【談話】「2021年度東京都予算案」について
「2021年度東京都予算案」について(談話)
2021年1月29日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 和泉なおみ
コロナ禍なのに都立・公社病院を後退させる独法化推進、大型道路建設に巨額の予算
本日発表された「2021年度東京都予算案」は、ひと言で言えば自民党型都政推進予算です。
予算規模は総額15兆円を超え、ノルウェーやスウェーデンの国家予算に匹敵します。いまこそ、その財政力を発揮してコロナ対策に集中すべき時です。
ところが予算案には、崩壊の瀬戸際にある都内の医療を支えている都立病院の医療スタッフを本格的に増やす姿勢がありません。コロナ専用病院開設やコロナ専門病床を増やしているのに、わずかに医師1人、看護師8人増やすだけです。しかも、都立・公社病院を後退させる独立行政法人化準備予算を今年度の6倍、39億円もつけています。これは独法化を中止すれば必要ない予算です。39億円ものお金があるなら、医療の充実のためにこそ使うべきです。
また、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、認知症高齢者グループホーム、障害者(児)施設の整備予算はのきなみ大幅減額で、認可保育園整備を支援する待機児童解消区市町村支援事業の予算も減額となりました。都営住宅は超高倍率にもかかわらず、石原都政以来22年間、新規建設ゼロがつづいています。国民健康保険の高すぎる保険料(税)がコロナ禍による生活困難と重なって多くの都民が苦しんでおり、値上げしないで据えおく自治体や、子どもの均等割軽減に踏み出す自治体が都内で生まれています。ところが、都の予算案には独自の対策が盛りこまれていません。
一方、陥没事故が大問題になり、いまだ原因解明がされていない東京外かく環状道路(外環道)、まちの分断・立ち退きなど住民の反対がつよい特定整備路線などの大型幹線道路建設だけでも900億円もの巨額が計上されています。
カジノ誘致の検討予算は8年連続計上され、「世界を惹きつける観光都市の実現」を掲げ、海外旅行客の需要回復へのPR、富裕層をターゲットにした夜間の観光資源開発などの新規事業が並んでいます。大型旅客機の都心上空低空飛行を固定化し、さらに拡大する羽田空港機能強化の調査費も計上されています。
今夏の五輪は中止し、コロナ対策に集中を
予算案は、東京2020大会の実施を予算編成方針の3つの柱のひとつに位置づけ、延期にともなう追加経費の都負担1,200億円をふくめ、4,224億円もの巨額の五輪関連予算を計上しています。さらに、大会には1万人以上の医療スタッフが必要であり、大会を支える「オリンピック病院」は、墨東、広尾、多摩総合の3つの都立病院などコロナ患者を受け入れ、対策の最前線に立っている病院ばかりです。今夏の五輪は中止し、東京都の持てるあらゆる力をコロナ対策に集中すべきです。
都は、コロナ対策は補正予算で対応すると言いますが、第3波の入口だった昨年11月末以降の補正予算では、総額4,500億円のうち約8割の3,500億円が国庫負担で、都の持ち出しはわずか2割です。要するに、国が実施する対策の範囲内でしか補正予算を組んでいません。当初予算に、検査体制の抜本的拡充、医療機関への損失補てん、医療提供体制の確保、保健所の本格的な体制強化、事業者に対する自粛に見合う補償などを、きちんと盛りこむことが必要です。
日本共産党都議団の論戦・提案と都民運動の力で切り開いた貴重な前進も
子どもたちが学校でソーシャルディスタンスをとりながら、きめ細かい教育を受けることができるよう少人数学級実現をという世論のひろがりを受け、国は40年ぶりに学級編成基準の改定を行い、東京でも小学校2年生から5年間かけて35人学級がスタートします。初年度予算として2億円が計上されました。さらに都が前倒しして、小中高全学年での少人数学級の実現に踏み出すべきです。
中小企業の営業を守るため、制度融資が拡充され、保証料補助や利子補給を都が行うことや中小企業で働く従業員への融資が拡充されたことは重要です。また、新型コロナの影響により住まいを失った方や就職氷河期世代への支援、再就職を目指すなど困難に直面している方たちに寄り添った緊急雇用対策など、約2万人を超える雇用を創出するための支援が盛りこまれました。
日本共産党都議団がくり返し求めてきた児童相談所の体制強化のため、児童福祉司、児童心理司が59人増やされます。福祉人材確保に効果をあげてきた保育従事職員宿舎借り上げ支援事業は今年度終了予定でしたが、来年度も継続され、対象人数も約8千人増えます。障害者施設で働く職員への宿舎借り上げも拡充されます。また、公的支援につながりにくい若い女性とつながり支援する若年被害女性等支援モデル事業が、わが党が提案したとおり本格実施となり、相談や居場所の確保などを行う民間団体に対し3倍を超える予算が計上されました。不妊治療費助成の拡充、若年がん患者の生殖機能温存治療等に対する助成の新設も、待ち望まれていたものです。
わが党は、利用者10万人未満の駅もふくめたホームドアの整備促進を働きかけてきましたが、補助予算が1割増となり、都営浅草線のホームドア整備も着実に推進されます。防災では、住宅耐震改修について補助の上限額が引き上げられ、水害対策の河川監視カメラ設置、多摩河川の治水能力強化、東部低地帯における堤防、水門等の耐震・耐水対策などが増額され、避難所における感染症対策物資購入費補助が新設されます。デイタイム救急隊もふくめ救急車4台、救急隊員が24人増えます。
多摩・島しょ地域への支援拡充では、市町村総合交付金が5億円増額され、多摩産業交流センターの整備、犯罪被害者支援の多摩地域への相談窓口設置、都立特別支援学校の八丈分教室設置、伊豆諸島、小笠原諸島の住民の交通手段を確保するための航路補助拡充などが盛りこまれました。
都民のいのち、くらし、営業を守りぬく予算に
現在18議席の日本共産党都議団がさらに大きくなれば、都民の切実な願いを実現する力が大きくなります。日本共産党都議団は、予算の組み替え提案を行うことをふくめ、コロナ禍のもと都民のいのち、くらし、営業を守りぬき、自己責任ではなく、都民を支えるあたたかい都政を進める予算へと切りかえるよう全力をつくします。
以 上
★2021年度東京都予算案の概要(東京都のホームページ)