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■政策と主張

2001年度予算案にたいする日本共産党の提案

税収増を活用し、福祉復活、介護保険の減免など、福祉・くらし主役の予算に組替を

2001年3月23日
日本共産党東京都議会議員団

 深刻な不況がつづくなか、自民党を中心とした政府がすすめてきた社会保障のあいつぐ切り下げは、都民にかつてない苦渋の生活をおしつけています。くわえて、今国会に提案されている来年度政府予算案では、70歳以上の老人医療費負担増、65歳以上の介護保険料を半額にする経過措置の打ち切り、60歳以上の年金の賃金スライド停止など、2兆円もの新たな負担を高齢者にもたらそうとしています。
 こうしたもとで、政治に求められているのは、福祉、社会保障をめぐる深刻な事態をどう打開するかであり、住民生活に密着した自治体にとっても、どのように、都民のくらしと福祉を守るのかが問われています。
 ところが石原知事はこうした都民の願いに背をむけて、昨年、都民の命綱となってきたシルバーパスの全面有料化、老人医療費助成(マル福)と老人福祉手当の段階的廃止、さらに障害者の医療費助成、重度障害者手当などを削減しました。今定例会に提案されている来年度東京都予算案は、介護基盤整備などについて拡充が見られるものの、全体として福祉切りすてをさらにおしすすめ、本格的に実行するものとなっています。
 石原知事は福祉切りすてをすすめるうえで、都財政危機を最大の口実にしましたが、今年度と来年度の税収増が8,400億円にものぼり、「財政再建推進プラン」がかかげた「財源不足」の根拠はくずれ、これ以上の福祉切りすてをつづける道理がないことがあきらかとなりました。税収増の一部をあてればマル福などをもとに戻すことは十分可能です。
 一方、来年度予算案では、臨海副都心開発や幹線道路建設など、財政難の原因である大型公共事業は相変わらず温存され、投資型経費は、首都高速道路公団などへの貸付金なども含めれば1兆1千億円といまだバブル前の2倍近くの水準となっています。その一方で「重点化」の名のもとに減らされているのは、生活道路や新規建設ゼロの都営住宅など、都民生活に密着した事業が中心です。
 借金に依存した大型公共事業が継続されている結果、都債の残高は、来年度、一般会計だけで2,880億円も増え、都債の残高、すなわち借金は7兆7,580億円と、史上最高の記録を塗り替えるものとなります。
 不要不急の大型公共事業などの浪費に本格的なメスを入れ、税金の使い方を福祉・くらし優先にきりかえるなら、都民に犠牲を押しつけることなく、都民施策をさらに拡充するとともに、都財政を立て直すことは十分できます。
 わが党は、このような立場から、これ以上の福祉の後退を許さず、切りすてられた福祉をもとにもどすこと、介護保険料・利用料の減免を実施することなどを中心に、来年度予算案を以下のように組み替えることを提案し、予算特別委員会に動議を提出するものです。
 今回の提案は、都政を都民が求める方向へ転換するうえで、税収増を活用し、福祉をもとにもどすなど、まずこれだけはふみ出すべきという最小限の項目にしぼり込んだものとしています。編成替えの対象も、一般会計予算案を中心とし、他の会計の編成替えは、関連して修正が必要となるものにとどめました。編成替えの規模は、一般会計予算の2.9%程度ですが、都がこの方向に踏み出すことは、必ずや都民の願いにこたえるものとなると確信するものです。

日本共産党の予算組み替え案のポイント

1. シルバーパス全面有料化、老人医療費助成・老人福祉手当の廃止、障害者やひとり親家庭の医療費助成への本人負担導入など、切りすてられた福祉をもとにもどす。
2. 介護保険の保険料・利用料減免制度の創設、フリーター支援、30人学級の計画的実施への準備など、福祉、医療、雇用、営業、子育て、教育、環境など、切実な都民要求を各分野で前進させる。
3. 臨海副都心開発関連事業をはじめとする、不要不急の大型公共事業予算を1500億円削減し、新たな都債発行額を472億円削減する。

1.福祉の切り下げをやめる

 今年度から実施された経済給付的福祉事業の切り下げは、年金ぐらしの高齢者、障害者やひとり親家庭など、行政の支援が本来もっとも必要な人たちを直撃し、その命綱をうばうものです。一年が経過し、都民生活に及ぼすその影響の重大さ、道理のなさがあらためて明らかになりました。福祉の切り下げはやめ、かけがえのない制度をもとにもどします。

1 シルバーパス全面有料化をやめる

 全面有料化は、住民税非課税の人への負担のおしつけと所得制限強化で10万5千人から無料パスをとりあげる結果となりました。シルバーパスは、高齢者の生活と社会参加の権利を保障し、敬老の理念をこめたものであり、無料パスを復活します。

2 マル福をもとにもどす。老人福祉手当は削減をやめ拡充する

 マル福と老人福祉手当は、低所得者への何らの配慮もなく段階的に廃止とされています。こうした段階的廃止計画は中止し、マル福は65歳からの制度にもどします。老人福祉手当は削減をやめ、介護保険実施後の寝たきり・要介護高齢者のサービス利用状況や利用料負担の実態をふまえ、必要な拡充を行います。

3 障害者への医療費助成、重度・福祉手当、児童育成手当の切り下げをやめる

 生きることと医療がきりはなせない障害者にとって、医療費助成や重度手当などの切り下げは生存権にかかわる問題です。とりわけ、切り下げの被害が集中する重度障害児の家庭では、重度手当、医療費助成、児童育成手当を同時にとりあげられ、年100万円を超える負担増にもなる場合もあることが、あらためて明らかになりました。

4 ひとり親家庭、公害患者などの医療費助成の負担強化をやめる

 不況、リストラの直撃をうけ苦しんでいる、ひとり親家庭の医療費助成への本人負担導入はやめ、もとにもどします。公害患者や被爆者の子などの医療費助成は行政としての当然の責任であり、無料制度にもどします。

5 特別養護老人ホームへの都独自補助を増額する

 介護保険実施と同時に都独自の補助が大幅削減され、東京の特別養護ホームの多くが、運営が苦しくなり職員削減や利用者サービスが後退する事態となっています。長年にわたり築いてきたサービス水準を維持できるよう、特別養護老人ホームへの補助を増額します。

2.介護保険の減免、雇用、営業、子育てなど緊急で切実な都民要求を実現する

 限られた財源を有効に生かし、少子高齢化社会に対応する施策をはじめ、各分野で緊急・切実な都民要求を実現します。
 重すぎる保険料、利用料の負担で、保険料の未納、サービスの利用抑制などの深刻な事態を生んでいる介護保険については、都内38自治体が何らかの減免制度に踏みだし、都としての対策が急がれています。都として保険料、利用料の減免を実施します。
 「福祉改革推進プラン」の水準にとどまらず、老人保健施設やショートステイなど全国最低水準の介護基盤整備をひきあげるための予算を積極的に確保します。
 深刻な不況、リストラの直撃をうけている都民、中小企業を応援するために、青年の雇用確保ためのフリーター向け総合相談や若者サポートプラン、工業集積地域活性化事業の継続、元気を出せ商店街事業の拡充などをおこないます。
 子どもたちが基礎学力を身につけ、楽しく学校生活がおくれるよう30人学級への準備予算や、切りさげられた私学助成の復元などをおこないます。
 女性財団や商工指導所、緑の相談所などの都民生活に密着した事業の廃止や縮小を許さず、存続させます。
 昨年、強行された都営住宅家賃の減免制度の改定は、所得の低い居住者に深刻な打撃をあたえており、もとの制度に戻します。

3.臨海副都心開発をはじめ、不要不急の公共事業にメスをいれる

 今日の都財政難の最大の原因は、バブル崩壊後、税収が大幅に減小したにもかかわらず、借金に依存した大型開発を継続したことにあります。このため一般会計だけで7兆円を超える借金をかかえ、そのための借金返しは、来年度5,000億円を超える規模になっています。
 都の来年度予算案は、この点を反省してメスを入れるのではなく、もっぱら都民施策にしわよせするだけで、肝心の大型公共事業は重点化と称して温存、拡大しています。
 長野県知事の「脱ダム宣言」、大阪府の開発行政の見直しなど、公共事業の見直しは、時代のながれ、全国の自治体の流れになりつつあります。
 この立場から不要不急の大型公共事業を中心に、浪費にメスを入れます。
 破たんが明白な臨海副都心開発は、来年度5年目の見直し時期にあたることからも、いったん事業を凍結し、都民参加で抜本的に見直します。あわせて関連する幹線道路建設などの予算を削減します。
 住環境破壊、都財政難をもたらす幹線道路や大企業奉仕の環2再開発や汐留地区区画整理などの大型公共事業を縮小し、財源を確保するとともに、生活道路や交通安全施設などの生活密着型公共事業の予算を拡充します。本来、都が負担すべきではない首都高速道路中央環状線の無利子貸付や国直轄事業負担金などは原則として削除するなど、財政支出の適正化に努めます。
 税収増で積立をおこなう社会資本整備基金は、過大なものとせず、適正な規模に抑制します。

組み替え予算のフレーム

  1. 浪費とムダを削り、生み出された一般財源700億円を、福祉・くらし切りすてをもとにもどし、都民施策の充実をはかる財源にあて、予算の均衡をはかりました。
  2. 借金財政からぬけだし、都民本位の財政再建にふみだすため、大型公共事業を中心にした投資的経費の削減と生活密着型公共事業の差し引きで、都債発行を472億円減額しました。この結果、一般会計予算の規模は6兆1,187億円となります。
歳出の減額削減額捻出される一般財源都債の削減額
(19項目)▼1791億円▼700億円▼ 644億円
歳出の増額増加額必要となる一般財源都債の発行額
(64項目)919億円690億円172億円
差し引き予算の増減額財源の増減額都債の増減額

▼ 873億円▼ 10億円▼ 472億円

※ 捻出される一般財源の残10億円は、使用料値上げをやめることによる歳入の減10億円と相殺される。
(全体の一般会計予算規模)

予算案増減額編成替え後の予算規模
6兆2060億円▼873億円6兆1187億円