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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

予算特別委員会 二〇〇一年度一般会計等の編成替えを求める動議

松村友昭(練馬区選出)  2001年3月27日

予算の二・九%の組み替えで、切りすてられた福祉の復活、介護保険の減免など都民要望にこたえる道に踏み出すことは可能

〇松村委員 私は、日本共産党都議団を代表して、ただいま提出いたしました第一号議案、平成十三年度東京都一般会計予算及び第二十二号議案、平成十三年度東京都臨海地域開発事業会計外二議案の編成替えを求める動議について、提案理由の説明を行います。
 今、日本経済は、放置することができない、深刻で新しい危機に直面しています。この最大原因は、自民党中心の政治が、一九九七年以来、日本経済の六割を占める個人消費を痛め続け、冷え込ませる経済失政を繰り返してきたからにほかなりません。しかも、政府が進めてきた社会保障の相次ぐ切り下げは、都民生活にかつてない苦渋の生活を押しつけています。加えて、来年度政府予算では、七十歳以上の老人医療費負担増、六十五歳以上の介護保険料を半額にする経過措置の打ち切り、六十歳以上の年金の賃金スライド停止など、二兆円もの新たな負担を高齢者にもたらそうとしています。
 こうしたもとで政治に求められているのは、福祉、社会保障をめぐる深刻な事態をどう打開するかであり、住民生活に密着した自治体にとっても、どのように都民の暮らしと福祉を守るのかが問われています。
 ところが、今定例会に提案されている来年度東京都予算案は、昨年三月議会で強行した福祉切り捨てを実行するものとなっていることです。老人医療費助成と老人福祉手当が廃止に向けてさらに削られ、シルバーパスも今年度に全面有料化され、ことし五千円だった人は一万円に引き上げられます。重度障害者手当の削減も本格的に始まろうとしています。
 一方、昨日の質疑で知事も破綻を認めざるを得ない臨海副都心開発や幹線道路建設など、財政難の原因である大型公共事業は相変わらず温存され、投資型経費は、首都高速道路公団などへの貸付金なども含めれば、一兆一千億円と、いまだバブル前の二倍近くの水準になっています。その一方で、重点化の名のもとに減らされているのは、生活道路や新規建設ゼロの都営住宅など、都民生活に密着した事業が中心です。
 借金に依存した大型公共事業が継続されている結果、都債の残高は来年度一般会計だけで二千八百八十億円もふえ、都債の残高、すなわち借金は一兆七千五百八十億円と、史上最高の記録を塗り変えるものとなります。
 このような予算が、都民の願いに背を向け、都民の暮らしに役立たないことは明らかであり、我が党は、知事がこれ以上の福祉の後退を許さず、切り下げられた福祉をもとに戻すこと、介護保険料、利用料の減免を実施することなどを中心に予算案を編成替えして再提出することを求めるために、ここに動議を提出するものです。
 今回示した編成替え案は、都政を都民が求める方向へ転換する上で、税収増を活用し、福祉をもとに戻すなど、まずこれだけは踏み出すべきだという最小限の項目に絞り込んだものです。編成替えの対象も、一般会計予算案を中心とし、他の会計の編成替えは、関連して修正が必要となるものにとどめました。
 以下、予算編成替えのポイントについて説明させていただきます。
 第一は、シルバーパス全面有料化、老人医療費助成、老人福祉手当の廃止、障害者やひとり親家庭の医療費助成への本人負担導入など、切り下げられた福祉をもとに戻すことです。
 今年度から実施された経済給付的福祉事業の切り下げは、年金暮らしの高齢者、障害者やひとり親家庭など、行政の支援が最も必要な人たちを直撃し、その命綱を奪うものです。一年が経過し、都民生活に及ぼすその影響の重大さ、道理のなさが改めて明らかになりました。福祉の切り下げはやめ、かけがえのない制度をもとに戻します。
 シルバーパス全面有料化は、住民税非課税の人への負担の押しつけと所得制限強化で、十万五千人から無料パスを取り上げる結果となりました。シルバーパスは、高齢者の生活と社会参加の権利を保障し、敬老の理念を込めたものであり、無料パスを復活します。
 マル福と老人福祉手当は、低所得者への何らの配慮もなく、段階的に廃止とされています。こうした段階的廃止計画は中止し、マル福は六十五歳からの制度に戻します。老人福祉手当は削減をやめ、介護保険実施後の寝たきり、要介護高齢者のサービス利用状況や利用料負担の実態を踏まえ、必要な拡充を行います。
 障害者への医療費助成、重度・福祉手当、児童育成手当の切り下げをやめます。生きることと医療費が切り離せない障害者にとって、医療費助成や重度手当などの切り下げは、生存権にかかわる問題です。とりわけ切り下げの被害が集中する重度障害児の家庭では、重度手当、医療費助成、児童育成手当を同時に取り上げられ、年百万円を超える負担増にもなる場合もあることが改めて明らかになりました。
 ひとり親家庭、公害患者などの医療費助成の負担強化をやめ、特別養護老人ホームへの都独自の補助を増額します。
 介護保険実施と同時に、都独自の補助が大幅に削減され、東京の特別養護老人ホームの多くが運営が苦しくなり、職員の削減や利用者サービスが後退する事態となっています。長年にわたり築いてきたサービスを維持できるようにします。
 予算編成替えの第二のポイントは、限られた財源を有効に生かし、介護保険の減免、雇用、営業、子育てなど、緊急で切実な都民要求を実現することです。
 重過ぎる保険料負担、利用料の負担で、保険料の未納、サービスの利用抑制などの深刻な事態を生んでいる介護保険については、都内三十八自治体が何らかの減免制度に踏み出し、都としての対策が急がれています。都として、保険料、利用料の減免を実施します。
 同時に、福祉改革推進プランで、障害者施策整備などについて拡充は見られるものの、老人保健施設やショートステイなど、全国最低水準の介護基盤を引き上げるための予算を積極的に確保します。
 深刻な不況、リストラの直撃を受けている都民、中小企業を応援するために、青年の雇用確保のためのフリーター向け総合相談や、若者サポートプラン、工業集積地域活性化事業の継続、元気出せ商店街事業の拡充などを行います。
 子どもたちが基礎学力を身につけ、楽しく学校生活を送れるよう、三十人学級への準備予算や、切り下げられた私学助成の復元などを行います。
 女性財団や商工指導所、緑の相談所などの都民生活に密着した事業の廃止や縮小を許さず、存続させます。
 昨年強行された都営住宅家賃の減免制度の改定は、所得の低い居住者に深刻な打撃を与えており、もとの制度に戻します。
 第三のポイントは、臨海副都心開発を初め、不要不急の公共事業にメスを入れることです。
 都の財政難の最大の原因は、バブル崩壊後、税収増が大幅に減少したにもかかわらず、借金に依存した大型開発を継続したことにあります。このため、一般会計だけで七兆円を超える借金を抱え、そのための借金返しは、来年度五千億円を超える規模になっています。来年度予算案は、この点を反省してメスを入れるのではなく、もっぱら都民施策にしわ寄せするだけで、肝心の大型公共事業は、重点化と称して温存、拡大しています。
 長野県知事の脱ダム宣言、大阪府の開発行政の見直しなど、公共事業の見直しは時代の流れ、全国の自治体の流れになりつつあります。この立場から、破綻が明白な臨海副都心開発は、来年度五年目の見直し時期に当たることからも、一たん事業を凍結し、都民参加で抜本的に見直します。あわせて、関連する幹線道路建設などの予算も削除します。
 住環境破壊、都財政難をもたらす幹線道路や大企業奉仕の環二再開発や汐留地区区画整理などの大型公共事業を縮小し、財源を確保するとともに、生活道路や交通安全施設などの生活密着型公共事業の予算を拡充します。
 本来都が負担すべきではない首都高速道路中央環状線の無利子貸付や国直轄事業負担金などは原則として削除するなど、財政支出の適正化に努めます。
 税収増で積み立てを積極的に行う社会資本整備基金は、過大なものとせず、適正な規模に抑制します。
 以上のポイントで予算編成替えを行った結果、浪費とむだを削り、生み出された一般財源七百億円を、福祉、暮らし切り捨てをもとに戻し、都民施策の充実を図る財源に充て、予算の均衡を図りました。
 また、借金財政から抜け出し、都民本位の財政再建に踏み出すため、大型公共事業を中心とした投資的経費の削減と生活密着型公共事業の差し引きで、都債発行を四百七十二億円減額しました。この結果、一般会計予算の規模は六兆一千百八十七億円となります。
 編成替えの規模は一般会計予算の二・九%程度ですが、都がこの方向に踏み出すことは、必ずや都民の皆さん方の願いにこたえるものと確信するものです。
 委員の皆さんがこの動議にぜひご賛同くださるよう心から呼びかけまして、提案理由の説明といたします。(拍手)