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文書質問趣意書

2010年12月13日
大島よしえ(足立区選出)

1、都市づくりのあり方について

 石原知事は、就任以来、「国際都市間競争に勝つために、国際ビジネスセンターとして再生する」「東京が繁栄すれば日本は再生する」と言って、内外の大企業を東京に集中させるための規制緩和と、基盤整備を最重点にとりくんできました。その結果、投資型経費は毎年バブル前の2倍、1兆円規模を投入してきました。
 日本の売上高トップ100の企業のうち、9割の本社機能を集中させ、高さ100メートルをこえる巨大な超高層ビルを220棟も乱立させました。さらに、オリンピック招致の名で環状高速道路を一気に3本もつくる、1b1億円も外環道建設にかける、船舶の大型化に対応するコンテナターミナルの整備を強引に進めるなど、こんな極端な一極集中政策をとっている国は、世界では他にはありません。
 超高層ビルと人口、自動車などの集中によって、今、東京の都市機能はパンク寸前におかれています。このまま東京集中策を進めれば、都市に住む人々を追い出し、東京が巨大な金融などのビジネス都市に変貌することは明らかではないですか。

Q1いったい、いつまでこのようなやり方で税金の過剰投資を続けるのですか。間違った予算の使い方を見直すべきです。見解を伺います。

A1 東京外かく環状道路をはじめとする都市インフラの整備は、渋滞の解消など都民の利便性の向上だけでなく、国際競争力を高め、東京の活力を維持する上で不可欠な取組であることから、着実に進めていく必要があるものと考えています。  都は、これまでも、こうした取組に加え、雇用や生活への不安に対応する取組など、都民にとって必要な施策に対して的確に財源を振り向けており、都民の期待に十分応えているものと考えています。  今後とも、引き続き、都政に課せられた使命をしっかりと果たしていきます。

Q2 東京に投資を集中すれば、日本の経済が良くなるなどと言う傲慢で間違った考えを改めるべきです。過度な集中による事務所コストや生活コストの増大、生活環境の悪化を防ぐことはできません。東京では超高層ビルの多くが、長周期地震動による大きな揺れや破壊力、活断層型の直下型地震を想定せずにつくられています。超過密の通勤電車などもふくめ、災害危険度は増大する一方です。一極集中による大都市の深刻な環境悪化などのリスクをどのように解決しようとしているのか伺います。

A2 東京が今後とも都市としての繁栄を続け、そこで暮らす人々が豊かで安定・充実した生活ができるようにするためには、都市づくりを通じて、業務機能の質的高度化や、商業、文化、交流などの多様な機能をコンパクトで高密度に集積させて都市活力の向上を図るとともに、インフラ整備などにより、低炭素型都市への転換や、安全・安心の確保に、積極的に取り組む必要があります。  そのため、都は、三環状道路などの骨格的な道路ネットワークの形成を推進し、都心に集中する通過交通を減少させて渋滞を緩和することにより、CO2の排出量を削減するなど、環境負荷の低減を図っています。  さらに、都心部を中心に都市再生を推進し、都市開発等の機会をとらえた最先端の省エネ技術の導入や、地区・街区単位におけるエネルギーの効率的利用を促進するとともに、街区の再編や老朽建築物の更新などにより、都市の防災性を大きく向上させています。今後とも、こうした取組を通じ、国際競争力の維持向上とともに、都市全体の環境負荷の低減や、安全・安心にも配慮した都市づくりを進めていきます。

 これらのビルの乱立は、地球温暖化やヒートアイランド現象という2つの温暖化を劇的に加速させ、都市型災害のリスクを増大させるものになっています。
 都心への過度な自動車の集中も深刻で、虎ノ門・六本木地区の再開発など港区だけで2万台を超え、排出される二酸化窒素は環境基準を超えています。環状六号線内ではCO2の環境基準達成率は33%にしかすぎません。

Q3 都内の大気汚染による気管支ぜんそく認定患者は8万人を超え、大気汚染がもたらす深刻な事態で、どうして世界で最も環境負荷の少ない都市と言えるのですか。

A3 東京の大気環境は、ディーゼル車の走行規制や工場等の固定発生源に対する規制などにより、浮遊粒子状物質については3年連続で全測定局において環境基準を達成し、二酸化窒素については、一般環境大気測定局では4年連続で環境基準達成、自動車排出ガス測定局を含めても約95%の測定局で環境基準を達成するなど、劇的に改善しています。  今後も、世界で最も環境負荷の少ない都市を目指し、更なる良好な大気環境の実現に取り組んでいきます。

Q4 5月7日行なわれた定例記者会見で石原知事は「東京に人口を含めて集中しているけど、これ以上進むことは私は歓迎しませんし、日本にとっても、東京にとってもいいことじゃない」という認識を示しました。この発言と現在都が進めている一極集中をめざす都市づくりとは、矛盾すると思うがどうか。

A4 東京は、東京圏全体で首都機能を担い、圏域内の3,400万人を超える人口や諸機能と密接なかかわりを持ちながら、活発な都市活動を展開しています。  こうした状況を踏まえ、都は、「東京の都市づくりビジョン」に基づき、広域的な視点に立って、多様な機能を集約させた拠点の形成や、拠点間の連携を強化する広域交通インフラの整備などによる「環状メガロポリス構造」の実現に取り組むとともに、都心部だけではなく、多摩においても核都市を中心に、自立した圏域の形成を図ってきました。  また、より身近な圏域においても、区部、多摩を通じて、既存の都市インフラを生かしつつ、駅など生活嗣の中心となる地域に、都市機能を一層集約した生活拠点の整備を進めています。  このような都市づくりは、人口等の一極集中を意図するものではなく、これからの東京が人口減少局面へと転じ、社会の高齢化が進む状況においても、都市機能の集約的な再配置等を通じて、高齢者を含めて誰もが暮らしやすい、コンパクトな市街地の形成を目指すものです。

2、都営住宅について

 長引く不況の中で、派遣切りや、雇止めにより、仕事や、住まいを失った方たちに、年末・年始にかけて2009年は「年越し派遣村」が、2010年は「公設派遣村」といわれた「年末年始の生活総合相談」が実施されました。職を失うと同時に住まいも失うという深刻な住宅事情が明らかになりました。

Q5 住宅マスタープランの基本方向には「住宅に困窮する都民の居住の安定確保」が掲げられ、「都民のニーズにこたえることのできる効果的な住宅政策を展開する」とかかれています。離職者に対する都営住宅の提供は、あき家住宅への応募倍率が高いため単に離職者という理由だけでは提供困難と言うことですが、宿泊所や、一時保護所などの施設も不足している中で、建替え予定の都営住宅で募集停止しているあき家住宅をこうした施設の代替として一時的な入居施設として活用することはできないか。

A5 建替えを行うため、居住者の退去後、入居を取りやめている住宅については、大規模な修繕なしに活用できるものはほとんどありません。したがって、宿泊所や一時保護所などの施設の代替として活用することは極めて困難です。

Q6 「離職に伴い住宅を喪失した者」を対象として、東京都が独自に設けている特定目的公営住宅制度を実施できないか。

A6 都営住宅は、応募倍率が高く、恒常的な空き家がないことに加え、高齢者や障害者などの入居希望者も多数います。  特定目的公営住宅制度は、路上生活者自立支援センターの退所者で自立の見込みがある場合など、一定の条件に該当する世帯を優先的に入居させるものであり、単に離職者という理由だけで、都営住宅に優先的に入居させることは極めて困難です。

 2000年度から都営住宅の新規建設が行なわれなくなったため、現在建設されているのは、建替え住宅だけです。建替え後に建設される住宅は、一人暮らし、2人暮らしの高齢者が多い入居者の現状を反映して、1DK(32u),2DK(34〜37u)等が中心の型別供給が行なわれています。そのため、子育て世代向けの住宅供給はきわめて限定されたものになっています。

Q7 1DKの部屋では、高齢者の介護ベッドを置くとその周りに家具などを置くことも出来ないし、介護や、看護に子どもたちが来ようとしても泊ることもできない。もちろん車いすで生活するのも難しいという状況になっています。
 東京都は、2010年までに誘導居住面積水準(単身者で40u)を全世帯の50%という目標を掲げています。都営住宅の居住面積も引き上げていく考えはないか。

A7 建替えで供給する住戸の面積については、都営住宅が都民共有の住宅セーフティネットであることから、入居対象世帯の人員に応じた最低居住面積水準を確保するとともに、バリアフリーなどを考慮して設定しており、1DKについて40uに拡大することは考えていません。

Q8 同規模の面積であっても、建替え後の住宅の間取りが、「ダイニングにテーブルを置くと車椅子での回転ができず通れなくなった」「ふすまで仕切られた2部屋だったのに、建替え後は、別々の2部屋になってしまった」など、使い勝手が悪いと苦情も多い。建替え後の間取りについて設計の段階で居住者の意見を取り入れることはできないのか。

A8 都営住宅の建替えに当たっては、居住者の世帯構成に応じて基準を設け、適切な間取りの住宅を供給しています。  この基準については、都において、費用対効果を勘案しながら、住みやすい間取りとなるよう設定するとともに、適宜、見直しを行っています。

Q9 団地全体が高齢化して、自治会活動も思うようにいかず、コミュニティの育成が難しくなっています。このような団地を東京都がつくっていることも問題です。将来の団地全体の活性化を視野に入れて、3DK、4DKの戸数を増やし、子育て世代が入居できるようにすることが必要ではないいか。

A9 都営住宅の建替えに当たっては、従前居住者の世帯構成に応じた住宅を適切に確保する観点に立って基準を設け、それぞれに対応する規模の住宅を供給しています。  子育て世帯に対しては、既に、若年ファミリーや多子世帯向けに、期限付き入居を実施しているほか、優遇抽選やポイント方式により、入居機会の拡大を図っています。

Q10 高齢者の新たなすまい「東京モデル」の整備のなかで、シルバー交番(仮称)の設置が予算化されています。墨田区では高齢者見守り相談室を都営文花1丁目団地の1階に設け、包括支援センターと連携して効果をあげています。板橋区のUR高島平団地では、「高島平再生プロジェクト」(みらいネット 高島平)が取り組まれ、大学が学生に家賃補助して、大東文化大の学生が高島平団地に住んで、ボランティア活動として、コミュニティカフェ・グリーンを運営し、地域の方々と大学生や教職員との出会いの場として団地居住者や、地域の方々からたいへん喜ばれています。少子高齢化の進む都営住宅や、公社住宅でもこうした活動の場を提供するなど、高齢化対策に積極的に取り組む考えはないか。

A10 見守りなど高齢者を地域で支える施策は、地域福祉の担い手である区市町村が主体となって実施すべきものと考えています。  都営住宅等においては、地元区市と連携し、地域のコミュニティ活動の拠点となる集会所、高齢者在宅サービスセンター、広場や公園などを整備しています。

Q11 高齢化が進む中で都営住宅へのエレベーター設置の要求も多い。今年度から設置基準が緩和され歓迎されていますが、設置基準に合っていても、その住棟の住民の全員同意が必要で、一人の反対者がいても設置できないのが現状です。住棟の共益費や、電気代、家賃の引き上げなどが伴うからといいますが、都営住宅の建替えのときにも、全員の同意を必要としているのか。
 また、既存住宅でのエレベーター設置の住民合意については、その理由によって柔軟に判断する必要があるのではないか。

A11 既設都営住宅においては、既にお住まいの居住者に、エレベーターの設置後、使用料の改定、保守の費用や電気代の負担が発生するため、全員の同意を求めています。  また、都営住宅の建替えに際しても、エレベーターの設置に伴う費用負担などの入居条件を説明しており、建替え後の住宅には、この条件を理解した上で居住者が入居しています。

以上