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2012年第3回定例会文書質問趣意書 10月2日

あぜ上三和子(江東区選出)

一、 被災地、避難者支援について

 原発事故・大震災と津波から1年6カ月が過ぎました。
 私は、8月17日、2度にわたり南相馬市を中心に視察しましたが、地元の懸命の復興努力にもかかわらず、4月16日から立ち入りを許可された避難指示解除準備地域は、家屋の倒壊、一階天井まで波が押し寄せて多くの人命が一瞬にして奪われた特別養護老人ホーム、潮のにおいが強く残る泥沼化した田んぼ、3.11の生々しい津波のつめ跡がそのまま今日も残っている事態でした。
 また、すでに居住者がいる地域でも放射線量が毎時1マイクロシーベルトを超えるところもあり、除染の遅れも深刻です。
 さらに南相馬市の市立病院は医師と看護師不足から半分しか診療再開できないという事態におちいっています。
 東京電力の賠償金の支払いについても、住民や業者の納得の得られるものではなく交渉は続いています。復興は、まさに緒についたところで、国をあげての支援が求められています。都としての被災地及び被災者に対する最善の支援を引き続きおこなうよう強く求めるものです。

 一つは、職員の派遣です。
 都は、すでに、土木と建築の技術系職員など、被災3県に対する職員派遣をすすめ、9月からは、さらに47人の職員を派遣の追加をしていますが、更なる支援が求められています。

Q1. 福島県及び宮城県・岩手県の被災地のニーズを把握し、各県からの要請に積極的に応えるべきです。とりわけ緊急を要している技術系職員や看護士など必要な職員を都として現地で採用することとあわせて都内での雇用対策として確保し、被災地の派遣要請に応えることを求めますが、いかがですか。

A1.  都はこれまでも、被災地の状況や要望等を踏まえ、警察・消防をあわせ延べ3万人を超える職員を派遣してきましたが、今なお監理団体を含め100名を超える職員を中長期で派遣し、被災地を支えています。さらに本年9月に、被災地の本格復興に必要な技術者を確保するため、まちづくりの即戦力となる行政OBや民間経験者47人を任期付職員として採用し、被災地に派遣しました。この任期付職員を活用した取組は、都が全国に先駆けて実施したものですが、被災地における人材確保の有効な手立てとして、現在、宮城県など被災自治体も相次いで導入を決め、首都圏を含む全国から技術系職員など必要な人材を募り採用する動きが広がっています。こうした被災自治体の動きを踏まえ、都としては、採用広報の協力、選考会場の提供等、できる限りのサポートを行っていきます。

 観光支援も重要です。
被災地では、風評被害もあって観光地も大打撃を受けていますが、昨年から実施している都の福島応援ツアーは、被災した観光地を励まし、大きな効果をもたらしています。

Q2. 都は、福島応援ツアーを昨年に引き続き、今年度も来年3月までの期間、福島旅行について、宿泊では1泊3千円の補助を4万泊分、日帰り1500円の補助で1万5千回分を組みましたが、都民が手続きできる旅行会社やツーリストは大手等にかたより身近な旅行会社に申し込みができない状況等が発生しています。
枠を拡大し、対象旅行会社の範囲を拡大し、都内のどの旅行会社やツーリストでも使えるようにすべきではありませんか。

A2. 被災地応援ツアーの旅行事業者については、旅行業法に基づき行政機関に登録している都内旅行事業者であれば参加できる仕組みとなっています。

Q3. また、実績を調査し、公平平等に活用するとともに、来年度も継続できるよう検討することを求めますが、いかがですか。

A3. 被災地応援ツアーは、福島県における観光の状況を踏まえて実施してきており、また旅行業法に基づき行政機関に登録している都内旅行事業者に対しては等しく参加の機会を確保するなど、適切な対応を図っています。

 東京に避難している被災者に対しては、さらなる支援も必要です。
 いまだ東京に避難している人は、9月7日現在9397人であり、先の見えない不安や困難を抱えているのが現状です。仕事の都合で父親だけ被災地に残り、母子で東京に暮らしている方々は、家族ばらばらという精神的ストレスに加え、二重生活による経済的負担が重くのしかかっています。
 被災者は、無料だった高速道路代も警戒区域等からの避難者を除いて4月から有料となり、その負担の大きさから、家族の会える回数が減ってしまい、子どもたちにも精神的負担がかかっているという悩みも生まれています。新潟県では、被災者対象に高速バス料金の支援を行っています。往復5400円を一週間当たり一回分の支援となっていて、大変好評だと伺っています。

Q4. 国に対し、警戒区域等以外からの避難者に対しても高速道路代無料化の適用を求めるべきです。東電への移動費用請求は「必要かつ合理的な範囲で支払う」となっており、かかる費用の全額が請求できるわけではありません。当面、都として、4月以降に高速道路代無料制度の対象外となった避難者で東京と福島の二重生活をしている家族に対する経済的支援を行うことを求めますが、いかがですか。

A4. 高速道路の無料措置については、被災時の居住地が原発事故により国が避難を指示又は勧奨している区域等にあった方については平成25年1月15日まで実施されていますが、それ以外の区域からの避難者については平成24年3月31日で終了されています。こうした中、本年6月には、福島県が復興大臣に対して、昨年度末で終了した区域からの避難者に対する無料措置の実施を要望し、9月には、山形・新潟・福島三県知事会議が復興大臣に対し同様の要望を行ったと聞いており、都としては国に対して無料措置を求める予定はありません。また、避難者の生活費等、避難によって生じている費用については、国の責任により、東京電力株式会社からの損害賠償や、被災者の生活支援等を目的として本年6月に施行された、いわゆる「子ども・被災者支援法」等を通じて措置されるべきものであり、都としては、経済的支援を行う考えはありません。

Q5. 福島県では、この10月から18歳までの医療費無料制度がスタートしました。東京に避難している18歳以下の子どもに対する医療費が、償還払いでなく現物給付にできるよう、都として取り組むことを求めます。

A5. 現在、東日本大震災による被災者のうち、原子力発電所の事故に伴う警戒区域等の住民であるなど、一定の要件に該当する方については、医療費の窓口負担は免除されています。また、平成24年10月からは、福島県の全市町村で、子供の医療費助成の対象年齢を18歳まで拡大して実施しており、福島県内に住民票を有する18歳以下の方は誰でも、この制度によって医療費の助成を受けることができます。この医療費助成制度では、福島県の各市町村が定めた地域の医療機関等を受診した場合には、窓口負担は必要ありません。それ以外の地域では、都内の医療機関等も含め、制度上、窓口で一旦負担していただき、償還払いにより助成を受けることとなっています。

Q6. 長引く避難生活の中で、「夫が引きこもりになってしまった」「家族ばらばらの生活が不安で、うつ病になってしまった」など深刻な声も伺っています。避難した地域に溶け込めずに悩んでいる方もいます。これから、どこで、どう生活を建て直すか生活設計が建てられないなかで、二重三重の困難と苦しみを抱える避難者の生活と就労等の支援を、さらにきめ細かく丁寧に実施するために、区市町村と連携し、訪問活動を行うよう求めます。被災地情報の提供とともに、現在の生活をしっかりとサポートするために、都として、さらに全力で取り組むよう強く求めるものです。 

A6. 都は、都内避難者向けに、被災地の行政情報や都の支援情報を定期的に提供するほか、平成23年7月に福祉総合相談窓口を設置し、様々な相談に対応しています。また、区市町村等が実施する都内避難者への戸別訪問や交流会の開催等
の活動を支援するため、平成23年9月から孤立化防止事業などを実施しています。本年2月には、都内避難者の現状やニーズ等を把握し今後の支援に活かすため、都内避難世帯ヘアンケート調査を実施し、調査で得られた戸別訪問や交流会等参加を希望する世帯の情報等を区市町村に提供しました。7月には、区市町村の都内避難i者支援担当者を対象とした連絡会を開催し、被災自治体の動向等の情報提供や就職支援事業者の紹介を行ったほか、被災自治体による都内での説明会の開催を支援するなど、区市町村や被災自治体と連携しながら、都内避難者支援に取り組んでいます。  

Q7. 都内避難者の中には、津波など災害時の恐怖体験のため、PTSD(心的外傷ストレス障害)に苦しんでいる人もいます。都として、都内被災者のPTSD治療について、どのような支援を行っているのですか。支援を強化する必要があると思いますが、いかがですか。

A7. 都内避難者からPTSDを含む精神疾患等に関する相談があった場合には、精神保健福祉センターや保健所で専門職による精神保健福祉相談を実施し、医療機関への受診等に係る助言、指導を行っています。

二、高齢者の就業支援施策について

 都は、指定管理者の選定評価を行うにあたって、外部の専門家を含む委員会を設置し、客観的かつ専門的な観点から、労働環境を含めた事業計画の審査や履行状況の確認をおこなっているとしています。
 しかし、たとえば都立公園の清掃などの業務について見ると、その多くは指定管理者から再委託されており、実際の管理業務は再委託先がやっており、その実情を含めて審査や履行状況をみる必要があります。
 なぜなら、指定管理者は競争入札で再委託先の選定をおこなっており、最低制限価格制度もないため、再委託先となるどの団体・企業とも仕事を確保することが切実なため、赤字を覚悟して入札に参加し、年々仕事の単価がさがり、実際の業務の労働条件は深刻にならざるを得ないからです。

Q1.  都立公園などの指定管理者から再委託先となっている団体・企業の労働環境が年々悪化せざるを得ないような金額でしか契約できない実情について、都はどのように認識していますか。

A1. 指定管理者が再委託先と締結する契約は、民間事業者間の契約であり、契約の当事者ではない都が関与するものではありません。都は、指定管理者に対し労働関係法令等の遵守を義務付けるとともに、指定管理者の選定や管理運営状況の評価を通じて、今後とも指定管理者制度における労働環境の確保に努めていきます。

 都は、公共工事における労働環境確保については、契約にあたっては最低賃金法や労働基準法などの法令遵守を義務づけることにより、労働環境の確保を図っているとしています。
 しかし、都立公園の清掃事業では、上記のように発注契約金額自体が、適正な賃金、必要な人員の確保などできるようなものではありません。

Q2.  都は、公共工事における労働環境確保について、契約にあたっては最低賃金法や労働基準法などの法令遵守を義務づけることにより労働環境の確保を図っているとするならば、都として関係部局と連携して、指定管理者の再委託先での労働者の労働環境が確保されるように、その発注契約額を決めるにあたってルール化をすすめるべきではありませんか。

A2. 指定管理者制度は、公の施設の管理運営に民間の能力を活用し、都民サービスの向上を図るとともに効率的・効果的な管理運営を進めるものです。都では、指定管理者に労働関係法令等の遵守を義務付け、指定管理者制度における労働環境の確保を図りつつ、民間の柔軟性や創意工夫を活かした公の施設の管理運営を推進しています。
 このような指定管理者制度の考え方を踏まえ、指定管理者と再委託先が合意の上で締結する再委託契約について、都が契約額に係るルールを定めることは考えていません。

 高齢者の就労支援をすすめている団体では、生活ができる賃金を保障できる契約金額で受注したいという切実な要求をもっています。
 もともと高齢者雇用安定法の第5条、40条では、地方自治体は軽易な仕事について高齢者にまわる仕組みを作らなければならないとなっています。その希望に応じた就業機会を提供する団体を育成し、その就業機会の確保のために必要な措置を講ずるよう努めることを定めています。その対象としては、私が国に確認したところ、シルバー人材センターのみと限定しているわけではなく、高齢者の就業支援をしている団体等も含めているということです。
 国は昨年12月、地方自治法施行令第167条の2第1項第3号、地方公営企業法施行令第21条14項第3号の法令改正をおこない、高齢者の就業支援をしている団体、企業組合などを育成する立場から、それらも政策契約の対象とするよう、その基準などを定めることを総務省から各都道府県知事あてに通知されました。
 すでに高知市が、2012年1月からその具体化を進め、市民80%以上、60才以上が3分の2以上で構成されるなどの基準のもと、3団体が認められ仕事が実際に発注されています。都道府県レベルでも、北海道が今年度から基準づくりをすすめ、高齢者就業事業団、企業組合などの実態調査、随意契約要望を把握して、通知にそって今年度中には完了したいとしています。広島県では、昨年度末から早速、学識経験者を選出して基準づくり作業に入り、シルバー人材センターに準じる高齢者団体の登録の申請受付に入るとのことです。

Q3.  都として、この「通知」にもとづき@認定基準を定め公表すること、A基準を定める時には、2人以上の学識経験者からの意見聴取すること、B認定するときは2人以上の学識経験者からの意見聴取することなど、早急に進める必要があると思いますが、都の進捗状況を明らかにしてください。

A3. 昨年12月の地方自治法施行令の改正により、シルバー人材センター等に準ずる者として、普通地方公共団体の長の認定を受けた者に対して、随意契約ができることになりましたが、政令改正の対応については、他の地方公共団体の動向等も踏まえ、現在検討中です。

 随意契約の際には、「高齢者の就業支援をしている団体、企業組合などを育成する」という視点が欠かせません。契約金額が低ければ、時間単価や月の給与額も低く見直され「生活ができる賃金を保障できる契約金額」にならないからです。

Q4.  本来は、今回の改定があろうがなかろうが高齢者雇用安定法の第5条、40条の主旨でシルバー人材センターとともに高齢者の就業を支援している団体も対象にすべきです。これらを都の事業委託などの随意契約対象団体として位置づけ、生活ができる賃金を保障できる契約金額を提示させ関係部局から仕事を発注するよう、徹底することが求められると思いますが、いかがですか。

A4. 今回の地方自治法施行令改正に伴う取扱いについては、他の地方公共団体の動向等も踏まえ、現在検討中です。なお、法令等に基づき、予定価格は契約の目的となる物件または役務について、取引の実例価格、需給の状況等を考慮して適正に定めており、予定価格の範囲内において、適切に契約締結を行うこととされています。

 これまで都は、シルバー人材センター以外の非営利団体等があるにもかかわらず、シルバー人材センターのみに58区市町村に都の独自財源で毎年約7億円を助成し、国は東京都シルバー人材センター連合に5億円の助成をしています。
 しかし、シルバー人材センターの中心的な位置づけは「高齢者の生活観の充実、健康の保持」などとされており、高齢者が就労によって賃金収入を得て生活を維持することを主な目的としていないため、就労弱者にとっては極めて不十分な就労支援です。
生活保護者211万人の約半数は高齢者が占め、急速に悪化する高齢者の貧困化対策の上でも、高齢者の就労支援が求められています。
 現に、シルバー人材センター以外の非営利団体等が、一方で高齢者就労支援団体として欠かせないとして、高齢者から歓迎されています。

Q5.  都は、法の趣旨に従い、シルバー人材センターだけでなく、高齢者の就労支援に取り組む団体・企業にも助成しても良いと思いますが、いかがですか。

A5. シルバー人材センターは、広く都内の区市町村に設置されており、長きに渡り地域社会に密着した活動を行い、高齢者の就業機会の確保に実績を有していることから、都としては、シルバー人材センターを高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第40条の団体として支援しています。

 もともと、シルバー人材センターでは、会員が仕事中や仕事先との往復途上で怪我をした場合、誤って他人の身体もしくは財物に損害を与えるような事態があった場合、会員には労災保険が適用されない。また、健康保険法は業務上のけがを対象外としており、健康保険に入っていても救済されないケースもあります。シルバー人材センターが加入している保険、「シルバー人材センター団体傷害保険」で対応しているため、十分ではありません。そのため、全国ではこの問題について裁判にもなっています。
 会員と仕事の発注先及びシルバー人材センターとの間には雇用関係がなく、労働基準法も適用されていないからです。
 シルバー人材センターの会員らが請負作業中にけがをしても保険が適用されず治療費が全額自己負担になるケースがあることにたいして、国はようやくプロジェクトチームをつくり、10月中にも結論を出す方針になっています。

Q6.  都として、シルバー人材センターにおける、このような高齢者の就業環境に関わる問題についてどのように認識していますか。

A6. シルバー人材センター会員に対する健康保険や労災保険の適用については、国において判断すべきものであると考えています。

Q7.  都として国の動きを注視していくことはもちろんですが、国の対応待ちになることなく、シルバー人材センターにおける就業環境を適切なものとなるよう、徹底すべきではありませんか。

A7. 都では、既に、公益財団法人東京しごと財団の「シルバー人材センター団体傷害保険」等に加入させることに加え、安全就業パトロール指導員による巡回指導など、シルバー人材センター会員の安全就業を推進するための各種取組を行っています。

 

以上