本会議 代表質問 二〇〇六年二月二八日

清水ひで子(八王子市選出)

貧富の格差に心を痛め是正するのが政治の役割

大幅税収増は、高齢者福祉、若者支援、中小企業支援など都民施策の拡充に

貧富の格差拡大は事実、「まったく的外れ」との発言は撤回を

 日本共産党都議団を代表して質問します。

 いま貧困と格差の新たな広がりが、日本の深刻な社会問題となっています。ところが、石原知事は、昨年の第四回定例会でわが党が知事の認識をただしたのに対し、「まったく的外れ」とまで言って、貧富の格差が拡大していることを認めようとしませんでした。その後、どうでしょうか、いまでは国会では与党側からも格差拡大を懸念する声があがり、新聞各紙があいついで特集を組んでいます。

 政府の各種統計では所得格差を示すジニ係数は過去最高に上昇し、とりわけ高齢者世帯と若者層での所得格差が深刻化していることは専門家からも共通に指摘されています。「国民生活白書」も「若者層でパート・アルバイトが増加し所得格差が拡大している」と述べ、新聞の世論調査でも七割をこえる人が「所得の格差が広がっている」と答えています。

 重大なことは、貧富の格差拡大が、東京でとりわけ鋭くすすんでいることです。ヒルズ族に象徴される「勝ち組」が家賃数百万円というマンションに住み、豪華な生活を送っていますが、都の生計分析調査によれば、勤労世帯でも格差がひろがっています。一九九八年と二〇〇四年を比較すると、勤労世帯で収入が最も高い階層である第七段階の平均月収は約百三十万円で、ほとんど減額していません。他方、最も低い第一段階は、もともと低かった平均月収十八万八千円が十一万六千円へと約四割も激減しているのです。

 しかも東京は住宅家賃が全国の二倍、大阪と比較しても一・五倍と高いなどもっとも生活費の高い都市です。それだけに、収入や年金の低下、増税と負担増は、ストレートに都民生活を直撃します。このため、国民健康保険料が払えず滞納する世帯は四世帯に一世帯と全国最悪。学用品や給食費などの就学援助を受ける児童生徒の比率も、全国の二倍の二十五%にもおよんでいます。

 知事、貧富の格差拡大についての、「まったく的外れ」「日本は公平な社会」などという知事の認識が事実に反することは明白です。前定例会での発言の撤回を求めるものです。

貧富の格差に心を痛め是正するのが政治の役割

 貧富の格差拡大の原因は、小泉内閣が、弱肉強食の市場原理と規制緩和万能の「構造改革」路線をすすめてきたことにあります。大企業の利潤追求を最優先し、リストラ応援による雇用の破壊、非正規雇用の拡大、中小零細企業への貸しはがし・貸し渋りをすすめたばかりか、庶民増税と社会保障の連続改悪で、所得の再配分を大後退させた結果にほかなりません。同時に見過ごせないことは、東京では石原知事がこれに追い討ちをかけてきたことです。

 たとえば、都民が低家賃の住宅を求めていながら、都営住宅の新規建設は中止し、低所得者のための都営住宅家賃免除も廃止してしまいました。「高齢者は裕福」だとして老人福祉手当の廃止、老人医療費助成の段階的廃止など経済給付の軒並み切り捨てをすすめてきました。寝たきり高齢者をかかえた家庭では年間六十六万円の給付減、老人医療費助成、シルバーパスの見直しの三つの事業全体でも九九年度とくらべ削減額は約六百十七億円、東京の高齢者一人当たりでも年間三万円近い給付が削減されたのです。こうした結果が生活保護世帯の急増や、高齢者の外来受診率の低下につながり、シルバーパス利用率の七割台から五割台への後退を引き起こしています。

 知事、貧富の格差に心を痛め、それを是正するのが、政治の役割ではありませんか。いまこそ、自治体として所得の再分配機能を発揮する時です。そのために重要な役割をもっている経済給付的事業の充実をはじめ、あらゆる努力をつくす必要があると思いますが、見解を伺います。

 住民税などの増税にともない国保料、介護保険料、都営住宅家賃など「雪だるま式」の負担増となって襲いかかろうとしています。軽費老人ホームの家賃も住民税課税になると五万円前後の値上げになる人が少なくありません。こうした増税に連動した負担を抑えることは急務になっていますが、どうでしょうか。

 また、私たちが、住民税課税によって一気に二万五百十円にはね上がるシルバーパスの負担軽減を求めたことにたいし、都は「慎重に対処」すると答弁をしてきましたが、どのように対応するのですか。伺います。.

 さらに、シルバーパスの負担については、多くの高齢者から「二万五百十円は高すぎる。もっと下げてほしい」「収入に応じた負担にしてほしい」などの声が上がっており、東京都バス協会にも同様の要望が寄せられていると聞きました。

 多くの高齢者が利用できるよう、住民税課税者に対して三千円パスの導入など所得に応じた負担軽減を検討する段階をむかえていると思いますが、いかがでしょうか。

 小泉内閣が国会に提出した医療改悪法案は、七〇歳以上の高齢者の窓口負担を倍増させてお金のない人は医療を受けられない事態を招くだけでなく、保険でかかれる医療を縮小し、国民皆保険制度を土台からこわすものです。

 法案について知事はどのように認識していますか。法案の撤回を政府に求めるとともに、都の老人医療費制度・マル福は、六八、六九歳の現行制度を継続することを求めるものです。それぞれお答えください。

失業と不安定雇用に苦しむ若者たちへの対策を

 失業と不安定雇用に苦しむ若者たちに都として手を差し伸べることも急務です。東京でも二十九歳までの青年の四割が非正規雇用です。非正規雇用者の平均賃金はわずか月額十一万円。しかも、一方的な雇用がおこなわれるなど無法状態が広がっています。こうした事態は若者の生活と未来を破壊するとともに、少子化をさらにすすめ東京と日本の将来にも深刻な問題を引き起こします。事態の深刻さにふさわしく、都が対策を強化・拡充することが求められています。

 すでに静岡、兵庫、石川県などで若者むけの就労相談や支援の窓口を県内各所に設置する努力が始まっています。

 東京でも若者が人間らしく働ける職場の開拓、気軽に相談できる窓口、専門的技術や知識が習得できるような機構を、多摩地域をふくめて増やしていくことが必要と思いますが、どうですか。

 鳥取県では来年度から正社員と非正社員の処遇の格差是正を事業所に働きかけることになりました。新規事業として予定しています。都としても経済団体にたいし、若者の正規雇用の拡大をはじめ、非正規労働者の賃金など労働条件の格差是正、法律の厳格な適用を働きかけることを求めます。

 若者が安心して住める住宅の支援も求められています。都営住宅の建設促進をはかるとともに、単身用住宅を若者にも提供することが求められています。また、所得の低い若者に安い家賃の借り上げアパートを提供することや家賃補助をおこなうなどの対策が急がれています。答弁を求めます。

大幅税収増にもかかわらず石原都政7年で都民施策に大なた

 次に、石原都政七年の都政運営と予算編成について伺います。

 石原知事は、この七年の間に、「都財政は厳しい」などといって、二次にわたる「財政再建推進プラン」を策定し、東京都が全国に先駆けて実施してきた福祉をはじめとする、すぐれた都民施策に大なたを振るってきました。

 とりわけ、「福祉はぜいたくだ」といって切りすての中心におき、シルバーパスや老人医療費助成、老人福祉手当などの経済給付的事業、さらには、特別養護老人ホームの都加算補助や、認可保育園の職員給与の公私格差是正制度など都独自の福祉施策の切りすてをおこなってきました。都は、保育を除くこれらの事業の見直しだけで九百二億円もの財源を「捻出」したと誇っています。弱い者いじめをしたことを誇る― ―本当に異常です。

 都立施設の廃止も次つぎとおこなわれました。こうした切りすての結果、福祉保健費は、知事が最初に編成した二〇〇〇年度からの四年間の決算で、五三九億円も減らされ、一般会計に占める構成比も十〇・七%から、十・一%へと後退しています。知事がいかに福祉を軽視したか明白です。

 しかも、この間、都税収入は財政再建推進プランの見込額よりも、一兆三千億円も多かったのです。福祉切りすての理由はまったくなりたちません。切りすてどころか、拡充できたではありませんか。いま、知事は、来年度予算案では、「福祉予算を額、率ともに大幅にふやした」と宣伝しています。しかし、これにも重大なごまかしがあります。国が、国民健康保険にたいする負担金を都道府県におしつけてきたことや、国の制度である介護保険、児童手当などの事業費が増えたことをのぞけば、実質、今年度より減額であり、しかも、年度末には、毎年三百億円前後も使い残しているように、決算では大幅に減ることは確実です。

 しかも、今年度最終補正と来年度予算をあわせて五千七百億円もの税収増となるのに、子どもの医療費拡充など切実な都民要求のほとんどはとりいれられませんでした。増収を都民のため使うことを、またまた拒んだのです。

福祉費の削減で、とりわけ高齢者の福祉水準が大後退

 福祉費の削減で、とりわけ高齢者の福祉水準が大後退しています。高齢者介護の重要な施設である特別養護老人ホームでは、東京都は七年前には全国のなかで二十五位でしたが、いまでは三十一位と後退しました。来年度予算でも、埼玉県が二千五十八床増やすのに、東京はその半分程度しか増やさないのです。老人保健施設はあいかわらず全国最下位で、知事が増やしたという認知症グループホームの整備率も依然、全国最低水準です。

 政令市との比較でも、シルバーパスは、東京都が全面有料化したのにたいし、札幌、千葉、京都、大阪で所得制限なしで無料、広島、福岡では所得制限はありますが、いずれも無料が守られています。七十歳以下の老人医療費助成も、札幌、埼玉、京都、大阪、福岡など、八つの政令指定都市で存続しているのです。

 この七年間の東京の福祉のあり方を見ると、知事の言う福祉改革とは、国の基準以上のことはやらないという方向に、東京の福祉を変質させていくとしか思えません。知事が鳴り物入りで導入した認証保育も、施設や職員の配置の基準は、認可保育所に比べてきわめて不十分なものです。

 知事、保育のように、国基準以下のことしかやらないというのであれば、自治体の存在意義はありません。福祉費を抜本的に増やし、介護保険の保険料や利用料の減免、障害者の自立支援法の施行にともなう負担増に対する本格的な減免制度、子どもの医療費助成の中学生までの拡大や所得制限の撤廃など、都独自の上乗せや単独事業などを拡充することが求められていると思いますが、答弁を求めます。

 もちろん、借金返済や将来のための財政調整基金などは必要ですが、増えた税収の一部を福祉に使うだけで、都民の切実な要求をたくさん実現することができます。

 私はこの際、高齢者のための介護基盤整備について、三点伺います。

 第一に、ひとり暮らし高齢者が多い東京では、施設整備の重要性はとくに大きいという認識を明確にして、特別養護老人ホームや、老人保健施設、グループホーム、地域に密着した小規模多機能施設などを、思い切って増やすことです。

 第二に、重い介護度の人、医療の必要な人も在宅で生活できるよう、訪問看護や在宅医療、とりわけ夜間の体制を拡充することです。二十四時間対応型訪問看護ステーション・モデル事業の実施、医療型多機能サービスにむけた訪問看護の充実強化、有床診療所や小規模病院を医療型小規模多機能施設として利用する補助制度の創設をはじめ、都独自施策の検討を求めるものです。

 第三に、リハビリテーションの充実です。病院を退院した患者さんが、集中的なリハビリをおこなうことで、在宅生活ができるようにする回復期リハビリテーション病床は、人口十万人に対し五十床必要とされていますが、東京は十二床にすぎず、全国最低水準です。自力で歩けない患者さんの多くが、退院時は歩いて帰ることができるなどの成果をあげている回復期リハビリテーション病床の役割を重視し、整備促進にとりくむことを提案するものです。それぞれ見解を伺います。

土木関係費と福祉関係費が逆転

 石原都政の七年は、こうして全国最悪の福祉切り下げをすすめる一方、都財政に困難をもたらした最大の要因である大型開発を、「都市再生」の名のもとに温存し拡大してきました。それは羽田の国際空港化や首都高速道路中央環状品川線など、本来、東京都が負担する必要のない事業にまで、大盤振るまいするなど、異常なものです。このため、都の投資型予算は、都営住宅や公園、生活道路の整備など生活改善型投資の削減などにより、バブル時より減らされましたが大型開発に支えられ、いまだに一兆円規模で高止まりしています。過去の借金の返済である公債費とあわせると、一般会計の四分の一を占め、福祉などを大きく圧迫するものとなっているのです。

 二〇〇〇年度から四年間の決算では、土木費と都市計画費だけでも、五百七十九億円も増やされ、一般会計に占める比率も一・三%上昇しています。この結果、二〇〇〇年度には福祉関係費の方が、土木関係費より多かったのに、二〇〇四年度には、土木関係費の方が百二十六億円多くなりました。まさに予算の使い方が逆立ちしてしまったのです。

 知事は、来年度予算案について十四年ぶりに投資的経費が「二年連続増額」などと誇らしげに言っていますが、とんでもありません。投資的経費の増加のカゲで、どれだけの都民が「痛み」に耐えているのか考えたことがありますか。新聞でも、「ハード系偏重の傾向が強まり、都民生活への目配りが足りない」と指摘されているではありませんか。しかも、「都市再生」のための財政負担はこれからどんどん増えつづけます。

 東京都が財政負担する大型道路の今後の計画は、知事が強調する三環状道路にくわえ、あらたに二兆六千億円の事業費で計画された区部と多摩の都市計画道路、さらには、オリンピックとの関連で浮上している二兆円規模の高速道路・多摩新宿線など、巨額の道路建設が目白押しで、都の負担も莫大なものになります。この方向をすすめば、ますます福祉などが削られ、すでに七兆円規模に達している都の借金もさらにかさむことになります。

 三環状道路を中心とした大型道路の建設は、知事が言っているように決してバラ色のものではありません。「都市再生」は、大型開発を推進しながら、幹線道路をつくるのですから新たな自動車交通を呼びこみ、道路とクルマのいたちごっこをつづけることになるからです。わが党は、センターコア内の開発がすすめば、十四万台の自動車交通が増え、渋滞が解消しないことを明らかにしました。実際、圏央道の場合、国や都は、埼玉と青梅間の開通で周辺の交通量が減ったと宣伝していますが、実は逆に、自動車交通を呼びこみ、圏央道と並行して走る国道十六号線では、開通後、交通量は増えています。

 知事、大型開発や幹線道路計画のあり方を抜本的に再検討することも必要です。そして、都市計画を人口減少時代にふさわしい身の丈にあったものに抑制するとともに、投資の規模を、現在の半分程度のバブル前の水準にもどしていくことが、必要であると考えますが、どう考えますか。

 また、投資の中身も、大型開発一辺倒から、都営住宅や生活道路、公園、産業基盤などの生活改善型に切り替えていくことも重要ですが、あせて答弁を求めます。

さまざまなところに「都市再生」のゆがみ

 「都市再生」のゆがみは都財政だけでなく、さまざまなところに表れています。その最大のものは、環境破壊です。「都市再生」によるオフィスビル中心の再開発は、センターコア内だけで、敷地面積で五百ヘクタールを超え、東京ドーム百個分以上の開発計画が立てられ、この七年間だけで高さ百メートルを超える超高層ビルが百三十四棟、延べ床面積千百四十万平方メートル、地上五十五階の新宿三井ビル六十三棟分も建設され、ビル排熱や二酸化炭素の排出とともに、自動車交通の増大をもたらしています。

 知事は、「国際的な都市競争に勝つため」に「都市再生」をすすめると言いますが、このような大型開発一辺倒の都市開発は、世界の流れにも逆行するものです。人口減少に直面し、地球温暖化対策へのとりくみをつよめているヨーロッパの都市再生は、環境との共生による持続可能な都市づくりであり、社会的格差を是正しようとするものです。アメリカでも、サンフランシスコやシアトルなどの都市で成長管理政策がとられ、メリーランド州などでも、スモール・グロース政策といって都市の成長をおだやかなものにコントロールする努力をおこなっています。

 知事、都市のあり方を転換し、都心部に業務機能を集中するのではなく、環境に優しく、地域ごとに職住近接をめざす地域再生にこそ取り組むことを求めます。

 そして、交通政策は公共交通中心へ転換し、もっぱらトラックに依存している貨物輸送についても、鉄道に戻していくこと、水運の復権をめざすことなど長期的視点から見直しを検討することがもとめられています。それぞれ答弁を求めます。

中小企業対策予算は、石原都政七年で約四割減

 石原都政の逆立ちした財政運営は、中小企業対策にもあらわれています。すなわち、中小企業対策予算は石原知事の七年間だけでも、約四割減らされ、ピーク時の四七・六%の水準にまで後退させられてしまったのです。その一方で、困っている中小業零細企業には役に立たない新銀行東京には、一千億円もつぎこんでいます。しかも、その新銀行は、貸し出しが預金の三割程度にとどまるなど、経営が成り立つ状態にはありません。本当にひどい話です。

 知事、中小企業の困難をどう認識しているのですか。苦しんでいる中小企業を救済し、支援をつよめるために、中小企業予算を抜本的に増やすことを求めます。

 石原都政は、「官から民へ」「小さいな政府」のかけ声で、住民サービスから撤退し、営利企業にそのサービスをゆだねていく方向をつよめています。その結果、利用料が高い認証保育に見られるように、収入が少なく生活の苦しい都民は、子どもを預けることができなくなったり、民間企業が参入したスポーツ施設では、体育館やプールが利用できなくなるなどの状況がひろがるのは必至ではありませんか。その一方で、民間企業がうけもっている銀行経営にわざわざ東京都がのりだす。こんなおかしな話はありません。

 知事は、新銀行の経営について、どう認識しているのですか。新銀行は傷が深くならないうちに処理し、出資した資本金を回収することが必要になっていると考えますが、いかがでしょうか。

 東京の産業の九割以上をしめている中小企業は、それこそ、東京と日本の経済を下支えしている重要な産業です。経済を活性化するというのならば、何よりも中小企業への支援こそ、全力をつくすべきです。

 そのために、中小企業を支援する条例を制定することがきわめて重要です。すでに茨城、埼玉、群馬、山梨、三重などが、中小企業や地域経済の振興に着目した条例を制定し、予算の確保や施策の拡充にふみだしています。都道府県段階のこのような条例は、国が中小企業法を改悪し、中小企業支援の仕事から手を引いていこうとしているもとで、その意義は大きなものがあります。それは、都道府県が、中小企業の生き残りと振興に積極的役割を果たす決意を示し、かつ、自らの責務を条例として定めることで、地域経済の振興と中小企業の振興を推進することはきわめて重要です。

 知事、中小企業を支援する条例の制定を検討することを提案するものですが、いかがですか。

 わが党は、策定にあたっては、予算の確保の義務づけ、分野別の振興プランの策定、東京のものづくりの振興、地域商店街の活性化と大型店の出店のルールづくりと商店会加盟の義務づけ、商工指導所や各種試験研究機関の設置など、東京都が果たすべき役割をはっきりと都民に約束する内容とすることが必要と考えています。

 また、工業、商業、建設業、アニメなどの分野別の振興プランの策定は、国が分野別・業種別の支援の仕組みを投げだしたもとで欠かせません。早急に振興プランを策定されるよう、求めておくものです。

 中小企業対策予算の減の最大の要因は、業者の「命綱」と言われる融資制度の後退です。都はこの間に制度融資の担保となる原資を最高時の五十四%まで引き下げた結果、銀行の通常の利息がとられる融資が大半を占めることになったのです。このため、貸し出し実績は減りつづけ、一番多かった一九九二年度の半分の水準という異常な事態を迎えています。

 知事、制度融資を受ける人は、債券発行による資金調達の対象とならない、経営のきびしい小零細の業者なのです。せめて低利の政策金利を柱にすえることや国のセーフティネットを活用した京都府並の借り換え融資をおこなうなど切実な業者の要望に耳を傾けることを求めますが、いかがでしょうか。

 わが党は、このような逆立ちを転換し、切実な都民要望に応える予算を実現するために全力をつくすことを申し述べておきます。

少人数学級にふみだしていないのは、全国で東京都だけ

 次に、教育の問題です。

 すべての子どもたちに、確かな学力と生きる力を付けることは、多くの都民の願いです。学級のなかには、勉強が遅れがちな子、授業に集中できない子などが増えています。子どもたちは以前にも増して、ゆきとどいた教育を必要としています。

 そのためにはまず、三十人学級をはじめとした少人数学級を実現することです。全国では少人数学級の実践が始まり、「学力も生活習慣も身につく」と歓迎されています。

 文科省も昨年、少人数学級にふみだす立場を示しました。ところが、安上がりの教育を推進する経済財政諮問会議と財務省からの圧力によって、来年度は見送られたのです。私は、将来を担う子どもたちに必要なお金を使わないという政府の姿勢に、つよいいきどおりを覚えます。

 しかし、その中でも、東京都とともに少人数学級を実施していなかった香川県は、来年度から主に生活指導の面から必要性を認め、中学校で少人数学級にふみだすことになりました。また、すでに少人数学級を実施している道府県も実施学年を拡大するなど、年々規模と内容を拡充しています。

 東京都内でもすでに半数近くの私立中学校で、三十五人以下の少人数学級を実施しています。実施している学校は、「よりきめ細やかな指導を実現する学級二十八人」など、少人数学級をセールスポイントにしているのです。生徒や保護者から喜ばれています。また、少人数学級が小一プロブレムの対応で効果を上げていることが各地のとり組みで示されていますが、都教委自身も小一プロブレムへの対応の必要を認めているではありませんか。

 知事、県段階で少人数学級にふみだしていないのは、とうとう東京都だけとなってしまいました。他県では、子どもたちの教育のために優先してお金を使っているのです。東京都として三〇人学級をはじめとした少人数学級に踏みだすことをあらためて求めます。

 来年度からの香川県もそうですが、他県では加配教員を活用して少人数学級を実施しています。少なくとも、区市町村が加配教員を活用した小人数学級も選択できるようにすることを、検討すべきだと思いますが、見解を伺います。

 各自治体が自らの予算で、少人数学級を実施することを認めるのは当然ですが、いかがですか。答弁を求めます。

 また、教員がおかれた状況を改善することも急務です。

教員の長時間、過密労働は一刻も早く改善を

 これまでも教員の勤務は、休憩時間がほとんどとれないほど過密でした。小学校の教員の場合は出勤してただちに教室に行き、子どもを迎える。連絡ノートに目を通したり、子どもの話に耳を傾けたり、提出物を整理したり、朝自習の指示をしたり、学習プリントの印刷など大忙しです。

 それにくわえ最近は、研修のレポート提出が増え、会議も毎日のようにある、また、用務・警備・事務などの職員がどんどん削減され、その分の仕事も教員がやらざるを得ません。さらに「教育改革」の名で、絶対評価や観点別評価のための仕事が増え、入試制度の変更や進路指導の複雑化による事務量の増大など、私が小学校の教員をしていた頃には考えられない忙しさとなっています。

 いま、教員は、「子どもを引きつける授業をしたくても教材研究の時間がとれない」「放課後勉強を教えたくてもできない」と訴えています。教員は、子どもとかかわったり授業の質を上げることに時間を割きたくても、それができないのです。

 このような過酷な条件のもとで、教員の健康はむしばまれ、ストレスが原因での病気が増えています。また、定年前に退職する人が増え、小中学校では定年退職者の一・七倍にも上っています。

 足立区の教職員の組合がおこなった勤務実態調査では、小中学校の教員の五人に一人以上が月八十五時間を超える超過勤務をしていることが明らかになりました。厚労省が言っている過労死の危険ラインは月八十時間ですから、多くの教員が過労死の危険と隣りあわせの状況にあり、実際に過労死もでています。

 私の子どもが通っていた中学校の三十四歳の先生は、二年前に亡くなり、過労死と認定されました。担当の授業のほか、学年主任および指導主任としての職務、複数のクラブの顧問としての活動、生徒や保護者との対話も積極的にすすめ、学年通信も頻繁に発行していました。このため、週休日や振り替え休日にも出勤し、時間外勤務は百二十八時間、四十一日間連続勤務をしていました。子どもたちによりよい教育がしたいと全力で努力していた教師の生命が失われてしまったのです。思春期の生徒の心もどんなに傷ついたでしょうか。

 だからこそ、中学校長会でも、教員の過酷な実態を指摘し、その改善を強く要望しているのです。管理者の目から見ても、教員の長時間、過密労働は一刻も早く改善しなければならない事態に直面しています。

 このような小中学校の教員の過酷な勤務実態について、どのように受け止めているのですか。

 また、都として、教員の勤務実態調査をおこない、改善することが必要と考えますが、答弁を求めます。

 文科省が目安としている「一時間の授業に一時間の準備ができるだけの教員配置」を実質的に実現するために、教員配置を抜本的に改善することが必要ですが、どうですか。

 また、警備員や用務員などの職員を増配置するために、都として必要な支援をおこない促進することが求められています。答弁を求めます。

オリンピック招致、その全容のあきらかにすべき

 最後に、東京オリンピック招致についてです。

 わが党は、オリンピックそのものには反対ではありませんが、巨大開発の口実とされたり、環境破壊につながるような計画とセットにされることになるなら、招致には賛成できません。

 もちろん、オリンピックの開催にあたって、一定の施設や基盤整備は必要となります。しかし、それが過大であったり、環境に大規模な影響をあたえるものであってはなりません。

 だからこそ、JOC会長の竹田恒和氏も、「オリンピックの開催は、開催都市並びに開催国に財政問題、環境問題、大会終了後における競技施設の維持・管理を含めた後利用問題等、大きな問題を残していることも残念ながら事実である」と述べているのです。

 また、オリンピックの招致は、施設面、環境面、財政面などの検討課題、さらには市民の合意や熱意、国あげての支援などが不可欠で、その実現には周到な準備が必要とされます。

 市議会が招致決議をおこなった札幌市では、札幌開催の経費の試算を公表し、市民アンケート調査をおこないました。その結果は、賛成、反対ともに三分の一で、市長はこの結果をうけ、市の財政状況も勘案し、「札幌開催」を見送る決断をおこなったのです。

 ところが石原知事はどうでしょうか。本定例会の施政方針では、五輪開催にむけ、三環状道路などの集中的な整備、羽田空港の再拡張、臨海副都心開発の促進など、もっぱら都市基盤整備の推進を表明しました。また昨年、自らが氏子総代をつとめる明治神宮周辺の大再開発構想に言及しています。知事の一連の発言はすべて、オリンピックをテコに大型開発をすすめようとするものです。しかも、都民とともに計画を練り上げていくという立場も見受けられません。

 知事、招致すると言うならまず、どのくらいの規模の建設や開発が必要なのか、財政はどのくらい必要になるのかを都民の前に明らかにすることこそ必要ではありませんか。

 いまだに公表されていない「東京オリンピック基本構想懇談会」への提出資料や審議内容の議事録を速やかに出していただきたい。

 都としての東京オリンピック開催計画、開催に向けての基盤整備や関連する開発計画の全容を明らかにすることを求めます。

 同時に、それらに必要な事業費、都の負担額、招致経費もふくめて一体どれくらいかけるのか明らかにすべきです。

 来年度一千億円の基金を積み立てるとしていますが、なぜ、一千億円なのかその根拠と、最終的に基金をいくらまで積みたてるのか、それぞれ知事の明確な答弁を求めます。

 石原知事は、招致表明以来、オリンピックの根本精神である平和について発言がないばかりか、オリンピックの基本理念についての言及すらありません。本当に不可解なことです。

 わが党は、オリンピックが「平和の祭典」とよばれるように、オリンピック憲章の平和の基本理念の実現に貢献するものでなければならないと考えます。そして、できるだけ簡素で、環境に配慮したものでなければならないことを申し述べ、再質問を留保し、質問を終わります。

【再質問】

 知事に二点について再質問します。
 知事は、格差があることは渋々認めましたが、危機的でないとして、撤回はしない、大したことはないという態度です。しかし、都の産業労働局が発行した「東京の産業と雇用就業」二〇〇四年版ですが、「拡がる若年者の賃金格差」と見出しまでつけて指摘し、この格差拡大は、一層の拡大が予想されますと述べているではないですか。危機的でないとはいえない事態です。
 また、企業規模別の賃金を分析して、企業規模が大きいほど格差が広がっていますと書いています。これは、東京都の産労局が発行した資料です。知事、そんなことも知らないんですか。都民の実態に無関心だといってもほどがあります。少しは勉強してください。
 知事、「拡がる若年者の賃金格差」という、この事実も認めないのですが、答えていただきたいと思います。
 オリンピックについて聞きます。知事は記者会見で、具体的な話は議会でといっていました。私は知事の答弁を求めています。きちんと答えてください。局長の答弁でも、話せる段階ではないと一般論を繰り返すだけではないですか。既に終了した懇談会の記録や資料さえ公表しないというのでは、都民は納得しません。ちゃんと答えていただきたいと思います。
 先ほど、オリンピック招致に当たって、平和を希求することについて質問がありましたが、これにも答えていません。そんなことでは世界から相手にされません。
 二点について質問します。
 最後に、中小企業の答弁ですが、制度融資の実績が一番多かった一九九二年のわずか五二%、半分にすぎない、こう指摘をしているのです。
 以上、二点について伺い、再質問を終わります。

【答弁】

〇知事(石原慎太郎君) 清水ひで子議員の代表質問にお答えいたします。
 世界に格差のない社会というのは存在しないと思います。当然、日本にも格差はあるでしょう。しかし、私、その格差がいまだに危機的なものと思っておりませんから、前回の発言について撤回するつもりはございません。
 次いで、経済給付的事業の充実についてでありますが、共産党が望んでやまない貧困も格差もない社会なるものが、いかに悲惨で非人間的であるかは、崩壊した共産主義社会というのが証明してきたわけですけれども、しかし皮肉なことに、残っている、あなた方の元祖か何か知りませんが、中国は、モーターショーで一億円の車を買うばかみたいな成金が四十人もいたと思うと、一日働いても働いても、年間通じての所得を三百六十五日で割りますと、何と一元、一元って、私、数百円かと思ったら、日本円にして十四、五円だそうですね。それにも及ばない貧農がはんらんしている。
 まあ、そういう現況というのはあるわけでありますが、元来、人間が構成する、造成する社会にある程度の幅があるのは当然でありまして、そこから社会のダイナミズムも生まれてくると思っております。その意味で、私は、日本にはまだまだ格差の生むダイナミズムというのは十分にあると思っております。
 さらに、経済給付的事業を充実しろという主張は、都政を共産党好みのばらまき行政の時代に逆戻りさせるということでありまして、東京から人間の意欲を失い、かつ活力を奪おうとするものでありまして、これは決して受け入れられるものではございません。
 医療制度改革についてでありますが、人口減少社会がいよいよ現実のものとなった今、右肩上がりを前提とした我が国の社会システムを、新しい時代に見合ったものへと変革することが急務でありまして、医療制度改革についても、その一環として行われるものと認識しております。
 なお、老人医療費助成制度については、介護保険制度の成立などを踏まえ、七年間にわたる十分な経過措置を設けて廃止することが都議会で議論を経た上でまず決定されており、これを覆して存続することは考えておりません。
 福祉施策についてでありますが、多様化する都民の福祉ニーズに的確にこたえるため、都は、地域で自立を支える新しい福祉を目指す福祉改革を推進し、必要な施策に財源を集中投入してきました。都民の広範な支持を得て、既に三百カ所を超えた認証保育所の設置など、これまでの都独自の施策展開に加え、今回は、障害者自立支援法の施行に伴い、新たに発生する利用者負担の軽減措置を行うなど、真に必要なサービスについて拡充を図っております。
 これまでの改革をさらに前進させ、将来世代にわたって信頼できる、揺るぎない安心を実現するため、先般、福祉・健康都市東京ビジョンを策定いたしました。今後は、このビジョンに基づき、民間、地域、行政、それぞれの力を最大限生かした効率的、効果的な施策を展開し、大都市東京にふさわしい福祉、保健、医療サービスの一層の充実を図ってまいります。
 次いで、投資の規模についてでありますが、平成十八年度予算では、投資的経費が二年連続の増となるなど、投資的経費にも財源を配分できる体力が戻りつつありますが、東京の都市基盤は依然として立ちおくれた状況にあり、現在の投資水準が過大であるとは全く考えておりません。
 都市基盤の整備は、都民生活を安定的に支え、その質を高めるために極めて重要でありまして、東京の再生のため、引き続き積極的に投資的経費を確保してまいります。
 投資の中身についてでありますけれども、都は、決して大型開発に偏重した投資を進めているわけではなく、これまでも、生活福祉関連事業を初めとするさまざまな基盤整備に着実に取り組んでまいりました。都が行ってきた基盤整備は、すべて都民の生活改善を目指したものであり、今後とも、これまで同様、都民が真に必要とする事業を引き続き進めてまいります。
 こうした点は、都民に十分に理解されていると思います。これまでの方針を改めるつもりはございませんし、その必要もないと心得ております。
 中小企業予算についてでありますが、都内中小企業は、景気が回復しつつあるものの、いまだに厳しい状況にあると認識しております。
 都はこれまで、新銀行東京や債券市場の創設のほか、中小企業再生支援などの都独自の施策を全国に先駆けて実施するなど、中小企業の支援策の拡充に努めてきました。また、来年度は、企業の物流効率化の支援や中小企業事業化支援ファンドなど、新規施策に取り組むこととしております。
 予算額の減少は制度融資預託金などの減少によるものでありまして、制度融資の目標額については逆に大幅に増加し、一兆七千五百億円となっております。単なる予算額の推移、多寡のみで事を評価することは、本質論から外れて、適当ではないんではないでしょうか。
 今後も都は、先進的かつ独自性を持った効果的な取り組みを講じ、中小企業の振興に努めてまいります。
 ちなみに申し上げますと、私、最初の選挙のときに、いわゆる中小企業の支援のためのCLO、CBOの提案をいたしました。そのときに真っ先に強烈に反対したのは共産党の指導者でありましたが、これが成功することで、現にその中から、都下から四十三の会社が上場にこぎつけております。
 次いで、中小企業を支援する条例の制定についてでありますが、東京の産業振興のためには、物流改革など都市政策との連携により産業活動を支える基盤の強化に向けた取り組みが不可欠であります。
 中小企業はもとより、東京の産業力の一層の強化を図るため、共産党の主張とは異なる立場から、既に申し上げたように、将来の産業施策の骨格となるビジョンの策定等に向けた検討に取り組んでおります。
 次いで、三十人学級についてでありますけれども、学級編制基準をどう定めるかについては、教育行政の根幹にかかわることであり、法的にも、所管する教育委員会がその専門的な立場から判断すべきものであります。
 児童生徒が集団生活の中で社会性を養うという観点から、生活集団としての学級には一定規模が必要とする教育委員会の判断は妥当であると考えております。
 他の質問については、教育長及び関係局長から答弁いたします。

〇教育長(中村正彦君) 六点のご質問にお答え申し上げます。
 まず区市町村の判断によります加配教員を活用する少人数学級についてでありますけれども、限られた教員定数の活用につきましては、教育効果という観点から、都教育委員会が主体的に判断すべきものと考えておりまして、これまで少人数指導につきまして、国の教職員定数改善計画を踏まえ、着実にその充実を図ってまいりました。
 都教育委員会といたしましては、学級には一定規模が必要である一方、基礎学力の向上に配慮して、きめ細かな指導を行っていくために、少人数指導の充実に努めていくという従来の方針に変わりはございません。
 次に、各自治体がみずからの予算で少人数学級を実施することについてでありますが、都教育委員会といたしましては、児童生徒が社会性を養うための教育効果の点で、生活集団としての学級には、一定の規模が必要であると考えております。
 なお、現在、区市町村が経費を負担して独自に教員を任用することができる構造改革特区制度を全国化する法案が、国会に提出されていると聞いております。今後、国の動向を注視してまいります。
 次に、小中学校の教員の勤務実態についてですが、教員の勤務につきましては、第一義的に、服務監督権者であります学校長が適切に管理するものでありますが、時代によって学校を取り巻く課題は変化しておりまして、近年では、いじめや不登校、学力向上、安全確保などの課題がありまして、個々の学校や教員によってさまざまな勤務実態があると認識しております。
 次に、教員の勤務実態調査についてであります。
 文部科学省は、来年度に教員の勤務実態調査を行うための予算を計上しておりまして、都教育委員会としましては、今後、国の動向を注視しながら対応してまいります。
 次に、小中学校の教員配置の抜本的な改善についてでありますが、都教育委員会は、いわゆる義務標準法に基づきまして、学級数に応じて教員を配置するとともに、国の教職員定数改善計画を踏まえ、少人数指導の充実に向け、必要な定数措置を講ずるなど、教職員定数の改善に取り組んできたところであり、お話のような教員配置の抜本的な見直しは考えておりません。
 最後に、区市町村への支援についてでありますが、区市町村立学校の運営につきましては、設置者であります区市町村の責任において対応すべきものでありまして、お話のような警備員等の職員の増配置は、区市町村がそれぞれの実情に応じまして主体的に行うべきものと考えております。

〇都市整備局長(梶山修君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、税制改正に伴う都営住宅家賃の負担の抑制についてでございますが、平成十六年度の公的年金や老年者の控除にかかわる税制改正は、世代間及び高齢者間の負担の公平を確保するため実施されたものでございまして、これに伴う法令の改正により、都営住宅の家賃算定方式が変更されたところであります。
 法令では、老年者控除の廃止により都営住宅家賃が引き上げとなる場合、激変緩和のため三年間の経過措置が設けられ、既に実施されているところでございます。
 次に、若者への住宅支援についてでございますが、現在、都内の住宅ストック数は世帯数を一割以上上回っており、中でも若者が多く入居している小規模な民間賃貸住宅は、十分に供給されております。また、セーフティーネットとしての住宅施策の実施に当たりましては、民間賃貸住宅に入居しにくい高齢者世帯や子育てファミリー世帯など、より困窮度の高い世帯を優先すべきであると考えます。したがいまして、都営住宅の新規供給を含め、ご指摘のような若者に対する住宅支援を実施する考えはございません。
 次に、都市のあり方の転換についてでございますが、世界的な都市間競争が激化している現在、東京に必要なことは、首都東京の国際競争力を向上させるとともに、都民生活の質を高めることでございます。そのためには、都心部において、業務のみならず商業や文化機能などの集積を図ることや、ビルの機能更新により、国際水準の就業環境を整えることが不可欠でございます。
 また、開発プロジェクトの推進に当たりましては、水や緑の空間とあわせて風の道を確保するほか、ビルの省エネ化を誘導するなど、良好な都市環境を創出してございます。さらに、都市型住宅の供給による都心居住の推進や、立川など核都市の育成を進め、職住近接を図ってございます。
 今後とも、活力や魅力に満ちた首都にふさわしい都市の実現を目指し、こうした取り組みを積極的に進めてまいります。
 最後に、貨物輸送の長期的視点からの見直しについてでございますが、都はこのたび、総合物流ビジョンを策定し、国際競争力の強化や暮らしと環境の向上の実現に向けて、今後の物流対策の基本的な考え方を取りまとめたところでございます。
 このビジョンでは、輸送の効率化を推進するため、陸海空の物流ネットワーク化を図り、トラックを初めとする各種の輸送機関を有効に活用することとしております。中でも、国内輸送の約九割を担うトラック輸送につきましては、輸送の効率化を進め、環境負荷を低減するために、道路網の整備促進や大型貨物車の通行上のボトルネックの解消を図ってまいります。
 今後とも、輸送の骨格となる道路整備を推進するなど、物流機能の向上を図ってまいります。

〇福祉保健局長(平井健一君) 六点のご質問にお答えいたします。
 まず、住民税の税制改正についてでございますが、今般の税制改正は、世代間及び高齢者間の負担の公平の確保を目的としたものでございます。これにより、平成十八年度以降、公的年金のみを収入とする高齢者につきまして、住民税課税となる範囲は拡大するものの、現役世代と比較いたしますと、改正後においても、なお課税対象となる所得水準は高く設定されておりまして、住民税の課税、非課税を基準として賦課が決定される各種制度におきましても、結果として、現役世代よりも高齢者の方が負担が抑制されることとなっております。
 したがって、今回の税制改正が、直ちに高齢者の生活に影響を及ぼすものとはいい切れないと考えております。
 次に、シルバーパスの税制改正への対応についてですが、平成十七年度に千円パスを利用している高齢者のうち、税制改正の影響で二万五百十円パスの該当となる方につきましては、引き続き千円の負担に据え置くよう経過措置を講じることとしております。
 次に、所得に応じたパスについてですが、本制度は、若年世代との間に負担の不公平があるなどの課題があったことから、平成十二年度に見直しを行ったものでございます。現在、多くの高齢者がパスの発行を受けまして、社会参加と生きがいの活動に活用されており、現行の仕組みは、パス本来の目的に十分沿っているものと考えております。
 次に、高齢者施設の整備についてでございますが、介護保険制度は、すべての高齢者が介護を必要とする状態になっても居宅で自立した生活を実現するという在宅重視の理念を掲げておりますが、都は、これまでも、家庭的な環境の中で共同して生活しながら介護や日常生活上の世話を受けることができる認知症高齢者グループホームの緊急整備に全力で取り組んでまいりました。
 また、平成十八年度からは、地域の特性に応じた多様で柔軟なサービス提供が可能な小規模多機能型居宅介護拠点の重点整備にも取り組むこととしております。
 なお、特別養護老人ホームなどの介護保険施設の整備についても、計画に基づき、着実に進めているところでございます。
 次に、在宅高齢者への医療的な支援についてでございますが、本年四月から、早朝、夜間、深夜における短時間の訪問看護やデイサービスセンターが医療機関や訪問看護ステーションなどと連携して行う療養通所介護が、介護報酬上新たに導入されることとなりました。
 また、都はこれまでも、訪問看護師を対象といたしました難病やターミナルケアに関する研修等を実施し、医療ケアの必要な在宅の高齢者の支援に努めてまいりました。これらのことから、重度の要介護者や医療の必要な方の在宅での生活を支援する体制が整うものと考えております。
 最後に、回復期リハビリテーション病床についてでございますが、都は、これまでも回復期リハビリテーション病床の整備に取り組んでまいりましたが、リハビリテーション医療が有効に機能するためには、回復期のみならず、発症直後の急性期や地域での維持期など、それぞれの段階で適切な医療が連続的に提供されることが必要でございます。
 このため、都は、東京都リハビリテーション協議会を設置し、こうしたそれぞれの段階に応じたリハビリテーション医療が地域ごとに提供されるよう、総合的な施策の充実に努めているところでございます。

〇産業労働局長(成田浩君) 四点のご質問にお答えいたします。
 まず、若者の仕事をめぐるさまざまなニーズへの対応についてでございますが、都では、既存のしごとセンターを初め、労働相談情報センターや技術専門校におきまして、各区市町村とも連携し、若年者を含むあらゆる年齢層のニーズに適切に対応しているところでございます。
 次に、若年者雇用等に関する経済団体への働きかけについてでございますが、国では、各種法令や指針等に基づき、企業に対し雇用の確保や労働条件の整備等に向けた取り組みを求めております。都といたしましては、雇用形態を問わず、引き続きこれらの法令等の周知徹底を図ってまいります。
 次に、新銀行東京についてでございます。
 新銀行東京の設立は、中小企業の潜在力を発揮させ、東京の地域経済を再生させる画期的な取り組みでありまして、新銀行東京は、今日の厳しい環境下にあっても、設立目的の達成に向けた経営に努めております。都は出資者として、新銀行東京が中小企業のニーズにかなった新商品やサービスを積極的に開発するなど、存在感ある銀行として発展していくことを期待しております。
 最後に、制度融資についてでございます。
 都の借りかえ融資では、セーフティーネット保証の対象者に限定せず、都と区市町村の制度融資の利用者すべてを対象としております。また、都は、小規模企業や経営状況が悪化している中小企業向けの融資で政策金利を設定する一方、クイック融資等については、迅速な融資実行の観点から金融機関所定金利とし、円滑な資金供給を促しているところでございます。
 なお、今年度の融資実績でございますが、昨年十二月末時点で、前年同月比一八%増と大幅に増加しているところでございます。

〇知事本局長(山口一久君) 東京オリンピックに関する三点のご質問にお答えいたします。
 まず、東京オリンピック基本構想懇談会への提出資料などについてでございますが、懇談会の審議内容につきましては、今後の国内外他都市との競争などのため、アイデアを秘匿しておく必要がありますことから非公開としているものであり、懇談会への提出資料や議事録については公表できませんが、懇談会の報告では、具体的な大会イメージとして、世界一コンパクト、環境フレンドリー、ホスピタリティーあふれる大会などを提言しております。
 次に、東京オリンピックの開催計画などについてでございますが、現在、六月にJOCに提出する開催概要計画書に盛り込む主要施設の配置計画を鋭意検討しているところでございますが、現在ではお示しする段階ではございません。東京に集積する既存施設などの有効活用により、環境への影響を極力抑えたコンパクトな大会を目指しております。
 最後に、東京オリンピックの経費についてでございますが、先ほどご答弁しましたように、六月にJOCに提出する開催概要計画書に盛り込む大会運営経費などを現在検討しているところであり、お示しする段階ではございませんが、過大な経費をかけず最大の効果を上げたいと考えております。

〇財務局長(谷川健次君) オリンピックのための基金についてでございますが、東京にオリンピックを招致するためには、東京ならではの理念やアイデアを打ち出していくのはもちろんのこと、オリンピック開催に十分たえ得る財政力があることをアピールする必要がございます。
 また、このオリンピックは全体としてコンパクトな大会を目指しますが、開催都市としての負担額は、それなりの額となることも見込まれます。
 これらの点を重ね合わせ、今回、一千億円を基金に積み立てたものでございます。最終的な積立目標につきましては、今後全体計画を策定する中で考えていく問題であり、現時点では未定でございます。

【再質問 答弁】

〇知事(石原慎太郎君) 都の産業労働局がどんな数字を発表しようと、数字は数字だけでしかありません。やはり数字の字面だけを取り上げて議論すれば、本質論にならない。私は、それにあらわれた数字の背景というものを皆さんに考えていただきたい。例えば、ニートとかフリーターのはんらん、こういったものがまかり通る社会というものは、やはりある程度豊穣になってきたからそういう甘えが出てくるんでしょう。
 こういう問題、あるいはこのごろ急に下流なんていう言葉が出てきましたが、メディアがこういうものを取り上げると、まさに一犬実をほえて万犬虚をほえるといいますか、政治全体がこういったものをまともに取り上げて、本質というものを論じない。私、非常にこれは危険な傾向だと思います。
 現に、どの企業も収益を上げて、春闘などはほとんど労働組合のいい分がまかり通る、そういう経済事情になってきている。しかも、有効求人倍率は好転していて、東京も人手不足になっているんですよ。
 オリンピックについては、担当の局長から答えます。

〇知事本局長(山口一久君) 先ほどお答えしましたが、まず、オリンピックに東京で手を挙げるためには、オリンピックの基本精神を遵守するのは当然のことでございます。その上で東京都として手を挙げたことであります。
 審議内容の結果については、懇談会との約束事でございまして、先ほどもいいましたように、国の内外の他市との競争のためにアイデアを秘匿しておく必要があることから非公開とすると決めてございます。そのために懇談会への提出資料や議事録については公表できないのであります。
 それで、ご判断に当たりましては、世界一コンパクト、環境フレンドリー、ホスピタリティーあふれる大会などを提言しているところでございます。

以上