2020年第1回定例会を終えて(談話)
2020年第1回定例会を終えて
2020年3月27日
日本共産党東京都議会議員団
幹事長 和泉なおみ
1、 高齢者福祉や貧困対策が不十分な小池知事の予算案に、対案を示して反対
小池知事は、就任当初は「反自民」の改革者として振る舞い、都民の人気を得ました。しかし希望の党を立ち上げ国政に出ようとして失敗して以降、流れは変わりました。結局、都民の期待にこたえる都政の改革は実現されていません。なかでも、石原都政が切り捨てた高齢者福祉の立て直しや、貧困と格差対策は、きわめて不十分です。
小池知事が編成した2020年度予算案は、「長寿」を重視したと言いながら、特別養護老人ホームなど介護基盤の整備費予算は、のきなみ大幅減額されています。値上げが続く国民健康保険料(税)の新たな負担軽減策もありません。都営住宅の新規建設は、石原都政以来21年間ゼロが続いています。
一方、1メートル1億円の外かく環状道路建設を相変わらず推進し、さらに東名高速以南にまで延ばす調査費を予算化しています。また、まちの分断・立ち退きなどに多くの住民が反対している特定整備路線の道路建設に561億円もの予算をつけています。
都民が直面している困難によりそい、解決する予算になっていないため、日本共産党都議団は反対しました。同時に対案として、予算の1.7%を組み替えるだけで、国保料(税)やシルバーパスの負担軽減、認可保育園や特別養護老人ホーム増設をはじめ、80項目におよぶ福祉・子育て・教育・防災などの都民要求実現ができることを示した予算組み替え提案をおこないました。
「待機児童ゼロ」対策も後退しています。小池知事は昨年、2019年4月の保育園待機児童数について、「四半世紀ぶりの水準に達し、3690名まで減少した」と誇りました。しかし、国が待機児童を少なく見せるように定義を変更したため、四半世紀前といまの待機児童数は定義が全く異なります。知事は、このことを承知していたと答弁しました。都民をあざむく発言をしたことは許されません。
四半世紀前の定義にそろえて試算すると、昨年4月の都内の待機児童は約2万3千人にものぼり、減少どころか約6倍に増えていることも今定例会で明らかになりました。にもかかわらず、都が来年度からの保育目標を引き下げようとしていることは重大です。いわゆる「隠れ待機児童」をふくめた待機児童をゼロにできる目標を設定し、認可保育園を増やすとともに、質の確保をあわせて進めることが必要です
<自民党が予算案賛成に転換-「反自民」を訴えた小池知事の姿勢が問われている>
7月5日投票の都知事選挙を前にして、自民党は小池知事の予算案に3年ぶりに賛成しました。自民党は、旧築地市場跡地の再開発計画をめぐり、小池知事が歩み寄る答弁をしたことを評価したとしています。「都知事選挙と同時に実施される都議補選で、小池氏が自民候補を応援する方向で調整が進んでいる」という新聞報道もあります(「朝日」3月25日付)。
前回知事選で小池知事は、「反自民」を訴えて都民の期待を集めました。その約束への知事の政治姿勢が、きびしく問われます。同時に自民党は、つい先日まで知事が編成した予算案を批判していました。知事選を前に突然賛成に転じた自民党の政党としての姿勢も、きびしく問われます。
2、小池知事が都民不在で進める「3つの大問題」の重大さが鮮明に
「都民が決める。都民と進める」は、知事の公約です。ところが次の「3つの大問題」はいずれも都民不在で進められています。知事の重大な公約違反です。
① 都立病院・公社病院の独立行政法人化
東京都は、独法化により、迅速で柔軟な医療人材の確保や安定的な経営基盤の確立が可能となり、行政的医療の充実ができるとしています。しかし、独法化して10年となる神奈川県立病院機構は、経営が「危機的な状況」におちいっているというわが党の指摘に、都は独法化しても経営が危機的になりうることを認めました。
都の独法化方針案に対するパブリックコメントには、1511人もの都民が意見を寄せ、その多くが独法化反対の意見だったとの答弁もありました。ところが知事は、これらの意見に耳を傾けることなく、3月中に独法化の方針を決定するとしています。いま病院の現場は、新型コロナウイルス感染症への対応の最前線でがんばっています。こんな時に、独法化の方針決定など許されません。
そもそも、地方独立行政法人法は、定期的に業務の廃止や組織の廃止を含む見直しを行うことを定めており、独法化とは、感染症医療、救急医療をはじめとした行政的医療を減らすものです。日本共産党都議団は、中止させるためにこれからも全力をつくすものです。
都心上空を超低空飛行する羽田新飛行ルートは、地元の強い反対にあい、「実現には地元の理解が必要」としてきた国は窮地におちいっていました。小池知事了承のもとに副知事が「国の対策を評価する」「着実に進めよ」と国に進言したことが、国に「地元の理解が得られた」との口実を与え、運用開始に決定的な役割をはたしたことが、わが党の質疑でうきぼりになりました。
知事が評価した「対策」のひとつは、着陸を急角度にすることによる騒音軽減です。しかしこれは、騒音軽減にならないうえ事故の危険性が増大すると、国際的な航空団体、パイロットの団体が指摘しているものです。同時に、着陸角度変更の本当の理由は米軍横田空域があるからだということも判明しています。
今定例会の直前に、国が実際のルートを飛行機が飛ぶ「実機飛行」をおこない、深刻な騒音と威圧感が鮮明になりました。国は24日に、ようやく分析結果を発表しましたが、最大騒音レベルは、事前の国の説明を大幅に上回った観測箇所が何か所もあったにもかかわらず、その原因も対策もまともに示さず、夏には騒音がさらに大きくなる可能性もあるとまでしています。そのうえ、住民への説明会は開かないと明言していることは重大です。
新型コロナウイルス感染症の影響で、国際線・国内線とも大幅な減便・運休が相次いでいます。
都民のくらしへの深刻な影響、着陸を急角度にすることの危険性、「増便のため」と言いながら大幅減便されている飛行実態、いずれをとっても、3月29日から本格実施する必要性はありません。羽田新飛行ルートの中止を国に求めるべきです。
③ カジノ誘致
わが党の質疑で、都職員がカジノ業者と接触した事実が明らかになりました。同時に知事は、ギャンブル依存症が、本人に「病気である認識が薄く、破産や家庭崩壊など深刻な状態になる」危険性を認めました。そもそもカジノは、ギャンブル依存症を生み出すことで儲けるビジネスです。誘致の調査・検討をきっぱりやめるべきです。
3、 国保の子どもの均等割、私立高校の入学金―2つの「ゼロ円条例」を提案
国民健康保険料・保険税の均等割は、0歳の赤ちゃんもふくめ、すべての家族にかかり、子育て支援や子どもの貧困対策に逆行するものであり、全国知事会も国に改善を求めています。日本共産党都議団が提案した「子どもの均等割ゼロ円条例」は、国に先駆けて、均等割の負担軽減をおこなうものです。
私立高校入学金助成条例案は、年収350万円未満世帯の生徒に入学金を無償とするものです。来年度予算案で私立高校の授業料無償化が年収910万円まで拡大されたことは、都民の運動とともにわが党が求めてきたことであり、大きな前進です。同時に、多くの県で実施している入学金への給付型助成がなく、低所得世帯にとって重い負担となっています。格差解消と教育を受ける権利の保障のために入学金への助成が必要です。
また、都議の期末手当を据え置く条例案は、わが党と生活者ネット、自由を守る会の3会派共同で提出しました。いずれの条例案も、都民ファースト、公明党、自民党などにより否決されましたが、今後も実現をめざします。
4、日本共産党都議団の論戦・提案の貴重な成果
風水害対策で重要な、地域の共助の取り組みに対し、足立区内の自治会が進めているコミュニティタイムラインの活動への評価が示されたことは重要です。また、都営住宅の風呂釜・浴そうのうち、自己負担で取り換えていた住戸について、東京都の負担による取り換えが試行されることになりました。
気候変動対策への具体的な行動を国に求める「気候変動対策に関する意見書」を全会派共同で提出し、採択しました。
就職氷河期世代の方々への就労支援は重要だと知事が答弁し、都営住宅を活用した居住支援をおこなうと表明しました。困難を抱える若年女性支援の相談事業について、前向きな認識が示されました。性暴力救援センターも拡充されました。全国34自治体、都内7区1市まで広がっているパートナーシップ制度を、都として実施することを求めましたが、他会派からも茨城県、大阪府が実施したことを踏まえ、有意な調査を行うよう提案されるなど議論が広がっていることは世論と運動の成果であり、今後につながるものです。
5、重大な局面を迎えている新型コロナウイルス対策の抜本的拡充を
新型コロナウイルス感染症は、都内の感染者が増え始め、重大な局面をむかえています。知事は、イベントや週末の外出等の自粛を要請しましたが、自粛にともなう事業者や労働者の損失補償について、具体策を何も示さなかったのは無責任です。感染防止を実効あるものにするためには、苦境におちいっている事業者・個人に対し、命を守るための「感染防止対策」として、自粛・中止に対する緊急の直接支援をおこない、国と連携して思い切った予算をつけることが必要です。また、ウイルス検査をもっと多く、もっと早くできるようにする体制整備も不十分です。人工呼吸器の確保をふくめ医療体制の充実強化、マスクや消毒液の確保なども急務です。大型の第二次補正予算の編成をはじめ、知事が責任をもって抜本的な対策強化をはかることが必要です。
延期が発表された東京オリパラ大会については、アスリートをはじめ、直接、間接の関係者に与える影響、被害を最小限にすることが必要です。また、東京だけが開催見直しに伴う追加費用を負担させられるのではという報道もあり、都民は懸念しています。懸案事項と追加費用について、公開しての議論をおこない、都民が納得できる結論を得ることが必要です。
日本共産党都議団は、18議席の力を大いに発揮し、引き続き都民の命とくらしを守る立場から、全力で奮闘するものです。
以 上