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二〇一一年都議会第二回定例会本会議 討論  六月三〇日

大島よしえ(足立区選出)

 日本共産党都議団を代表して、第一二五号議案に反対、他のすべての議案に賛成の立場から討論します。
 まず、一二五号議案です。都立産業技術研究センターは、自然エネルギー開発・放射能測定などに、これまでにも増して重要な役割を果たすものであり、西が丘や駒沢支所の廃止を前提とした、定款変更の議案には反対です。

 今定例会は、東日本大震災という未曽有の災害をふまえて、都として震災被災地・被災者への支援、住民本位の復旧、復興に全力をあげるとともに、原発からの撤退と自然エネルギーの本格的導入、都民の命と財産を守りぬく、安全、安心の防災・福祉都市をどう切り開くのかが問われました。
 その立場から、今回の補正予算を見ると、医療施設や公立小中学校の耐震化助成の拡充、被災地方の物産展示会実施、東京に避難してきている方々の上下水道料金の減免、太陽光発電への補助の復活、熱中症対策などが予算化されていることは、重要な前進です。

 しかし、予算規模は、千三百七十四億円と全会計当初予算の一%強にとどまるなど、全体としては規模も内容もきわめて不十分なものです。
 第一に被災地・被災者支援についてです。知事はわが党の質問に対し、「総力を挙げて後押ししていく」と答弁しましたが、実際はどうでしょうか。被災地・被災者支援は予算の二割ていど、事業規模では九%に過ぎず、現地から強く求められている、技術・専門職員の派遣による応急対策は五億円にすぎないのです。
被災地ではいまなお陸も海も瓦礫が片付いていません。瓦礫の撤去、炊き出しなどをはじめとした仕事は、まだまだあり、いくらでも人手がほしいと言っているのです。にもかかわらず、ボランティアの派遣は八月以降どうするかについて明らかにされていません。継続・拡充すべきです。
 こころのケアをもとめている人が多くいることに加え、孤立化を防止する対応がますます重要になってきます。保健師9人のうち6人が死亡もしくは行方不明になっている自治体もあるだけに、こうした専門職の派遣がさらに求められています。にもかかわらず、補正予算ではこころのケアチームの派遣は九月までしか計上していないのです。
 また、津波ですべてを失った被災者は、あらゆるものが不足しています。被災した町のホームページでは、今なお不足しているものとして、夏用衣類、タオルケット、洗濯洗剤、肉、野菜などを具体的に上げ、支援を求めています。にもかかわらず、都は義援物資の募集すら中止しているのです。

 東京に避難している被災者への支援はどうでしょうか。
 避難者は着の身、着のままで避難してきただけに、食費や光熱水費の負担軽減をはじめ、都がバスを提供して被災地への一時帰宅ができるようにすることなど、きめ細かな血の通った支援が求められていますが、極めて不十分です。上下水道料金の減免は九月三十日までであり、ぜひとも延長すべきです。
都が応急仮設住宅として民間賃貸住宅を借り上げ、避難者に提供することがようやく決まりました。しかし、月額家賃の限度額が四人家族で七万五千円以内とあまりにも低く、二十三区内では希望する住宅をほとんど見つけることができません。ただちに改善することが必要です。

 第二に、東京の防災対策を抜本的に強化することについてです。
 知事は「東京において防災力の向上は待ったなしの課題」だと答弁しましたが、言葉だけと言わなければなりません。
 木造住宅の耐震化は遅々として進んでいないのに、具体的な手立ては何らとられていません。分譲マンションの耐震化も同様です。横浜市では東日本大震災を受けて、今年四月から緊急措置として、木造住宅の耐震改修補助金を、百五十万円から二百二十五万円に、非課税世帯では二百二十五万円から三百万円へと七十五万円も一気に引き上げ、マンションの耐震診断に対する助成もこれまでの二分の一補助・一戸当たりの上限三万円から、三分の二補助、上限なしに引き上げています。東京都と雲泥の差ではありませんか。
 東京湾に密集する石油タンクなど危険物施設が地震と津波で炎上し、火の海になる危険があります。しかし、その防止策は、国に要望するというだけで、都として対策を講じようともしません。

 さらなる補正予算を組むこと、また来年度予算での被災地・被災者支援や防災対策の抜本的に強化することを強く求めるものです。

 被災地支援や防災対策に緊急に都の財源投入が求められているときに、知事は二〇二〇年のオリンピック招致を打ち出しました。そのために、オリンピック基金四千億円余は温存し、三環状道路建設など巨大開発は加速するというのです。
 被災県や、被災者が求める夢や希望は、一日も早い復興と安全で安心な暮らしを取り戻すことであり、そのために、いま日本が総力を挙げるときです。都民の希望も、大地震が発生しても安全な東京を一日も早くつくることだということを申し述べておくものです。

 わが党の都内全域の放射能測定と都民の声の広がりによって、都の放射線測定体制が一定の前進をしました。しかし、対策はまだまだ不十分であるにもかかわらず、さらに拡充していく立場を示そうとしませんでした。
 さらに許せないことは、都が五月の「東京都広報」で、被曝した放射線量が、年間一〇万マイクロシーベルト以下、すなわち年間一〇〇ミリシーベルト以下では、「健康に影響を及ぼすことはありません」としていることです。とんでもありません。国ですら、年間一〇〇ミリシーベルトの放射線量は「健康にただちに影響を及ぼすことはない」として、急性の症状などが出ないという言い方にとどめているのです。放射線には、これ以下は安全だという値はないというのが、国際放射線防護委員会(ICRP)をはじめとした国際的な共通認識であり、少なくとも平常時は年間一ミリシーベルト以下が限度だとされているのです。今問題になっているのは、たとえ低い放射線量であっても、被曝し続けることによる影響です。アメリカの半世紀にわたる調査では、年間五〇ミリシーベルトの被ばく量でも、がんや白血病になる確率が高くなることが統計学的に明らかになっているのです。「広報東京都」の記事はただちに訂正することを求めます。東京都は、子どもたちの命と健康を守りぬくという厳しい立場に立って、独自に対策をとるべきです。

 石原知事は、福島原発事故について、四月二十八日の定例記者会見で「想定外のことがおこった」と発言し、人災であることを否定、運転停止に追い込まれた浜岡原発は、防波堤をつくって再開すべきと発言してきました。今議会では、ようやく「原発事故は人災」と言わざるを得なくなりました。しかし、浜岡原発をはじめ原発は必要だという立場を変えようとしません。浜岡原発は、「未完成」で危険な技術だという原発の本質的問題に加え、東海大地震の予想震源域の真上にあり、一号機、二号機はすでに三十年以上経つというたいへん危険な原発なのです。防波堤をつくっただけですむものでは断じてありません。

 そもそも知事は四月一日の記者会見で、「原発のことはあまり知らない」と告白しました。実際、わが党の代表質問で、死の灰を原子炉内に閉じ込める手段を人類が手に入れていないことや、放射性廃棄物の処理の見通しもたっていない事実を示して認識を質したのに対し、知事はまともに答えられなかったではありませんか。根拠も示せずに悪ばを投げつけるのではなく、原発について、まともに勉強すべきです。その上に立って、期限を決めて原発から計画的に撤退し、原発頼みのエネルギー政策から、太陽光、水力、波力、風力、地熱、バイオマス発電など再生可能な自然エネルギーへの転換を、都が全力で進めることを強く求めるものす。

 次に中央卸売市場についてです。豊洲新市場予定地の土壌汚染対策について、都は一貫して日本環境学会などの指摘や要求にまともに答えようともしませんでした。今回の液状化についても、液状化や土壌汚染の拡散について詳細な調査すらしません。現在地再整備についても、都として英知を結集して案を作成し、豊洲新市場案とくらべるべきなのに、いまだにやろうとしません。よって、中央卸売市場築地市場の移転・再整備に関する特別委員会は継続し、さらなる審議を求めるものです。
 新銀行東京特別委員会についても、わずか二回しか議論していません。参考人質疑も含めた徹底した議論をつくす必要があり、継続を求めるものです。

 東日本大震災は、都政のあり方を根本から見直すことを求めています。都民の命、財産、安全を守る都政への転換を求め、討論を終わります。

以上