曽根 はじめ(北区選出)
一、石神井川下流部における都市型水害の防止対策について
2010年7月5日夕刻に発生した北区王子駅付近、堀船2丁目の溝田橋下流部における石神井川の溢水事故では、直接の死亡や怪我などの人的被害はなかったものの、床上・床下浸水被害が450世帯に及び、溢水箇所に近接する日本たばこや京北倉庫など企業の商品にも数十億円といわれる多額の被害を及ぼしました。
この水害事故については、直後の都議会定例会の本会議や環境建設委員会での質疑を通じて、主に以下の点が問われました。
(1) 本水害は、練馬・板橋の石神井川中流域で時間降雨100ミリを大きく超える集中豪雨が発生したことによるが、石神井川流域では数年に一度は時間降雨100ミリを超える豪雨が発生しており、石神井川の水害防止は「50ミリ豪雨対策」では不十分ではないか。
(2) 本水害は2005年の水害場所のすぐ下流で堤防から溢水したが、前回の水害時の教訓は生かされたのか。
(3) 本水害では溢水場所から遠い地点でも急速に水位が上昇しており、内水反乱が起きていた可能性があることから、下水道設備の改善が必要ではないか。
(4) 石神井川の水害防止には、中流域での地下調整池整備をはじめとする対策の強化が必要ではないか。
(5) 溢水場所は堤防の高さがAP5・6メートルで、下流の5・8メートルより低い高さだったことに問題があったのではないか。
(6) 溢水現場より数百メートル下流で行われていた都による河川内に足場を組んでの護岸工事が、水害発生に影響を与えたのではないか。
(7) 本水害の原因究明のためにも水害の被害状況を詳細に調査し、公的な責任を明らかにしながら、被害者への適切な救済と補償を行う必要があるのではないか。
(8) 同じ地域での3回目の水害を防ぐために、都が北区や首都高と連携してどのような危険に備える必要があるのか。
水害事故から4年近くが経過した現在、これらの課題について都の取り組みの現状と今後の見通しについて質問します。
■「50ミリ対策」を超える豪雨水害対策について
昨年11月に石神井川領域を含む区部の中小河川について最近の豪雨に対応して「75ミリ」対応が打ち出されていますが、まちづくりのあり方を含めた総合治水対策が重要です。
Q1.「75ミリ」対策では、調節池の増設や白子川と環7地下の地下調節池の広域ネットワークなどが中心ですが、実際に水害の危険が最も高い下流域での河川堤防などについて「50ミリ」対応の現計画から見直しと同時に、まちづくり、雨水浸透対策などが必要ではありませんか。
Q2.前回水害の発生した溝田橋下流付近は、都の堤防計画は高潮対策として高さAP5・8メートルのままですが、本水害は上流からの水流による溢水ですから、溝田橋下流についても豪雨対策を時間降雨75ミリ対応に拡充することにともない、高潮対策による現計画の堤防の高さを見直すべきではありませんか。
Q3.水害被害者はじめ地域住民は、水害後に仮設でつくられたAP6メートルの護岸の高さを、最終的に5・8メートルに下げることは納得できません。むしろ溝田橋の改修にあわせて6メートル以上の護岸を整備するよう検討を求めますがどうか。
Q4.前回水害から4年が経過し、時間100ミリ豪雨の可能性も高くなっています。しかし「75ミリ」対策が効果を発揮し始めるまでには数年待たねばなりません。北区は、次に水害の危険が明らかな個所を中心に公共用地などを活用して大型土嚢を設置し緊急事態に対処するなど当面の対策についての、わが党区議の質問に対し、都と協議して対策を検討すると答えています。
都として、水害危険個所を管理している首都高とも協力し当面の緊急対策を具体化するよう求めますがどうか。
■2005年9月の堀船1丁目の水害事故の教訓について
2005年の水害後には、首都高による高速道路工事において、都の指導が守られず、ずさんな護岸設備が原因で水害被害を広げたことが明らかになりました。また首都高の「水防計画」が、工事作業員や工事現場の安全確保が中心だったため、地域住民の安全を配慮した土嚢積みの対策が盛り込まれました。
しかし本水害では、「水防計画」が、実際の堤防からの溢水事故にはきわめて不十分だったことが明らかになりました。
Q5.水防計画では、工事現場の安全確保は水害の危険が迫った段階からスタートさせますが、地域住民への被害を防ぐ対策が水害発生後に始動するとされている点は改善が必要です。またいわゆる「かみそり」堤防からの溢水に対処するには通常の土嚢積みでは効果が小さいため、水害の危険な時期には大型土嚢を常時準備しておくなど対策の強化が必要ですが、「水防計画」の改善を首都高に求めるべきではありませんか。
Q6.2005年の水害後に、首都高の水理実験の資料を入手して調べた結果、水害の起きた溝田橋直近の上流部分が最も堤防からの溢水の危険が高いことが判明しました。しかもその資料によれば、その次に危険な個所は、溝田橋のすぐ下流の本水害地点であることも明記されていました。しかし水理実験の資料は都民には公表されていませんでした。
この教訓を生かすために、現時点で堤防からの溢水の危険が高い地点とその対策について、都が首都高を指導して明らかにさせるべきではないか。
■内水氾濫の防止について
Q7.徳島大学の中野教授は自ら水害の現地を調査し、本水害は、石神井川堤防からの溢水とともに、内水反乱が複合したために大きな被害となったと分析し、その実態を調べるためにも水害時の水位の記録が重要と指摘しています。これは本来、水害発生を防ぐべき行政の責任です。改めて水害時の内水氾濫の調査と解明を求めますが、どうか。
Q8.今回、下水道幹線とポンプ所の拡充をしていますが、この対策を地域の隅ずみで生かしていくためにも、適時を捉えて堀船3丁目など内水氾濫の危険がある地域から幹線への下水道管の接続をふやすとともに、雨水浸透対策、大規模ビルでの貯水対策など総合治水対策を含めて改善・充実させていくよう求めます。
■都による河川内工事の、水害への影響について
Q9.水害後の都議会で、都は新柳橋付近での河川内の足場による都の護岸工事の影響について、否定しています。
しかし、私が2010年に都から提供を受けた開示資料によれば、都の足場による河川流への影響は、足場の上流側の直近で時間降雨50ミリで52センチの水位上昇をもたらすと試算されています。これでは影響がなかったとは言い切れないのではありませんか。
Q10.また首都高がこの足場工事による上流の河川付け替え工事への影響を知るため必要な資料提供を受けた際には、この水位上昇の資料は提供されていませんでした。水害後に首都高が発表した「ステップ6ダッシュ」の工事段階についての水理実験にも、この水位上昇はないものとして、実験が行われていました。したがって河川内工事の影響は検証されておらず、改めて解明する必要があるのではないでしょうか。
■今後の水害防止のために
Q11.堀船地域住民は、すでに2度の水害に見舞われ、3回目の水害は何としても防がなければなりません。しかも本水害場所に近接した地域は、北区が区役所を移転改築の候補地とするなど、あらたなまちづくりが行われる見通しであり、都市型豪雨による水害からの安全確保が大きな課題となっています。
したがって、4年が経過して水害当時の記憶がうすれてしまわないうちに、都が北区や首都高と協力して、本水害の可能な限り詳細な記録と分析を行う必要があると思いますが、見解を伺います。
以上の点に誠実に答弁いただくとともに、今後、本水害発生に対する首都高や都の責任が明らかになった場合、直ちに被害住民に対する謝罪と、補償と救済に取り組むよう強く求めるものです。
から幹線への下水道管の接続をふやすとともに、雨水浸透対策、大規模ビルでの貯水対策など総合治水対策を含めて改善・充実させていくよう求めます。
A8 東京都は、平成19年度に定めた東京都豪雨対策基本方針に基づき、対策を進めています。下水道幹線とポンプ所の拡充については、既存の下水道管を活用できる整備を進めています。
■都による河川内工事の、水害への影響について
Q9.水害後の都議会で、都は新柳橋付近での河川内の足場による都の護岸工事の影響について、否定しています。
しかし、私が2010年に都から提供を受けた開示資料によれば、都の足場による河川流への影響は、足場の上流側の直近で時間降雨50ミリで52センチの水位上昇をもたらすと試算されています。これでは影響がなかったとは言い切れないのではありませんか。
A9 都は、工事に先立ち、足場等による水位上昇を水理計算により求め、時間50ミリの降雨による河川水位が護岸高を超えないことを確認しています。
Q10.また首都高がこの足場工事による上流の河川付け替え工事への影響を知るため必要な資料提供を受けた際には、この水位上昇の資料は提供されていませんでした。水害後に首都高が発表した「ステップ6ダッシュ」の工事段階についての水理実験にも、この水位上昇はないものとして、実験が行われていました。したがって河川内工事の影響は検証されておらず、改めて解明する必要があるのではないでしょうか。
A10 都は、下流の河川工事に関する情報を首都高に提供し、それに基づき、首都高が水理計算を行い、時間50ミリの降雨による河川水位が護岸高を超えないことを確認しています。
■今後の水害防止のために
Q11.堀船地域住民は、すでに2度の水害に見舞われ、3回目の水害は何としても防がなければなりません。しかも本水害場所に近接した地域は、北区が区役所を移転改築の候補地とするなど、あらたなまちづくりが行われる見通しであり、都市型豪雨による水害からの安全確保が大きな課題となっています。
したがって、4年が経過して水害当時の記憶がうすれてしまわないうちに、都が北区や首都高と協力して、本水害の可能な限り詳細な記録と分析を行う必要があると思いますが、見解を伺います。
A11 都は発生した水害について、当日の気象状況や区市町村から報告された被害状況などを水害記録として毎年とりまとめ、平成22年の水害についても既に公表しています。
以上の点に誠実に答弁いただくとともに、今後、本水害発生に対する首都高や都の責任が明らかになった場合、直ちに被害住民に対する謝罪と、補償と救済に取り組むよう強く求めるものです。