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文書質問趣意書
2010年6月14日
清水ひで子(八王子市選出)
農林業支援について
最初に、口蹄疫問題です。
宮崎県における口蹄疫の発生は、都内の畜産農家にも大きな不安となっています。被害に遭われている畜産農家をはじめ、関係者の方々には、謹んでお見舞い申し上げます。
Q 都内でも、進入防止策として消毒などの処置がすでにおこなわれていますが、都としても農家の要望を聞いて十分な対応するとともに、さらに万全の防疫態勢をとるよう求めます。
A 都は、4.月20日の宮崎県での発生確認後、直ちに都内畜産農家や動物園等に情報提供を行うとともに、対象動物約7,000頭の緊急調査を実施し、全て異常がないことを確認しました。併せて、「家畜の健康観察」「立入制限」「消毒」の徹底について注意喚起を行い、その後も引き続き清報提供を行っています。
Q 宮崎県の口蹄疫の防疫活動にいくつかの自治体では、すでに、獣医師など職員を現地に派遣しています。都としても、できるかぎりの協力することは、各地への被害拡大を防ぐことになると思いますが、どうですか。
A 都は、既に5月中旬から産業労働局及び福祉保健局の獣医職員5人を宮崎県に派遣しています。
次に、都市農業振興についてです。
都市の農業は、都市住民にとって、新鮮な食料・農産物を消費者の食卓に供給する大変身近な存在です。
都政モニターアンケートでは、東京に農業・農地を残したいと思う人は85%に達します。体験農園、市民農園、直売所、田畑での直接販売、観光農園、学校給食への地場産作物の供給など地産地消の利用も活発になっています。消費地に近くて輸送コストがかからないという条件をいかして、住民の需要にあう農産物を少量・多品目で生産するなど都市の農家も頑張っています。
しかし、東京の農地面積はこの10年間でも8割、農業従事者は7割に、それぞれ減少しています。家族経営の農産物の販売金額は、全体の約7割が200万円以下になっているなど、困難に直面しています。
一方、国では、今年3月末に政府が閣議決定した、新しい「食料・農業・農村基本計画」で、「都市農業の機能や効果が十分発揮できるよう、都市農業を守り、持続可能な振興を図る」ことを掲げ、「都市農地の保全や都市農業の振興に関連する制度の見直し」の検討が進められるなど都市農業振興にむけ、一定の取り組みが進んでいます。
Q 多くの農地を開発の予備地として、市街化区域に広く取り込み、転用を強いてきた都市計画制度、市街化区域、調整区域の区分けをやめ、農地、里山の役割をとりいれた都市政策を確立し、農地税制を抜本的に転換して、都市計画における農地・農業の位置づけを明確にする必要があります。こうした取り組みを支えるためにも、一刻も早く「都市農業振興法」(仮称)の制定が求められます。都議会でも意見書を決議しました。都としても、国に、同法の制定を求めてはどうですか。
わが党は、2008年第1回定例会で、大阪府の都市農業振興条例、都内の農業振興条例の特徴を例示して、その制定を求めましたが、都は「『東京農業振興プラン』を策定し、さまざまな農業施策を展開」しているとし、条例制定の予定がないとのことでした。
Q 農業施策を都政の柱にしっかり位置づけた都市農業振興条例が制定されれば、予算の確保、各部局の施策も条例との整合性が求められるなど、オール都庁として各施策が農業振興と有機的、多面的な結びつきをもち、充実していくことになると思いますがどうですか。都としても、農業者、消費者、商業者、農業ボランティアなど、広く都民参加で条例制定に向けた取り組みに踏み出してはいかがですか。
都市農地の減少の主な要因になっているのが、「農産物の価格は値下がりする一方なのに、固定資産税の負担が重くて農業が続けられない」、「代がわりの相続税で、農地を売り、面積が半分になった」などの声にあるように、相続にともない重くのしかかる納税負担の問題です。
都市の農業と農地の保全を実効あるものにするためには、国の制度として農地への固定資産税、相続税の負担軽減が不可欠です。
Q 都としては、国の税制度の改定を待つのではなく、都市の農地が果たしている、緑の環境や酸素の供給、防災機能など、都市生活に欠かせない多面的な役割を重視し、農家へ何らかの支援をすることは都市農地の減少に止めることに一定の効果を発揮することになるとは思いませんか。
都内の農地・約8000haの約60%が市街化区域の農地で、市街化区域以外の農地が40%です。市街化区域の農地では、生産緑地が3/4、宅地化農地が1/4です。この10年で、生産緑地は約1割減少、宅地化農地は半減してしまっています。このように生産緑地制度が都市農業の継続に、大きな支えになっています。
しかし、その生産緑地でさえも、この5年間で220haも減少していまっています。その多くは、相続のために農地を失わざるを得なかったケースです。
たとえば、わが党の調査によれば、2003年度から2007年度までの5年間に、農業者からの生産緑地の買い取り申請数は、1,847件ありました。その内、農業者等に売却されたものは2件、自治体が買い取ったものは84件で、引きつづき生産緑地として維持されたものは、5%に満たないというものです。結局は、そのほとんどが民間に売却され開発されていっています。
買取り申請された生産緑地を、公共用地として自治体が買い取る場合には、買い取り申請した農業者には譲渡所得控除もあり、緑地として引き続き維持されるのはもちろん、土地所有者にとってもメリットになると思います。
Q わが党が2008年第1回定例会で、地元自治体と連携して生産緑地を買い取る制度をつくって、公立の農業公園というようなものをつくるよう提案しましたが、「現行の制度のままで、適正な運用をしている」と、区市への支援などを考えていないことを答弁しました。これでは、都として目の前から農地が減少していることを見過ごしているも同然ではないですか。繰り返しますが、農業者からの買い取り申請にたいして、自治体が買い取っているケースは、5%にもなりません。財政的な支援は欠かせないと思いませんか。なぜ、支援しないのですか。
A 相続等のために耕作を続けることが困難となった生産緑地の買取りにっいては、生産緑地法第1!条に基づき、区市長の責任で対応することとなっており、都が支援することは考えていません。
Q 今年度、市長会からは買い取り申請があった「土地を買い取ることは、市の財政にとって容易なことではない」ため「生産緑地地区の買い取り申し出があった場合、市が公共用地として速やかに買い取ることができるよう」財政支援措置制度の創設を要望しています。市町村会の要望に応えないのですか。
A 買取申出のあった生産緑地について、公園や道路などの公共施設の設置が予定されている場合には、区市町村など当該公共施設の事業者が、国や都の各種補助制度を活用して買い取るべきものと考えます。 なお、公共施設の設置が予定されていない生産緑地の買取りについては、生産緑地法第11条に基づき、区市長の責任で対応することとなっており、都が支援することは考えていません。
Q 民間に売却されてしまった場合でも、現在の経済状況から、活用されずに農地に近いままになっているケースも少なくないとのことです。こうした土地については、農地として活用する希望者に、再あっせんする仕組みは考えられませんか。
A 民間の所有地については、所有者が農地として活用を希望しない限り、都としては、あっせんに向けた協力はできません。
Q 都として、そうした土地について農地・緑地として活用する、あるいは地元自治体が農地・緑地として活用する場合に何らかの財政的な支援をする、そうした新たな施策も貴重な緑地を保全するうえで有効だと思いますが、どうですか。
A 民間に売却された土地は、所有者が農地として活用する意思が無い限り、自治体等による農地・緑地としての活用は考えられません。
Q 納税として物納するケースもあります。その場合、民間に売却できなかった場合が多いだけに財務省が所有したままで遊休農地的になっているケースの場合もあります。都として国に無償貸与を求めるなど、農地・緑地として積極的に活用する施策を検討したらどうですか。
A 現在、国では、物納された土地は早期の処分を前提としていると聞いています。
Q 区市町村が引き続き農地・緑地として活用する場合には、都として支援する仕組みをつくったらどうですか。
A 現在、国では、物納された土地は早期の処分を前提としており、区市町村が引き続き農地として活用することは難しいと考えます。
都市政策を転換し、東京のまちづくりに農地、農業の位置づけることが必要です。産業労働局でも、「農業・農地を活かしたまちづくりガイドライン」をつくり、区市町村がモデル事業をつくった場合に、4年間に1億円の財政支援をする仕組みになっています。現在、6自治体が活用しています。
ある自治体では、市民と農業者との交流の場、食育の場などに活用したり、農家の高齢化にボランティアを育成、派遣する事業に活用するなど期待がたかまっています。
Q この事業を進めて、すでに3年目に入っていますが、金額と支援自治体数を広げることは、各地の農業振興に役立つと思いますが、どうですか。
Q 今年度から始まったパワーアップ事業ですが、まだ詳しい要項が決まっていないということで、区市町村では困っています。以前の魅力ある都市農業育成事業で計画を立てていた自治体からは、パワーアップ事業の適用事業数・支援額で従来の制度から後退しないようにしてほしいとの要望の声が上がっています。どうですか。
A 「都市農業経営パワーアップ事業」は、区市町や農業者団体などから様々な意見を聴いた上で創設した事業であり、従来の事業に比べ、事業内容を充実し、事業費を拡充しています。なお、要綱については既に策定しています。
Q 有機農業は、始めたからといってすぐにうまくいくわけではありません。試行錯誤を繰り返すことになる。有機農業については、軌道にのるまで、一定の助成するよう求めますが、どうですか。
A 都は、平成2!年3月に「東京都有機農業推進計画」を策定し、有機農業に自主的に取り組む生産者に対し、技術や経営の指導を実施しています。
Q 現在、都はボランティア育成事業をやっています。ボランティアの方々は各自治体にいらっしゃいます。一方、地元の農業者は、区市町村の方が実情を良く把握しています。農家と、ボランティアのマッチング事業は、都の役割が重要ではありませんか。
A 都は、これまでも農地と担い手のマッチングを実施し、農地の保全・活用と様々な担い手の確保を図っています。なお、ボランティアのマッチングは、地域の実情を良く知る区市町村の役割が重要です。
Q 都内の酪農家の方のなかには、乳質の良さをいかした低温殺菌牛乳を出荷している方もおります。しかし、出荷までのコストが高く、販路拡大にご苦労されております。酪農家むけの販路開拓支援事業を立ち上げることは、東京の酪農の発展のために有効だと思いますが、どうですか。
A 都は、酪農家が製造販売している牛乳について、都や関係団体のホームページの活用や、各種イベントを通じたPRの実施により、広く情報を発信するとともに、加工施設や直売施設の整備に助成するなど、販路の拡大を支援しています。
Q 島しょ地域における農業業振興策として、試験研究機関、中小業者と連携して あしたば、つばき油などの島の特産品をいかした製品づくりに取り組んではどうですか。特産品などの販売促進について、都として支援策を抜本的に強めてほしいと思いますがいかがですか。
A 都は、あしたばやサツマイモなどの島の特産品を活かした製晶づくりに関して、食品技術センター等による技術支援を行うとともに、加工施設や流通施設の整備については、地元町村や農業者団体の要望に基づき支援を行っています。 また、販売促進に向けては、都が日常的にホームページでPRするとともに、イベントなどの場を活用し、支援を行っています。
次に、林業振興についてです。
日本の木材消費量は年間8000万m3、一方樹木の成長は毎年8000万m3で、国産材利用を拡大できる木材の量は、国内に十分あります。
ところが、外需依存の木材利用によって、国産材利用は24%にとどまっています。外材依存から、国産材利用を促進するしくみをつくれば、第1次産業の振興によって、地域経済も、林業も活性化につながります。
石原知事も、「森づくり森林プラン」で、「木材の輸入自由化などの影響により林業が衰退し、伐採、利用、植栽、保育という森林の循環が途絶えて東京の森林は長年にわたり放置されて荒廃が進んでいる」と述べています。
国産材利用を拡大できるような仕組みづくりを、国に求めると同時に、都としても努力することが必要です。
都も、森林整備や木材生産の基盤となる作業道の充実に、都としても工夫して取り組んでいますが、東京の林業振興にむけ、何点か提案します。
Q 都内の森林は、急峻なところにあるため、森林の伐採、搬出までにコストがかかることが大きな課題になっています。急峻なところでも、どうしたら地場産材の切り出し、運搬コストを低減できるか、都内の中小業者に、現場を見てもらい、森林業者と連携して生産工具の開発、加工施設の開発などの委託研究をすることも、林業者を励ますことにもなると思いますがどうですか。それは、中小業者への仕事確保にもなるのではないですか。
A 都は、既に林業コストの改善について、高性能林業機械の導入や林道等の基盤整備に加え、集約モデル地区整備などを行う「森林循環再生プロジェクト事業」等により、様々な面からコスト削減に取り組んでいます。
Q 一部木材の加工について、生産技術研究所と連携して、多摩産材を活用した新しい製品の開発を手がけていると聞いています。多摩産材活用を拡大するうえ上で、木材の価格以外に、どのような課題があるのか、広く建設業者、実際に使った消費者などからの意見を求めることも、今後に生きる取り組みにはなりませんか。
A 都は、既に工務店、生活協同組合などが参加する「東京の木・いえづくり協議会」や木材関連団体と共催する「木と暮らしのふれあい展」などにおいて、様々な方面から意見を聴き、多摩産材の利用拡大に取り組んでいます。
都では、早くから木材利用推進協議会をつくり、公共建築物だけでなくガードレールなどへの活用も進めてきました。また、多摩産材を区市町村が活用する際に、助成をしていますが、活用木材量はなかなか増えていません。より公共部門での活用拡大をするために、供給体制の整備と品質の安定なども課題になっていると聞いています。
Q 公共施設の改修、新規整備・建設の際に、積極的に多摩産材を活用することは重要です。今の供給量約1800m3という量も限界に近い数字なのですか、供給体制の整備と品質の安定など課題があったとしても、車の両輪として、積極的に活用量を増やしていくことはできないのですか。
A 都は、既に庁内における多摩産材の利用拡大について、各局で構成する会議を設置し、都立学校や都営住宅の工事に用いるなど、全庁を挙げて取り組んでいます。また、区市町村に対しても積極的に働きかけています。
Q 公共施設の改修、新規整備・建設の契約に際し、多摩産材を活用する仕組みをつくることは多摩産材の活用に有効ではありませんか。
A 都は、既に平成18年に「東京都多摩産材利用推進方針」を策定し、全庁的に公共施設などでの利用拡大を図っています。
Q 地域の「公共財」と言われる商店街などで、ベンチを設置したり、空き店舗の改修、各店のリフォームなどに多摩産材を活用する場合に、その活用ノウハウの情報提供、活用ルート、活用の仕組みをつくること、助成制度をつくることなども利用拡大を進めることになると思いますが、どうですか。
A 都は、既に平成20年度から広く民問からアイデアを募集し、多摩産材をPRするための提案公募型事業を実施しています。平成2i年度の実績は、施設展示型2件、普及啓発型3件でした。
以上