【談話】2020年度東京都予算案について
「2020年度東京都予算案」について(談話)
2020年1月24日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 和泉なおみ
(1)福祉・くらしを守るべき予算案としての重大な問題点
本日、小池知事の任期最後の「2020年度東京都予算案」が発表されました。その内容には、都民の福祉・くらしを守るべき東京都の予算案として、重大な問題点があります。
きわめて重大な問題は、すべての都立病院・公社病院について、独立行政法人の運営に移管するための6億円の予算を計上したことです。
独立行政法人化は、コスト削減などを目的に、都が直接責任をもつ運営をやめて、より「民営化」に近い運営にきりかえるものです。全国各地の独立行政法人化された病院では、経営の効率化や採算性が強調され、病院の廃止や大幅な病床数削減、差額ベッド料の引き上げなど、公的に担う医療の後退、患者負担増につながっています。
小児や周産期、障害者、難病、災害医療など、不採算であっても都民に必要な医療を提供し、セーフティネットの役割を果たしている都立病院、公社病院は、都の役割を強化し拡充することこそ必要です。
また予算案は、特別養護老人ホームの整備費補助も、介護老人保健施設の整備費補助も、認知症高齢者グループホームや地域密着型サービスの整備予算も、のきなみ大幅減額となっています。知事は、「長寿」を重視した予算案だと言っていますが、実際の中身は違っています。
高齢者、非正規で働く人、小規模事業者などが加入する国民健康保険の保険料(税)は、毎年のように値上げされ、重すぎる負担に多くの都民が苦しんでいるにもかかわらず、予算案に新たな対策は、何らもりこまれていません。後期高齢者医療制度の保険料値上げも大問題になっていますが、負担軽減策はありません。
都営住宅は、宝くじなみの倍率にもかかわらず、石原都政以来21年間、新規建設ゼロの予算がつづいています。大震災から命を守るために待ったなしの課題である住宅耐震化助成も、今年度につづき大幅減額です。
子どもたちの教育条件充実のためにも、教員の命と健康を守るためにも急務となっている「教員の働き方改革」への抜本策はなく、小中学校の少人数学級の前進も具体化されていません。
一方、1メートル1億円の外かく環状道路建設を相変わらず推進し、さらに東名高速以南にまで延ばす調査費を予算化しています。また、まちの分断・立ち退きなどに多くの住民が反対している特定整備路線の道路建設に、561億円もの予算をつけています。
小池知事と国は、巨大旅客機の都心上空超低空飛行を強行しようとしていますが、予算案には、さらにその拡大につながる羽田空港機能強化の調査費が計上されています。
カジノ誘致をめぐり、担当副大臣であった東京選出の現職国会議員が贈収賄で逮捕されるなど、一大汚職事件になろうとしているなかで、小池知事は、カジノ誘致の調査検討予算をひきつづき計上しています。人のお金を巻き上げ、ギャンブル依存症をふやすカジノは、東京にも全国にもいりません。
東京オリンピック・パラリンピック大会を、都民生活充実の中で成功させることが求められ、五輪経費の縮減・透明化は小池知事の明確な公約であるにもかかわらず、都の負担だけで1兆3,700億円にまでふくれ上がっています。「2020年度予算案」にも、大会経費と関連経費をあわせて約4,500億円もの巨額が計上され、しかもスポンサー企業との契約金額は多くが非公開とされています。これらは重大な公約違反です。
(2)都民世論と結んでの前進面も
日本共産党都議団の論戦・提案や、都民運動の力で切り開いた、貴重な前進もあります。
私立高校に通う生徒の授業料は、年収910万円の世帯まで無償になります。私たちはさらに、入学金の無償化を求めていきます。都立・私立高校等での多子世帯への授業料支援や、人工呼吸器の児童・生徒が保護者の付き添いなしに学校生活を送れるように支援するなどの医療的ケア児の受け入れ施策が拡充されたことも重要です。
児童虐待防止対策では、児童相談所の児童福祉司が35人、児童心理司が23人増員されます。介護職員宿舎借り上げ支援事業では、施設の定員数に応じて支援する住宅戸数の上限が拡充されます。鉄道駅のホームドア等整備促進事業は、新たに利用者10万人未満の駅も対象となり、2019年度の14駅から、26駅へと対象が拡充されます。
雇用対策で、就職氷河期世代への新たな雇用安定化支援策が新規事業として計上され、非正規向け特別支援が拡充されたこと、犯罪被害者支援で転居費用助成や見舞金給付金などの支援策が盛り込まれ、性暴力救援センターの支援員が増員されることも、貴重な前進です。
災害対策では、段ボールベッドの備蓄や、河川監視カメラの増設などの予算が計上されました。また、救急車3台、救急隊員30人が増強されます。
都の地球温暖化対策は、問題の重大性、緊急性に照らして不十分ですが、家庭における省エネルギー対策や、家庭の太陽光発電でうまれた電気をためる蓄電池への補助に45億円を計上したことは評価できます。
東京の農地保全のため、生産緑地買い取り・活用支援事業、地場産農産物の消費拡大支援事業が、新規事業で計上されました。
市町村への財政支援では、市町村総合交付金が20億円増額され580億円となりました。多摩都市モノレールは、上北台から箱根ヶ崎までの延伸に着手する予算が計上されました。
東京都の予算規模は、一般会計で7兆3,540億円、全会計で15兆4,522億円におよび、スウェーデンの国家予算を超えるものです。都の財政力にくらべれば、前進面はきわめて不十分です。
日本共産党都議団は、小池知事の予算案をきびしくチェックし、予算の組み替えをふくめ建設的な提案を行い、地方自治体本来の役割である都民のくらし・福祉充実に東京都の巨大な財政力を生かすために、18議席の力を発揮して全力をつくすものです。
以上