第2回 気候危機対策都内自治体アンケート
日本共産党都議団は、2023年8月~9月に都内全区市町村を対象に行った「第2回気候危機対策都内自治体アンケート調査」の結果を公表いたします。
調査の概要
★東京都議会局を通じて、都内自治体にアンケート調査を行い、全区市町村
(23区26市5町8村)から回答を得た。
★回答期間は2023年8月下旬から9月上旬。
質問項目
● 問1 貴自治体において、気候危機対策を担当する部署は設置していますか。
● 問2 問1で「設置している」又は「~設置の予定がある」と回答した自治体にお尋ねします。
(1)部署の名称を教えてください。
(2)部署の体制を教えてください。 ※定数で御回答ください。
● 問3 気候危機対策に関して庁内横断型の組織(プロジェクト・チーム等)を設置していますか。
● 問4 問3で「設置している」又は「~設置の予定がある」と回答した自治体にお尋ねします。
(1)組織の名称を教えてください。
(2)組織の目的を教えてください。
(3)参加部署を教えてください。
● 問5 気候危機対策に関する事業についてお尋ねします。予算額は10月末時点の数字をお答えください。
(1)現時点で地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく地方公共団体実行計画を策定していますか。
(2)実行計画に基づく事業のうち主要なものの名称を3つ教えてください。
(3)実行計画に基づく全事業の令和5年度予算額を教えてください。
(4)令和5年度全会計予算額に占める問5(3)の割合を教えてください。
(5)気候危機対策に関する事業があれば主要なものの名称と令和5年度予算額を教えてください。
● 問6 関係機関との連携についてお尋ねします。
(1)気候危機対策について、国や都、他自治体と情報交換や業務連携をしていますか。
(2)具体例を教えてください。
(3)情報交換や業務連携をしていない理由があれば教えてください。
● 問7 専門人材の活用についてお尋ねします。
(1)気候危機対策について、学識経験者等外部の専門家に科学的な知見等を聴く機会はありますか。
(2)頻度を含め具体例を教えてください。
(3)専門家に聴取していない理由があれば教えてください。
● 問8 地域連携についてお尋ねします。
(1)気候危機対策について、地域住民や事業者、業界団体と情報交換や連携をしていますか。
(2)具体例を教えてください。
(3)情報交換や連携をしていない理由があれば教えてください。
● 問9 気候危機対策を進める上でREPOS(リーポス)(再生可能エネルギー情報提供システム)を利用していますか。
● 問10 問9で利用していると回答した自治体にお尋ねします。利用例をご教示ください。
◉自治体は気候危機打開のキープレイヤー
気候危機打開のとりくみをすすめる上で、自治体は重要なキープレイヤーです。
日本共産党都議団はこれまで議会での質問とともに、2022年12月に「気候危機対策都内自治体アンケート調査結果」を発表。東京都の自治体向けの補助制度の使われ方を明らかにし、改善を提起するなど、都の自治体に対する支援の強化を提言しました。また2024年6月に発表した政策「東京2030 60%脱炭素 実行プラン ver.1.0」でも自治体への支援の強化を位置づけました。
今回の調査では各自治体の気候危機対策に振り向ける体制や予算の状況と共に、主に①専門的な知見の活用はどうなっているか、②地域住民や事業者との連携、に焦点をあてて調査を行いました。
【資料編】に各自治体からの回答一覧を掲載しています。
気候危機打開を願う多くのみなさんと共有し、様々な角度からの分析に生かしていただければ幸いです。またぜひ、ご意見・ご感想をお寄せください。
「東京2030 60%脱炭素 実行プラン ver.1.0」の記者会見の様子はこちらからご覧いただけます。
◉体制や予算について多摩格差、町村格差がある
体制について、区市はほぼ全ての自治体で気候危機対策を担当する部署がありますが、町村では部署を設置できないところが多数です。また区に比べると、市町村はより少ない職員数で対応せざるを得ない状況が伺えます。全庁的課題としてとりくむための庁内横断型の組織を置いている自治体は、区においても半数にとどまりました。
気候危機対策の予算について、予算全体に占める割合を見ると、市は区の半分の水準にとどまっており、町村は独自予算を持てないところが多数を占めています。
前回の調査同様、気候危機対策においても多摩格差、町村格差が存在することが明らかです。
◉施策の柱に省エネ・再エネが位置づけられている
施策について、区市いずれも省エネ・再エネ機器の設置への助成を位置づけていることが明らかになりました。気候危機対策の柱に省エネ・再エネを位置づけることが自治体レベルでも定着していることが伺えます。また区市ともに引き続き啓発に力を入れています。
また区ではカーボン・オフセット事業を位置づける自治体が3分の1を占め、市でも複数ありました。
◉国や都、他自治体との連携に明暗
国や都、他自治体との連携について、「オール東京62市区町村共同事業」や「東京都市環境・公害事務連絡協議会」、部長・課長・係長会議、カーボン・オフセット事業や区市独自のとりくみを通じて行われている一方、区市の3分の1、町村の3分の2が無回答でした。
◉専門的知見の日常的な活用はこれからの課題
専門的知見の活用状況について、外部の有識者に科学的知見を聴く機会が毎月のようにある自治体は5区にとどまりました。区市ともに審議会や計画の策定・進捗評価の機会を挙げるところが多く、多くの自治体で、日常的に専門家から助言を得て施策を進める状況にはないことが伺えます。「学識経験者とのつながりがない」と回答した自治体もありました。
◉気候市民会議の開催、中小企業支援は少数
地域住民や事業者との連携について、審議会や地域協議会といった法定の会議体をあげる自治体があった他に、独自の会議体やイベントをあげたところもありました。杉並区、武蔵野市、日野市で、無作為抽出で選ばれた市民が参加する気候市民会議にとりくんでいます。
また事業者との連携について、エネルギー企業との協定をあげた自治体が一定数ありました。一方、中小企業への支援・連携についてあげた自治体は区市ともに1自治体にとどまりました。
◉東京都に求められること
(1)自治体がもっと専門的知見を活用できるように、支援や補助を強化する
日本共産党都議団が昨年、杉並区の岸本聡子区長と懇談した際、区長は「基礎自治体にはデータはあるけれど、専門知識も人材も限られ、分析などは難しい。補助も人的支援も必要だ」と話されました。今回のアンケート調査から他の自治体でも同様の状況がうかがえます。
気候危機対策に関する都の自治体向けの補助制度は、概ねどのメニューも専門人材の活用にあてることができるとしています。今後、都にはさらに、①専門家の紹介・派遣に力を入れること、②自治体が「中間支援組織」(*)の活用を考えた際に、その人件費に充てられる補助を整備すること、など、自治体がより専門的知見を活用できるよう、支援や補助を強化することが求められています。
(*)中間支援組織:行政やエネルギー企業などから独立して、自治体や中小企業などの省エネ・再エネ活用等をアドバイスし、伴走支援する民間組織。住民主体の活動をコーディネイトしているところも。オーストリア・フォアアールベルク州などで活動が盛ん。日本でも複数の団体がとりくんでいる。
(2)自治体が中小企業支援により力を入れられるようにする
専門的知見の活用の中でも、中小企業の省エネ・再エネのとりくみを支援する体制を強化することが必要です。今回の調査結果からも、各自治体で機器設置への補助は定着しつつありますが、それらも活用して中小企業が実際に省エネ・再エネにとりくむための相談体制については十分整備されていない様子が伺えます。一方、都の相談窓口には相談が多く寄せられ、相談者が待たされる状況にあります。各自治体で中小企業が気軽に相談できる体制を整備できるよう、都の支援を強化すべきです。
また、葛飾区で実証が始まっている既存の学校の断熱改修のとりくみなど、気候危機対策であると同時に地元の事業者の仕事につながっていくようなとりくみを促進する必要があります。現在、都の自治体向け補助メニューに学校の断熱改修に活用できるものはありません。新たに創設することを求めます。
(3)都が気候市民会議の普及の先頭に立つべき
各自治体で、市民や事業者などと協議し、とりくみを進める会議体やイベントが行われており、啓発活動は引き続き各自治体の主要な施策です。その中で、無作為抽出の市民によって構成される気候市民会議のとりくみが始まっています。会議参加者が気候変動やその対策への認識を深める機会となり、実際に自治体の気候政策に市民のリアルな声を反映させるとりくみとして大変重要です。
日本共産党都議団は2024年第3回定例会に気候都民会議条例を提案しました。国の政策にも大きな影響を与える東京都が同会議を実施することが求められています。同時に、都内の各自治体が今後、気候市民会議のとりくみをすすめる際に活用できる支援(専門家の紹介・派遣、会議運営の支援、これらに活用できる補助制度など)を強化すべきです。
日本共産党都議団は2024年第3回定例会に気候都民会議条例を提案した条例はこちらからご覧いただけます。
記者会見動画
条例案文