福祉、教育など、のきなみ削減の石原都政の来年度と今年度補正予算
「都市再生」中心あらため、都民生活の防衛に全力あげよ
私は日本共産党を代表し、第一号議案「平成十七年度東京都一般会計予算」他八十四議案に反対し、わが党が提案した「東京都重度要介護高齢者手当に関する条例」及び「老人医療費の助成に関する条例の一部を改正する条例」に賛成する立場から討論をおこないます。
雇用不安の増大と地域経済の低迷、くわえて小泉政権がすすめる定率減税廃止、年金改悪、介護保険料の引きあげなどによる七兆円の大増税・負担増が、都民のくらしと営業を直撃しているもとで、都政が果たすべきことは、「住民の福祉の増進」という地方自治体の本来の立場に立ちかえって、都民のくらしと福祉、教育、中小企業支援など、都民生活の防衛に全力あげるということにほかなりません。
わが党は、本議会を通じて、石原都政の六年が、「改革」の名のもとに福祉や教育など都民施策がのきなみ切りさげられる一方、超高層ビルと大型幹線道路中心の「都市再生」に重点的に予算が配分されるという、都民の願いとはおおきくかけはなれたものであることをきびしく指摘するとともに、全国の道府県が福祉予算を拡充しているもとで、ひとり東京都だけがこの四年間で福祉関係費を八五六億円も削減してきたことを明らかにしてきたところです。
こうしたもとで、知事が提案した来年度予算案は、来年度三千三百億円、今年度最終補正予算をあわせると六千億円も都税収入が伸びたにもかかわらず、この切実な都民の願いに応えることなく、「第二次財政再建推進プラン」と「第二次都庁改革アクションプラン」にもとづく福祉や教育、中小企業、住宅、環境などの切りすてをさらにおしすすめるものとなっており、その影響は都民生活のあらゆる分野におよんでいることは重大です。
福祉予算について言えば、国の「三位一体改革」による国民健康保険の都負担化による歳出増を除けば実質減であり、老人医療費助成をはじめとする経済給付的事業や特別養護老人ホームの整備費や運営費補助などが高齢者福祉の予算がおおきく削減され、子育て支援の要となる認可保育所の拡充や子ども医療費助成の拡充、乳幼児医療費助成の所得制限の撤廃などの切実な要望をつめたく拒否するものとなっています。
一方、知事が拡充を約束した基盤整備は、施設整備費がひくつづき削られ、特別養護老人ホームや老人保健施設、療養型をあわせた介護三施設の整備状況は全国最下位にとどまっています。認知症高齢者グループホームも全国最低であり、東京の福祉はその地位を、全国のなかでどんどんさげているのであります。
教育についても、はげしい切りすてがすすめられた結果、一〇年前の一九九五年度をピークに教育費も私学助成もおおきく削減されています。
都民の切実なねがいとなっている三十人学級について、わが党は、学力不振や不登校、いわゆる小一プロブレム問題などを解消し、ゆきとどいた教育をすすめるうえで、三十人学級が不可欠となっていること、また、三十人学級をはじめとした少人数学級が、学習面だけでなく、生活面でもきわめて高い効果を上げていること、全国では超党派の要求で実現されていること、未実施県が東京都と香川県の二県だけとなったことを具体的に示し、理をつくしてその実現に踏みだすようもとめましたが、知事と都教委が「聞く耳持たぬ」とばかりに、三十人学級をかたくなに拒みつづけていることは、きわめて異常なことと言わざるを得ません。この問題では、昨日の中央教育審議会において、鳥居会長が、「三十人学級を中心とした手厚い教育が必要であるのはもうすまでもない。中教審としてこれから審議の対象となる」と答弁したことはきわめて重要です。知事が、このことを真摯に受け止め、三十人学級にふみだすことをあらためて求めておくものです。
中小企業対策予算についても、かつて、東京の中小企業対策は、予算でも施策の内容でも全国のトップクラスの位置をしめていましたが、それがいまや予算額で大阪府の半分、事業所当たりの予算では全国三十七位に転落していることが明らかになりました。来年度は、工業集積地域活性化事業の打ち切り、さらなる制度融資の後退などが計画されており、ものづくりの生きのこり支援のために試験研究機関を拡充している大阪府や、借換融資を改善し、実績をおおきく伸ばしている京都府などとくらべると、その姿勢の違いは明らかです。
以上のほかにも、都民要望の高い公的住宅、木造個人住宅の耐震補強、公園、障害児学校の改修など緊急で切実な都民要望がなおざりにされていることも、きびしく問われなければなりません。
来年度予算案のもう一つの問題は、超高層ビルと大型幹線道路中心の「都市再生」など大型開発を温存、拡大し、ひきつづき一兆円規模の予算をつぎこもうとしていることです。このため都債の残高は六兆八千五百億円という過去最高水準に達して、都財政と都民施策を大きく圧迫するものとなっていることを、わが党はあらためて明らかにしたところです。
なかでも、首都高速道路中央環状品川線は、公団の民営化で事業の先行きが見えないからと言う理由だけで、都が直轄事業として建設することを決め、さらには、従来方式の五百億円よりも二・五倍の千二百五十億円も税金を投入して建設するものであり、受益者負担の原則で建設されてきた有料道路を都民負担で建設することの是非、今後、建設費がふくれあがる危険の検討、さらには人口減少時代をむかえるなかでの三環状道路の是非など、解明が必要な問題とともに、都民的な合意が形成されていないなど課題が山積みされているのであります。あらためて計画を凍結し、都民参加で再検討することをつよく求めるものです。
臨海副都心開発でも、石原都政のもとで約二兆円の財政支援がおこなわれ、今後さらに約一兆円を超える財政投入がさけられないことが浮きぼりとなりました。こうしたもとで、産業労働局所管の二つの三セクビルの法的破たん処理が表明されたことは重要であり、今後、臨海副都心開発及び残り港湾局所管の三セクビルの破たん処理にただちに着手することをつよく求めておくものです。
日本共産党が提案した予算組み替え提案は、超高層ビルと大型幹線道路中心の「都市再生」や臨海副都心開発などの不要不急、浪費型の大型公共事業の予算を削減し、一般会計の五%程度を組み替えることによって、都財政の立て直しに踏みだすとともに、若者の雇用対策、老人医療費助成など経済給付的事業の復元、小学六年生までの医療費無料化と乳幼児医療費助成の所得制限の撤廃、三十人学級の実現、商工業支援など、切実な都民要望にこたえる方向であることを確信するものであります。
わが党が提案した「東京都重度要介護高齢者手当に関する条例」は、要介護度四と五の高齢者に月一万円の手当を支給することで、経済的負担の軽減をはかり、介護サービスの利用促進、生活の安定に資することを目的にしたものであります。また、「老人医療費助成に関する条例の一部を改正する条例」は、高齢者の受診抑制が増大しているもとで、これ以上の縮小・廃止することを中止し、六七歳から六九歳までの助成制度を継続するものです。年金改悪や介護保険の見直しというあらたな負担増から高齢者のくらしと健康をまもるための最小限の提案であり、各会派のご賛同をお願いするものです。
青少年健全育成条例の改定案は、これまでの東京都の青少年行政を根本的に変更することとなる「淫行処罰規定」あらたに条例にもりこむものであります。この問題では、これまで青少年問題協議会で検討されてきたものであり、そこでは、「みだらな」という抽象的な概念で大人社会の硬直的な価値基準を青少年に押しつけることが、青少年の性的自己決定能力を育む機会を失わせる危険があるものであることがいくどとなく、論議され、今日まで条例化することが見送られてきたのであります。これまでの青少年行政の到達と青少年問題協議会での二〇年にわたる論議を否定する今回の条例案は認められません。
日の丸・君が代の強制について、わが党は、生徒の内心自由を踏みにじることは憲法違反であり、その指導にあたっては、「強制」されることはないという法制定時の国会論議をふくめ教えること、先生にも内心の自由が認められていることを指摘し、強制をやめるようもとめました。都教委は、生徒が立たなくても、生徒には何の不利益がない、そのことをもって先生が処分されることもないことを表明したことは、重要であり、日の丸・君が代の強制とそれを理由とした先生の処分はおこなわないことをつよくもとめておくものです。
最後に、社会福祉法人東京都社会福祉事業団が運営している東京都社会福祉総合学院の運営及び財産にかかわる問題についてですが、昨日の百条委員会でわが党の証人尋問よって、二月二日の浜渦副知事に対する財務局、総務局、福祉保健局の各局長のブリーフリングでは、浜渦副知事が、「この件については奥が深くかなり問題だ。場合によっては刑事告発もある」と述べたことが記述されていること、および同じく二月二日には、「弁護士意見」が提出されていたこと、さらには、昨年、東京都社会福祉総合学院と文京区小日向にある東京都社会福祉保健医療研修センターとの統合計画が財務局の所管する都有財産利活用検討委員会で検討されていた事実が明らかにされました。また、本来、東京都が責任をもつべき社会福祉の事業について、石原知事の承認のもとに、民間にゆだねることがすすめられてきたことも明らかにされました。
わが党は、ひきつづき、事実の解明と、民間活力活用という石原都政のすすめる「福祉改革」のあり方について、都民の立場から論議をつくすことを表明し、討論を終わります。