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文書質問趣意書

2010年10月5日
かち佳代子(大田区選出)

大田市場における水産部門の活性化について

 国民に安心・安定した、食の供給を提供している中央卸売市場・地方卸売市場の役割は、重要です。
 今日、その卸売市場をめぐる環境は、相次ぐ規制緩和のもとで大きく変化をしております。輸入農産物の増加、出荷団体の大型化、大型量販店の進出で、市場外取引が増加すると同時に、卸売市場に入った荷も、相対取引、先取りによって、コンスタントに大量に購入するところに優先的に荷がまわるようになりました。その結果、量販店には良いものが安くいきわたる一方、荷が少なく相対取引、先取りができない小さな小売店は、高く仕入れざるを得ない仕組みになってきています。このことが重大な原因となって、商店街の生鮮小売店は減少し、仲卸業など市場関係業者は厳しい経営状況においこまれています。 
 本年9月初旬、わたしは大田市場水産部のエリアを訪ねました。
 この市場は、1988〜9年に第3次卸売市場整備計画に基づき、青果・水産物・花きを取り扱う総合市場として、開始され今日に至っています。都内に11ある市場のなかで、もっとも広い敷地面積をもつ市場であり、当初の計画では、取扱規模は、青果部3000t/日、水産部300t/日、花き125万本(その後245万本に変更)を目標としたものです。
 広い敷地の奥に、「潮どおり」という水産仲卸のエリアがありましたが、目立つのは、スチール柵で囲い、鍵がかかった廃業した店の跡です。なかには、店舗エリア内に夜逃げ同然のように、空き箱などが無造作に山積みされているところもありました。開場当時93軒あった店が、いまは47軒に半減しているため、灯りもまばらで、全体が衰退の体をいなめません。
 現在営業している人からも、「いつやめるかを思いあぐねている。廃業するにも、300万円は必要だ。やめるにやめられない」と悲痛な訴えを聞きました。
 実際、大田市場の取扱実績は、青果で3305tを維持し、花きは319万本と目標を大きく上回る一方、水産はわずか48t(H21年度実績)です。この20年余の経過のなかでは、消費者嗜好の変化や、スーパーなどの直接取引、経済動向が大きく影響してはいますが、水産部の目標300tに対し、最高時の取扱で145tあったものが、現在は48t(平成21年度実績)であり、目標の16%、最高時の3割まで減少しており、あまりにひどい状況です。
Q1. 都は大田市場における水産部門のこの実態をどのように認識しているのですか。当初の目標設定に対し、都はどのような取り組みをしてきたのですか。

A1. 大田市場は、城南地域における地元市場として整備するとともに、都心部に立地する築地・神田両市場の過密化を解消し、青果物、水産物及び花きを取り扱う総合市場との位置づけで、神田及び荏原(青果)並びに大森(水産)の各市場を廃止して整備されました。そのため、大田市場における水産物部の取扱量は、地元区並びに神田、荏原及び大森各市場の要望を考慮し、大田区、品川区及び周辺地域の需要量を算定して決定されたものです。
 大田市場における水産物部の取扱量は、平成3年の日量145トンが最高であり、特に近年は取扱量が大きく落ち込んでいます。全国的な傾向として、量販店と産地との直接取引や、商社等による輸入品の取扱等が増加したことで水産物の市場経由率の低下が見られますが、都の中央卸売市場においても例外ではなく、その水産物部の取扱量は全体的に減少傾向にあります。加えて、大田市場における有力な仲卸業者・売買参加者がここ数年のうちに相次いで廃業・撤退をしました。これらのことが主な原因であると認識しています。これらの状況に対しては、低温卸売場(マグロ売場)の整備、卸売場におけるコンテナ冷蔵庫の整備、仲卸業者の受入等、品質管理の高度化や取引の活性化を図るための取組を行ってきています。

 これまで都は、第5次卸売市場整備計画では、「仲卸100店舗体制の確立が遅れたことや、交通事情などから、現在においても、取扱量は、当初の計画取扱量を大きく下回っている状況にある。このため、市場活性化の方策について検討していく」としていました。ところが、第6次卸売市場整備計画では、大田市場の水産についての記述が皆無です。
Q2 現在の実態にたいし、都は市場業者が安定的に営業し、小売業者に良い食品を安く提供できるようにしていくため、どのように具体的な対策をすすめていくのですか。

A2. 卸売業者や仲卸業者等の市場業者が小売業者に良い品を提供していくためには、自らの経営を安定化し、健全な営業を確保することが不可欠であでると考えています。
 そこで、都は、市場業者の経営基盤を強化し、健全な営業を確保できるよう、市場取引に精通した公認会計士と・ともに、きめ細かな財務検査や個々の事業者の経営状況や事情に応じた経営改善指導を行っています。
 また、仲卸業者に対する公認会計士など専門家による経営相談窓口の設置や、市場業者の団体等が新規の事業展開を行う場合の経費補助制度の創設等、市場業者の経営基盤の強化に向けた様々な支援を行っています。

 水産部門では、大型の冷蔵施設が必要であり、その維持費・ランニングコストがかかります。また、廃棄物処理においても、大量の発砲スチロールなどリサイクル費用等が発生します。そこで働く仲卸業者の方に、お聞きしますと、業者が半減、売上は10分の1になる一方、廃棄物がそれほど減っていないので、業者間で、費用分担しているが、それが重いと訴えられました。
 廃棄物が減らない理由のなかには、24時間対応の市場では、量販店の保冷車などが、常時出入りをしており、その際、不法に置いていく状況もあるようです。
 生ものを扱う水産部門では、とりわけ、衛生管理が求められるわけですが、空きスペースが増え、夜逃げのような状況で、居なくなった業者の店舗後を放置していれば、ねずみやゴキブリの発生源ともなりかねません。
Q3. 市場管理者として、こうした状況をただちに改善すべきですが、どうですか。

A3. 事業活動に伴って生じた廃棄物は、法令の規定に基づき、事業者処理責任の原則により、自らの責任において適正に処理することとされています。
 中央卸売市場における事業者についても例外ではなく、発生した廃棄物について、食品リサイクル法、容器包装リサイクル法等の規定に基づくリサイクルを含め、引き続きその適正な処理をお願いしています。
 なお、市場内の道路や広場など都が管理者として負担すべき対象から発生する廃棄物(不法投棄分を含む。)については、都は、一般廃棄物や発泡スチロール廃棄物等の処理費用のうち一定の費用を負担しています。
 また、不法投棄については、監視カメラの設置や市場協会と協力した巡回の実施等を行い、その防止に取り組んでいます。空き店舗スペースの衛生管理については、必要に応じて水産棟全体の一斉清掃及び消毒を市場業界とともに行うなど、衛生の保持に努めています。

 水産卸売業は、営業上量販店へ直接出す傾向にある上、水産部の取引が減少するなか、場内の空きスペースには大型量販店の輸送車が何台も駐車していたり、青果部の荷置き場になっていたりという状況が生まれています。これでは、小売店・料理屋さんにとって、ますます使いにくい市場になってしまい、仲卸業者へのお客さんは減少してしまいます。
Q4 大田市場における水産部門の活性化をとりもどすための、量販店と小売店等にそれぞれ荷が公正・公平にまわるようにするために対策が必要と考えますが、どうですか。

A4. 都は、小規模な小売店から量販店まで様々な業態の買出人が公正、公平に荷を確保し、流通において適切に役割を果たすことが、地域における生鮮食料品の円滑な流通を担う上で重要であると認識しています。
 そこで都は、量販店だけでなく中小小売店にも公正かつ効率的な売買取引の機会が確保できるよう、条例に基づく取引の監視、指導を行っています。
 さらに、小売代表も含めた市場取引委員会を設置し、公正取引のルールを遵守するための意見交換や、業界取引委員らによる現場監視等、業界と共同して継続的な取組を行うことで、入荷量が少なく人気のある商品が中小小売店にも手に入るように十分に配慮しています。

 現在、東京中央卸売市場としては、11市場のうち、水産を主体とした築地市場と、城東地域の中核を担う水産のみの足立市場、そして、城南地域の総合市場としての大田市場のみが、水産部を受け持っています。地域経済を考えても、また、大田市場が総合市場としての役割をはたすためにも、青果・花きとともに、水産部門を、今後も機能させ、維持継続できることが重要です
 しかし、取扱量が108t/日の足立市場における冷蔵庫施設は、5490.2uに対し、取扱量48t/日の大田市場の水産部の冷蔵庫設備は7629.6u。低温卸売場の面積も、足立市場が814.8uに対し、大田市場水産部では943.2uと、実績以上に過大な施設設備となっています。
Q5 仲卸業者の市場使用料負担は、面積割の使用料が全体の90%を占め、売上が減少するなか、ますます重くなっています。仲卸の市場使用料負担に対し、軽減措置など都としての支援が、もとめられますが、どうですか。

A5. 中央卸売市場会計は、地方公営企業法の財務規定等を適用し、取引業務の指導監督に要する経費など行政的経費を除き、市場使用料等の企業収入により独立採算制を原則として運営しています。
 この市場使用料については、東京都中央卸売市場条例で規定しており、その減免についても、使用者の責めに帰すことができない理由により市場施設を一定期間使用できない場合など、同条例において限定的に定めています。
 都としては、使用料の減免については、公平性などの観点から条例に基づく適正な運用を図っており、仲卸業者の経営悪化を理由とした軽減措置は行っておりません。

Q6 大田市場の将来構想として、現在の整備計画では、築地市場の再編後の影響を評価し、あり方を検討するとのことですが、現状では、とてもそれまで、持ちこたえられず、大田市場水産部門は崩壊の危機に直面しかねません。独自対策を緊急にとるべきとおもいますがどうですか。

A6  大田市場における水産物部は、平成元年9月の開場以来、水産物の円滑な供給を通じ、城南地域における地元市場としてその需要に貢献するという役割を果たしてきました。また、その取引を活性化させていくため、これまで、低温卸売場(マグロ売場)の整備、卸売場におけるコンテナ冷蔵庫の整備、仲卸業者の受入等、各種の対策を講じてきました。
 都は、引き続き、大田市場における水産物部の状況を踏まえ、市場関係業者とも協議し、適切な対応を検討していきます。

Q7 もう廃業するしかないと決めている仲卸業者の方々もおります。これから年度末決算を控え、現在の借入融資について、返済期間を据え置くことや、新たな、低利あるいは無利子融資などの措置をとりながら、市場開設者としても、市場を活性化する目標をもって、継続的に取り組むことが重要と考えますが、どうですか。

A7  都は、市場業者の経営基盤を強化し、経営の活性化、事業再生を図るために、公認会計士、中小企業診断士などの市場に精通した専門家による経営相談窓口を設置しています。
 そこでは、相談者の経営実態や問題点を把握した上で、借入金返済に苦しむ仲卸業者も含めた、経営不振の事業者に利用可能な公的融資制度を紹介するほか、個々の事情に応じた経営改善の方向性を示すなど、可能な限り、有用なアドバイスや情報提供を行っています。
 また、相談窓口の設置に加えて、経営状況が悪化している仲卸業者に対して、きめ細やかな財務検査や経営改善指導を実施しており、その中でも公的融資制度の紹介や専門的助言等の取組を行っています。

Q8 羽田空港の再国際化にともない、貨物ターミナルには大型冷蔵倉庫が新設され、冷凍マグロなど空輸されるようになると聞いています。立地条件からしても、大田市場を活用されるように積極的に支援することは、市場の活性化はもとより、環境の面でも、鮮度からいっても、大変有効であると思いますがどうですか。

A8. 羽田空港の国際化については大田市場も含めた周辺地域の物流に少なからぬ影響を与えると予想されます。
 現在、大田市場における航空便を活用した荷の搬出入の実績は少なく、市場業者は今後の動向を見ながら判断していくとの意向であり、新たな需要が生じた場合の対応については、適宜検討していきたいと考えています。

Q9 大田市場の水産部門には、空きスペースが多くできています。一般住民が、激しく荷の動く中でも安心して、自由に見学できるようなコースをつくり、セリの様子をみることができるようにすること。模型などによる魚の名前、生態紹介、マグロの部位紹介、医学的効用など、魚介類の展示紹介コーナーをつくることは、魚介類の消費促進にもつながると思いますが、どうですか。

A9. 開かれた市場という観点から、市場に多くの方が訪れ、市場の役割を理解したり生鮮食料品等に関する知識を深めていただくことは、望ましいことであると考えています。
 現在、大田市場には既に見学者専用の通路が整備され、また、食材に関する知識の普及啓発のために、展示室において魚介類に関する解説パネルを掲示し、見学者への案内も行っています。こうした取組などにより、大田市場には多くの見学者が訪れており、平成21年における見学者数は約27,000人に上っています。
 なお、空きスペースを活用した見学対応については、市場業務の妨げとならず、かっ生鮮食料品の衛生面や見学者の安全にも配慮する必要があることから、課題が多いと認識しています。引き続き、都としては、より魅力的な市場見学の実現を図っていきたいと考えています。

Q10 市場によっては、料理教室ができる施設整備をして、市場主催の料理教室を住民に募集案内をしたり、住民が独自に利用できるようにしたりして、喜ばれています。大田市場でも同様の取り組みをしたらどうですか。また、市場周辺地域の学校、病院、企業などの食堂に、市場経由の生鮮食品を納入できるようにするなどの取り組み、開かれた大田市場・使いやすい大田市場をアピールするなど、抜本的改善策をもとめるものですが、見解を求めます。

A10  中央卸売市場では、市場機能の理解促進や生鮮食料品に関する知識の普及啓発のために、市場見学案内や食育事業などを通して、広報活動を行っています。
 大田市場では、場内に見学者専用通路を整備し、せり台などの要所に市場活動を解説した説明表示を設け、見学者が自由に見学しながら市場の役割を学べる環境を整えています。また、近隣住民を対象とした「魚のさばき方教室」を毎年実施しており、実際に魚に触れ、さばくなどの調理体験は、参加者に好評です。
 今後も、市場業界との連携を図りつつ、「魚のさばき方教室」を継続して実施していくとともに、見学案内について市場のホームページでより分かりやすく紹介するなど、開かれた市場という観点から大田市場に関する広報の充実に努めていきます。.
 なお、調理設備を備えた施設の整備については、衛生確保の観点や市場業界との調整を踏まえながら、慎重に検討していく必要があると考えています。

以上