2014年都議会第4回定例会 文書質問趣意書 12月22日

小竹ひろ子(文京区選出)

 一、都内の学校図書館に専任の学校司書を配置することについて

 今年6月に学校図書館法の一部が改正されました。第六条で、学校には司書教諭のほか、「学校図書館の運営の改善及び向上を図り、児童又は生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため、専ら学校図書館の職務に従事する職員(次項において「学校司書」という)を置くよう努めなければならない。」とされ、その第2項では、「国及び地方公共団体は、学校司書の資質の向上を図るため、研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない」とされました。学校図書館への専任の学校司書の配置が、学校図書館法に法的に位置づけられ、来年4月1日より施行されることになったのです。
 この法改正は、独自の努力で学校司書を配置し子どもや教師のニーズに応えてきた小・中学校の校長会や教育関係団体、学校図書館や読書推進の関係団体などからの「学校司書を位置づけてほしい」という強い要望をうけ、国会の超党派の学校図書館議員連盟が法改正案を提出し、衆参両院で全会派一致で可決成立したものです。

Q1 都教育委員会は学校図書館を学校教育の中でどのように位置づけ、学校図書館の役割をどのように考えているのか、その認識を伺います。

Q2 今回の学校図書館法の改正をどのように受け止め、都内の学校図書館の改善をはかっていくのか伺います。

 私は、長年学校司書として、先生方とともに子どもたちの読書や学びを保障する活動に取り組んできた司書の方の話を聞き、学校図書館問題研究会の「学校司書ってこんな仕事」という本なども読み、大変感動を覚ました。
 「子ども達は知りたいことが一杯、しかも、それは待ったなしの場合が多い、子どものすぐ身近にある学校図書館だからこそ、その知りたい気持ちに応えることで、調べることがとても楽しくなるし満足感がある。それが次につながるのだと思う。これが学校に図書館があることの大切さだ。子どもだけではなく、教師も授業で使いたい本、群読に向く詩を紹介してほしいとか、説明文を理解させるのに教科書以外適当な本ないか等、その依頼に応えて資料を提供している」とのことです。
 また、「『ぼく、ほんまに図書館好きや』『ここがいちばん落ち着くわ』と、くつろいでいる子どもたち、『何かおもしろい本ない?』と聞いてくる子どもたち、子どもたちと本をしっかりつなぐには、学校図書館がいつも開いていて、そこに学校司書がいて、教職員の相談に応じ常に授業に活用でき、子どもたちに資料提供しているという、日常的な図書館活動があってこそ。いつでも誰でも自然に"ふだん使い"できる学校図書館があってこそのこと。子ども達に図書館の達人になってほしい。本を通して時空を超えて人の思いとつながり、様々な知識や新しい世界に出会え、知ることの喜びを感じてほしいと思って活動している」など、子どもや教師の支えとなり、本と人を結びつけ、特に子どもたちの知的好奇心を呼び覚まし、「生きる力」を与える専門職としての優れた実践が重ねられています。
 法案審議にあたり、衆参両院でそれぞれ6項目にわたる付帯決議がつけられました。そのなかで、衆議院の附帯決議では、「(三)政府及び地方公共団体は学校司書の職務の重要性を踏まえ、学校司書が継続的・安定的に職務に従事できる環境の整備に努めること。」、また参議院の附帯決議では「(三)政府及び地方公共団体は、学校司書が継続的な職務に基づく知識・経験の蓄積が求められるものであること等に鑑み、学校司書が継続的・安定的に職務に従事できる任用・勤務条件の整備に努めること。」とされています。学校司書を配置する上で、専門性と安定的な雇用を求めているのです。

Q3 学校司書の専門性と雇用のあり方についてどう考えているのか、認識を伺います。

   私たち日本共産党都議団は、今年11月に都内各区市町村に対し「小・中学校の学校司書等の配置に関する調査」を行いました。調査結果の十分な分析はこれからですが、学校図書館への司書などの職員の配置に前進がはかられていることがわかりました。23区と多摩地域の自治体のうち、全小中学校の図書館に司書などの職員を配置している区市町村は、小学校では16区(69.6%)、20市(76.9%)、3町村(75%)でした。中学校では15区(65.2%)、21市(80.8%)、3町村(75%)でした。小中学校いずれも配置していないのは3区1町、小学校未配置は1区、中学校未配置は1区2市となっていました。他の自治体は一部の小中学校に配置しています。
 資格要件として、司書を配置しているのは9区8市、司書又は司書教諭としているのは6区14市1町、特に資格を求めていないのは3区4市2町でした。
 配置時間は自治体によりまちまちで、1日5〜6時間、学校がある日は毎日配置しているなど、1校あたりの配置時間が年間1000時間をこえているのは4区(足立区は中学のみ)5市2町とでした。その一方で、1週間に1日しか配置していない自治体は6区(大田区は小学校のみ)1市1村でした。夏休み中も配置している自治体は13区16市1町(奥多摩町は中学のみ)となっていました。
 雇用形態は、非常勤が6区17市3町村、業務委託が8区5市、有償ボランテアが3区2市、他は派遣、臨時、嘱託、指定管理などで、すべてが非正規の不安定な雇用となっており、しかも契約期間も1年又は1年未満がほとんどであり、更新も6回までが国立、東大和、武蔵村山の3市で、5回までが品川、渋谷、杉並の3区となっているなど、身分的には非常に不安定なものとなっています。
 子どもたちにとって、学校でいつも図書館が開館していて専門の司書が支援するなかで、休憩時間や放課後などに自由に利用できるかどうかは、読書の喜びを知り、知的好奇心を喚起する上で重要です。
 雇用の実態が非常勤や業務委託など、身分的に不安定で契約期間も短期なものとなっていては、職務の継続によって蓄積されるはずの知識や経験が生かされず、衆参両院の付帯決議にもそぐわないと考えます。
 今、子どもの貧困が社会問題になっているなかで、親の経済力により本との出合いがない子どもも増えているといわれています。どの子も本とふれ合い、読書の喜びを感じ、主体的に学び、生きる力につながる学びの保障の基礎となる学校図書館の充実は欠かせません。
 その点からも、東京都内にある小中学校の学校図書館の充実は重要です。法施行にあたり、都が率先して拡充に務めることを求めます。島根県などは市町村への財政補助を続け、ほぼ全校に専任の司書が配置されました。この点からも都が果たすべき役割は大きいと考えます。

Q4 都内に住む子どもたちすべてが読書の楽しみを味わうことができ、子どもたちの学ぶ権利、読書の権利を保障する場として、小中学校の学校図書館に、専門性を持った学校司書を専任で正規配置することが必要です。都として正規職員を配置する、また正規配置できるように区市町村を支援すべきと考えますが、いかがですか。

 都立高校では、学校司書の民間委託が進められ、全都立高校の3分の1の61校の図書館業務が委託されています。しかも競争入札のため年々委託費も低下傾向あります。そのことはそこで働く専門家である学校司書の待遇に影響することは明らかです。
 都教育委員会はかつて、全国に先駆けて都立高校に学校司書を配置し全国をリードしてきました。しかし2000年以降、学校司書の定数を減らして退職不補充とし、2011年度からは学校司書業務を1年契約で民間企業に委託しているのです。

Q5 都立高校図書館の民間委託をやめ、都として学校司書の採用を再開し、図書館業務の継続・充実を図るよう求めるものです。

二、樋口一葉ゆかりの国有形登録文化財"旧伊勢屋質店"を残すことについて

 明治の作家、樋口一葉(1872−1896年)が通ったことで知られる文京区本郷の旧伊勢屋質店が取り壊される危険のあることが、マスコミでも報道されています。地元では愛着を持つ人たちを中心に「一葉の伊勢屋質店を残す会」が結成され、保存のための運動が、急速に広がっています。
伊勢屋質店は1860(万延元)年に創業し、1982(昭和57)年に廃業するまで本郷菊坂(現文京区本郷5丁目)で122年続いた老舗です。木造2階建ての土蔵と見世(みせ)、木造平屋の座敷の計3棟(延べ床面積174.3u)からなっています。蔵は幕末に足立区鹿浜で創建されたものを、1887(明治20)年に移築、座敷は1890年、見世は1907年に建てられました。
 一葉は、1890年9月から1893年7月までの3年間、本郷菊坂に住み、その後下谷龍泉寺町(台東区)に転居しましたが、翌94年5月には菊坂に近い丸山福山町に移り住み、赤貧暮らしの中でしばしば伊勢屋に通ったことが日記にも登場しています。そして2年半後の1896年11月23日に亡くなりました。東京大学赤門前の法真寺近辺は、一葉が幼少期を過ごし、晩年「桜木の宿」と言って懐かしんだ場所で、旧伊勢屋質店とその周辺は、一葉の後半生が凝縮されている地域でもあります。
質店の建物は、経営者の家族が代々大切にし、関東大震災、東京大空襲、バブル期の地上げも乗り越えました。一時期、小金井にある東京たてもの園への移築の話もありましたが頓挫し、2003年「旧伊勢屋質店」として国有形登録文化財に指定されています。
 一級建築士で文化女子大学講師の伊郷吉信氏は「伊勢屋質店の魅力を語る」シンポジウムで、「伊勢屋質店は山手線内で最古の商家建築である。土蔵は江戸時代に建築され、明治20年足立区鹿浜から移築され、建物の記録がきちんと残っている貴重なものである」と述べ、現在地に残すことの意義を強調しています。伊郷氏はまた、「文豪ゆかりの店であり、坂の街文京区の象徴でもある。明治の商家の生活を伝える生活史、建築史、都市史など、多くの観点から貴重な遺構」と評価しています。
 2002年からは、市民団体「文京の文化環境を生かす会」と「たてもの応援団」の協力で、毎年11月23日の一葉忌に一般公開され、13年間で9000人もの方々が訪れている建物でもあります。
 現在、東京都内は再開発などがすすんでいますが、それにより貴重な文化財が失われるようなことは避けなければなりません。

Q1 先人の文化遺産・文化財を保存し、後世に引き継いでいくべきと考えますが、見解を伺います。2020年のオリンピック・パラリンピック開催都市としても、文化的な財産を大切にすべきではないでしょうか。

Q2 都として、旧伊勢屋質店の文化財としてまた歴史的建造物としての価値を改めて検証し、文京区と連携して、旧伊勢屋質店を残すための手立てをとるよう求めます。

以 上