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■ 議会での質問  日本共産党東京都議団

予算特別委員会 討論

村松みえ子(日野市選出)  2001年3月27日

戦後最悪の不況、リストラのもとで求められたのは、都税の増収をいかした都民のくらし、福祉最優先の予算。大型開発継続、福祉切りすて実行予算に反対

 私は、日本共産党都議団を代表して、第一号議案「平成十三年度東京都一般会計予算案」ほか九議案に反対、予算組み替え動議に賛成の立場から討論をおこないます。
 戦後最悪の不況、リストラに都民が苦しんでいるときにもとめられたのは、今年度に引きつづき来年度見込まれる四千八百億円の都税の増収を活用して、都民のくらし、福祉を最優先に予算を編成することでありました。
 しかし、提案された予算案は、昨年に引きつづき、「財政再建推進プラン」にもとづいて、シルバーパスの全面有料化、老人医療費助成、老人福祉手当などの段階的廃止という福祉切りすてをさらにおしすすめる、福祉切りすて実行予算であり、その是非が、当予算特別委員会でするどく問われました。
 知事は、二〇〇〇年度から毎年六千億円から七千億円、四年間で二兆千億円の財源が不足するという理由で、これらの経済給付的福祉切り下げをおこないましたが、わが党が示したように、今年度と来年度だけで八千四百億円にのぼる都税の増収や、過大な減債基金の見直し、さらには国直轄事業負担金の適正化などによって財源不足は生じないことは、明らかであります。さらに二〇〇二年度、二〇〇三年度についても、増える税収などに加え、投資的経費をバブル前に抑えることなどによって、財源不足をさけるられることも明らかとなりました。
 このように福祉きりさげをすすめるに当たって策定された財源不足という、「財政再建推進プラン」の最大の根拠が、計画初年度からおおきく崩れたわけですから、これにもとづいて計画された福祉切りさげ計画を凍結し、見直すことは当然の道理であります。  また、「財源不足」論が破たんしたもとで、都が新たに持ち出してきた一兆円の「隠れ借金」も、本来、一般会計に納付すべき借入金や実態のない基金事業、今日、明日にでも緊急に解決しなければならない借金ではないもの、減債基金が過大に設定されていることなど、説得力に欠けるものばかりであります。
 また、都は福祉施策の切り下げをおこなうに当たって、経済給付的事業は「時代遅れになった」との論拠を打ちだしましたが、その後、一年が経過した今日の時点にたって、わが党は質疑を通じて、制度が果たしている今日的役割、制度の持つ意義など、あらためて掘りさげ、本格的高齢社会を迎えるうえで、むしろ拡充こそが急がれていることを明らかにしました。
 シルバーパスの全面有料化では、これによって家の中でのひきこもりが多くなったり、また、老人医療費助成の段階的廃止によって診療抑制が生まれるという深刻な事態が生じており、この制度が、高齢者、とりわけ所得の低い人や障害者の生活に欠かせない制度となっていることを、わが党は事実をもって示しました。
 さらに、高齢者が裕福という理屈についても、無年金者や低年金の高齢者が広く残されている日本の現状からみても、世界の先進国では経済給付事業が主流となっているという点からも、また、全国の主要都市では、老人医療費助成や無料パスが守られているという事実からも、都の言い分の道理と根拠のなさを明らかにしました。
 にもかかわらず、知事が福祉をもとに戻して欲しいという都民の願いに、かたくなに、背を向けつづけていることに、怒りの声が寄せられるのは当然であります。
 経済給付的事業の意義と現実的必要性が、わが党の質疑を通じてうきぼりになる中で、知事は、「生活保護」を受ければ良いという発言をくり返されました。この点についても質疑を通じて、日本の生活保護制度が世界と比べて大きく立ち遅れていること、実際に、保護を受けたくても「葬式のために残してあるお金」が問題にされるなど、うけられない実態が多く存在することも指摘しました。実際に、五年前の豊島区の母子餓死事件など、一三年間で二一八人も餓死者が生まれているのであります。
 保護を受けずにわずかな年金収入でも自立して生きている高齢者に、支援を強めることこそ行政の役割であります。都の財政負担がすくなければ、あとはどうでもよいというのは許されません。
 また、「福祉改革推進プラン」で示された障害者施設整備などの充実については、わが党は評価しつつも、東京が全国主要都市と比べても、老人保健施設など介護基盤整備などで大きく立ち遅れていることも指摘して、この分野でも都がもっと力を入れなければならないことを提案しました。この点では、まさに、福祉局長の「両方できればそれにこしたことはない」という答弁と同じ立場であります。この点でもわが党の提案は、増えた税収を活用すること、さらには、大型公共事業に偏った税金の使い方をあらためるということで、福祉をもとに戻すことと介護や障害者のための基盤整備の両方をすすめるという現実的なものであります。
 スタートして一年を迎える介護保険制度についても、わが党は、保険料・利用料の減免を中心に、解決がせまられている問題についてただしました。とくに緊急の課題となっている減免について、重い負担がサービスの利用抑制を呼んでいる実態をはじめ、すでに三八の自治体が何らかの減免制度に踏みだしていることなどを紹介し、対応を求めました。これに対して、介護施設における国の制度にもとづく減免への都としての独自の支援が、当予算特別委員会の場で表明されたことは重要であります。これは、介護保険について、都が積極的にかかわって、支援をおこなうことが、当然の仕事であることを都自身認めたものであります。
 しかし、これはまだほんの一歩であり、わが党は、引きつづき、国政の場でも保険料・利用料の減免の実現に努めるとともに、東京都が制度の問題をただすための施策を積極的に実施するよう、もとめていくものであります。
 来年度予算案で問われたもう一つの問題は、全国自治体で大きなながれとなりつつある大型公共事業に偏った税金の使い方をあらめるかどうかでありました。この点について、わが党は昨日の質疑で、都政における浪費とムダの典型として、臨海副都心開発の問題を取り上げ、土地利用がすすんでいないこと、今後計画どおりに土地利用が図られたとしても、採算がとれず、さらなる都財政投入がさけがたくなることを、指摘したのに対して、知事はその現状を認められました。
 知事、破たんの現状についての認識は一致しているわけですから、計画を凍結して、情報を都民に提供し、抜本的に見直しをおこなうことをわが党がもとめることは当然であります。
 この破たん処理に当たってのわが党の見解は、昨日述べたとおり、負の遺産として都民に告知するとともに、国による支援、銀行による債務放棄など応分の責任を負ってもらうことであり、そのうえで都として中長期的に解決を図っていくというものであります。  また、都財政を大きく圧迫している汐留や環状二号線などの都市再開発、幹線道路などの大型公共事業の見直しも緊急の課題であることを指摘しておくものです。
 また、首都高速道路公団への無利子貸付金や国直轄事業負担金など、本来、東京都が負うべきでない支出を適正化することで、切りすてられた福祉をもとに戻すことや介護保険の減免にふみだすことが十分可能であることも、質疑を通じて明らかにされ、知事も是正する旨、答弁がありましたが、早急に改善を図られるよう要望しておくものです。
 長びく不況とリストラのもとで、都民のくらしと営業は厳しい毎日を強いられています。
 知事は、与党三党の「緊急経済対策」について、国において議論すべきとの趣旨の発言をしましたが、その内容は、日本経済立て直すうえで欠かせない個人消費の拡大のための措置はとられず、「株買い上げ機構」や「不良再建処理」など大企業、ゼネコン救済の色彩のこいものであり、また、「都市再生」によるあらたな公共事業の拡大が盛りこまれているもので、都政にも深くかかわりをもつものであり、無関心であって良いわけはありません。
 日本共産党は自民党がすすめた「消費税増税」「社会保障改悪」「大企業のリストラ支援」という失政を告発するともに、「消費税を3%にひきさげ国民の消費購買力を直接応援する」「社会保障の連続改悪を凍結し、将来不安をなくす」「リストラを押さえ、中小企業を支援する政治で、雇用危機を打開する」という三つの分野での転換を提案しています。
 都政においても、こうした立場から都民生活を支援することが急がれています。わが党が提案している来年度予算案の組み替え動議は、以上の立場をふまえるとともに、切りすてられた福祉をもとに戻すこと、介護保険の減免にふみだすことを中心に、青年の雇用確保ためのフリーター支援や、工業や商店街の生き残り支援、子どもたちに基礎学力を保障するための三〇人学級への準備予算、私学助成などをもりこんだもので、大型公共事業の予算を抑制し、全体として予算案の二・九%をあてることで、都民施策を守る方向に踏み出せることを示したものであります。各会派のご賛同をもとめるものであります。
 最後に、この予算特別委員会で、くりかえし公党を誹謗する発言がおこなわれたことについて、申し述べておきます。
 自民党、公明党などが、シルバーパスの全面有料化などの福祉切り下げの事実を否定し、銀行課税、ディーゼル規制、水道料金の値上げ阻止などでわが党が果たした役割をうそなどと攻撃する質疑もおこなわれましたが、それらの攻撃のいずれもが事実に反していることが、わが党の道理ある反論によって浮き彫りにされました。
 まず、シルバーパスについて一〇〇〇円の負担が事務手数料という名目をつけようが、有料化そのものであった事実は動かせません。また、老人医療費助成、老人福祉手当の段階的廃止については一言も口にすることもできないのであります。四年前の都議選で、シルバーパスの現行通りの存続や老人医療費助成をなくすわけがないとした公約を投げすてた責任こそ、問われているのであります。
 また、銀行課税やディーゼル規制については、わが党が提案した趣旨が、その後施策として生かされたことは、わが党の提案が道理もあり、根拠もあるからこそ、こうした道がひらけるに至ったことは明らかであります。
 さらに、水道料金についていえば、水道局が、わが党への説明の中で、資金収支の不足を説明し、値上げを検討していると述べたことは、うち消せない事実であります。昨日の公明党土持委員の質疑の中でも、水道局長は「水道料金を据えおくこととした」と述べたように、料金値上げをふくめた検討の結果、見送ったことを認めているのです。土持委員自身「料金改定見送ったというふうに、認識している」と表明されているのであります。大体、財政見通しで累積収支を「大幅に不足」とすることは、料金改定の前提であることは、自民党、公明党なども賛成した九四年の値上げをはじめ、大幅値上げの際の通例であります。
 知事の「ハイエナ発言」についてでありますが、これは公党を誹謗するものであると同時に、議会の品位をもけがすものであることは明白です。また、昨日知事が、「私の名誉のためにもうしておきますが」として、発言された問題についても、事実は、昨年一月二八日の、予算復活要望の席で、わが党木村幹事長が、知事に対して、都が土地開発基金を廃止したことについて日本共産党の提案がいかされたものと紹介したことについて、知事自身が、「助かっている」と発言されたもので、その事実は、同席したわが党議員全員が聞いているのであります。「助かっている」との、知事の発言はまぎれもない事実であります。田中都議の名誉にために申し上げて、討論を終わります。