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二〇一〇年第三回定例会本会議討論 10月7日
たぞえ民夫(世田谷区選出)
日本共産党都議団を代表して、第148号議案、土地の信託の変更についてほか、2議案に反対する立場から討論を行います。
まず第148号議案です。
土地信託事業は、貴重な都有地を信託銀行に提供して、不動産事業に乗り出すことにより、家賃収入からのもうけをあげることを期待したものでした。その典型が新宿モノリスビルで、新宿副都心の都有地に建設された地上三十階地下三階の建物が、まるごと貸しビルです。
今回の議案は、新宿モノリスの土地信託が二十年間の満期をむかえるにあたり、五年間、契約を延長するものです。都は「安定した収入を確保してきた」と言いますが、毎年およそ百二十億円の配当が都に入るとされていたにもかかわらず、この十年間の平均配当は、年間十五億円にすぎません。信託銀行にとっても期待はずれの結果で、今回の契約更新に応じたのは「みずほ」だけで、あとの二行は辞退して撤退することになりました。
今後満期をむかえる土地信託事業は、さらに惨たんたる状況です。
両国シティコアの配当は年間わずか五百万円、健康プラザは千六百万円、コスモス青山は千五百万円にすぎません。一方、健康プラザに入っている東京都保健医療公社の大久保病院だけで、年間二十億円もの家賃を信託銀行に払っています。もともと都有地ですから、土地信託でなければ、家賃を払う必要はないのです。
しかも、これらの三カ所では、受託した信託銀行が建物を建設した際の借入金を完済できていません。合計百七十一億円もの借金残高があり、巨額の負債をかかえたまま満期をむかえ都に引き継がれる可能性のあることが、委員会質疑で明らかになりました。
いま東京都がすべきことは、土地信託事業の失敗の全面的総括と反省を明確にし、貴重な都有地は都民のために使うという自治体本来のあり方に立ち返ることであります。この立場から、本議案に反対するものです。
本定例会は、熱中症で多くの高齢者が命をなくし、高齢者の所在不明も大きな社会問題となり、若者の就職難など雇用の深刻な実態が広がる中で開かれました。日本共産党都議団は、貧困と格差を拡大し、社会保障の切り下げを進めてきた国と石原都政に重大な責任があることを明らかにし、いまこそ都政のかじを切りかえて、都民の暮らし、福祉、雇用を守るため全力をつくすことを求めました。
たとえば、高齢者一人あたりの老人福祉費を普通会計決算で九九年度なみにもどすと千四百億円の増額となり、思い切った施策の充実ができることをしめしました。ところが東京都は、高齢者一人あたりの老人福祉費が大幅に減っている事実は否定できないにもかかわらず、介護保険制度導入など制度変更があったので、高齢者一人あたりの老人福祉費を問題にするのは意味がないなどと答弁しました。とんでもない話です。
全国どこの都道府県も介護保険導入など制度変更の影響を受けています。しかし、全国共通の指標で集計されていて比較可能な普通会計決算でみれば、東京都のように、九九年度から二〇〇八年度の間に、高齢者一人あたりの老人福祉費を四割も減らしたところは、ただのひとつもありません。逆にほとんどの県がふやしており、なかには五割、六割とふやしている県もあるのです。
今後、東京では高齢者が急増します。一方、特別養護老人ホームなどの施設は大幅に不足しています。高齢者の貧困と孤立もひろがっています。高齢者福祉の拡充は東京都が直面している緊急の課題であることを直視し、予算の大幅増額に踏み出すことを、あらためてつよく求めておくものです。
雇用創出についても、知事は「国がやるべきこと」とし、積極的に取り組む姿勢を示しませんでした。しかし、都が独自にでもやるべきこと、できることは、あるのです。
わが党は代表質問で、福祉の充実とセットで雇用を広げることを提起し、認可保育所の増設などを例にあげました。定員百人の認可保育所を百五十か所整備すれば、一万五千人の待機児を受け入れることができ、保育士など約四千人の新たな雇用が創出されます。子育て中の人たちの就労支援に直結し、地域の建設業者や商店も潤います。一石四鳥ともいえる、これこそまさに、自治体がおこなうべき「経済成長戦略」です。知事、改めて真摯な検討を求めるものです。
また、都がみずからのエリを正すべき問題として、正規職員を削減する一方で、多くの非正規職員、とりわけ臨時職員を、不安定な身分と不当に低い給与で働かせ、いわゆる官製ワーキングプアを都がつくりだしていることを指摘し、是正を求めました。
この問題の根本は、都政を日常的に支えている恒常的な業務の働き手たちを、不安定で屈辱的な雇用・労働条件のもとに置いていいのか、という問題です。
わが党は、ある都の施設の図書室のただ一人の司書でありながら、二十年以上も臨時職員の身分のままにおかれてきた女性の実例を示しました。彼女は都の要綱に従って、基本的に二カ月ごとの雇用更新のたびに、「雇用期間が終了したときは異議なく退職することを承諾します」と約束する「承諾書」を書かされ、五カ月勤務しては一カ月失業という働き方を続けさせられてきました。
この「一カ月の失業」期間中、職場の机の上には、彼女の処理を待つ書籍や文書が、山のように積み上げられたと言います。一カ月後に出勤してきた彼女は、悔しさに耐えながら、それでも自分の仕事に使命感を持って、業務を再開しつづけてきたのです。
つまり、この施設では、一カ月の失業は都の都合による中断にすぎず、彼女が長期に継続して仕事をすることが必要とされ、また当たり前のこととされてきたのです。このような業務が「短期的または季節的な業務」といえるでしょうか。労働問題に詳しい法律の専門家は、都のやり方を「きわめて悪質だ」と、きびしく批判しています。
同様の例は他にもあります。ある局では、二つの業務に、二人の臨時職員を二カ月交代で働かせることで、それぞれの業務が途切れないようにしています。これは、これらの業務が恒常的な業務であることの証拠です。しかも、この人たちの給与は、社会保険も適用除外。国保料などを差し引けば月十万円ほどしか残らず、まさにワーキングプアです。
にもかかわらず、都が、事実については何も答えず、〃臨時職員として任用した以上は、短期または季節的な職なのだ〃という答弁をくりかえし、是正するつもりはないと居直っていることは、断じて許せません。
都がこのような態度のままで、使い捨て労働が横行する東京の雇用全体の状況を改善することができるでしょうか。官製ワーキングプアをつくりだしていることを深く反省し、みずからの足元の実態をつかんで、ただちに待遇改善をはかるよう、つよく求めるものです。
本定例会に、特別支援教育推進計画第三次実施計画案の骨子が報告されました。児童生徒増で、新たに約三千四百人分も施設整備が必要であるにもかかわらず、学校の数をこれまでの五十五校のままふやさず、大規模化等で対応しようとしていることは、きわめて重大です。
いまでも特別支援学校は教室不足で、音楽室や図書室を普通教室に転用したうえ、ひとつの教室をカーテンや間仕切りで仕切って使い、隣の授業の声が筒抜けといった、深刻な実態におかれています。障害児の教育権の保障にむけ、学習環境の抜本的改善を求める保護者や関係者、都民の要望を反映した第三次計画をつくることを、きびしく要求するものです。
第149号議案は、都立池袋商業高校を廃止した跡の建物をフランス政府に売却するものです。
日本に居住・滞在している外国人子弟の教育保障は重要です。同時に、石原都政が都立高校統廃合を強行した結果、都立高校が不足し、各学校の定員をふやしてしのいでいる状況です。定時制高校では三百人をこえる不合格者を出しています。特別支援学校の増設も緊急課題です。こうした事態のもとで、池袋商業高校をはじめ統廃合で廃止された都立高校の跡地、建物は、都立高校などの整備に使ってほしいという要望がよせられているではありませんか。この都民の要望を尊重することも重要であり、安易な対応を認めることはできません。
今議会において、多摩地域で遅れている小中学校へのクーラー設置について、調査の分析結果をふまえて検討すると答弁されたことは重要です。市町村への財政的支援など、ただちに実施に踏み出すよう強く要望するものです。
最後に、今議会で最大の焦点になった築地市場の現在地再整備・移転問題については、特別委員会の閉会中の継続調査に関する討論で、わが党の見解を表明することを申し述べて、討論を終わります。
以上