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文書質問趣意書
2010年6月14日
かち佳代子(大田区選出)
羽田空港の再拡張・国際化について
東京都は、首都圏再生をかけ声に、国際競争力を回復させるとして、空港・港湾機能をセットで、強力に推進しています。
先日、私は10月に供用開始となるD滑走路の工事進捗状況をみてきましたが、海上に延長3千メートルの構造物を造り、2千メートルは、東京ドーム31杯分で土砂が埋め立てられ、1千メートルの桟橋部分は、直径1・6mの鉄骨杭が1156本も海中に打ち込まれていました。
狭い東京港の中に作るD滑走路は、多摩川の河口を半分せき止めるように、突き出しています。しかも、滑走路の反対側が、外国船航路に交差することから、直線航路に角度がつけられるとともに、効率化アップのため往復航路に拡幅するための浚渫をおこなっていました。
滑走路も水平ではなく、高低差40mもあり、桟橋部分と埋め立て部分と連絡通路部分の3つの接続でささえられるものであり、世界でも例のないこのような滑走路が、安全性や周辺環境などに、今後どのような影響が出るかは、未知数です。
Q D滑走路の安全性・周辺環境への影響について、どう把握し、対応するのですか。お聞きします。
A 国は、羽田空港再拡張後の航空機と船舶の安全確保にっいて、関係行政機関や港湾物流事業者等からなる「安全確保等検討委員会」を設置するとともに、D滑走路の建設工事に係る重要な技術的事項等については「技術検討委員会」を設置して検討を行うなど、滑走路の設置・管理者として、必要な安全性の確保を図っています。
一方、水域などの周辺環境については、一部を桟橋構造とすることなどにより、多摩川の通水性を確保するとともに、埋立部は、多様な生物の着生が期待できる捨石式傾斜堤護岸を採用するなど、環境への影響を軽減する配慮を行っています。国は、平成18年度に作成した環境影響評価書の中で、事業完了後も、適切な環境監視を実施するとしています。
引き続き、国に対して、供用開始後の安全性確保や周辺環境への配慮について、適切に対応するよう働きかけていきます。
D滑走路供用開始後は、現在の発着回数30万回/年を40・7万回/年に増やすというものであり、区民から、騒音被害の増大を心配する声が高まっています。
現在でも、飛行ルートの変更により、内陸部まで低空飛行が続き、広く大田区民から航空機騒音の苦情が寄せられてるのです。
知事は、「羽田空港は都心まで、20キロ以内であり、成田は60キロ、国際都市のなかで、もっとも、都心に近い空港のひとつとして、優位性がある」と言われましたが、それだけ、隣接する近隣住民、大田区民へ与える影響はおおきく、危険性も高いということでもあるのです。
D滑走路共用開始によって、10万回も増便となり、外国線も6万回増えるといわれています。ジャンボ機による騒音も一層増加します。
深夜・早朝を問わず、航空機騒音に安眠を妨害され、日常生活への支障・影響が一層増大することを、多くの住民が懸念をしています。
また、地球温暖化対策が喫緊の課題となっているとき、現在、環境局がしめしている、CO2削減計画の中には、航空機に関する排出量は、国際基準を待つとのことで、現在カウントしていません。しかし、空港再拡張・増便するというなら、CO2削減計画に位置付けないことは、ゆるされません。
そこで、羽田空港の再拡張と国際化にともなう、新たな環境確保の観点から、いくつかの問題をお聞きします。
本年5月に、国土交通省が再拡張後の飛行ルートについて示したものは、北風時でも南風時でも大田区上空を通過するということです。現在、早朝の北風時のA滑走路の左旋回は羽田・糀谷・南蒲田・六郷地域では大変な騒音被害をうけているのですが、減便するとはいえ、依然として、続くということが明らかです。
Q 再拡張によって、40万回に増えることにより、1日あたりの便数はどれだけふえるのですか。早朝左旋回の減便は、いつまでに廃止するのかも含めて、明確なスケジュールを示すよう、国に求めていただきたい。
A 羽田再拡張に伴い、昼間の年間発着回数が40.7万回に達する時点で、現状の1目当たり415便と比較して、142便増える予定です。
また、大田区の公表資料によれば、国土交通省から、大田区を含めた周辺自治体との協議の結果、左旋回について、r現在、午前7時台、8時台に1目5便以下とされているものを、再拡張後は3便以下とする。」「空港運用の慣熟を経て数年で廃止することを目標とし、それまでの問においでも可能な限り減便に努める。」という方針が既に示されています。
Q 便数が増えれば、人や物の流通も増大します。そのため、道路の輸送もふえること
になりますが、10万回の増便によって、車両交通量が日量どれだけ、増えると予測しているのか。同様に公共交通への影響と対応をお聞きします。
A 国は、羽田空港における空港アクセス交通量については、平成18年度に作成した環境影響評価書において、昼間の年間発着回数が40.7万回に達する時点で、現況の1日当たり約27,000台と比較して、約19,400台増えると想定しています。
公共交通については、鉄道輸送力増強のため、現在、京急蒲田駅の改良事業を進めているほか、京浜急行及び東京モノレールの国際線ターミナル新駅も、10月の供用開始時に合わせて開設される予定です。
さらに、本年10月から深夜、早朝時間帯にも多くの国際線が発着することとなるため、国が中心となり、交通事業者や都も参画して設置されたワーキンググループにおいて、バスを含めた公共交通の運行時間帯の拡大や本数の増加などについて、検討、調整を進めており、10月の供用開始に合わせて、深夜、早朝便に対応した使いやすい公共交通を確保していく予定です。
Q 車両交通量の増大による、大気汚染が懸念されますが、 環境影響評価書では、3
ヶ所しか調査をしていません。これでは、実態を正しく認識することはできません。せめて、環七と第一京浜(大森交差点) 産業道路(大森警察署前) 環八と第一京浜(南蒲田交差点)などの、モニタリングをおこなうべきですが、どうですか。
A 空港周辺では、大田区東糀谷(環境局の一般環境測定局)、大田区千鳥(環境局の自動車排出ガス測定局)、京浜島(大田区)などにおいて、大気汚染物質の定点観測を実施しています。
国は、環境影響評価書の中で、供用開始時等に、航空機等の発生源から排出される窒素酸化物等の排出量を把握するとともに、空港周辺の一般環境大気測定局の測定データを分析するとしており、適切な環境監視が行われる予定です。
Q 航空機による、CO2予測と、削減計画を早急に立てる必要があります。都としての見解をお聞きします。
A 温室効果ガス排出量の算定の基となる、国が地方自治体用に策定した「地球温暖化対策地域推進計画策定ガイドライン」においては、運輸部門におけるCO2削減の対象は自動車に限定されています。
こうした中でも、都は、地域内の排出量をより正確に算定するために、航空機については、都内運航分である伊豆諸島への運航を算定の対象としています。
なお、国際線の航空機からのCO2排出量については、どこまでを当該国の排出量とするか決まったルールは定められておりません。また、航空機からのCO2排出量削減については、国際民間航空機関(ICAO)が中心となって、国際的な仕組み作りを検討しており、その動向を注視していきます。
京急羽田線の京急蒲田駅の通過について
東京都は羽田空港の再拡張・国際化に向けて、「10年後の東京」実行プログラムにおいても、空港アクセスの向上をはかるために、京浜蒲田駅の改良・高架化を平成24年度までに、完成させ、ラッシュ時は、品川〜羽田空港間を6本から9本に、横浜〜羽田空港間を1本から6本に増便する計画をかかげています。
ところが、このたび、京急は品川〜羽田空港線の片側線の完成にともない、「エアポート快特」という、品川〜羽田空港ノンストップ便を3本/時間走らせると、開通式の直前になって大田区に通知してきました。
この、京急本線の連続立体交差事業は、都の事業として総事業費1650億円のうち、都が480億円、大田区も200億円を負担し、鉄道者側の負担はたった231億円にすぎません。京浜急行鉄道株式会社は、これを契機に駅舎の改良をすすめ、集客力と収益増強をはかっているのです。
京急は公共交通機関としての役割があり、こうした問題について、地元区や、住民の理解と合意なくしてはすすみません。
鉄道連続立体交差事業にともない、駅前広場や再開発などにより、経過の中では関係住民は立ち退きや店をたたまなければならない状況も受け入れてきたのです。
こうした経緯を踏まえず、京急は地元区の大田区にはなんの相談もなく、区内のメインステーションである京急蒲田を通過するダイヤをつくってしまったことは重大です。
この間、大田区・区議会・自治会・商店街を挙げて、京急に対し、抗議と見直しを求めてきましたが、京急は全く、応じる姿勢をみせていません。
ダイヤの組み方は、「京急の権利」などとして、頑なに収益本位にまい進することは、企業としての社会的責任からしても、好ましい状況とはいえません。
これは、大田区のエゴイズムなどではなく、京浜急行鉄道株式会社との信頼関係にかかわる問題です。いまお互いの信頼関係の修復がなにより、重要です。京急側は、新ダイヤ決定までの過程において、当該の大田区に打診と調整を図るべきだったのです。5月17日から、新ダイヤで運行しておりますが、そのため、普通列車を利用するのに、20分も待たされる状況がでています。単に、1時間に3本だけの通過にとどまらない影響がでているのです。いまからでも、大田区と真摯に話しあうべきです。
Q 東京都の長期計画に位置付けて、京急の連続立体化や羽田空港の再拡張化に取り組んできた経緯もある東京都として、広域行政の立場から、京急に対し、大田区と誠意をもって話し合い、打開策を見出すよう、働きかけるべきです。
A 都はこれまでも、京浜急行電鉄に対して、地元大田区の理解を得るべく、誠意を持って対応するよう働きかけてきました。
Q この事業に関係している国土交通省も交えて、4者で話し合いの場を設定するよう、都として調整すべきですが、どうですか。
A 大田区は、本年7月に、「京浜急行本線・空港線連続立体交差事業に伴うまちづくりなどの諸課題に関する協議会」を設置しています。当該協議会には、都も、国や京浜急行電鉄とともに参加しています。
Q 今後、このようなトラブルを発生させないための、仕組みづくりが必要です。都として、取り組まれることを求めます。
A 鉄道事業における輸送サービスの内容は、基本的には、国の一定の関与の下、各鉄道事業者の判断により設定されるものです。 一方、鉄道は重要な都市基盤であり、地域の利便性やまちの活性化に深く関わるものと認識しています。 そのため、都は今後とも鉄道事業者に対し、地域生活に影響を及ぼすような輸送サービスの変更などに際しては、地元や利用者に適切な情報提供を行うよう働きかけていきます。
以上