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調査・会見

2024.06.27

記者会見 神宮外苑再開発-NHK報道から浮かび上がった新たな事実 「公園まちづくり制度」をめぐる三井不動産と東京都の深い関係

記者会見に臨む大山とも子(新宿区)、原田あきら(杉並区)、尾崎あや子(北多摩第一)、原純子(江戸川区)の各都議(写真左から)(2024.6.27)

1. NHK「ネタドリ!」が明らかにした新資料と三井不動産幹部の証言

2. 東京都が三井不動産を再開発計画に参画させた周到な手口

3. 都は、「公園まちづくり制度」活用を計画の最も初期の段階から考えていた

※会見全体はこちら→ 神宮外苑再開発-NHK報道から浮かび上がった新たな事実 (youtube.com)


■今回の調査で明らかになったこと

1.  神宮外苑再開発について、三井不動産が計画の早い段階から主導的役割をはたしていたことを、再開発の関係者の側から裏づける新たな資料と証言が、NHKの情報番組「首都圏情報ネタドリ!」(2024年4月5日放送)によって明らかとなった。

2. 都の側でも都民の目を欺いて都市計画を歪め、三井不動産の思惑をうけとめる仕組みをつくっていた。

3.  都は、「公園まちづくり制度」の神宮外苑再開発への活用を計画の最も初期の段階から考えていた。

 小池知事は、神宮外苑再開発はあくまで民間事業者による再開発だと述べています。しかし日本共産党都議団は、(1)東京都、(2)三井不動産をはじめとした民間事業者、(3)裏金議員・萩生田光一現自民党都連会長、森喜朗元首相ら自民党政治家の三者が一体になって進めてきた計画であることを東京都の開示資料などをもとに明らかにしてきました。

 三井不動産の関与についても、東京都は2015年以降であるとしていますが、日本共産党都議団はそれ以前、再開発の検討がはじまる初期のころから三井不動産が地権者でもないのになぜか深くかかわってきたことを指摘してきました。

 今年4月5日に放映されたNHK「首都圏情報ネタドリ!」が明らかにした新資料(資料①)と三井不動産幹部のインタビュー(資料②)をもとに、日本共産党都議団が独自に調査した結果、神宮外苑再開発を可能とした「公園街づくり制度」の創設をめぐる三井不動産と東京都のただならぬ深い関係が新たに浮かび上がりました。


1. NHK「ネタドリ!」が明らかにした新資料と三井不動産幹部の証言

①2013年新資料 … 2013年には「公園まちづくり制度」による高層ビル建設が検討されていた

資料①「2013年に作成された資料」とされる資料は、NHKが独自に入手した、「再開発の関係者」が作成した資料です。東京都が作成したものではないことは日本共産党都議団が確認済みです。

資料①

番組のなかでは、「どこに高層ビルを建設するのか、それを検討する」資料と紹介されましたが、「容積適正配分」「容積出地対象地区」などの文字があり、どこが一番、容積率を確保できるかを検討した資料であることはまちがいありません。事実、番組をコマ送りすると、いくつかの候補地のうち、三井不動産と、伊藤忠ビルの建設予定地の容積率が、他の候補地に比べて断然高いことがわかります。

 三井不動産のビルの建設予定地は都市計画公園区域なので、そのままでは高いビルは建てられません。つまり、この資料で検討されている内容は、「公園まちづくり制度」を使って、都市計画公園を削除することが前提になっています。

 「再開発の関係者」は、少なくとも2013年には、「公園まちづくり制度」を使って都市計画公園を削除し、高い容積率のビルを建てることを検討していたことになります。

② 三井不動産の幹部の証言 … とりまとめ役として計画を主導していた

資料②

 一方、番組に登場した三井不動産の幹部は、「再開発の関係者」が、事業の費用をまかなうためには高層ビル1棟では間に合わず、頭を悩ませ、結局、ビルを2棟建てることになった、という話をうける形で「どうしたらそういう取り組みが可能になるのか、できるのかといったところを関係各社ともいろいろ協議をさせていただいて、『公園まちづくり制度』という制度があるという中で、今回の開発が可能なのではないかということを考えて、計画の提案をして、今回に至っているという認識です」と語っています。

 すなわち、三井不動産の幹部自身の証言で、2013年の時点で三井不動産は「公園まちづくり制度」を活用して都市計画公園を削除し、高層ビルを建てる計画を持っており、そのとりまとめ役として計画を主導していたことが明らかになりました。

2. 東京都が三井不動産を再開発計画に参画させた周到な手口

 原田あきら都議が一昨年(2022年)の11月の都市整備委員会で、「2015年の覚書以前に、三井不動産と東京都は話合いの場は持っていないということか、はっきりお答えください」と質問したところ、吉野まちづくり推進担当部長(当時)は、「都は2015年4月に、三井不動産を含む関係権利者と神宮外苑地区まちづくりに係る基本覚書を締結しております。2015年4月以前に関係権利者である三井不動産と協議等を行った記録は見当たりません」と答弁しました。きわめて不自然な答弁です。

2013年6月の地区計画で外苑地区全体を「再開発等促進区」に設定

 神宮外苑再開発の都市計画・地区計画の案を作成し、都市計画審議会に提案し、決定することは、東京都にしかできないことです。

 2013年6月17日に、神宮外苑再開発に関わって、最初の都市計画・地区計画の決定が行われます(資料③)。この時の中心課題は、国立競技場の建替えです。

資料③

 ところがこの時、特に重要なのは、「再開発等促進区」の枠を神宮外苑全体に設定したことです。

 この「再開発等促進区」を、2013年当時、最初から地区全体に広く設定した最大の狙いはどこにあったのか。それは、三井不動産がごくわずかな権利をもっているオラクルビルを、この促進区の中に入れるためだったのではないかと考えられます。

 三井不動産は、オラクルビルの建物に「所有権移転請求権」を有しており、それを仮登記しています。神宮外苑地区の地権者ではありませんが、この「仮登記」によって、都が作成する地区計画の案に意見することができます(都市計画法第16条2項、同法施行令第10条の4)。その後、地区計画の具体化に三井不動産が関わる道筋が、この時、開かれたと考えられます。

また、「再開発等促進区」は、「公園まちづくり制度」の前提となるものです。「東京都公園まちづくり制度実施要綱」によれば「都市計画公園・緑地の変更を行う区域については、再開発等促進区を定めることのできる区域であること」とされています。

 つまり東京都は、2013年当時、三井不動産や「再開発の関係者」が、「公園まちづくり制度」を使って高層ビルを建てる計画について、都市計画・地区計画の決定によってこれにお墨付きを与え、サポートする仕組みをこの時、すでにつくっていたということになります。

 2013年の地区計画の決定の、国立競技場建設に隠れた真の狙いは、三井不動産をこの計画に参画させ、「公園まちづくり制度」の土台をつくることにこそあったと考えます。

 東京都は、地権者でもない三井不動産と「公園まちづくり制度」を計画に引き入れるために、都民の目を欺く形で地区計画の決定を行いました。東京都が都市計画を歪めて始まった神宮外苑再開発は、単なる民間の土地所有者が自らの土地で行う事業とは到底言えず、東京都の行為は極めて不適切です。

3. 都は、「公園まちづくり制度」活用を計画の最も初期の段階から考えていた

 都はいつから、そして誰と、「公園まちづくり制度」を前提とした都市計画の変更を考えていたのでしょうか。これを知るためのカギは、2012年5月の森喜朗氏との会談や、その直前の2月の萩生田光一氏との会談にあります。

 資料④では、以下のような会話がされています。

萩生田氏「(図面を広げながら)日建設計がこんな案を検討している」

安井技監「承知しており、私の局が中心に副知事と相談しながら内々検討している。私も日建と会い、検討作業の方向を確認している。」

萩生田氏「日建もそう言っていた。広いエリアで考える必要があるし…」

資料④

 萩生田氏はこの時既に「広いエリアで考える必要がある」と述べています。さらに日本共産党都議団が入手した開示資料などを照らし合わせると、東京都は、「公園まちづくり制度」を神宮外苑再開発に適用することを、既に2011年の時点で考えていたと推察されます。

■小池知事の無責任な言い逃れは許されない。徹底検証と説明を

 神宮外苑再開発は、東京都、三井不動産、裏金議員・萩生田光一現自民党都連会長、森喜朗元首相ら自民党政治家の三者が文字通り一体となって進めてきた計画であることは、もはや動かしがたい事実です。

 小池知事は、ブラックボックスを全て明らかにし、徹底検証し、都民に真相を説明すべきです。なぜなら、当時、都が決めたことが、今、都政をゆるがす大問題となり、都民がその根本的な見直しを求めているからです。この期に及んで「都が担う事業ではない」などと、無責任に言い逃れることは断じて許されません。

 

●記者会見の報告(PDF)

●記者会見で使用した資料(PDF)