2021年第1回定例会を終えて
2021年第1回定例会を終えて
2021年3月26日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 和泉なおみ
1、 新型コロナを抑え込み、都民の命とくらし、営業を守る提案を示して論戦
今定例会は、新型コロナウイルス感染症が都民の日常生活のあらゆる分野に影響をおよぼす中で、どの党がそのための対策を示しているのかが鋭く問われました。
第4波の危機が指摘される中、小池知事のコロナ対策は都民への協力のお願いが中心で、自己責任を押し付ける対応が基本になっています。新年度予算にも都独自の対策はほとんどありません。
<コロナ抑止へ5つの提案> 日本共産党都議団はコロナを抑え込み、命とくらしを守る「5つの提案」を示して論戦してきました。
①検査の拡大─感染多発地域での集中した「モニタリング検査」=攻めの検査と、重症化リスクの高い施設等で一斉・定期的に行う「スクリーニング検査」=守りの検査による、戦略的検査の推進を提案しました。現状、一週間平均で一日あたり7,000件足らずのPCR検査を、都が持っている一日6万8千件の検査能力を生かして拡大し、変異株についても迅速に検査数を引き上げるべきです。
②医療体制の確保─多くの医療機関の経営が危機的状況です。都が利子補給する医療機関への融資の見込みは、当初の予測の2.5倍となる139件、融資総額の見込みは650億円となっています。この深刻な事態を打開するために、国と連携して医療機関への減収補填を行うことが必要です。
③保健所の増設・拡充─保健所の体制が極めてぜい弱です。不十分とはいえ、23区は1区に1カ所の保健所があります。一方で、多摩地域は17カ所あった保健所を統廃合し、7カ所まで減らしました。その結果、保健所1カ所あたりの人口は、23区が42万人に対し、多摩地域は61万人となり、新たな多摩格差となっています。保健所の体制強化を行うとともに、増設することが必要です。
また、変異株の検査や感染症に関する調査研究を行う都の地方衛生研究所(都健康安全研究センター)が1カ所しかなく、管轄する人口が約1400万人となっています。都道府県平均では1カ所あたり約200万人であり、東京はその7倍です。ただちに増設の検討を行うことが必要です。
④都立・公社病院の独法化は中止を─都は、新型コロナ対策の中心を担う、都立・公社病院の地方独立行政法人化を推進するために、今年度の6倍となる39億円を予算計上しています。しかも、本来大幅増が必要な看護師の定数を4人も減らすという重大な問題も明らかになりました。
独法化すれば、自治体からの運営費が削減され、感染症医療や小児医療など不採算医療が大きく後退し、患者負担にもつながります。さらに、独法化の検討の中では、「稼ぐ医療」として海外の富裕層に貴重な医療を提供する「医療ツーリズム」を検討していたことが、わが党が情報開示請求した文書で明らかになりました。
都民の運動とわが党の論戦で、今定例会に独法化を行う定款を提案することはできませんでした。一方で、都立・公社病院の独法化中止を求める請願に、都民ファースト、自民党、公明党などが反対したことは重大です。独法化はきっぱり中止し、充実するために引き続き全力で取り組みます。
⑤今夏の東京2020大会は中止し、コロナ対策に集中を─東京2020大会について、5者協議により海外からの受け入れ断念と発表しました。国内の世論調査は、ひきつづき中止・再延期が7割を超えています。新型コロナの感染収束のために、持てる力を集中することが必要です。開催都市として、この夏の五輪は中止を決断し、直ちに関係機関と、協議するよう重ねて強く求めます。
<営業と雇用への支援> 飲食店への協力金について、わが党は一律ではなく事業規模や従業員数に応じた額にし、日割りでも実施すべきだと求めてきました。また、廃業させないという立場で、国の一時支援金の上乗せ・横出しを検討し、都として飲食店以外の業者に対しても支援することが必要です。失業者を生まない雇用対策として、雇用調整助成金への上乗せなどを提案しました。
<芸術・文化への支援> 芸術・文化分野の苦境の打開を求めたわが党の質問に、知事は芸術・文化は「コロナ禍にあって、さまざまな状況におかれている人びとを支え、感動や喜びをもたらす重要なものであると認識している」と答弁しました。大事な答弁ですが、その認識にふさわしい支援を行うことが必要です。「アートにエールを」事業の拡充、稽古場や道具を保管する倉庫などの固定費への支援をはじめ、文化・芸術にたずさわる幅広い方への支援の実行こそ必要です。
2、巨大開発と大型道路建設を推進し、高齢者福祉などはきわめて不十分
──小池知事の予算案に2.3%の組み替え提案を示して反対
コロナ対策とコロナで浮かび上がった課題を解決することが求められていますが、新年度予算は、巨大開発と大型道路建設中心の“自民党型予算”となっています。
高齢者施設、障害者(児)施設、認可保育園整備予算はのきなみ大幅減額です。都営住宅は22年間連続で、新規建設ゼロです。コロナ禍による生活困難で多くの都民が苦しむ中、高すぎる国民健康保険料(税)を引き下げる新たな軽減策もありません。
一方で、まちを分断し、住民の多くが反対する特定整備路線などの大型道路建設だけでも900億円もの巨額を計上しています。陥没事故を起こした東京外かく環状道路は反省もなく、東名以南への延伸を推進する異常な姿勢です。この3月末で期限切れとなる事業認可の延長をやめるよう厳しく求めました。知事は、カーボンハーフを掲げていますが、それに逆行する開発を進めています。その一例として、大手町に建設予定の390mビル、開発前のCO2排出量から増加する分を森林で吸収しようとすると新たに東京ドーム652個分の森が必要であることを追及しました。本気で気候危機を打開するためにも、開発拠点と巨大ビルを次々と増やす都市開発のあり方を見直すべきです。
さらに、破たんが必至なカジノの調査予算を8年連続で計上し、羽田新ルートのさらなる機能強化調査予算も含まれています。とても認められるものではありません。
日本共産党都議団は、不要不急の事業を見直し、予算の2.3%を組み替えるだけで、コロナ対策、ひとり親家庭への児童育成手当増額、35人学級拡大、国民健康保険料(税)の子どもの均等割軽減、若者家賃助成、高齢者の補聴器購入費助成をはじめ、77項目の都民要求が実現できることを示した予算組替提案を行いましたが、都民ファースト、自民党、公明党などにより否決されました。
ノルウェーやスウェーデンの国家予算に匹敵する15兆円の予算を最大限活用し、コロナ禍で浮かび上がった課題を解決し、くらし、福祉、教育の充実を行うことが、地方自治体の本来の役割です。
3、全会一致で可決した「こども基本条例」を子どもの参加でより豊かに
議員提出の条例案が活発に議論されたことは、今定例会の大きな特徴の一つです。
<「こども基本条例」をよりよくする立場で奮闘した日本共産党都議団>
子どもの権利条約が批准されてから27年になりますが、日本社会ではいまだに子どもの権利が守られていない現実があります。特に石原都政以降、東京では子どもの権利が保障されてきたとは言いがたい状況が続いてきました。こうした中で、東京都で子どもの権利について定める条例を制定することはきわめて重要です。
わが党は、よりよい条例にする立場から、他党に対して提案を重ねてきました。具体的な子どもの権利および都の責務の明確化、実効性の担保の視点から修正案を提起しました。厚生委員会において全会派共同で修正可決した条例は、わが党が提起した内容が幅広く取り入れられ、学ぶ権利など各種の子どもの権利を規定したことなど原案から重要な前進がありました。
同時に、条例の策定過程で、子どもの意見を聴いていないことは、どれだけ条例を修正しても補うことはできません。その点で、わが党の修正案が活かされ、子どもの意見を聴く機会を設けて3年後に条例の見直しを行う規定が附則に盛り込まれたことは重要です。子どもが直接参加し、影響力を行使して、必要な改正が行われることで、条例が豊かな内容と実効性を持ったものになると考えます。本日、全会一致で可決された条例について、都議会として子どもの意見を聴く機会を積み重ね、子どもの権利が保障される東京をつくるために、全力をつくします。
<日本共産党都議団は「高齢者の補聴器購入費助成条例」など3つの条例を提案>
日本共産党都議団は、3つの条例を提案しました。
①「高齢者の補聴器購入費助成条例」は、より多くの高齢者が補聴器を使用しやすくし、聞こえのバリアフリーを進めるものです。②「青少年問題協議会条例」の改正は、協議会に当事者である若者の委員6人を加える改正です。③「東京都住宅基本条例」の改正は、居住の権利を明確にし、都営住宅の新規建設、家賃補助制度の創設、同性パートナーの入居など、誰ひとり取り残さない住宅政策に充実させるものです。
いずれも成立には至りませんでしたが、引き続き実現のために力をつくすものです。
4、都政をきびしくチェックするとともに、都民要求を前にすすめる貴重な成果も
羽田新ルートは中止を──住民の強い反対がある羽田新ルートの問題について、国交相が「飛行経路の変更を求める自己中心型」などの類型化を行い、住民をクレーマー扱いしている実態を明らかにしました。さらに、「固定化回避検討会」で検討しているルートは、そのすべてが都心上空を最も効率的と考えていることを明らかにし、「名ばかり検討会」であることを追及しました。
横田基地・都心上空米軍ヘリ飛行やめよ──米軍横田基地で危険なオスプレイの飛行訓練が夜間に集中していることを明らかにし、単なる空輸基地ではなく、特殊作戦部隊の拠点となっている実態について知事の認識をただしましたが、正面からの答えはありませんでした。また、米軍ヘリの都心超低空飛行の問題について、ドイツやイタリア、イギリスでは国内法が適用される一方で、日本ではわが物顔で飛行しています。日米地位協定は改定が必要ですが、現行でも、国内法を遵守する義務を負っており、住民の命と安全を脅かす飛行の中止と、基地の撤去を求めるべきです。
ジェンダー平等推進──五輪組織委員会の森前会長の女性蔑視発言について、許されない発言ではないかというわが党の質問に、知事は一度も答弁に立ちませんでした。ジェンダー平等の根本が問われる大問題です。
パートナーシップ制度について、知事は「社会情勢の変化を踏まえつつ、当事者に寄り添う施策を展開していく」と答弁しました。パートナーシップ制度の実現は、当事者に寄り添う施策そのものです。同性パートナーの権利を認める動きが大きく前進している中、都として踏み出すことが必要です。 さらに、独自に行った痴漢被害の実態調査を示しながら誰にとっても安全な都市にするため、痴漢ゼロの東京を実現しようと呼びかけました。知事が、「痴漢等の性暴力被害に遭うと、強い不安感などの症状があらわれ、精神的なダメージを受けるにもかかわらず、被害を受けたことを声に出しづらい」という認識を示したことは大事な一歩です。都として実態調査、鉄道会社などとの連携を行い、痴漢対策を次の男女平等参画推進総合計画に位置付けることを求めます。
少人数学級の推進──来年度35人学級が小学校2年生で実施され、5年間かけて小学校全学年に広がります。わが党の質問に、都も少人数学級になれば、学習面でも、生活面でも良い影響をもたらすと答弁しました。早期に、30人学級を実現するために引き続き全力をつくします。
子どもの権利と校則改革─わが党は、都立高校の「地毛証明書」について調査を行い、その改善を求めて質問しました。その後、頭髪指導について改善を求める「通知」が出されました。また、教育長が「子どもは、あらゆる場面で権利の主体として尊重され…意見を尊重するとともに、子どもの最善の利益を実現することは、学校教育においても同様に重要」と答弁したことは、画期的です。
多摩北部医療センターに産科を──建て替えが検討されている公社多摩北部医療センターに産科・NICU、小児外科の設置を求めたのに対して、患者、家族、住民の声を参考にしながら、基本構想を取りまとめるとしたことは重要です。実現に向けて、引き続き取り組んでいきます。
平和祈念館と核兵器禁止条約──東京大空襲の実相を伝え、次世代に伝えていくことが必要です。わが党の質問に知事は「戦争の記憶を風化させることなく、次の世代に語り継ぎ、平和の大切さを伝えていくことは重要」と答弁しました。東京都平和祈念館の建設に向けて取り組むことを強く求めます。核兵器禁止条約に批准することを、国に求めるよう知事に強く求めました。「批准」を求める請願に対しては、都民ファースト、自民党、公明党が反対。唯一の戦争被爆国として、条約を批准し、核兵器のない世界に向けて、先頭に立つことが必要です。
5、日本共産党都議団18議席の力を発揮──この力をさらに大きく
2017年の都議選で、2期連続で躍進した日本共産党都議団は、この4年間、野党第一党として都民の運動と力を合わせ、暮らしに役立つ都政に変えるために全力をつくしてきました。
都議選が、7月4日投開票に決まりました。日本共産党都議団は、新型コロナ危機から都民の命とくらしを守りぬき、自己責任ではなく、都民を支えるあたたかい都政へと切り換えるために全力をつくす決意です。 以上