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2011年度第2回定例会 文書質問趣意書 2011年7月1日

大島よしえ(足立区選出)

1、東日本大震災・福島原発事故による都内への避難者の方々への民間賃貸住宅借り上げについて

 未曽有の被害を出した東日本大震災、そしていまだに収束の見通しすらつかない福島第1原子力発電所事故により、多くの方々が都内に避難しています。そのなかに、民間賃貸住宅を借りて生活している方々がおられます。
厚労省は、4月30日に被災3県の知事に対し、応急仮設住宅として民間賃貸住宅の借り上げの取り扱いは県外への避難者についても同様とするという通知を出し、5月8日には福島県知事から、11日には宮城県知事から、都知事あてにもこの制度活用ついての依頼書が出されていました。都は、6月20日になって、ようやく民間賃貸住宅を応急仮設住宅として借り上げることを発表しました。同時に、都営住宅については、受け入れた4月1日にさかのぼって、応急借り上げ住宅と位置付けました。

Q1  各区市町村でも、都内に避難された方々に対して、区民住宅や区立住宅、区営住宅等を提供してきましたが、こうした住宅も、都営住宅と同様に、応急仮設住宅と位置付けるよう徹底すべきではないでしょうか。

A1. 厚生労働省通知、平成23年3月25日付社援総発0325第1号「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震に係る災害救助法の弾力的運用について(その3)」により、東日本大震災による都内への避難者に対して、各区市町村の公営住宅等を応急仮設住宅として提供できることとなり、その旨、各区市町村に周知しています。

Q2 都は、応急仮設住宅として借り上げる民間賃貸住宅の家賃の上限を、東京都の家賃相場の1u当たりの金額に、応急仮設住宅の基準面積1戸当たり29.7u(9坪)をかけ、7万5000円としています。しかし、この家賃は、足立、葛飾などの一部をのぞく23区の1LDK・2K・2DK以上の間取りの部屋の家賃相場を大きく下回っています。これでは、すでに都内で民間住宅を借りて生活している方は、その家賃を上回り、今住んでいる民間賃貸住宅をそのまま応急仮設住宅に指定することは困難になるのではないでしょうか。そもそも現在民間賃貸住宅に住んでいる方は、家族の通院や子どもの学校の通学の都合から、適切な都営住宅が見つからなかったため、民間賃貸住宅への居住を継続している人が少なくありません。再び引っ越しとなればその費用も含めて大きな負担になります。都は民間賃貸住宅の家賃上限額を設定する際、すでに都内で民間賃貸住宅に生活している避難者の家賃額について調査したのでしょうか。その家賃額は、都の決めた上限額と比較し、どのような実態だったのでしょうか。

A2. 民間賃貸住宅の借上げの条件等については、被災県からの依頼に基づき、被災県及び厚生労働省と協議を行って設定したものです。家賃上限額の根拠ですが、福島県は、県内で応急仮設住宅として借り上げる民間賃貸住宅の月額家賃について60,000円を上限とし、5人以上の世帯については90,000円を限度としています。既に都内で民間賃貸住宅に生活している避難者についての調査資料はなく、東京都では、民間賃貸住宅の家賃相場の実態を考慮し、民間賃貸住宅1u当たりの平均家賃が2,500円弱であること、応急仮設住宅の標準面積が約30uであることを踏まえ、75,000円を月額家賃の上限額とし、都内の5人家族の平均家賃が約96,000円であることから、世帯構成員数が5名以上の場合は100,000円としました。なお、都内の民間賃貸住宅の半分以上が、.月額家賃75,000円以下であり、平成23年7月22日まで国が被災者に対して提供可能な民間賃貸住宅を案内していた「あんしん賃貸ネット」でも、都内で約12,000件の情報が掲載されていましたが、その6割以上が家賃月額75,000円以下となっていました。

Q3 国は、応急仮設住宅の基準面積は絶対的なものではなく、世帯人数に応じて多様なタイプを提供できるとしています。また、厚労省は、5月24日、民間賃貸住宅借り上げによる応急仮設住宅の家賃について、柔軟な対応をもとめる要請を被災3県知事に通知しています。実際、宮城県仙台市では、民間の借り上げの上限を、2、3人世帯でも2LDK8万8000円までの部屋、4人以上の世帯では3LDK8万9000円までの部屋としており、人数に応じた広い間取りで家賃相場を上回る上限金額に設定しています。都でも、民間賃貸住宅を借り上げる際の家賃上限額を引き上げて、被災者の実情に応じて、生活再建しやすい場所に、居住できるようにすべきではないでしょうか。

A3.  前間で答弁したとおりであり、家賃上限額を引き上げることは考えていません。

Q4.厚労省は、「契約が個人から県に切り替わった時点で、災害救助法の適用対象となる。その時期は自治体の判断」との考え方を示したと報道されています(河北新報6月18日付)。すでに民間賃貸住宅に入居している方々については、入居時にさかのぼって契約を切り替え、家賃を公費負担すべきではないでしょうか。岩手県は、賃貸借契約日の遡及適用を実施し、福島県は、国の動きを待たず、入居日にさかのぼって家賃を公費負担とする独自措置を設けています。福島県の例にも学び、独自措置で入居時にさかのぼって家賃を公費負担することも検討すべきだと思いますがいかがですか。それぞれおこたえください。

A4.平成23年6月の被災県との協議に基づき、契約日以降の費用について負担することとしたもので、東京都が借り上げる前の費用について、福島県は、直接、都内に避難された方々に支払うこととしています。

2、マンションの地震対策について

 都内のマンションは140万戸を超え、4世帯に1世帯はマンションに居住しています。また、マンションの高経年化が進み、10年後には築40年以上のマンションが4.5倍になるとされています。マンションの耐震化は非常に重要であり、そのための都の支援が求められています。

Q5 都のマンションの耐震改修助成制度の利用は、08年度1件、09年度3件で予算に対する執行率も1〜2%に過ぎません。居住者の合意形成と、高い負担がネックとなっているからです。東日本大震災を受けて横浜市では、今年4月から緊急措置として、マンションの耐震診断に対する補助率もこれまでの2分の1で一戸当たりの上限3万円から、3分の2補助、上限なしに引き上げています。都民の防災に対する意識が高揚している今だからこそ、マンションの耐震診断、耐震改修助成率を引き上げるべきではありませんか。

A5.マンションの耐震化促進に向けた取組については、「東京緊急対策2011」で表明したとおり、実態調査などを踏まえ、新たな実効性ある方策を検討していくこととしています。

Q6 震災により、高層マンションの居住者が避難所生活をよぎなくされれば、行政や都民の負担は大きくなります。中央区や渋谷区などは、新築高層マンションを建設する際、一定の階数に応じて防災備蓄倉庫を設置するよう義務づける制度をつくっています。都として、新築高層マンションには防災備蓄倉庫を設置するよう義務付ける制度を創設すべきではありませんか。また、既設高層マンションに防災備蓄倉庫を設置する際の補助制度をつくるべきと考えますが、いかがですか。それぞれおこたえください。

A6 高層住宅などにおける居住者用の防災備蓄倉庫については、区市が地域の状況に応じて条例や要綱を制定し、その設置を促進しています。都は、総合設計制度や再開発等促進区において、地元区市の条例等に基づき設置する場合、既に、その床面積を容積率の緩和対象としており、今後、他の都市開発諸制度においても、同様に取り扱っていくことを明らかにしています。こうした取組により、区市と連携しながら、居住者用防災備蓄倉庫の設置を促していく方針であり、設置義務化や補助制度の創設の考えはありません。

Q7 補正予算で、既存マンションの全棟調査をおこなうとされたことは重要です。その際、大規模修繕のための積立金の金額や積み立て状況の実態についても調査すべきと思いますが、いかがですか。

A7 今回の実態調査では、耐震化促進のための方策を検討していく上で必要な事項にっいて調査していくこととしています。

3、 住宅の液状化対策について

 東日本大震災による地盤の液状化は、最大規模となりました。我が党の調査では、都内7区38箇所で液状化が発生したことが確認されています。

Q8  液状化による建物被害は、6月23日現在で56棟と報告されています。都として、都内の液状化を始め、地盤沈下等の発生と被害状況及び地質の調査を全面的に実施し、公表する考えはありませんか。

A8 東日本大震災による液状化被害については、各区市町村及び各局から、平成23年6月13日現在で、7区において、公園や住宅地での噴砂や歩道部沈下、住宅の傾きなどの被害が生じたとの報告を受けており、これについては、既に同月28日の総務委員会に資料として提出しています。なお、都が管理する都市施設の主要な構造物については、今回の地震において大きな被害は認められませんでした。また、液状化が発生した箇所の近隣で、新たに地質調査を行うなどにより液状化した地盤構造を把握したうえで「液状化予測図」の見直しを行い、新たな予測図についても、これまでと同様、都のホームページや窓口での閲覧により、広く都民へ情報提供していきます。

Q9 千葉県や横浜市などいくつかの自治体では独自の制度を作って液状化被害住宅への支援に乗り出しています。江戸川区では、液状化で被災した住宅で地盤改良が必要な戸建て住宅には修復費用の3分の2、分譲マンションのライフライン復旧費用の3分の1を区独自で支援する制度を創設しました。液状化被害の生じた地域では、都として、住宅再建への支援とともに、宅地の地盤強化に対する支援策も実施する考えはありませんか。また、液状化の被害を受けた戸建て住宅や、アパート、マンション等の住民に対して被害者を救済すると独自制度を創設すべきではないかうかがいます。

A9. 東目本大震災は、広域にわたり甚大な被害を及ぼしており、自治体ごとの対応ではなく、国が統一的な対応を行うべきものであることから、都は、同一の災害で被災した全ての地域が支援の対象となるよう、平成23年6月に国に提案要求しています。提案要求が実現するまでの問については、特例措置として、区市町村が行う住宅被災世帯への支援に対する補助を実施しています。

以上