コミュニティバス実態調査について
日本共産党都議団は、今年6月、都内全区市町村を対象に行ったコミュニティバスの実態調査の結果を公表し、記者会見を行いました。2011年に行った同様の調査との比較、分析も行い、コミュニティバス運行についての特徴や課題について明らかにしました。
★会見で訴える(左から)原純子、里吉ゆみ、尾崎あや子、和泉なおみ、曽根はじめ、原田あきらの各都議(2022.11.2)
コミュニティバス実態調査について
2022年11月2日
日本共産党東京都議会議員団
*2022/11/20 一部修正
地域公共交通は、都民の自立した日常生活や社会生活を支え、都民生活の安定向上及び経済の健全な発展を図るために欠くことのできないものです。
とりわけ、地域の交通空白地域に暮らす住民にとって「コミュニティバス」が果たしている役割はとても重要です。
私たちのところにも「コミュニティバスの路線や本数を増やしてほしい」「駅から遠い病院と地域の施設をつなぐバスがあれば」など切実な要望がどの地域からも届いています。
このような住民の声にこたえ、都政 に反映させるために、日本共産党都議団は、今年6月、都内全区市町村を対象にコミュニティバスの実態調査を行いました。2011年に行った同様の調査との比較、分析も行い、コミュニティバス運行についての特徴や課題について明らかにしました。
コミュニティバスとは
法的な定義は定めがないものの、東京都は「交通空白地域や不便地域の解消などを図るため、区市町村が自らバス事業者として、またはバス事業者に委託などして運行するバス」としています。高齢者や障がい者のための移動支援として福祉施策としての側面もあります。また、一般車両を減らすことで環境負荷を減らし、渋滞解消にも役立つ移動手段としても注目を集めています。
調査範囲と項目
- 都内、全区市町村(23区26市13町村)に対して、コミュニティバスの現状について調査を実施。①運行状況 ②路線数 ③運行台数 ④運行距離 ⑤利用者数 ⑥運賃 ⑦シルバーパスの運用 ⑧収支 ⑨区市町村の補填額 ⑩都の補助額などの項目について回答を求めました。
- 全区市町村から回答がありました。
- 2011年及び2022年に実施しました。
調査結果1 コミュニティバスはほとんどの自治体で実施
(表1)実施状況について
(2022年調査)
(2011年調査)
※運行しているバスの位置づけが変わり、2011年調査では「実施している」と回答しているが、2022年調査で
「その他」「実施していない」と回答した自治体のうち2区2町については、比較のため除いています。
○実施区市町村は2011年以降増え、ほとんどの自治体で実施されています。
○調査期間後に1町で運行を開始しました。また、「導入検討中」、「試験運転実施」など3区が今後の導入を検討しており、実施自治体はさらに増える傾向です。
<区部>
2011年調査と比較すると4増(5増1減)の17区が運行実施。「その他」と回答した区の中にも、運行実態としてコミュニティバスと判断されるものが1区あります。
<多摩>
2011年調査と増減なし(1町増1村減)の24市町が運行実施。2022年調査で「その他」と回答した1村も、運行実態としてコミュニティバスを含むものとなっています。
<島しょ部>
2村が実施しています。
調査結果2 事業拡大の一方、多摩、島しょでは利用者減
〇全体として、住民の要望に応えて路線数、運行台数、運行距離を増やしていますが、多摩地域、島しょ部では利用者数が減っています。
〇区市町村の詳しい状況を見ると、利用者数の減少は、運賃増や路線数・運行台数・運行距離の減少との関係が読み取れます。この関係は区部よりも多摩地域で明らかであり、多摩格差がうかがえます。
<路線数、運行台数、運行距離>
- 路線数、運行台数、運行距離は2011年調査と比較すると、区部、市町村部で増加しています。区部では16路線、40台、77㎞が増加、多摩地域では20路線、36台、334㎞の増加となっています。
<利用者数>
- 区部は比較可能な17区のうち12区で増加し、全体も増加(383万8千人)。
- 多摩は24市町村中18市が減で、全体も減(236万2千人)。
- 島しょ部も2村とも減(1万人)。
〇利用者数が減った多摩18市の状況について
- 運賃を値上げしたところは12市です。(10円~80円/大人料金の最低額での比較)
- 路線数、運行台数、運行距離を減らしたところは10市です。そのうち7市は運賃の値上げも行っています。
- 区部は運賃をあげた自治体は4区(いずれも10円)で、うち1区で利用者・路線数・運行台数・運行距離減。(1区で利用者数、運行距離未記入)。
※シルバーパスは、5区10市1村で適用。運賃100円の区市町村での適用はなし。
調査結果3 住民の足となる重要な事業として、
不採算、負担増の中で区市町村が支えている
(表3)最近5年間の収支、補助の状況 (千円)
(注)「実施している」と回答した17区23市1町2村のうち、データ非公開等とした自治体を除く、13区22市1町2村の集計。
※各年度の普通会計決算の歳出総額に対する、区市町村の補填額の割合
○運行事業における収支は、直近5年間、1市で1年だけ黒字だった以外は全て赤字になっており、コミュニティバス事業は不採算事業となっていることが伺えます。都の補助が運行開始後3年間に限られていることは、実態にかみあっていません。
○コロナ禍の影響もあり、区市町村の負担額は年々増加傾向にあることが伺えます。
○多摩地域の負担がより大きい実態が明らかです。区市町村補填額の歳出総額に占める割合を比較すると、概ね多摩地域は区部の倍となっています。
【日本共産党都議団の提案】
〇東京都に運行費補助の抜本的な拡充を求めます
各自治体はコミュニティバス事業の拡充に努力していますが、財政負担が障害となっています。一部に運行規模を縮小したり、運賃値上げの傾向が出たりしていることは、都民生活にとって重大な影響が出ていると言えます。都はコミュニティバスへの運行費補助を運行開始後3年間に限定することをやめ、大幅に増額すべきです。
○多摩格差の解消、島しょ部への支援は急務
特に多摩地域では財政負担をはじめ課題も多く、多摩格差といっていい状況がみられます。
2023年度の町村会の予算要望は「コミュニティバスの運行は不採算事業であるが、住民の利便性の向上は必須事業」とし、市長会の予算要望では「運行経費に対する補助については新型コロナウイルスの影響により、収支状況が悪化していることから運行開始から三年間となっている補助期間及び補助要件の見直しを行い、継続的かつ地域の実情に合致する支援策を講じること」を求めています。
島しょ部を含め、早急かつ大幅に都の補助の増額が必要です。例えば、2020年度の多摩22市1町の補填額は約17億8千800万円です。都が実施している『市町村総合交付金』は2021年度585億円で、前年度より5億円、前々年度からは25億円の増となっています。政策判断として十分検討に値するものだと考えます。
○23区内でも柔軟な補助の実施を求めます
都は補助の条件で、コミュニティバスの運行ルートは原則として交通空白地域とし、駅やバス停から半径200m以遠としていますが、これは区部の実態とあわない状況がありました。この間、都は、実際の運用については自治体との協議ですすめるとし、2021年度の区部への都の補助はこの考え方にもとづいて行われたものです。さらに柔軟な対応を求めます。
以上
※配布資料
コミュニティバス実態調査について