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2012年第4回定例会 文書質問趣意書 12月4日

大島よしえ(足立区選出)

子どもたちの教育条件整備について 

 子どもたちの教育条件整備についていじめによる子どもの自殺に多くの人々が心を痛め、深刻化するいじめ問題の解決を願っています。いじめは、被害者にその後の人生を変えてしまうような深い心の傷をあたえるだけでなく、子どもたち全体の成長にも暗い影をおとします。
 いじめが重大な人権侵害であり暴力であることをはっきりさせ、子どもの命を守ることを最優先に、ささいなことでも情報を共有しすぐに対応すること、教職員と保護者が協力して子どもたちの様子や変化を見守ることが大切です。また、文化祭や運動会をはじめとする自主的な活動を通じて、子どもたちが達成感や信頼関係を育み、いじめを止める人間関係をつくっていくことも重要です。いじめた子もいじめに走るだけの悩みやストレスを抱えており、厳罰主義でない人間的に立ち直るまでのケアも不可欠です。いじめが重大な事件・事故となった場合、被害者やその家族の知る権利も保障されなければなりません。
 いじめの解決にとりくむための条件整備としていくつか提案したいと思います。

Q1 一般新聞の調査では7割の教員がいじめへの対応に時間が足りないと答えています。多すぎる事務的な業務などにより学校では長時間過密労働が常態化し、教員は、子どもと遊んだり授業準備をする時間が確保できないと悩んでいます。教員の事務仕事を減らすことや、授業の持ち時数を減らし授業準備の時間を確保するなど、教員の長時間過密労働の解消が必要ではありませんか。

回答 教員は、児童・生徒の在校中、全力を挙げて児童・生徒に対応すべきであり、いじめ問題に適切に対応するためには、児童・生徒の言動等を注意深く観察し、あらゆる兆候を見逃さないようにすることが重要です。事務的な業務については、その上で、効率的に処理するための様々な工夫を行う必要があります。都教育委員会は、効率的な学校運営の実現と更なる教育の充実を目的として、現在、校務改善を推進しています。授業の持ち時数は、いわゆる標準法上の教員数算定の基礎としている時数に基づいており、その軽減にっいては考えていません。

Q2 子ども1人ひとりにていねいに対応するためには、少人数学級も重要です。現在東京都では、小学校1、2年生が35人学級、中学校1年生が37人学級となっています。少なくとも中学校1年生を35人学級とするとともに、小学校3年生以上と中学校2、3年生にも少人数学級を拡大することが必要と考えますが、いかがですか。

回答 都は、平成22年度から、小1問題及び中1ギャップを予防・解決するために、小学校第1・2学年及び中学校第1学年を対象として教員を加配し、学級規模の縮小や少人数指導、ティームティーチングの導入など、画一的な少人数学級ではなく、各学校の実情に即した最適策を選択できる弾力的な制度を実施してきました。都は、今後とも、こうした方針を維持するとともに、国の動向を注視していきます。平成25年度予算案では、これまでの加配に加え、中学校第1学年を対象として、35人以下学級を実施するために必要な教員の加配を盛り込んでいます。

Q3 いじめを発見しやすい立場にある養護教諭の配置の充実も求められます。
 国の基準では、小学校は児童数851人以上、中学校および高等学校では生徒数801人以上の学校には養護教諭を複数配置することになっていますが、東京都で複数配置されるのは26学級以上の小中学校のみで、国基準を下回っています。養護教諭の定数配当の都基準と国基準による配当数の差は、2012年度の場合、小中高等学校でそれぞれ何人ですか。

回答 国の標準法では、養護教諭の配当数を児童・生徒数に基づき算定しますが、都の定数配当基準では、学級数に基づき算定しています。この結果、学校毎にみると、国基準では複数配置にならないが都基準では複数配置になる場合があり、また、その逆の場合もあります。総数で比較すると、平成24年度においては、都の養護教諭の配当数が国基準を小学校7人、中学校2人、高等学校24人下同っています。

Q4 少なくとも国基準に該当するすべての学校に、養護教諭を複数配置することを求めます。さらに国基準に満たない学校でも、必要に応じて複数配置を行うことを提案します。それぞれお答えください。

回答 養護教諭の定数配当基準は、都と国とで算定の考え方を異にしており、都教育委員会は、都基準に基づき適切に複数配置を行っています。また、都基準に加え、各学校の実情等を勘案して加配を行っており、今後とも適切に養護教諭を配置していきます。

Q5 また、公立小学校および高等学校全校にスクールカウンセラーを配置することを求めます。すでに全校配置されている中学校は、勤務時間数を増やすことが校長会などから要望されており、これに応えるべきです。それぞれお答えください。

回答 都教育委員会は、文部科学省のスクールカウンセラー活用事業を受け、平成15年度から中学校の全校配置、平成23年度からは、小学校及び高等学校への配置を大幅に拡大し、平成24年度は小学校327校、中学校631校、高等学校100校、合わせて1,058校に配置するなど、着実に配置校を増やしてきています。平成25年度予算案では、全公立小る経費を計上しています。

Q6 スクールソーシャルワーカーの配置の充実も重要ですが、いかがですか。

回答 文部科学省の補助を受け実施するスクールソーシャルワーカー活用事業は、事業が開始された平成20年度には16区市での実施でしたが、平成22年度は24区市町、平成23年度は29区市町、平成24年度は31区市町で実施するなど、着実に実施地区が増えています。

Q7 教職員がいじめへの認識を深め、適切に対応できる力量を身につけることも重要です。
 教育学者や小児科などの医師などの専門家、いじめ被害者団体などの参加も得て、いじめへの対応のガイドラインを作成するとともに、教職員が自主的に行う研修を支援することを求めます。

回答 都教育委員会は、平成24年10月に公表したいじめの総合対策に基づき、学識経験者を座長に、弁護士、精神科医など外部有識者をメンバーとして、今後の施策に生かすことを目的とした専門家会議を設置し、児童・生徒の自殺予防やいじめ等の問題行動への対応の在り方全般について検討しています。また、平成24年12月には、これまでのいじめ発見のポイントや対応上の留意点等を見直した指導資料を作成したほか、この資料の趣旨等を全ての学校に周知するため、学識経験者である大学教授を講師として、いじめに特化した研修会を実施しました。この研修会の内容を各学校における校内研修等を通して徹底し、教員一人一人の対応力を高める取組を進めています。

Q8 都教委がすすめてきた人事考課制度による上からの教員評価や、主幹、主任制度の導入による職の階層化などが、教職員をばらばらにし、いじめの解決に必要な教職員の連i携や協力に悪影響を与えていると指摘されています。業績評価につながるので担任は周りに相談しづらい、職員会議が形骸化し、課題の学校全体の共通理解や教職員間の意思疎通が深まらない、学校選択制で問題になるので管理職は隠そうとする、気になる子どもの様子を出し合い話し合える雰囲気が職員室にないなど、子どもたちに寄り添い問題をどう解決するかという方向で大人が団結することが難しい現状を憂える声があがっています。給与と連動した人事考課制度、主幹、主任制度は見直すべきです。

回答 いじめ問題に適切に対応するためには、教職員が、日頃から児童・生徒の言動等を注意深く観察し、あらゆる兆候を見逃さないようにするとともに、学校全体で情報を共有し、組織的な連携・協力体制を構築して取り組むことが重要です。給与と連動した人事考課制度、主幹教諭制度及び主任教諭制度は、学校の課題や目標の共有化を図り、各教職員の職責を明確化することで学校全体を組織的に機能させるための制度であり、見直す考えはありません。

Q9 教育委員会は教職員の専門性を尊重し、職員会議は、教職員が自由に議論し教育方針について合意を形成する場として、位置づけることが必要ですが、いかがですか。

回答 都教育委員会は、職員会議を校長の補助機関として位置付けており、校長は、教職員に対する経営方針の周知や、教職員からの意見聴取及び教職員相互の連絡を行うために職員会議を置くことができます。学校経営は、組織的に行うべきもので、教職員の建設的な意見を吸い上げることは重要ですが、最終的には校長が自らの責任と権限により方針を決定します。

Q10 学校職場のパワーハラスメントの予防と解決も課題です。パワハラは人問の尊厳や人格を侵害する許されない行為ですが、教職員組合の調査では、「副校長に顔を2発も殴られる」、「(校長と副校長が)2人して『あなたは教員に向いていない。早くやめろ、やめろ』と執拗に退職を迫っていた」、「職員室内の個人ロッカーを無断で探索された」などの深刻な事例が報告されています。教職員のあいだにパワハラが横行していては、子ども同士のいじめを解決することはできません。パワーハラスメント防止にかかわる指針、要項等を定め、ガイドブックを作成するとともに、第三者機関による相談窓口を設置するなど、パワハラ対策を強化することを求めます。

回答 都教育委員会では、パワーハラスメントを防止するため、従来から、学校管理職等を対象とした研修会などにおいて注意喚起を行うとともに、啓発資料を全教職員に配布する等を行っており、引き続きこうした対策を講じていきます。

Q11 いじめは子どもの苛立ちの発散という面があり、子どもたちのストレスの背景に教育全体が競争的で管理的になっていることが指摘されています。
 受験競争は低年齢化し、塾通いの割合は十数年間で倍近くに増え、時間的にゆとりのない子どもたちが増えています。子どもの遊びは子どもの心を解き放ち、友達とのトラブルを解決しながら人間関係も学んでいくもので、それが減っていることは問題です。競争教育の勉強は子どもを早くから「できる子」「できない子」により分け、わかる喜びやみんなで学ぶ心地よさを得ることはできません。「ありのままの自分」を認めることのできる自己肯定感が低いことも心配です。この間の「学力向上」政策で、国、都、区市町村それぞれの学カテストがくり返されたり、夏休みを減らしたり土曜日にも授業を行ったりすることは、子どもに強いストレスを与えています。問題行動を、その背景にある悩みや事情を顧みることなく、ゼロトラレンスで上から押さえ込むなどの管理的な教育も、子どもの心を抑圧します。
 都独自の悉皆の学力調査、体力調査はやめ、進学率や就職率などの数字で学校を評価したり学校同士を競わせるようなやり方は見直すべきです。

回答 「児童・生徒の学力向上を図るための調査」や「東京都統一体力テスト」は、その結果を児童・生徒一人一人に還元し、自らの課題の把握と新たな目標の設定を通して学力や体力の向上を図るとともに、都における学力や体力の状況を適切に把握し、各学校の授業改善に資するものであり、引き続き重点的な施策として推進していきます。また、都立高校では、生徒の希望や適性・能力に合った進路を実現することが重要な目標のひとつであることから、「進学率」及び「就職率」は教育活動の成果を示す主要な指標です。これらを具体的な目標として設定し、達成状況を評価することにより、各校は教育活動や学校経営の改善・充実を図っています。

 競争原理が社会や労働の各分野に浸透し、「弱肉強食」を当然視する社会、人間的な連帯が弱まり、弱い立場の人々を攻撃する風潮、貧困と格差の広がりなど、社会全体が「いじめ社会」になっていることも見逃すことはできません。子どもたちがのびのびと豊かに成長するためには、子どもの声に耳をかたむけ、子どもの社会参加を保障すること、国連子どもの権利委員会から3度にもわたり指摘された過度な競争教育から脱却すること、いじめが横行しやすい現在の社会全体のあり方を改め、人間的な連帯のある社会を大人たちの努力でつくることが大切です。

以 上