力しているかどうかが、問われています。残念ながら、石原知事が都知事に就任した後のこの数年は、東京都の男女平等参画施策の位置付けは後退の一途をたどっていると言わざるをえません。
「チャンス・アンド・サポート」が策定された2002年の12月、都は長年にわたって男女平等参画社会実現の先進的役割を果たしてきた東京都女性財団を、広範な都民の反対を押し切って廃止してしまいました。また、2003年には、「男女平等推進基金」も廃止されました。
都が調査している「区市町村の男女平等推進施策一覧」も、まとまった冊子として都民に提供されなくなり、平等を求めて女性が裁判を起こした場合に経済的な支援を行なう訴訟支援制度も打ち切られました。
その上、石原知事は、性による差別をなくし男女の平等をめざしている「ジェンダーフリー」の考え方を曲解して「極端でグロテスクな主張」という発言を行ない、公式用語への使用を禁止することを決めるなど、強権的な対応をしています。2001年、知事が女性週刊誌の対談記事で行なった「文明がもたらした最も悪しき有害なものはババアなんだそうだ。女性が生殖能力を失っても生きているのは無駄で罪」との発言は女性達を傷つけ、怒りをよんでいます。不妊治療を受けても子どもに恵まれなかったある女性は「望んでも子どもを授からなかった悲しみが、知事の発言を聞いてさらに深くなった。自らの存在が否定された思いだ」と語っています。この問題では、447人の女性達が石原知事に公開質問状を提出しましたが、未だに知事からは何の回答もされていません。日本弁護士連合会の人権擁護委員会は、2003年12月、会長名で知事に対し「これらの発言は女性に対する暴力であり、人格的に侮辱し差別する発言であり、発言を撤回し謝罪することを求める」と警告をし、合わせて詳細な調査報告書を出しています。
全国的には、男女平等社会の実現めざすこれまでの取組みを妨げる「バックラッシュ」と呼ばれる流れが強まっていることが憂慮されています。このような流れの先頭に立つ役割を果たしている石原知事の、女性の尊厳を蹂躙する考え方は、性による差別をなくして、男女がお互いの人権を認め尊重しあう社会づくりをめざす国内および世界の流れに逆行するものです。
Q1 |
、そこで伺います。知事は「東京都男女平等参画基本条例」や都の行動計画「チャンス・アンド・サポート」の理念を遵守すべき立場にあります。知事の女性の人権をふみにじった発言は、条例の理念に明らかに反します。都民に対し、謝罪、撤回することをあらためて求めます。お答えください。 |
Q2 |
、この間に後退、廃止になった諸施策について復活を求める要望が寄せられています。特に、都が1999年に施行した訴訟支援制度は、資力のない女性達への支援策として活用され、大事な制度であったことから、復活について強く要望されています。東京都は「2000年から国の民事法律扶助制度に引き継がれたから、復活は考えていない」との態度に終始しています。DV被害など女性達の相談を受けている弁護士さんなど関係者からは、法律扶助協会の民事法律扶助制度だけでは女性達の救済が難しいと意見が寄せられ、都の制度が必要だと要望されています。こうした要望を踏まえて、男女平等に関連しての訴訟支援を都として設けるよう求めるものですが、お考えをお示しください。 |
Q3 |
、男女平等施策を推進するためには、調査や啓発の事業の充実も重要です。都民にむけての情報提供を、できるだけ多面的に十分に行なうことが都の責務でもあります。かつて都は、広く都民にむけて「区市町村の男女平等施策一覧」など多くの資料を発行し、啓発の面でも力を注いでいました。
現在はインターネットの普及で、生活文化局のホームページに様々な情報が出されていますが、「区市町村の男女平等施策一覧」は、調査は行われているものの、一般には公開されておらずホームページにのっていません。他の調査や資料も、ホームページに載せただけでは、インターネットを使っていない人への情報提供は限られたものになってしまいます。
都が継続的に調査してきた区市町村の男女平等推進施策など、大切な情報が都民に届けられるよう、冊子も含めた資料の発行を復活させるなどの努力を求めます。いかがでしょうか。 |
Q4 |
、内閣府の調査によると、東京都の審議会等における女性委員の比率はこの数年間、下がり続けています。知事が就任した1999年度は25.2%でしたが、2000年度・24.6%、2001年度・24.3%、2002年度・22.8%、2003年度・21.7%と毎年度、減少しています。東京都は、H16年度までに女性委員の比率を35%まで引き上げるという目標をもっているにもかかわらず、逆に減り続けているのは、看過できない問題です。
全国では、掲げた目標にむけて女性委員の比率を高めています。鳥取県では、2005年・40%の目標でしたが、既に2002年度で40.7%に到達し、青森県は2000年・30%の目標を達成して2003年現在で、36.3%に到達しています。東京都の取り組みの弱さは歴然としています。
東京都では、なぜ審議会等での女性委員の比率が下がってしまっているのでしょうか。目標値にむけての比率を高める努力はどのようにされているのでしょうか。また、今後、男女平等参画基本条例に基づき、女性委員の数を増やし、目標をひきあげていくことが重要だと考えます。いかがでしょうか。合わせてお答えください。 |
Q5 |
、女性が政策決定の場に参画する機会を拡大することが望まれています。東京都は幹部職員に占める女性の比率は全国でも高い位置にあるとされています。しかし、局長級の女性職員は、2003年度から一人もいなくなり、女性副知事の登用も実現していません。都政のあり方を定める政策決定の場に女性に力が生かせるよう、副知事や局長に女性の登用を進めることを提言します。お考えをお示しください。
また、庁内における男女平等推進会議は、知事がトップになり、条例と行動計画に基づいて総合的な施策を推進していく役割を果たすことができるよう位置付けを高めることを求めるものですが、いかがでしょうか。 |
Q6 |
、働く場における男女格差是正は、この数年、賃金や昇進の男女格差を無くそうと立ち上がった女性たちによって、新しい歴史のページが開かれつつあります。芝信用金庫、住友電工、野村証券で働く女性たちが次々と差別撤廃の勝利判決を勝ち取ったことは大きく評価されているところです。
しかし現実には、まだ多くの職場で、女性であるが故の差別が残されています。賃金や昇進の差別だけでなく、セクシュアルハラスメントなどの問題も女性たちを苦しめています。また、家庭や地域社会にも女性の尊厳を損なう差別が数多く残っています。そして、こうした問題を相談し救済する場を見つけることができないでいる女性たちが少なくありません。公的な機関による相談および救済が、女性たちの願いになっています。
目黒区では、区の条例で「男女平等・共同参画オンブーズ」を設置し、区民から、男女平等・共同参画の社会づくりの推進を阻害する事項についての申し出や、人権侵害などについての救済の申し出があった場合、適切かつ迅速に処理するしくみがつくられています。オンブーズは、申し出に基づき、関係機関や関係者等に対して、資料の提出、事情の聴取、説明などの要請をすることができ、必要な是正の勧告や助言、指導、意見の表明などできる権限をもっています。また、独立して職務にあたることも定められています。
都民からは、格差是正や人権擁護のために、労働基準監督署なみの勧告、指導権限をもった機関をつくってほしいとの意見が寄せられています。東京都の「男女共同参画基本条例」の第七条では、「都民などの申し出」について定められており、知事への申し出ができることになっています。条例が審議された当時、わが党は、申し出の規定だけでは不十分であることから、オンブズパーソン機能としての第三者機関の設置を求めました。条例ができて5年が経過しようとしていますが、都民からの申し出に対して公正な立場に立ち、専門性をもって救済にあたる第三者機関は、東京都ではいまだに設置されていません。目黒区のオンブーズは歓迎されています。
東京都でも、条例や行動計画で定めた男女平等実現の実効性を高められる権限を有する第三者機関を速やかに設置するよう求めます。お答えください。 |
Q7 |
、国連の「女子差別撤廃条約」の選択議定書は、男女差別の実態と是正を求める個人が通報できる権利を保障し、国連としての調査団を派遣できることが定められています。「女子差別撤廃条約」の効力をより高められることから、現在、60を越える国が選択議定書の批准を済ませています。日本政府は、共同発議国になりましたが、批准はしないまま今日に至っています。
選択議定書の批准については、参議院において国際婦人年連絡会の女性団体が提出した請願が採択されています。選択議定書が批准されれば、国連による救済の道が開かれ、各分野での男女格差是正が前進することは明らかです。
東京都が国に対して、男女平等参画を推進する力となる選択議定書の批准を早期に行なうように、強く働きかけていただくことを求めものですが、いかがでしょうか。 |
以 上