かち佳代子(大田区選出)
中小建設業の振興について
都内の建設産業は、2012年の産業別倒産件数が全産業の16%、卸売業・小売業27%に次ぐものです。休廃業・解散企業数は、同じく18%です。これは、サービス業29%、卸売業18%に次ぐものです。一方、開業は1.3%と、全産業平均2.3%を大きく下回っています。
長期的に見ても、国土交通省の調査によると、建設投資額は2000年66兆円にたいし、2012年度45兆円、就業者数は653万人から503万人に減少する見通しと発表しています。
このように、建設産業の実態は深刻です。
Q1. 東京都は、建設産業のこうした実態について、どのように認識していますか。
総務省調査によると、建設業の場合、29歳以下の就業者比率が全産業平均の70%を下回っています。
建設産業で働く就業者数は、この10年間でみると20%近くも減少。1985年と2010年を比較すると、大工は半減、土木作業者は4割減少などと深刻です。国交省も、このまま続けば、若者の入職者が減少し、建設労働者は不足するとの見通しを立てています。
このままでは、都民が、低廉で高品質の住宅を確保できるようにするという住宅政策にも支障をきたしかねません。
国土交通白書によると、建設後50年以上経過する社会資本の割合が、道路橋が、2010年度約8%が、2030年度約53%と急増するとされています。
このままでは、災害対応やインフラの維持・補修に支障をおよぼすおそれもあります。
Q2. 都として、中小建設産業の育成、建設技能労働者の確保について、長期的な視点にたって都政の課題として建設産業振興政策を打ち出すことが求められると思いますが、どうですか。
Q3. 中小建設産業の育成、建設技能労働者の確保などを都として責任もってすすめる事業担当部門を設けるべきではありませんか。
現在、都に中小建設産業振興について責任もって担当する部門がないために、都としてやるべき課題が山積していながら、手がついていません。
はじめに、建設産業労働者の賃金問題です。
若手の建設技能労働者が入職しない要因は、建設産業専門団体連合会の調査によれば「収入の低さ」が58%と最も多くなっています。
建設労働者の確保には、適正な賃金確保が欠かせません。今年4月には、とうとう国も公共設計労務単価について、これまでにない引き上げをしました。都としても、こうした賃金引き上げの流れをしっかり受け止め対応するよう、いくつか提案します。
Q4. 建設労働者の賃金は、もともと労使交渉の中で決まっていくものですが、都内にはゼネコンが集中し、都の大規模公共工事も請け負っています。こうしたゼネコンに、賃金の引き上げ、下請け工事の適正な契約について、都として求めるよう提案します。
建設産業では、重層化した下請け契約が常態化しています。
中小企業庁の調査によると、東京における中小企業1社あたりの工事受注額は全国トップですが、全国に比べて公共工事の受注額が低く、下請け工事受注額が高いという特徴があります。
Q5. 都は、建設業法、建設業法遵守ガイドラインなどにそって、施工段階において、下請契約の請負代金や支払い方法等について、適正に履行されているかどうか点検をしているのですか。どのように行われていますか。具体的にお示しください。
下請け企業が、適正な賃金を確保できない契約がされていないかなどを、都として随時、把握できるような体制がつくられていることが必要です。
東京都では、担当部署を設け、建設業者の、不正行為等の指導監督等をおこなっていますが、その案内はホームページでは、建設工事の請負契約をめぐる紛争について、公的機関「建設工事紛争審査会」を案内しているだけです。
今年の第2回定例会のわが党の質問には、建設工事の請負契約を巡る元請下請間等に関するトラブルの相談窓口は、国に設置された建設業取引適正化センターがあると答弁するだけでした。また、東京都発注の公共工事における、下請け代金未払い被害の相談件数さえも、都として把握していないこともわかりました。
Q6. 都として、建設工事の請負契約を巡る元請下請間等に関するトラブルの相談窓口を設置する必要があるとは思いますが、どうですか。
Q7. また、そうした相談活動を通して把握できた情報のみならず、下請け企業が、適正な賃金を確保できないような契約などがないかなどを随時、把握する体制を都の中につくる必要があると思いますが、どうですか。
都が発注する公共工事での、建設労働者の適切な賃金確保に都の果たす役割も重要です。
Q8. 2013年度から都内の公共設計労務単価は約18%上昇しましたが、都の建設工事の予定価格について中小建設業者から「1〜3%の引き上げ」にしかなっていないとの声があがっています。これは、都の公共工事の予定価格にしめる労務費の割合が、もともと低すぎるということではないですか。
Q9. 都は、今定例会で公共工事における建設労働者の賃金実態について「我が国における賃金や労働条件は、最低賃金法や労働基準法などで下支えした上で、各企業において対等な労使間での交渉等により、自主的に決定される」との考え方を示しています。
しかし、もともと公共工事の積算は、標準的な施工能力を持つ建設業者が、標準的な価格の資機材を使い、標準的な能力及び賃金の建設労働者を使用して工事を行うことを前提としているのではありませんか。
Q10. 都は、低入札調査価格対象の案件でも、「資材や資金の調達など、経営者の経営努力の結果によるもの」「工事の施工管理では成績評定制度を設けるなど、適正な履行の確保に努めている」として、低入札価格調査の対象工事でも特に問題はなく、第三者の評価機関による適否の判断を求める必要はないとの立場をとり続けています。このように、低入札調査価格でも、まったく問題にしていませんが、その背景には工事現場の建設労働者の賃金は最低賃金さえ確保されていれば問題ないとする都の認識があるのではありませんか。賃金については、どのような調査をされているのですか。それぞれ、お答えください。
Q11. 倒産、下請けなど経営上やむをえない場合はともかく、下請け代金等の未払いをおこなった業者については、入札参加規制をはかるため、下請け業者からの相談を受けたり、裁判所より判決を受けたり、督促等の措置を受けた場合には、専門の部署が事実認定をして元請けに入札参加規制する仕組みが必要だと思いませんか。
最後に、仕事確保の問題です。
Q12. 都が発注する軽易な修繕工事など小規模工事の受注の機会を積極的に提供する、小規模工事等契約希望者登録制度の実施は、地域の業者の仕事確保につながると思いますがどうですか。
東京都には、多摩地域の森林から、一定の木材が産出されています。都は、すでに多摩産材の普及及び利用拡大のため、魅力的な製品開発や住宅関連産業の中での利用拡大をすすめるための提案に助成するなどの取り組みをしています。
Q13. 都は、製材所、工務店、設計事務所や多摩地域の市町村をメンバーにした「東京の木・いえづくり協議会」を2001年に発足し、多摩産材を使用した住まいづくりを通じて、安全で安心できる居住環境の実現と、持続的な森林資源の構築、循環型社会へ向けて努力するとされていました。
この協議会は、現在、どのような問題にぶつかり、どのように進めていく予定ですか。
Q14. 森林関係者、住宅関連産業、製造業の方々などから幅広く参加していただき、多摩産材を使って低廉で高品質、 安全で安心な住まいづくり、生活関連製品などができるしくみをつくることを提案するものですが、どうですか。
以上
謔、に、低入札調査価格でも、まったく問題にしていませんが、その背景には工事現場の建設労働者の賃金は最低賃金さえ確保されていれば問題ないとする都の認識があるのではありませんか。賃金については、どのような調査をされているのですか。それぞれ、お答えください。
回答 我が国における賃金や労働条件は、最低賃金法や労働基準法が下支えしつつ、業績等を踏まえながら、各企業が対等な労使間での交渉等で自主的に決定しています。
都で直接締結している契約であっても、契約の相手方である企業で働く労働者の労働条件は、企業の経営方針や経営の状況を踏まえて労使間で決定したものであり、法令違反でない限りは尊重されるべきものであると認識しています。
また、労務単価については、低入札価格調査の調査項目の一つとなっています。下請予定者の資材単価が著しく低くなっていないか、下請に係る見積額が入札金額の積算内訳に正しく反映されているか、調査対象者及び下請予定者は、法令に従い社会保険に加入しているか等と合わせて調査を行い、下請へのしわ寄せがないことを確認しています。
Q11. 倒産、下請けなど経営上やむをえない場合はともかく、下請け代金等の未払いをおこなった業者については、入札参加規制をはかるため、下請け業者からの相談を受けたり、裁判所より判決を受けたり、督促等の措置を受けた場合には、専門の部署が事実認定をして元請けに入札参加規制する仕組みが必要だと思いませんか。
回答 都の契約は、契約約款により法令遵守を義務付けています。下請代金の未払い等、元請下請間のトラブルについては、当事者の話合いによる解決を図るとともに、紛争となった場合には、建設業法に基づき東京都建設工事紛争審査会など紛争処理機関が設置されています。
また、都発注の工事に限らず、建設業法等関係法令に違反し、営業停止処分となった事業者については、東京都競争入札参加有資格者指名停止等取扱要綱に基づき、指名停止を行い、入札から一定期間排除することとしています。
最後に、仕事確保の問題です。
Q12. 都が発注する軽易な修繕工事など小規模工事の受注の機会を積極的に提供する、小規模工事等契約希望者登録制度の実施は、地域の業者の仕事確保につながると思いますがどうですか。
回答 都は、これまでも、分離分割発注の推進、事業協同組合等の活用などにより、中小企業者の受注機会増大に努めています。
このことは、「官公需についての中小企業・小規模事業者の受注機会の確保について」という通知文により各局に通知し、徹底を図っています。
平成23年度においては、工事契約件数の約85パーセントを中小企業と契約しています。また、小規模工事等契約希望者登録制度を都において導入する予定はありませんが、少額な案件にっいては、随意契約によることができるため、東京都に入札参加資格の申請をしていなくても、これに参加することは可能です。
東京都には、多摩地域の森林から、一定の木材が産出されています。都は、すでに多摩産材の普及及び利用拡大のため、魅力的な製品開発や住宅関連産業の中での利用拡大をすすめるための提案に助成するなどの取り組みをしています。
Q13. 都は、製材所、工務店、設計事務所や多摩地域の市町村をメンバーにした「東京の木・いえづくり協議会」を2001年に発足し、多摩産材を使用した住まいづくりを通じて、安全で安心できる居住環境の実現と、持続的な森林資源の構築、循環型社会へ向けて努力するとされていました。
この協議会は、現在、どのような問題にぶつかり、どのように進めていく予定ですか。
回答 都は、木材供給者や住宅生産事業者等とともに「東京の木・いえづくり協議会」を設立し、多摩産材を活用した家づくりの普及啓発のためのイベント・セミナーの開催や優遇融資制度の情報提供などを行っております。今後とも、こうした協議会の活動を通じて、住宅への多摩産材の活用促進を図ってまいります。
Q14. 森林関係者、住宅関連産業、製造業の方々などから幅広く参加していただき、多摩産材を使って低廉で高品質、 安全で安心な住まいづくり、生活関連製品などができるしくみをつくることを提案するものですが、どうですか。
回答 都は既に、多摩産材を利用した新たな製品開発に加え、多摩産材を活用した家づくりに取り組む団体のPR活動などに対する支援を行っています。
また、多摩産材を利用した住宅・什器による二酸化炭素の固定量等を評価認証する「とうきょう森づくり貢献認証制度」を行っています。
以上